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夢想世界

「まさかお仲間がもう一人いるとは。まぁでも自ら出てきてくれて助かったよ」


 三人を拘束して少し経った頃、後ろから襲われた。

 ギリギリのところで回避し襲撃者と対面しているところだ。


「魔力も気配も消していたというのに避けられるとは。少し龍神を侮ってたらしい」

「ギリギリで殺気を感じたよ。そんなおぞましいナイフなんて持って、危ないだろう?」


 互いに敵を視界に入れたまま一歩たりとも動かない。殺気を感じたのも一瞬で、相手は冷静にこちらと会話をしてくる。

 会話をしていてもひしひしと感じる緊張感。少しでも隙を見せれば噛みつかれそうだ。

 隙を見せる気はない。だがそれは相手も同じ。


(隙がねぇ)


「正面からじゃ流石に無理か。仕方がない、ここはそいつらを回収して撤退としよう」


 襲撃者は言い終えると同時に即座に動き出す。

 速い。左目が使えないせいで目で追い切れない。

 だがいくら速くても三人も連れていくのは無理だ。それに彼らのいる場は重量が重くなっている。


「逃がすかっ!」


夢想世界(マイトピア)


 瞬間、襲撃者と三人そして私を囲む固有スキルが発動する。


 夢想世界(マイトピア)、それはウルが創るウルの為の空間。ウルの意のままに動き、ウルが絶対(ルール)の空間だ。


「その速さで気配を消されると厄介だ。君の魔力は吸わせてもらうよ。そう驚かないでよ、こっちだって少し焦ったんだから。まぁ一旦座って話そうじゃないか」

「……はは、なんだこの空間」


 私が魔力を吸うといえばこの空間は対象の魔力を喰らうし、座ろうと言えばこの空間は椅子を作りそこに座らせ固定する。

 景色も広さも天気も、何もかもが己の思い通りになる場所。

 食べ物も仲間も作ろうと思えば作れてしまう。本当に一生をここで過ごせてしまうのだ。もはや一つの小さな世界である。


 正直自分でもこのスキルがなんなのか、何処までの可能性を秘めているのかまだ測りきれていない。

 それにもちろんデメリットだってある。夢想世界(マイトピア)は外部との接触が一切出来ないのだ。

 ここに入る前に展開しておいた浄化の雨やスキル共有はそのままになるが、念話や精霊召喚等は一切できない。

 正直今の状況で連絡が取れないのはかなりまずいと思うが…まぁ少しくらいなら大丈夫だろう。


 とりあえずその事は一旦置いておいて、目の前に座らされている襲撃者を見つめる。


「さぁ、一番冷静そうな君に話してもらおうか。君達がこんな事をしでかした理由を。一体何が目的なんだい?大罪人よ」


 魔力を吸われ、体も意のままに動かないというのに、目の前の奴はにこりと微笑みながら答える。


「今抵抗したところで、魔力どころか命まで喰われて終いになるだけだ。どうせはくまで拷問でもなんでもするんだろ?ならこんなにお優しくしてもらっている今のうちに質問に答えるのが得ってものだ」

「へぇ、意外と賢いんだ」

「ふん、質問は目的と理由だったな。簡単さ、国への復讐だよ」


 目をギラつかせて彼は答える。その瞳にはたしかに強い恨みの念が籠っていた。

 そして必ず自分の願いを叶えるという欲。


「君たちの出身は東大陸で西大陸とは関係ないだろ?理解出来んな」

「西大陸の竜と獣人を操ってあの国を滅ぼしてやるんだよ。僕らを捨てたあの国を…!」

「滅ぼすってなんだよ!?聞いてないぞ!」


 ここで今まで黙っていただけの三人のうちの一人が声を上げた。

 仲間内で情報が共有されていなかったのか襲撃者を凝視している。


「俺らはただ、希少生物を売って金を稼ごうって…!」

「だから金ならいくらでも稼げるだろう。国を滅ぼせば残った国家予算が出てくるのだから」

「お前……」

「仲間内での話は後にしてくれるかな?まだこちらの質問は終わっていない」


 なんだか放っておくと言い合いになりそうな雰囲気だったので一度止めに入り話を戻す。


「それで、竜や獣人を狙った理由は分かったけど世界樹を汚染した理由は?自分達が何をしでかしたか理解しているのか?」

「竜や獣人に手を出せば守護者が黙ってないだろうと思って悩んでいたところに世界樹の汚染を提案されたんだよ」

「提案?」

「あぁ、西の守護者の第一優先は世界樹だからそちらにこれを使って目を向けておけば成功するだろうって」

「へぇ…」


 今回の件は他に黒幕がいてそいつによって事を大きくされたと見るべきだろう。そして恐らくその黒幕はあの奇妙な手紙の差出人。


「フィーナル大森林の魔法生物に手を出したのもお前達か?」

「森の生物?そんなんは知らないね。俺らが関わったのは世界樹と竜の谷、獣人だけだ」

「……」

「ていうかここまで話す気は無かったんだがなんでこんなにペラペラ話してるんだ?俺は」

「この空間の空気中に自白作用のある成分を含ませているからね。そのせいじゃないかな」

「なっ!そんなことまで出来んのかよ…」


 炎孤達の件はこいつらとは関係ない。黒幕が西大陸に来ていて直接関与した?でも一体何故。混乱を起こすなら世界樹汚染だけで充分なはずだ。

 計画が上手く進んでいるか見る為?いや、それも世界樹が汚染されればわかる事だ。黒幕の目的はなんだ。


「はぁ、とりあえず君達を拘束してみんなと合流するとしよう」

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