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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第231話 空を仰ぎ見る者 side スペンサー

 騎士とななんなのだろうか?

 思わず自問自答してしまうような理解し難い戦いが目の前に広がっている。

 ドラゴンに変わったアイクが魔法を避けながら急降下して火を吹く。


「理解が追いつかない……」


 オレたちはエリクサー・ラボラトリーという集団を追いかけ、泥炭が掘れる山に入り込んだ。

 フラワーオウルの国民としては山に立ち入るのすら戸惑いがあったが、結局山に入ってしまった。山は妙な木が生える場所であったが、侵入禁止にするほどの理由はないように思えた。


 しかし、ヴァネッサ師匠の反応は違った。

 なぜダンジョンの外にこの草木が生えているのかと驚いていた。

 驚きの内容はよくわからなかったが、説明を聞く暇もなくエリクサー・ラボラトリーとの戦いを続けている。


「理解できるわけがないだろ」


 オレの独り言に同意したのはギャングのチェスター。

 近くにいるチェスターに視線を向けると、やはり先ほどのオレと同じように空を見上げている。


「ぎゃあああ!」


 アイクの吐き出す炎によって焼かれた敵が悲鳴をあげる。

 手足を切られても悲鳴を上げなかった敵が、火を吹きかけられただけで悲鳴を上げている。


「ここまで酷い戦いになるのなら、詳しく話を聞いておくべきだった!」


 チェスターは頭を抱えて叫ぶ。

 確かに全く戦力にならないような戦いになるとは思いもしなかった。


「今からでもわかる人に聞きましょう。モーリス、あの黒い炎はなんなのですか?」


 錬金術師のメイソンの言葉はもっとも。

 黒い炎など始めてみる。

 確かに見た目からして怪しくはある。


「アイクの炎についてはスカーレットドラゴン王国でも調査中です。我々も知っているのなら教えて欲しいですね」


 まさかの事情を知っていそうなモーリスですら黒い炎がなんなのか知らなかった。


「……よくそんなもの使っていますね」

「今のところ人に対して悪影響は確認されていません」


 黒い炎に包まれた敵は絶叫するような悲鳴をひたすら上げた後、悲鳴が止まった後は身動き一つとらない。まるで死んでいるかのようだが、一応胸が動いているので生きてはいそうだ。

 生きていれば悪影響がない、などとは無理がある。


「悪影響がない? それならば何故エリクサー・ラボラトリーの構成員は苦しんでいるのです?」

「黒い炎がモンスターやダンジョンボスを弱体化させる効果があるのはわかっています。エリクサー・ラボラトリーの構成員である錬金術師は体内にダンジョンの核を埋め込んでいるため、悪影響のない人とは違うのではないでしょうか?」


 モンスターに対して効果があるか。

 最初は人の姿だったエリクサー・ラボラトリーの錬金術師。

 今はモンスターの方がまだ生き物に見える見た目に変わっており、大きさも人の身長を大きく超えて巨人のような大きさ。


「なるほど。ダンジョンの核を体内に入れた場合、人とは異なる反応を示すわけですか」


 人とは異なるか……。

 エリクサー・ラボラトリーの姿は異質で、人と異なるという言葉に納得してしまう。

 メイソンとモーリスの会話は興味深くつい話を聞いてしまう。


「いや、メイソン。悪影響が確認されていないだけという言い方、悪影響はないが何かしらの影響があるとも取れる」

「確かに。チェスター、鋭いですね」


 おお、なるほど。

 なんらかの影響があるのか。

 モーリスを見ると苦笑している。


「機密です」

「くそ、やはり何かありやがるな……。目の前で燃えている黒い炎が恐ろしい」

「私も黒い炎の中に入っていますが、この通りなんの問題もなく生きていますよ」


 黒い炎の中に入ったというモーリスを上から下まで何度も見てしまう。

 モーリスは獣化したため翼に尻尾が生えている。

 何度見ても獣化しているだけで普通の姿。


「お前も火の中に入っているのかよ……。頭おかしいだろ」

「緊張しなかったわけではありませんが、最初ではなかったのもあってそう怖くはなかったですよ。それに仕えている貴族も火の中に入っています」

「黒い炎に進んで入るとか、どんな貴族だよ……」


 モーリスが空を指差す。

 つられて星の光が強くなった空を見上げる。

 晴れているというのに、時折雷が落ちてエリクサー・ラボラトリーの錬金術師に当たる。周囲に放出されている魔力が多すぎてわかりにくいが、どう見ても雷魔法。


「魔法で雷落としているのが私の使えるパーシヴァル・オブ・ウォールナットスクワロー様。アイクのパーティーメンバーです」

「………………」


 空を見上げて固まる。

 あの雷落としている貴族にモーリスは仕えているのか……。

 チェスターが黙ったためオレが質問してみる。


「さっきから魔法を連発しているけど、魔力は尽きないの?」


 雷魔法というのは珍しい。

 使い手が少ないため、魔法を連発しているのがモーリスの使える貴族であると想像できる。フラワーオウルだと遠距離魔法を連発できるのは王族くらいだと聞いたのだが……。


「パーシヴァル様はスカーレットドラゴン王国でも上位の魔力量。まだ余裕がある」

「まだ余裕があるのか……すごい貴族だな」


 オレも竜人であるため普通の人に比べると魔力量は多いが、さすがに大規模な魔法を連発する貴族と比べられない。

 魔力を隠さなくなったアイクからも凄まじい魔力を感じるが、それ以上の魔力を持っているのではないだろうか。


「待て、待て。上位の魔力量を持つ貴族と組んでいるアイザックは何者だ?」


 チェスターが復活した。

 確かにアイザックは何者だ?

 貴族だとは聞いているが、スカーレットドラゴン王国の貴族がどのようなものかわからない。


「国王陛下や王太子殿下から信頼されており、騎士や錬金術師として仕事をいくつも頼まれる方です」


 国王に王太子……?

 貴族どころか王族。


「国王!? 年齢の低いアイザックが中心になって命令を出しているのか不思議に思っていたが、階級が一番上なのか?」

「いえ、アイクが命令を出しているのは単純に実力です」

「実力があるのは見ればわかるが……」


 今もアイクは大量の魔法を避けながら、火を吹いている。

 エリクサー・ラボラトリーが放つ魔法は明らかにアイクを集中して狙っている。狙いをつけられた魔法をどうやって避けるのだろうか。

 オレには理解できない領域。

 理解できないがゆえにアイクがなんで潜入しているのかが気になる。


「なんでアイクはフラワーオウルに来たんだ?」

「見た目が一般人に紛れやすいなどの理由がいくつかあるのですが、一番は強さです。どこに送り出しても生きて帰ってくるという安心感があります」

「すごい納得した」


 今、エリクサー・ラボラトリーと戦っているのはほぼアイクだけ。

 手こずっていた相手を一人で圧倒している。


「そうでしょう。バトルアックスを使った接近戦が強いのです」

「接近戦? 火を吹くのじゃなく?」

「本来の戦い方は盾とバトルアックスを使った前衛です」

「まだ本気じゃないのか……」


 今は火を吹いているだけ。

 話しているだけでも空に撃たれる魔法の数が減っている。

 短時間でどれだけの敵を倒したのだろうか。これで本来の戦い方ではないとは思えない。


「そうですね。倒すだけならエリクサー・ラボラトリーの錬金術師は余裕でしょう」


 余裕か……。


「騎士になれるか不安になってきた」


 モーリスが首を横にふる。


「アイクは特出した力を持っています。深層ダンジョンのダンジョンボスと戦えるような相手と、自分と比べるのはやめておきなさい」

「深層ダンジョンのダンジョンボス?」

「何体もダンジョンボスを倒して勲章を授与されています」

「深層ダンジョンのダンジョンボスを何体も……」


 深層ダンジョンがどのような場所か想像すらできない。

 わかっていたが、大きな差を感じる。


「ヴァネッサとモンタギューも深層ダンジョンのダンジョンボスを倒して勲章を授与されています。3人に騎士になれると言われたスペンサーなら騎士になれます」

「師匠も勲章を授与しているのか」

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