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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第215話 幻覚と現実 side デュロック

 薬物と酒を合わせて飲んでいると家の扉が叩かれる。

 酔っ払って気持ちよくなった状態では出る気がしない。

 無視だ、無視。


 叩かれていた音が止むと、扉が蹴り破られる。

 蹴破られた扉から入ってくる光がまぶしく手で遮る。

 薬物により光に過敏になっている状態で、あえて蝋燭の火だけで薄暗くしていたのに。


 手で光を遮りながら、襲撃かと瓶のまま飲んでいた酒を置き、槍を手にしようとする。

 しかし、壊れた扉から入ってきたのはギャングの仲間。

 緊張が一気に抜ける。


「お前ら扉の使い方知らねえのかよ!」


 抗議した瞬間、虎人が近づいてくる。

 何をするのかと思っていると、急に胸ぐらを掴んできた。

 猪人の重い体が宙にうく。


「いるなら開けろ」


 どうやら機嫌が悪い。現実に引き戻される。

 酔ってぼんやりとした頭を働かせる。

 胸ぐらを問答無用に掴んで持ち上げたのは、チェスターの取り巻きをしている虎人。


 くそ! チェスターに対して暴言を吐いたのを密告されたか!

 少し暴言吐いたくらいで短気な野郎だ!


「何しやがる」


 胸ぐらを掴まれているため声が掠れる。

 相手を睨みつけながら、絞め落とされないように腕を掴む。

 こちらの抵抗など気にした様子もなく、虎人が顔を近づけてくる。


「デュロック、興奮剤を使っていやがるらしいな?」


 くそ! 興奮剤の方かよ!

 薬物が禁止のギャングで薬物使用はまずい。

 鼓動の早くなるのを落ち着かせようと息を深く吸う。


「興奮剤? なんのことだ?」


 とぼけようとする。

 声が掠れているのは先ほどと同じ。


「とぼけてんじゃねえ!」


 虎人は声を荒らげながら、顔がくっつきそうなほど顔を近づけてくる。

 一緒に入ってきた人が部屋を漁り始める。

 薬物や興奮剤をしまってある棚へ人が近づく。


 まずい、まずい!

 棚を乱雑に漁り始めた。

 もうどうしようもない。どうせ興奮剤が見つかれば終わり。


「とぼけてねえ! いきなりやってきて興奮剤とか意味わかんねえつってんだ!」


 身体強化を施し、虎人の腕を掴む。

 身体強化を施したと同時に身体中から痛み。折れた骨はくっついているが、まだ完治とはいえない。しかも大怪我を負った左肩から鈍痛。

 薬物と酒を飲んで誤魔化していたのに痛みが戻ってくる。


 ああ、くそ! 痛え!

 痛みを我慢しながら虎人の腕を握り潰そうと力を入れる。


「雑な身体強化しやがって、おめえ酒以外も何か使っていやがるな?」


 虎人はいつの間にか体に身体強化を施している。

 握り潰そうとした虎人の腕は健全。


「大怪我してんだよこっちは!」

「薬物入りの興奮剤使ってバカみたいに突っ込んで怪我したんだろ? 自業自得だろうが」

「根性なしどもが下がるからだろうが!」


 まだモンスターと戦えた。

 まだいけた。


「暗くて見えん。雨戸開けろ!」


 棚を漁っていた者の指示が飛ぶ。

 まずい。あえて締め切っていた。

 玄関の扉程度なら我慢できたが、これ以上の光はまずい。


 止めようとするが、止める間もなく雨戸が開けられた。

 明かりが一気に入り込む。

 目に太陽の光が入って、目の前に光が飛び散る。


「あ?」


 体の平衡感覚がなくなる。

 凄まじい勢いで時間が伸びて行く感覚。

 薬が効きすぎ……て……。


「おい! デュロック! 返事しろ! おい! 泡吹いてんじゃねえ!」


 何かが叩かれる音と共に、誰かが呼んでいる。

 誰だ?


 目の前にモンスターがいる。

 初めてみるモンスターだ。三角形の耳で二足歩行している。

 人型は中層から現れるのだったか。

 ああ、そういえばダンジョンにいるのだった。


「がああああ」


 倒さねば。倒さねば。

 思いっきりモンスターに殴りかかる。


「くそ! 完全に飛んでやがる!」


 モンスターはまだ動く。


「がああああ!」


 なぜか宙を舞う。

 あはははは!

 何度もモンスターに殴りかかる。


「締め落とすぞ」


 モンスターに絡みつかれる。

 手足を振り回すが、モンスターは離れない。

 徐々に光が消えていく……。


「やはり酒以外に薬物を使っていやがるじゃないか」


 そうだぞ?

 気持ちいい……。




 息ができない!

 大きく息を吸って飛び起きる。

 上半身だけ起こして周囲を見回す。


「ああ?」


 周囲を見回すと廃墟のような場所。

 壊れた家具を見ると自分で買った家具だと気づく。


「…………ああ、仲間から襲撃されたんだったか」


 身体中が擦り傷だらけ。

 襲撃された記憶を取り戻したからか、身体中から痛みを感じてきた。


「ああ、痛え……」


 怪我が治るまで家で大人しくしていようと思ったのに、まさか襲撃されるとは思いもしなかった。

 しかも襲撃してきたのは仲間。


「いや、もう仲間じゃないか」


 残っている記憶は断片的だが、仲間をモンスターと勘違いして暴れ回ったのはうっすらと覚えている。

 完全に薬物をやっていたのは知られてしまった。

 薬物を置いていた棚は跡形もなく壊されている。


「くそ!」


 どう見ても薬物は残っていない。

 痛みを抑えるために買ったというのに、むしろ痛みを増やす結果になった。

 家の床に再び寝転ぶ。


 なぜかほどんど残っていない魔力で体を治していく。

 寝転びながら魔力でじっくりと体を治していると、天井に夜空が見える。

 夜空は雲が多いのか星がまばら。


「はあ? なんで天井に穴が空いている?」


 どうやったら天井に穴が開くんだ?

 おそらく自分で壊したのだろうが、どうやって壊したのか全く記憶にない。


「くそ! 穴の空いた家じゃ、どうやっても住めないな」


 魔力が尽きたところで、痛みは先ほどと変わらない。

 根本的に魔力が足りていない。

 元々数ヶ月は治療に専念せねばならない傷だったが、今回の襲撃で治療までの期間はどう考えても伸びた。


「痛え……」


 しかし、なんで薬物を使っていると知られた?

 普段は皆がいるような場所では酒しか飲んでおらず、薬物は用心して家でしか使っていなかったというのに。

 どうやって知られた?


 痛みについ薬物を探してしまう。

 痛いのは嫌いだ。槍を使っているのも怪我の頻度を下げるため。

 元々は怪我をした時の痛み止めにいいと教わって使い始め、興奮剤にまで手を出した。


 怪我するような危険に近づかねば大金が稼げない。

 どうしても痛みの恐怖から一歩引いてしまう癖を興奮剤で補っていた。


「しかし、痛え……。医者に……! あいつか!」


 スカーレットドラゴン王国から来た竜人を思い出す。

 ダンジョンで興奮剤による効果で絡み、結局自分だけが大怪我を負った。

 大怪我を負った自分を運んだのは竜人。竜人は医者から何か聞いているはず。


「チェスターを紹介した恩を仇で返しやがって!」


 金にならないどころか、自分が組織を追い出される状況。

 このまま家にいればまた襲撃される。

 今生きているのは運がいいだけ。


 痛む体を無理やり動かし、必要な物をかき集める。

 槍は壊されていた。仕方なしに隠してあった金を手に家から出る。

 家から出た瞬間、冷たい風が吹く。

 風の中に、土の濡れたような湿気た匂いが鼻につく。


「雨か?」


 上空を見上げると雲が星を覆い隠していく。

 本格的な雨が降りそうだ。


「くそが!」


 今日の宿を探さねばならない。

 痛む体に鞭打って早足に歩き始める。

 歩いていると宿より痛みが気になってくる。


 すぐに雨が降り始める。

 ギャングの縄張りを移動して、薬物を買っているギャングが縄張りにしている地区に入る。

 いつもの取引場所にずぶ濡れの状態で入る。


「デュロック?」


 取引場所には顔見知りの売人。


「薬を買いたい」

「もう使い切ったのか?」

「違う。使っているのが知られてギャングを追い出され、薬も全部捨てられた」


 売人がバカみたいに笑う。


「家なしで先に欲するのが薬かよ! 最高だ! 薬と家を用意してやる!」


 なぜか知らないが売人は自分の状況が気に入ったようだ。

お読み頂きありがとうございます。

明日、7/14日(月)の更新はお休みいたします。

15日(火)から毎日更新予定です。


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