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それは数日後のとある日。
この日は朝から叔父様がいなかった。
もちろんこっちに来てから大体一緒だった朝食の席にもいない。
「今日は叔父様がいないのね?」
お嬢様が言う。
「本日は国王の元へ行かれています」
執事のマールさんが答える。
「珍しいのね。どうして?」
お嬢様も珍しくさらに詳しく問いかける。
「それは…これでございます」
マールさんは険しい顔でどこか言いづらそうにあるものを差し出した。
それは今日の日刊紙。
そこには大きく2つの記事が一面を飾っていた。
1つはコクルト国が隣国と緊張状態に入ったということ。
これは言わば戦争になる可能性もあるという事を意味している。
もう1つはコッピーニ村とその周辺で大規模な豪雨災害があったという記事だ。
コッピーニ村はナビナさんの出身地でもある。
なのにナビナさんは今日も普通に仕事をしていた。
「これ、どういう事?戦争が起きるの?それにコッピーニ村ってナビナの出身地じゃない。なんで帰らせないの?」
「まだその可能性だというだけで起こってはいません。むしろ起こさないために旦那様方がご尽力されています。コッピーニ村の災害についても今出ている情報を見るに相当な被害が出ているのでナビナはこちらにいた方がいいとの旦那様のご判断です」
マールさんが淡々と話しそれをお嬢様は静かに聞く。
「でも…ナビナはそれでいいの?」
最後まで聞き終わりお嬢様が言った。
「はい。大丈夫です。旦那様から状況が分かったらいつでも故郷に帰って良いとお許しをもらっていますから」
お嬢様とマールさんが話している間も表情を変えず静かに立っていたナビナさんが答える。
お嬢様はなんとも言えないようだった。
それは私も同じで間近にこういう事が起こる事は少なかったから受け止めきれない。
「私に何かできる事はあるかしら?」
お嬢様がマールさんに問いかける。
「カトリナ様はいつも通りにお過ごしください」
「分かったわ…」
朝食を終えお嬢様は針子の仕事へ、私はパン屋へ出勤する。
「ネリアちゃん、おはよう」
「おはようございます」
「聞いたかい?コッピーニ村で豪雨災害があったんだって」
出勤早々、その話題で持ちきりだった。
「聞きました」
「相当被害が大きいみたいだから私達も何かできる事ないかと思って色々考えてるんだけどあっちでパンを焼けないかなって」
「パンをですか?」
「ああ。あっそれか募金はどうかなって。でもやっぱり焼きたてのパンは力になると思うんだよ」
「でも被災地でパンは焼けないんじゃないですか?」
「そこは大丈夫!シンプルなパンなら火さえあれば焼けるから」
「でもお店はどうするんですか?」
「そこでネリアちゃん達にお願いがあるんだ。しばらくの間、店を任せても良いかい?」
「えっ?」
「いや、なるべく早く帰って来るつもりだし君達優秀だから作業場もホールも安心して任せられる」
「でもお店毎日大繁盛だしエコピットさんがいなくなったらどうなるか…」
「そう思ってシフトもしっかり組んだしあっもちろん1人でもだめとかやだとか言われたら募金だけにしようと思ってるんだけど」
「エコピットさんはやりたいんですよね?」
「うん。僕ね、パンには力があると思うんだ。焼きたてのパンを食べると幸せな気持ちになれるし力が湧いてくる。今、コッピーニ村の人達は暗い気持ちになっていると思う。けど少しでもパンで元気になって欲しいだ。それにこれは個人的な事だけどコッピーニ村にはお世話になっている農家さんや人も多いんだ」
「分かりました!ここは店主のお店ですから店主のやりたいようにしてください」
「本当か?」
「はい」
「ありがとう。ネリアちゃん」
店主は感動した様子で固く手を握り次の人の元へと向かった。
どうやら1人1人許しを得ているらしい。
私にしてみれば自分の店なのだから好きにすればいいと思うがそういう所もエコピットさんらしい。
それから私はいつもように配達へと向かった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。




