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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第218話 出発

 スティードが操る馬車が上下左右に揺れる。

 馬車は揺れるが、フラワーオウルに来た時よりは穏やか。

 乗り物に強い騎士でも酔うほど揺れたため、馬車にタイヤとサスペンションをつけたものに変わっている。

 今回は普通に乗っていられる。


「この馬車揺れないな」

「どうやって作るのでしょうか?」


 馬車の後方からチェスターとメイソンの話し声が聞こえる。

 馬車にはチェスターとメイソンが乗り込んでいる。

 メイソンが馬車を分解しそうなのを止めながら、チェスターに話しかける。


「チェスター、わざわざすまないな」

「鉱山は用事もなしに行く場所ではないので仕方あるまい。無事を祈るのは自分自身になってしまったがな」

「護衛はつける」

「期待している」


 村にどうやって入り込むかが問題だった。

 そこでオリハルコンやミスリルの買い付けという体で村を訪れる作戦を立てた。

 幸いながら俺は本当にチェスターからオリハルコンの武具を買おうとしている。実物を見たいという迷惑な客を偽装するのにちょうどいい。


「しかし、身分を偽装するため来てくれたのは助かるが、同行するのはチェスターの部下で良かったぞ?」

「残念ながら、オリハルコンやミスリルなど、希少金属の買い付けができるようなやつは限られている。二箇所で買い付けをしようと思うと、自分が出るしかあるまい」


 もう一箇所の村には別の鉱石を買い付けに行くというのを装っている。

 どちらの馬車にも複数の騎士が乗り込んでおり、戦闘になったとしても切り抜けられるだけの戦力がいる。


「メイソンもすまない」


 メイソンはチェスターが連れてきた。


「オリハルコンとミスリルの含有率を鑑定するため錬金術師は必要です」

「メイソンが必要な理由は聞いているが、危険なのは承知しているよな?」


 チェスターは多少戦えそうだが、メイソンは戦えない人の動き。

 戦闘になる可能性を考えると、本来なら連れて行きたくはない。


「ええ。危険なのは承知していますが、エリクサー・ラボラトリー関連は師匠に報告しなければなりません」

「チェスターから聞いた話だけでよければ良かったんだがな」


 メイソンがチェスターを見る。


「チェスターが含有率の鑑定までできれば良かったのですが……」

「錬金術を使えなければ大雑把にしか鑑定できん。含有率を鑑定できるかどうかで価格が全然違う」

「ですね。私は隅で大人しくしています」


 メイソンは戦闘に向いていないと自覚があるようだ。

 護衛対象として考えておこう。


「スペンサー、メイソンとチェスターの護衛を頼む」

「分かった」


 スペンサーが頷く。

 協力者であるスペンサーも同行している。

 チェスターがいるため連れて行くか迷ったのだが、スペンサーが自ら同行を願ったため、連れて行く。


「モーリスも気を配ってほしい」

「了解」


 モーリスはタッカー様の護衛も兼ねている。

 タッカー様は戦えるのだが、バンブータイガーから呼び寄せて協力をお願いしている以上、護衛を配置する必要がある。


 タッカー様はオリハルコンの武器を買いに来たという設定。

 俺がタッカー様にチェスターを紹介したという設定にした。


「タッカー様も無理はなさらないようにお願いします」

「承知した」


 さらには食事を用意するために料理人や、身の回りを世話する使用人、買い付けに来た商人など。皆、フラワーオウルに潜入している騎士。

 10人以上の人を集めたため、一台の馬車では足りずに複数の馬車を用意している。


 しかも、もう一つの村に行く馬車も途中まで一緒。

 4台の馬車が山道を進んでいる。


 今回は偵察のつもりではいるが、臨機応変に対応する。

 もし何かあっても対応できるだけの戦力は集めたつもりだ。それに別の場所で飛べる騎士が待機している。


「ところでアイザック、この馬車はどうなっているのです?」


 村での立ち回りを再確認していると、メイソンが尋ねてくる。

 メイソンの興味は馬車に行っているようだ。

 車内で実験されても困るので、素直になぜ大きく揺れないのか教えておくか。


「車輪にタイヤを取り付け、車体にサスペンションという物を取り付けている」


 タイヤとサスペンションの作り方を錬金術で実践しながら教える。

 俺が喋っている間にも、4台の馬車はゆっくりと首都を離れ、山の北側へと進んでいく。




 目的の村は近いのに遠い。

 直線距離にするととても近いのだが、山道を蛇行しながら移動すると倍以上の時間がかかっている。真っ直ぐ向かうには山を駆け下りるしかないが、馬車でやれば転げ落ちる。


 時間がかかるのは仕方がないと諦める。

 というかフラワーオウルでの移動は毎回時間がかかるため、いい加減に慣れてきた。

 皆と話しながら村に到着するまで待つ。


「泥炭の掘れる山が見えてきた。他の山と違うから見てみるといい」


 馬車を操っているスティードが声をかけてくる。

 わざわざ声をかけてくるほど珍しいならと、今いる山から北側を見る。


「山が草木で覆われているのか?」


 草木の生えた山とは、普通に思い浮かべる山の姿。

 しかし、フラワーオウルの山々は草木がほとんど生えておらず、岩が転がっている灰色の山。

 なぜか泥炭が掘れる山だけ草木が生えている。


「ええ。泥炭の掘れる山だけ、草木の生える特殊な山です」


 俺の疑問にメイソンが返事する。

 まさに特殊。


「メイソン、なぜあの山だけ草木が生えているんだ?」


 山から視線を外し、馬車の後ろに座っているメイソンの方を振り向く。


「師匠から理由はあるとは聞いていますが、私は理由を教えられていません」

「理由があるのか」


 興味から尋ねてみたが、理由がわかっているとは思いもしなかった。


「理由を教わりたいのなら、国家資格を取得しろと言われ諦めました」

「国家資格か……。聞くのはやめておこう」


 国家機密に当たるのだろう。

 ちょっとした興味から相手の不信を買うのは遠慮したい。


「その方がよろしいかと。山は兵士が警備しており、立ち入るのも限られた人のみです」

「山一つを警備しているのか」

「ええ。国の燃料を供給している唯一の山ですから、何かあれば大騒ぎになります」


 興味本位で近づくべきではないか。

 泥炭の元となるのは大量の植物。他の山同様に植物が少なくなってしまうと、泥炭が生産されなくなる。

 主要な燃料である泥炭が生産されなくなれば、大騒ぎになるのが想像できる。


「燃料といえば、魔石は使わないのか?」

「鉱山で使っています。採掘時に爆破させています」

「なるほど。鉱山で使っているのか」


 魔石は配合によっては爆発するが、泥炭は燃えるのみで爆発しない。

 鉱山で使うのなら魔石になるか。


「魔石を爆破に使った残りでは使い道が限られています」

「魔石を燃料にする道具が発展していないわけだ」


 フラワーオウルのダンジョン討伐頻度はスカーレットドラゴン王国ほど高くない。

 スカーレットドラゴン王国がダンジョン討伐のため、遠方まで遠征するのもあるとは思うが、遠征という意味ではそもそも国の大きさに差がある。根本的にダンジョンが発生する頻度が違う。


 ダンジョン発生の頻度から、スカーレットドラゴン王国では魔石を爆破に使っても余るだろうが、フラワーオウルでは魔石が余らないという計算ができる。

 フラワーオウルと同じような小国であるバンブータイガー共和国は、魔石が足りずにダンジョンに核を与えたわけだしな。


「フラワーオウルは燃料になる草木も少ないため、泥炭の掘れる山が重要です」

「無策で掘って枯渇すれば国が消えかねない。警備が厳重になるわけだ」


 希少金属であるオリハルコンとミスリルが採掘できるため警備が厳重なのだと思っていたが、どうやら泥炭自体が国家の戦略物資だったようだ。

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