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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第219話 ハイク村

 馬車は泥炭の掘れる山を目指して進んでいく。

 村まで距離はそうないはずだが、蛇行しながら山を下っているため、近づいたように見えても時間がかかる。

 それでも徐々に山を降りて目的の村に近づいていく。


 随分と山を下ったところで馬車は二手に分かれる。

 ハイク村とタリス村という別の村に行くためだ。

 俺たちが向かうのはハイク村。


 山の下付近まで来ると、泥炭が掘れる山との距離が近づいた。

 しかし、山と山の間には深い谷がある。

 馬車は谷の上を通っているため、谷の底に川が流れているのが時折見られる。川が流れている谷の底までは10メートル以上は余裕であり、落ちれば即死する。


「一応お伝えしておきますが、泥炭を運び出すため谷に橋がかかっています。橋はハイク村から少々離れた位置にありますが、橋に近づけば兵士に捕まります。決して橋には近づかないでください」


 谷を見ているとメイソンから注意される。

 確かに橋でもない限り反対側の山には渡れそうにない。

 山は警備されていると聞いたが、山の一部でも移動手段が限られているのなら警備の手間が軽減されていそうだ。


「わかった」


 目的地はハイク村であるため、橋に近づくような用事はない。


「門が近づいてきた」


 スティードが振り向いて声をかけてくる。

 準備は事前に終わらせているため、焦りはない。

 オリハルコンを見にきた客という設定を忘れず、自然体を意識する。


 ハイク村には村を守るためか防壁が作られている。

 首都の背丈を優に超える城壁とは違い、村の防壁は人の背ほどしかない。大きさは違うが、街と村の違いを考えれば当然。むしろ、村を防壁で囲める方がすごいといえる。


「止まれ! なんのようだ!」


 防壁の前に立っていた門番が馬車を止める。

 槍に革の鎧という意味が武具を身に付けている。鉄ですらない装備は意味があるのだろうか……?

 国の兵士ではなく、村の住人かギャングの構成員だろうか?


「スノーフォックスのチェスターだ。鉱石を買いに来た」


 チェスターが馬車の中から門番に話しかける。

 門番がチェスターに近づくと、チェスターは門番に何かを見せる。

 何かを見た門番は黙って頷く。


「買い付けにしては随分と大所帯じゃないか?」

「客が赤と青をみたがってな」


 門番が口笛を吹く。

 おそらく赤はオリハルコンで、青はミスリルかな?

 金属の色を隠語にしているのか。自分が買うというのもあるが、わかりやすい隠語だな。


「それは気合の入った客だ。理解したよ」

「金払いのいい客を逃したくはない。通っていいか?」

「もちろん」


 チェスターが合図を出すと、スティードが馬車を進める。


「取引場所は奥にある大きな建物だ」


 チェスターが指定した建物は崖の近くにある。

 村は北側に谷があり、南側が崖になっている。

 谷と崖の間に村は作られている。


「承知しました」


 喋り方が変わったスティードが操る馬車は、崖の近くにある石造りの建物へと進んでいく。

 村の建物は首都にある建物と変わらず、灰色の石で作られた建物で、一階建てから二階建ての建物が多い。道も首都と変わらず、石が敷き詰められている。


 規模が小さいだけで、首都とそう変わらない。

 むしろ首都の路地裏のように崩れた家がない分、ハイク村の方がきれいにすら見える。

 鉱山が元になった村であるため、そう発展していないと思っていたが予想と違う。


 しかし、馬車の中を調べられずにハイク村の中に入ってしまったな。

 ふとチェスタが門番に名乗っていたスノーフォックスという言葉を思い出す。


「ところでチェスター。スノーフォックスってなんだ?」

「うちの名前であると同時に通り名だ。兄弟揃って白い狐人でスノーフォックスと昔から言われていた」

「そんな名前だったのか」


 今更だが初めて聞いた。


「……言ってなかったか?」

「聞いていないな」


 ギャング、スノーフォックスか。

 門番が疑問に思わない程度には有名な様子。


「お客さん、目的の建物に到着しましたよ」


 スティードが演技をしながら声をかけてくると同時に、馬車が止まる。

 村の中では誰に会話を聞かれるかわかったものではない。

 俺も客を演じる。


「ありがとう。帰りも頼むよ」


 スティードは馬車に残る。

 同様に料理人や使用人に扮している騎士も馬車に残る。

 何かあった場合には叫んで合図を出す。


「お待ちしております」


 御者と客という関係を維持しながら馬車を降りる。

 石畳の道であるのに関わらず、靴から石や砂を踏んだような感触がある。


 足元を見ると石畳とは違う色の小さな石や砂が地面に落ちている。

 石畳とは違う色の小さな石は一列になっており、辿っていくと建物の中に消えている。

 消えた先には馬車も入れそうな入り口がある。


 そう離れてもいないため、近づいてみる。

 中には鉱石らしきものが山のように積まれている。

 谷の底にある川から湿気が上がってきているのか湿気ているのに、倉庫周辺はどこかざらついており埃っぽい。


「建物は倉庫になっているのか」

「希少金属が採掘できる周辺の村は倉庫と事務所が一緒になった建物がある」


 チェスターが隣に来て説明してくれる。


「建物が村にある他の建物より大きいのは保管の倉庫のためか」


 鉱石なら外で良さそうなものだが、希少金属を扱っているため倉庫が必要なのだろう。

 オリハルコンやミスリルでも野晒しにしたところで品質に問題はないが、盗まれる危険がある。


「中で鉱石を見せてもらえるよう交渉する」

「了解」


 チェスターは倉庫とは別の方向に歩いていく。

 事務所の入り口は別なのだろう


 石造りの大きな建物に両開きの大きな扉が現れる。

 扉は開け放たれており、外から中が見える。中は長い受付があり、役所や銀行を思い浮かべるような作り。


 石造りの内装は灰色であるため豪華には見えない。

 どこか機能を重視した作りに見える。


 チェスターが中に入っていく。

 俺たちもチェスターの後に続く。

 チェスターは目的の場所があるようで建物内を迷いなく歩いている。


「すまない」


 チェスターが受付に座っている男性に声をかける。


「はい。どのようなご用でしょうか?」


 門番と違って受付の対応は丁重。

 服もスーツを着ており、同じ村とは思えないほど対応が洗練されている。


「スノーフォックスのチェスターだ。赤と青の買い付けに来た」


 チェスターが名乗ると男性の顔から笑顔が消える。


「少々お待ちください」


 受付の男性は素早く立つと、後ろに下がっていく。

 しばらくすると受付の男性が受付側から俺たちの方に現れる。


「別室にご案内します」


 受付の男性が歩き出す。

 俺たちは受付の男性の後をついていく。


「おかけになってお待ちください」


 案内された部屋は先ほどまでとは違い、絨毯が敷かれ壁には絵が飾られている。

 来客を意識しているのか豪華な作り。

 豪華な部屋には大きな円形の机があり、周囲には大量の椅子が並べられている。


「まさか全員座れる部屋があるとはな」

「珍しいのか?」

「普通は買い付けに10人も来ないだろ?」

「確かにな」


 なぜここまで大きな部屋があるのか疑問に思いながら座る位置を決める。

 チェスターとメイソンが隣り合って座り、俺とタッカー様が二人を挟み込むように座る。

 相手側に近い位置には何かあっても対処できるモンタギュー父さんとヴァネッサ母さんが座る。

 全員が座ったところで、荒っぽく扉が開く。


「またせたな」


 荒っぽい動作で入ってきたのは、スーツを着た恰幅のいい虎人らしき男性。

 動きが荒っぽく、どう見ても堅気には見えない。


「スノーフォックスのチェスターだ」

「カオスウィングのノーマン。よろしく頼む」

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