全国ツアーへ
第九十八話
「全国ツアーへ」
ファイブピーチ★の全国ツアー発表は、大きな話題になった。
演歌。
ヘビメタ。
クラシック。
ポップス。
民謡。
ジャズ。
ロックバラード。
いったい何のバンドなのか。
誰にも一言では説明できない。
だからこそ、注目された。
ツアー発表の記者会見。
ステージには五人が並んでいた。
美香。
光子。
優子。
奏太。
小春。
MCが笑顔で尋ねる。
「ファイブピーチ★さんは本当に幅広いジャンルを演奏されますよね。お手本にしたバンドとかあるんですか?」
美香は少し考えて、マイクを持った。
「あります」
会場が静かになる。
「曲によってボーカルをチェンジするスタイルは、C-C-Bさんから影響を受けました」
奏太が続ける。
「激しいロックから、美しい旋律のバラード、クラシック要素を取り入れるスタイルは、THE ALFEEさんです」
小春も頷く。
「一曲ごとに世界が変わる感じが、すごく好きです」
優子が言った。
「ロックの激しさは、X JAPANさんから学ぶことが多いです」
光子が胸を張る。
「つまり、うちらは欲張りたい!」
美香がすぐ突っ込む。
「そこ、まとめ方雑たい」
会場が笑う。
MCも笑いながら言う。
「でも確かに、全部入ってますね」
美香は頷いた。
「ただ真似するんやなくて、五人の経験や声に合う形にしたいと思っとります」
優子も続ける。
「ファイブピーチ★は、五人全員が主役です」
奏太が言う。
「ギターが前に出る曲もあれば、鍵盤が引っ張る曲もある」
小春が続ける。
「光子ちゃんのベースが曲を支える時も、優子ちゃんのドラムが空気を変える時もあります」
光子がにやっとする。
「そして美香お姉ちゃんが全部回収します」
美香が苦笑する。
「回収係みたいに言わんで」
会場はまた笑いに包まれた。
記者が尋ねる。
「全国ツアーでは、どんな構成になりますか?」
美香は答えた。
「一部は、地元や家族、命をテーマにした曲。二部は、ロックやメタル、ポップス中心。そして最後は、五人で歌う曲にします」
優子が言う。
「演歌の直後にヘビメタもあります」
MCが吹き出す。
「そこはやるんですね」
光子が即答する。
「やります!」
奏太が笑う。
「お客さんの情緒は大変かもしれません」
小春が真面目に言う。
「でも、それがファイブピーチ★です」
その言葉に、美香は静かに頷いた。
「泣く曲も、笑う曲も、叫ぶ曲も、祈る曲も、全部やります。人の心って、ひとつのジャンルだけじゃないけん」
会場が少し静かになった。
そのあと、大きな拍手が起こった。
ツアータイトルも発表された。
ファイブピーチ★全国ツアー
「五つの音、ひとつの空」
初日は福岡。
そこから広島、大阪、名古屋、東京、仙台、札幌。
そしてラストは、再び福岡。
美香はステージ上で、静かに息を吸った。
かつて、音楽は自分を救ってくれた。
今度は、自分たちの音が誰かに届く番だった。
光子がマイクを握る。
「全国のみなさん!」
優子が続ける。
「ファイブピーチ★、行きます」
奏太が拳を握る。
「全力で鳴らします」
小春が微笑む。
「心に届く音を」
美香が最後に言った。
「五人で、届けに行きます」
拍手が、会場いっぱいに広がった。
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次回予告
ファイブピーチ★全国ツアー
「五つの音、ひとつの空」
初日は福岡。
演歌、ヘビメタ、クラシック、ポップス。
ジャンルの壁を越えた五人の音が、ついに全国へ響き始める。
次回、第九十九話
「福岡初日」




