新年の式典
「ウル!そろそろ出ないと式典に遅れてしまうぞ。」
「申し訳ありません、遅れました。あれ、姉上は?」
「今回は婚約者と行くらしい。」
「そうですか、なら行きましょう。」
新年の式典、毎年年初めに国の中央の広場に集まり、王が挨拶をしその後各々近況報告等をする場である。
以前までは国民全員が参加していたが、人口も増え辺境に住んでいる者たちは来るのも大変な為、貴族以外の参加は自由となったのだ。そしてなんとびっくり、うちは由緒正しき公爵家である。
(まぁ、だから口調を気をつけないといけないんだけど。)
公爵家と言ってもそんなきっちりしたものでは無い。そもそもフォッツは身分制が無い国だ。なのに何故階級が分かれているかと言うと、昔他国に行く際まともな身分がなく断られた事があるそうで、それ以来国への貢献度と外交度が高い者たちに五階級を授けたそうだ。そのついでに、増えてきた民や領地の一部統制も任せたとか。皆王の負担や面倒事を減らせるならいいんじゃない?という感じで受けたそうだ。それに、いくら階級を与えられたと言っても貴族と平民に壁ができた訳でもない。いざこざが起きる事もなくみな仲良しなのだ。
(フォッツにはまともな教育機関が無いからな、昔の面倒事とは恐らく他国への学校入学の時に一悶着あったんだろう。今でこそ種族、身分差別はほとんど無いものの、昔は酷かったらしいしな。特に人間族はどうもこちらを敵視しできてたようだし。それも完全に無くなった訳でもなく、未だに-)
ガタンッ。
あれこれ考えてるうちに会場へ着いたようだ、うちの領地は中央からそう離れてない為転移ゲートではなく馬車で移動していた。
「じゃぁ、私達は陛下に挨拶してくるからウルは自由にしてなさい。」
「分かりました。」
(毎度思うがいくら貴族の参加が義務とはいえ、私は来る必要があるのだろうか。まぁ、他の公爵家の子と話して来いって意味なんだろうけど。)
公爵家はうちを含め三家、グレーズ家、デュイラ家、フィフェア家だ。私と同い年のデュイラ家長男ユリアスと二つ上のフィフェア家長男ロイル。二人とも私が八歳の時に知り合った。
(デュイラ家もフィフェア家もまだ来て無さそう。先に姉上を探すか。)
それにしても今年は昨年よりも参加人数が多い、どうやら中央周辺に住んでいる者たちが結構参加しているらしい。
(今年なんかあったっけな?にしても多すぎる、これじゃ人を見つけるのは苦労しそうだ。)
パチンッ!
広場全体に音が響く。姉上を探している間にどうやら陛下の挨拶の時間になってしまったらしい。広場は静まり、みなの視線が中央へ集まる。毎年広場の中央に浮遊し陛下は挨拶をするのだ。
「みな、集まってくれて感謝する。昨年も何事もなく平和に終われたこと素晴らしく思う。今年もまた、みなで国を守って行こうではないか。みなの活躍期待しておるぞ。」
広場に拍手の音が響き渡る。
「それと、みなに知らせておきたい事が一つ。我が娘第一王女チェルシーだ。今年ようやく八歳となり、みなに顔を見せることができた。これからよろしく頼むぞ。」
(あぁ、なるほどこれか。)
子供を社交の場に出すのは基本八歳から。第一王女が産まれた事は皆知っていたが、顔は知らなかったので見に来たのだろう。しかし、
「王女殿下可愛いわ!」
「なんと美しい。」
「きゃー!こっちを見てくださったわ!」
(すごい騒ぎようだな。だが確かに、流石月銀の精と言われる一族の子、綺麗な髪と目だ。)
月銀の精、フォッツの王家フォーグ家の血筋の者は全員美しい銀の髪と薄い青の瞳を持って生まれてくる為いつからか月銀の精と呼ばれている。ちなみにこんなに綺麗に髪も目の色も引き継ぐのは前世で私と一緒にこの星を創った十八番が、この一族の先祖に祝福を与えたからである。祝福を与えた理由を聞いたら、美形だったからあの遺伝子を途絶えさせる訳にはいかないでしょ!とか何とか。いや、子供出来なきゃ遺伝子残んねぇよと思ったのはどうやら杞憂だったらしい。
陛下の挨拶が終わったあと、姉上を見つけ姉上と婚約者殿に挨拶をし、少し広場の隅で休憩してたところに人影が二つ。
「やぁ、ウル。久しぶりだね、元気だった?」
「ロイ、アス二人とも一緒にいたのね。」
「うわぁ、その口調はもっと久しぶりだね。」
「俺らの前じゃ、そんな丁寧じゃねぇもんな。」
「仕方ないでしょ、私だって嫌だけど今は人目が多いから。」
「お前も大変だな、学園でもそうするのか?」
「グレーズ家の第二女って身分で入学するからそりゃね。」
「二人ももう十二歳か早いなー。」
そう、私ももう十二歳。貴族学園に行く歳なのだ。公爵家に産まれた者として、最低限の社交性の為他国の貴族学園への入学が義務付けられている。
「ロイはもう入学してるわよね?学園ってどんな感じ?」
「そうだね、」
「ちょっと待て、ウル防音魔法使ったからいつもの口調にしてくれ、もうそろそろ限界だ」
「……どういう意味だよアス。まぁそっちの方が助かるからいいけど。」
「で、説明していいかな?」
「頼むよ。」
「まぁ貴族学園だから、身分差別があるね。僕らは一応公爵家の子息子女だから心配は無いけど。座学は二人なら大丈夫だろう。実技は確定でダンスと乗馬、後は選択でもう一つ自分で選ぶ感じだね。まぁ、南大陸の学園だからそこまで種族差別は無いけど、一部の生徒がって感じかな。」
「ふーん。南大陸で種族差別があるとは思えないけど。」
「東大陸の奴らが通っててそいつらがちょっとね。」
「なるほどな。」
「なんで東大陸の奴らが通ってるわけ?東大陸は教育機関多いでしょ。」
「留学だよ。南大陸は技術が一番進んでるから。」
「そういうこと。それにしても実技にダンスがあるのか、だいぶ嫌かも。」
「お前そんなんで大丈夫かよ。」
「アスに言われたく無いんだけど?」
「そういえば今年学園に行くのって二人だけじゃないよね。」
「あっ、そういば。」
「そうだったな。」




