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脳筋騎士のダンジョン討伐 〜毒を盛られた伯爵家の三男は脳筋貴族をやめて錬金術師になりたい〜  作者: Ruqu Shimosaka


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第216話 カオスウィング

 地図を手にチェスターの元に向かう。

 スペンサーが父親から聞き出した村の位置が書き込まれている。

 首都付近だけでも10を超える鉱山を元にした村があり、フラワーオウル王国の領土は至る所で鉱石が採掘できるようだ。

 そんなわけないが、適当に掘っても鉱脈に当たるのではないかと考えてしまう。


「スティードは首都以外も回ったのか?」


 隣を歩く馬人を見る。

 今日はスティードが同行している。

 フラワーオウルに来た時、馬車の御者として運転していたのがスティード。スカーレットドラゴン王国の騎士で、第二騎士団の同僚。


「山をいくつも超え、平地の先にある港の方まで行った。港は活気があって、雰囲気が全然違う」


 村を見に行くためにスティードを呼び寄せた。

 今回チェスターの元にスティードを連れてきたのは、俺がいなくなった時の連絡用。急にいなくなるのを考慮して、連絡が取れるようにフラワーオウル王国を移動しているスティードを選んだ。


「鉱山周辺に広がる村についてはどの程度知っている?」


 チェスターに聞く前にスティードに村について尋ねてみる。


「いくつか知ってはいるが、普通の村とは少し違うな。聞いた限り、村に住んでいる住人と、出稼ぎに来ている労働者で分かれているらしい。出入りが激しいのか、よそ者にも寛容といった雰囲気がある」


 住居としての村でもあるが、同時に労働のために来る場所でもあるか。


「見知らぬ人が入り込む余地があるか……」


 つまりエリクサー・ラボラトリーが入り込む余地がある。


「建物については、ここらの方が荒れているな」


 今いるのは路地裏。

 ゴミが散乱するだけではなく、建物が崩れている。


「俺もギャングの縄張りほど荒れている場所は知らないな」


 スティードは興味深そうに周囲を見回している。


「国の首都にこんな場所があるとはな」


 荒廃した通りを進み、ギャングのアジトとなっている建物に到着。

 今回は事前に約束を取り付けていたため、チェスターの元にすぐに案内された。


「そいつは?」


 すぐにチェスターからスティードについて尋ねられる。


「仲間だ」

「スティード・スタローンという。よろしく」


 チェスターが顔を歪める。


「お前ら何人いやがる」

「言えないが、スティードは御者でね」

「どうせ本業は別だろう」

「残念ながら教えられない」

「そんな体格のいい御者がいてたまるか」


 他の騎士と同様にスティードも鍛えているため、筋肉が発達している。

 違和感を持ってみれば気づく。


「体を鍛えるのが趣味でね」


 スティードが肩をすくめて流す。


「頭痛がしてきやがる。それよりなんできた?」


 チェスターの顔が歪む。


「俺が急にいなくなった場合を考慮して、スティードを紹介しにきた。報酬なしで逃げはしないので安心してほしい」

「そういう理由か。それなら歓迎だ」


 チェスターの顔の歪みがなくなり、安堵したように息を吐く。

 無茶な願いでもされると思っていたのだろうか?


「スティードの紹介以外にも、エリクサー・ラボラトリーについて分かった情報を聞きたい」


 チェスターが頷く。


「こちらはまず、デュロックを締め上げた」

「何かわかったか?」

「デュロックのやつは興奮剤以外にも薬物を使ってた。想像以上に薬物に浸かっていてな、まともに問答できない状態だった」

「ダメだったか」


 そういえば、まともにデュロックと会話した記憶がない。

 あれは俺だけに限った話ではなかったのか。

 デュロックから聞き出せるかと思ったが、まともに話ができないのでは何も情報が得られない。


「デュロックから聞くのが不可能なら、知っているやつから聞けばいい」

「どうやって知っているやつにたどり着く?」


 デュロックがどこから仕入れたのかわからない。

 調べようにもギャングの数が多すぎる。


「デュロックが持っていた薬物は全て壊しておいた。薬物にどっぷり浸かったやつならどうなると思う?」

「……手に入れるため動くのか」


 言われてみれば簡単な方法。

 重度の中毒者が我慢できるはずがない。


「その通り。デュロックを痛めつけるのはほどほどにして、動ける程度にしておいた」

「そんな方法、よく思いつくな」

「薬が抜けてもまともに喋らんのは経験済み。泳がせるのが一番効率がいい」


 チェスターの組織で薬物を使うのはデュロックが初めてではないか。

 チェスターやメイソンは比較的まともに見えるが、やはり構成員の中にはギャングらしい無茶苦茶な人もいるのだな。


「それでデュロックはどうなったんだ?」

「起きてすぐにカオスウィングというギャングの拠点に向かっていった」

「そのカオスウィングという組織は薬物を取り扱っているのか?」

「もちろん。というか薬物を全く取り扱っていないうちが珍しいんだがな」


 ギャングだものな、薬物を取り扱っていない方が珍しいか。

 むしろ取り扱っていない組織がチェスターのところ以外にもある方が驚きだな。


「カオスウィングにエリクサー・ラボラトリーがいるのか?」

「残念ながら、エリクサー・ラボラトリーについては確証を得るものはまだ何もない」

「すぐには調べきれないか」


 チェスターが首を横にふる。


「正直調べきれるかもわからん。うちよりカオスウィングは規模が大きく、構成員の人数も桁違いに多い」

「チェスターのところは小規模だったか?」

「ああ。うちはギルド員と錬金術師を抱えているため、武力と資金はあるが規模は小さい。カオスウィングのような大規模なギャングを調べるのにはあまり向いていない」


 調べるのに向いていないか。

 チェスターのところはダンジョンの低層で戦えるギルド員を複数抱えている。兵士が主体となるような階層でも戦えるギルド員は珍しかった。デュロックたち以外にも、構成員らしき人を見た覚えがある。

 反面、武力や錬金術を必要としない人員が少ないというわけか。


「俺たちも人員は限られている。他を探すしかないか」

「カオスウィングはうちが所属している同盟と敵対している組織ではあるが、うちが所属している同盟内にエリクサー・ラボラトリーがいないとは言い切れん」

「信用の問題となると、フラワーオウル王国にでも協力を願うしか思いつかないな……」


 個人的にはフラワーオウルも秘匿しないかと心配なのだが、信用しなければ調査が進まない。


「ギャングが潰れれば一帯が荒れるが、仕方がないか……。メイソンを経由してセオドア様に連絡を入れる」


 こちらからもフラワーオウル王国に協力してもらえるよう連絡を入れておくか。

 カオスウィングに対する対策は決まった。

 しかし、カオスウィングについてはわかったが、デュロックについて聞いていない。


「ところでデュロックはどうなったんだ?」


 チェスターが眉間に皺を作る。


「デュロックについてはカオスウィングに入れたのか、住む家を用意してもらったようだ」

「ギャングを抜けて、すぐに別のギャングに入れるのか?」

「普通は無理だな」


 元々の付き合いから入れたのだろうか?

 だが、薬物中毒者を仲間に入れるものだろうか……。


「違和感があるな」

「ああ。しかもすぐに街を出て行った」

「出て行った?」

「出て行った方向からして、鉱山のある村だと思うが確証はない」


 鉱山のある村。


「どこの村か追跡できていないのか?」

「追いかけさせていたのだが、交通量が少ない場所を追いかけるのは不自然で、途中で引き返したそうだ」


 チェスターに聞くため用意した地図を取り出す。


「どの村の方角かわかるか?」


 地図を覗き込んだチェスターが俺を睨む。


「お前、村を調べるつもりだったのか?」

「街の中は邪魔になるだろ?」

「こちらに気を遣ったのか。なるほどな」

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