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帰る場所~光の指す方へ  作者: リンダ


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再スタート

第九十六話


「再スタート」


 事故から半年。


 季節は冬になっていた。


 光子と優子は、年末には学校へ復学していた。


 まだ完全回復ではない。


 長い距離を歩くのは難しく、学校では車椅子を使うことも多かった。


 リハビリも続いている。


 定期検査もある。


 以前と全く同じではない。


 けれど。


 二人は確かに前へ進んでいた。


⸻


 そして、この日。


 全国ネットの大型音楽特番。


 久しぶりにトリプルピーチ★が出演することになった。


 スタジオには、


 歌手。


 アイドル。


 ロックバンド。


 芸人。


 俳優。


 タレント。


 そうそうたる顔ぶれが並んでいた。


⸻


 MCが紹介する。


「お待たせしました!」


「トリプルピーチ★のみなさんです!」


⸻


 拍手。


 歓声。


⸻


 ステージへ現れたのは、


 美香。


 そして車椅子の光子と優子。


⸻


 スタジオは暖かい拍手に包まれた。


⸻


 MC


「お帰りなさい」


⸻


 美香


「ありがとうございます」


⸻


 優子


「ただいまです」


⸻


 光子


「帰ってきたたい!」


⸻


 観客拍手。


⸻


 MC


「事故のあと、本当に心配しました」


⸻


 優子


「うちらも怖かったです」


⸻


 美香


「でも、たくさんの人のおかげでここまで来られました」


⸻


 会場がしんみりし始める。


⸻


 すると。


⸻


 光子が突然マイクを握った。


⸻


 光子


「ということで!」


⸻


 嫌な予感。


⸻


 美香


「みっちゃん?」


⸻


 優子


「やめたほうがよかと思う」


⸻


 光子


「うちら車椅子アイドルとしてデビューします!」


⸻


 一瞬。


 静寂。


⸻


 MC


「え?」


⸻


 光子


「坂道は苦手です!」


⸻


 芸人A


吹き出す。


⸻


 光子


「エレベーター大好きです!」


⸻


 芸人B


机に突っ伏す。


⸻


 光子


「あと病院のご飯、意外とうまかった!」


⸻


 会場。


 崩壊。


⸻


 ロックバンドのボーカル。


 椅子から落ちる。


⸻


 歌手。


 笑いすぎて涙。


⸻


 芸人。


 全滅。


⸻


 MC


「待って待って待って!」


⸻


 優子


「全国放送たい」


⸻


 光子


「知っとる!」


⸻


 美香


「だから怖いんよ!」


⸻


 観客も大爆笑。


⸻


 でも。


 光子は続けた。


⸻


「でもね」


⸻


 スタジオが静かになる。


⸻


「事故に遭った時」


⸻


「もう歌えんかもしれんと思った」


⸻


「もうステージ立てんかもしれんと思った」


⸻


 優子も頷く。


⸻


「でも」


⸻


「みんなが待っとってくれた」


⸻


「学校のみんなも」


⸻


「ファンのみんなも」


⸻


「病院の先生たちも」


⸻


「家族も」


⸻


 美香が続ける。


⸻


「だから」


⸻


「もう一回始めます」


⸻


 MCが聞く。


⸻


「トリプルピーチ★として?」


⸻


 美香は首を振った。


⸻


「違います」


⸻


 光子が笑う。


⸻


「人数増えた!」


⸻


 優子が頷く。


⸻


「今日、紹介したい人がおると」


⸻


 会場がざわつく。


⸻


 ステージ袖から二人が出てくる。


⸻


 奏太。


⸻


 小春。


⸻


 まだ少し緊張している。


⸻


 MC


「新メンバー!?」


⸻


 光子


「そうたい!」


⸻


 優子


「ファイブピーチ★です」


⸻


 拍手。


⸻


 美香が紹介する。


⸻


「ギター担当」


⸻


「大畑奏太」


⸻


 奏太が頭を下げる。


⸻


「よろしくお願いします」


⸻


「まだ勉強中ですが、一生懸命頑張ります」


⸻


 拍手。


⸻


 続いて。


⸻


「キーボード、シンセサイザー担当」


⸻


「大畑小春」


⸻


 小春が緊張しながら言う。


⸻


「皆さんに元気を届けられるよう頑張ります」


⸻


 さらに拍手。


⸻


 MC


「そして美香さんは?」


⸻


 美香


「ピアノが中心です」


⸻


「アコースティックギター」


⸻


「クラシックギター」


⸻


「トロンボーン」


⸻


「作詞作曲も担当します」


⸻


 会場から感嘆の声。


⸻


 そして。


⸻


 MC


「光子ちゃんと優子ちゃんは?」


⸻


 光子


「怪我が治ったらベース!」


⸻


 優子


「ドラムとパーカッションです」


⸻


 ロックバンドのメンバーが驚く。


⸻


「本格的やな」


⸻


 光子


「うちは低音担当たい」


⸻


 優子


「私はリズム隊」


⸻


 MC


「完全にバンドやん」


⸻


 美香


「そうなんです」


⸻


 光子


「トリプルピーチ★から進化しました」


⸻


 優子


「成長したと」


⸻


 MC


「どんなグループにしたいですか?」


⸻


 少し考えて。


⸻


 美香が答える。


⸻


「誰かが苦しい時」


⸻


「大丈夫って言えるグループ」


⸻


「一人じゃないよって伝えられるグループ」


⸻


 奏太も頷く。


⸻


「僕ら自身がそうやって救われたので」


⸻


 小春も続ける。


⸻


「今度は私たちが届けたいです」


⸻


 スタジオは静かになった。


⸻


 そして大きな拍手。


⸻


 事故。


⸻


 痛み。


⸻


 リハビリ。


⸻


 長い半年。


⸻


 それでも。


⸻


 音楽は終わらなかった。


⸻


 むしろ。


⸻


 ここから始まる。


⸻


 ファイブピーチ★。


⸻


 五人で歩く。


⸻


 五人で笑う。


⸻


 五人で歌う。


⸻


 その第一歩だった。


⸻


次回予告


 ファイブピーチ★始動。


 初めての新曲制作。


 美香が書く歌詞。


 奏太のギター。


 小春のキーボード。


 そしてリハビリを続ける光子と優子。


 五人が最初に届ける曲とは――


 次回、第九十七話


 「五つの音」

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