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帰る場所~光の指す方へ  作者: リンダ


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爆笑コント動画

第四十九話


「爆笑コント動画」


 みらいのたねの理事長は、美香が泣きながら歌を聴いていた姿を忘れられなかった。


 笑いで少し緩み、歌で涙が流れた。


 音には、届く力がある。


 その夜、理事長は一つの動画を開いた。


 山口の中学生カップル、湯田温也と上田郷子。


 二人は、ネットで爆笑コント動画を投稿していた。


 画面の中で、温也が全力で叫ぶ。


「うにゃ〜! あじゃぱー!」


 郷子が上品な顔で、しかし見事な間で突っ込む。


「温也くん、それ感情の迷子です!」


 職員たちが思わず笑う。


 理事長も笑った。


 だが、動画の最後に映ったものを見て、表情が変わった。


 山口第一中学校吹奏楽部。


 温也と郷子は、その部員だった。


 コントの後、体育館で演奏する場面が流れる。


 トロンボーンの明るい音、やわらかな響き。

 打楽器の鼓動。

 そして、低く温かく支える金管の音。


 理事長は、画面を見つめた。


「この音を……子どもたちに聴かせたい」


 翌日、理事長はスタッフたちに話した。


「山口第一中学校の吹奏楽部に、訪問演奏をお願いできないかと思っています」


 職員の一人が驚く。


「山口からですか?」


「はい。コントも含めて、子どもたちに届くかもしれない」


 美鈴も、その話を聞いて頷いた。


「美香ちゃん、昨日の歌で心が少し動いたと思います」


 優馬も言った。


「笑いと音楽、両方あるのは大きいですね」


 理事長は、動画をもう一度再生した。


 温也と郷子の掛け合い。


 そして、演奏。


「この子たちなら、押しつけずに届けてくれる気がします」


 一方、美香はその頃、フリースペースで光子と優子と座っていた。


 光子はまだ「うにゃ〜あじゃぱー」の研究をしていた。


「美香おねーちゃん、あじゃぱーには三種類あります」


 優子が指を三本立てる。


「びっくりあじゃぱー、かなしいあじゃぱー、ホークス負けたあじゃぱー」


 優馬が遠くから言った。


「最後のやつ、俺専用にせんで」


 美香は、また少し笑った。


 その笑い声を聞きながら、理事長は心の中で決めた。


 この子に、もっと音を届けたい。


 怒鳴り声ではない音を。

 責める声ではない声を。

 生きていていいと、言葉ではなく響きで伝えるものを。


 その日の夕方、理事長は山口第一中学校へ連絡を入れた。


 まだ返事はわからない。


 けれど、ひとつの種がまかれた。


 みらいのたねに、山口から音が届く準備が始まった。



次回予告


 みらいのたね理事長は、湯田温也と上田郷子の爆笑コント動画に目を留める。


 そして、その奥にあった山口第一中学校吹奏楽部の音。


 笑いと音楽なら、傷ついた子どもたちに届くかもしれない。


 山口へ送られる依頼。


 そして、温也と郷子に届く知らせ。


 次回、第五十話

 「山口第一中学校」

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