あの時の男
貴族学園への入学まで残り1ヶ月をきった今日、私は森の中を歩いていた。フォッツも属しているこの森は世界で一番広大な森で、フォッツよりも東に世界樹、世界樹の南に精霊の里がある。私が今いるのは世界樹近くの森だ。こんな所まで来た理由は一つ、従魔を探しに来たのだ。世界樹付近は魔力濃度が高く、高レベル魔獣が多い。その為いい感じの子がいないか魔力探知をしながら、かれこれ一時間近く歩き回っている。
(なかなかピンと来る子がいないな。出来れば鳥型がいいんだけど、何かと便利だし。……おや?)
魔物でも魔獣でもない魔力が一直線にこちらへ走ってくる。ガサゴソと茂みを全速力で走ってきて姿を現した。このままでは思いっきりどつかれそうなので、あたるスレスレで回避し、茂みから出てきたそれに目を向け、口を開く。
「珍しいな、精霊は人前に滅多に姿を現さないのに。私に何か用でもあったのかな?精霊の里には近ずいてないと思うが。」
「その魔力、やはり貴方でしたか。やっと、やっと見つけました!」
「?」
狼の形をした精霊はこちらを向いてそう言う。言語をまともに使ってるのを見るに上位精霊だろうが、一体やっと見つけたとはどういう意味か。何となく嫌な予感がしたので後退りをしながら精霊を見据える。
(この精霊の魔力、どこかで……。)
「取り乱して申し訳ない。ずっと貴方を探して居たのです。この姿では思い当たらないでしょうから、出会った時の姿になりましょう。」
そう言うと狼型の精霊はもやに包まれながら、人型になる。その姿を見て私は思い出した。
「あぁ、あの時のやつか。やっぱり精霊だったんだな。」
「覚えていたのですね!えぇ、私は二年前教国で輩に絡まれていたところを助けてもらった者です。あの時は急いでいた為、礼も言えず去ってしまい申し訳ありませんでした。あの後教国に戻り、貴方の魔力を探してみたのですが見つからず、諦めていたところだったのです。」
(そりゃ、私は教国に住んでないから見つからないよな。)
「別に礼なんて求めてないよ。だけどあの時一緒にいたもう一人の精霊は無事なのかい?」
「なんと、私が精霊である事を見抜くだけでなく、私の同行者にも気づいていたとは。あの子は無事です。貴方が助けてくださったお陰で助かりました。二年前あの子が怪我をおってしまって、急いで森に帰っていたんですが、運悪く輩に絡まれてしまって困っていたのです。」
そう、二年前教国であったこの精霊は怪我をおった精霊を服の中に隠していたのだ。私はそれに気づき、応急処置をしようと思っていたが、警備兵から隠れた時にそのまま消えてしまったのだ。
(魔力探知をしても見つからなかったのは狼型だからか。)
狼型の精霊は足が早い。すぐに走って探知範囲外まで行った為見つからなかったんだろう。
「それで!私は貴方に恩を返したいのです。それは勿論あの子もそう思っています。」
「返される程の事はしていないよ。だいたい、もう一人の子はこの場にいないじゃないか。」
「いえ、彼もすぐにここに来ますよ。さっき呼んでおいたので。」
「え。」
ドォン!
私と狼精霊の横に上から何かが勢いよく降ってきた。砂埃を散らし、その姿を見てみると鳥型の精霊だった。精霊の魔力的にこの子が怪我をしていた子だろう。
「貴方様なのですね!私の危機を救ってくださったのは!」
「いや、だから……」
「本当に助かりました。ありがとうございます!」
目の前を飛ぶ鳥型の上位精霊は元気に言う。
(すごい良い精霊達なんだけど、すごい今邪魔。)
私は従魔を探しているのだ、精霊とのんびりお喋りしてる場合じゃない。二人には悪いが早くこの場を立ち去らせてもらおう。
「元気そうでなによりだよ。それじゃぁ私は用があるから失礼するね。もう重症をおったり、面倒な人に絡まれないようにするんだよ。さよなら。」
「「お待ちください!」」
去ろうとした瞬間二人から同時に服を引っ張られる。めんどくさい、ものすごくめんどくさい予感だ。転移して帰ってもいいが、従魔を見つけるまでは明日もその次もここら辺に来ることになる。その度に邪魔されてはたまったもんじゃない。ここはハッキリと言った方が良さそうだ。
「悪いが、私は従魔を探しているんだ。君達と戯れている暇はないんだよ。分かったら離してくれるかい?」
「ならば私たちを従魔にしてください!」
「そうです!そうすれば私たちは恩を返せるし、貴方も従魔を探さなくて済む、いい提案だと思いますが。」
「は、」
いやまぁ確かに精霊も従魔にはできるけど、流石に従魔になってもらう程の事はしていない。それに精霊とは今世はあまり近ずきたくない。今は興奮状態で気づいていないだけだろうが、二人が精縁に気づいたら間違いなく面倒だ。
(精縁を使えば精霊からいくらでも力を貸してもらえるだろうけど。あんまり使いたくない!使えば絶対に、ぜっったいに魔力を求められる。そんなの面倒だ!!)
「ダメですか、?」
「ぐっ、」
精縁とは、精霊達と深く繋がる縁。その縁は精霊からノア自身が愛されるのは勿論、ノア自身も精霊達を愛おしく思うのだ。その為ノアは精霊のお願いに弱い。
(そんな、自分の子供のような存在に、そんな目で見られたら、了承せざるを得ないだろー!!)
「……わかった。」
「ほんとですか!」
「ただし!従魔ではなく契約精霊としてだ。」
「「分かりました!」」
従魔と契約魔獣、精霊の違いは、従魔はただ主に呼び出された時に主の命令に従うだけの言ってしまえば傀儡のようなもの。だが契約の場合お互いの力で支え合い、一緒に戦うパートナーのような関係だ。まぁ、一部例外はあるが。
「はぁ、契約を結ぼうか。二人とも名前は?」
「私の名前はアスタルロイン、無属性上位精霊でございます。」
「私はセレントフッズ風の上位精霊でございます。」
「我が名グレーズ・ユトゥールの元、アスタルロイン、セレントフッズの二体の精霊と契約を交わす。私の精霊となれ、アロン、セズ。」
「それじゃ、帰ろうか。二人共。」
精霊にとって、精縁持ちの魔力はとんでもないご馳走です。その為欲しがる精霊しかいません。前世、ノアであった頃は魔力が有り余っていた+精霊からのお願いに弱かったので、お願いされたら魔力を思う存分あげていました。今のウルの魔力量は平均よりも遥かに多いものの、前世の1/70程度しかないです。なのでそんなにバカスカあげることは出来ないです。




