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帰る場所~光の指す方へ  作者: リンダ


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ばあばのピアノ、じいじのラッパ

第7話


「ばあばのピアノ、じいじのラッパ」


 綾菜と慶太郎が生まれて数か月。


 二人の生活リズムも少しずつ整い始め、春介と穂乃果、春海と水湊にも、ようやく「毎日が完全な戦場」という時期を抜ける兆しが見えてきた。


 そんな頃。


 爆笑発電所本社から、一つの提案が出た。


「そろそろ、みんなでお祝いしませんか」


 それは、綾菜と慶太郎のお披露目パーティーだった。


 美香は最初、少し迷った。


「まだ赤ちゃんやけん、大人数は大丈夫かな」


 春介も頷く。


「無理はさせたくないね」


 春海も同意する。


「短時間ならよかけど」


 そこで、爆笑発電所側も徹底して配慮した。


 会場は本社内の大ホール。


 授乳室。


 おむつ交換スペース。


 静かに休める個室。


 空調。


 照明。


 音量。


 すべて赤ちゃん優先。


 ライブ用の爆音は禁止。


 美香が真顔で言った。


「ファイブピーチ★の通常音量は絶対ダメよ」


 光子。


「じゃあ、変態メタルは?」


「論外」


 優子。


「聞く前に分かるやろ」


 奏太も笑う。


「今日は完全アコースティックですね」


 小春。


「赤ちゃん仕様でいきましょう」


 こうして、お披露目パーティー当日を迎えた。


⸻


 爆笑発電所本社。


 入口には大きなボード。


「綾菜ちゃん・慶太郎くん


ようこそ、爆笑発電所へ」


 その下には小さく、


「本日の主役は赤ちゃんです。大人は騒ぎすぎないようお願いします」


 と書かれている。


 光子がそれを見て首を傾げた。


「これ、誰向け?」


 優子。


「主にみっちゃん向け」


「なんでうち限定!」


 その後ろから美香。


「あと優馬お父さん」


 優馬。


「俺!?」


 美鈴。


「泣き声で主役を奪いそうやけん」


 優馬。


「泣く前提なん!?」


 開始前から、すでにいつもの調子だった。


⸻


 会場には、爆笑発電所所属のタレントや音楽仲間が続々と集まった。


 ファイブピーチ★。


 はなまるツインズ。


 ラフピース☆。


 ドッカンルーキーズ☆。


 HALF-TONE。


 MIDWAY。


 ODYSSEY。


 オデッセイ。


 FLOW LIGHT。


 ほかにも、爆笑発電所で活動するバンドやタレント、スタッフたち。


 音楽部門。


 芸能部門。


 スポーツ部門。


 制作スタッフ。


 長年、美香や春介、春海を知っている人たちも多かった。


 入口付近では、


「春介が父親かぁ」


「春海がお母さん……」


「双春がついに親世代」


 そんな声が飛び交う。


⸻


 そして、主役が到着した。


 まず春介と穂乃果。


 ベビーカーには綾菜。


 続いて春海と水湊。


 こちらには慶太郎。


 会場から自然と拍手が起こる。


 だが、誰も大声は出さない。


 美香が事前に、


「赤ちゃんびっくりするけん、拍手は優しめで」


 と全員に釘を刺していたからだ。


 ぱちぱちぱち。


 柔らかな拍手。


 美香とアキラも二人を迎える。


「綾菜、今日はいっぱい人おるよ」


「慶太郎も、びっくりせんでね」


 綾菜はきょろきょろ。


 慶太郎も大きな目で天井を見る。


 その様子だけで、優馬がすでに涙目になる。


 光子が気づく。


「まだ始まって一分よ」


 優子。


「史上最速ペース」


 優馬。


「孫……いや、ひ孫が二人並んどるとよ!」


 美鈴。


「分かったから静かに泣いて」


 会場から笑いが起こる。


⸻


 司会を担当するのは、爆笑発電所の若手タレント。


「それでは、綾菜ちゃん、慶太郎くんのお披露目パーティーを始めます」


 最初に美香が前へ出る。


 マイクを持つ。


「今日は、こんなにたくさん集まっていただいて、本当にありがとうございます」


 美香は綾菜と慶太郎を見る。


「春介と春海が生まれた時も、いっぱい祝ってもらいました」


「それが今度は、あの二人が親になって、その子どもたちまで祝ってもらえる」


 少し声が震える。


「人生って、本当に分からんね」


 会場が静かになる。


「昔のうちは、こんな未来があるなんて想像できませんでした」


 アキラが隣で見守る。


「だから今日は、ただただ嬉しいです」


「綾菜、慶太郎」


「生まれてきてくれて、ありがとう」


 大きな拍手。


 優馬、当然号泣。


 光子。


「はい、一回目」


 優馬。


「回数数えるな!」


 会場が笑う。


⸻


 続いて春介。


「僕も、父親になってまだ数か月です」


「毎日分からんことばっかりです」


 穂乃果が横で頷く。


「でも、母さんと父さんが俺と春海を育ててくれた時のことを思い出しながら」


「穂乃果と一緒にやっていきたいと思ってます」


 美香の目が潤む。


 春介が笑う。


「母さん、今度はそっちが泣いとる」


「うるさい」


 会場がまた笑う。


⸻


 春海も前へ出る。


「うちは慶太郎が生まれて」


「母さんが昔言っとったことが、やっと少し分かった気がします」


 美香。


「何?」


「寝顔見てるだけで、守りたいって思うんよね」


 美香は静かに頷いた。


「うん」


「でも、寝たと思ったらすぐ起きる」


 水湊。


「それは本当にそう」


 春海。


「夜中三時に巨大火山再噴火」


 美香。


「まだ火山ネタ続いとるん!?」


 会場、大爆笑。


⸻


 その後は、所属タレントたちから祝福が続く。


 はなまるツインズは、赤ちゃん向けに極限までテンポを落とした短い漫才。


 ひなた。


「今日は声量30%でいきます」


 みずほ。


「普段がうるさいみたいに言うな」


 すでに会場は笑う。


 ラフピース☆は、綾菜と慶太郎の名前をモチーフにした小さなイラストボードをプレゼント。


 ドッカンルーキーズ☆は、


「今日はドッカン禁止です」


 と宣言しただけで笑いを取る。


 HALF-TONEは、オルゴール調の短い祝福曲を演奏。


 MIDWAYとODYSSEYも、静かなコーラスで二人の誕生を祝った。


⸻


 そしてファイブピーチ★。


 美香。


 光子。


 優子。


 奏太。


 小春。


 今日はロックバンドではなく、完全アコースティック編成。


 美香がピアノ。


 光子が小さめのアコースティックベース。


 優子はブラシを使った軽いパーカッション。


 奏太はアコースティックギター。


 小春は柔らかなキーボード。


 曲は、


『二つの命への賛歌』


 かつて春介と春海の誕生と子育てを描いた曲。


 その旋律を、今度は綾菜と慶太郎へ向けて奏でる。


 美香は演奏しながら、何度も二人を見る。


 綾菜は穂乃果の腕の中で眠っている。


 慶太郎は水湊に抱かれ、ぼんやり音を聞いている。


 演奏終了。


 会場は静かな拍手に包まれた。


 美香はピアノの前で微笑んだ。


「この曲、まさか孫に聴かせる日が来るとは思わんかった」


 光子がマイクを持つ。


「美香お姉ちゃん」


「何」


「次は『四日違いの孫メタル』作る?」


「作らん」


 優子。


「BPM200で」


「赤ちゃん泣くわ!」


 奏太。


「育児支援になってない」


 小春。


「むしろ睡眠妨害」


 会場爆笑。


⸻


 その時だった。


 綾菜が目を覚ました。


「あぅ……」


 全員の視線が集まる。


 光子。


「しゃべった!」


 美香。


「まだ喃語よ」


 続いて慶太郎も、


「あー」


 優子。


「こっちも!」


 春海。


「二人で会話し始めた?」


 春介。


「四日違い会議」


 アキラ。


「議題はミルクかな」


 美香。


「平和すぎる会議やね」


 また笑いが広がる。


⸻


 終盤。


 集合写真を撮ることになった。


 中央に綾菜と慶太郎。


 その後ろに春介と穂乃果、春海と水湊。


 美香とアキラ。


 優馬と美鈴。


 光子と優子。


 さらにファイブピーチ★、タレント仲間、スタッフたち。


 カメラマンが言う。


「撮りますよー」


 光子が小声で、


「大おばちゃんって呼ばせんからね」


 優子。


「まだ言っとる」


 美香が吹き出す。


 春介。


「綾菜、最初の言葉決まったな」


 春海。


「大おばちゃん」


 光子と優子。


「やめて!」


 シャッター。


 その瞬間の写真には、全員が笑っていた。


 完璧な集合写真ではない。


 誰かは目をつぶり。


 誰かは笑いすぎ。


 優馬は涙目。


 光子と優子は抗議中。


 そして中央では、綾菜と慶太郎が何も知らずにきょとんとしている。


 でも、美香はその写真を見て言った。


「これが一番よか」


 アキラも頷く。


「うん」


 美香は改めて写真を見る。


 自分が作った家族。


 自分を支えてくれた家族。


 仲間。


 そして、さらに次の世代。


 帰る場所は、また少し大きくなっていた。


第7話 終


次回予告


 お披露目パーティーを終え、日常へ戻った二つの家族。


 綾菜と慶太郎は少しずつ表情が豊かになり、美香とアキラの家へ遊びに来る機会も増えていく。


 ある日、美香が何気なくピアノを弾くと、綾菜がじっと鍵盤を見つめる。


 一方、慶太郎はアキラが小さく吹いたトランペットの音に、満面の笑顔。


 美香とアキラは顔を見合わせる。


「……まさかね」


 音楽と笑いの遺伝子は、もう目を覚まし始めたのか。


 次回、第8話


 「最初に好きになった音」

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