一方で
ウルに指示を出されそれぞれ行動に出た後、俺は言われた通りに暴れている母竜を鎮め始めた。
「はは、流石魔法生物界のトップ。魔力耐性強すぎて全然寝てくれねぇ」
飛びながら竜の攻撃を回避し、睡眠魔法をかけてみるがやはりなかなか効かない。
あまり気乗りはしないがウルが言った通り、強制的に気絶させるしか無いようだ。
「悪ぃな、恨まないでくれよ」
俺は次々と母竜を気絶させ、暴れていた母竜達を全て抑えた。
「痛ぇ、いくら身体が強化されてるからと言って流石に連続で複数体の竜を気絶する強さで殴るのはキツイな」
気絶させた母竜達を一箇所に集め鑑定スキルを使い、母竜達の状態を見る。
「凶暴化に近い状態だが、原因は呪いの類だな。大元があって、印をつけた奴を対象に呪うような呪具だな。この数なら印を一体一体消すより大元を破壊した方が早いな。探すとするか」
母竜達が目覚めてもう一度暴れることがないよう、広範囲に結界を張り大元の呪具を探す。
こういう系統の呪具は効果範囲が決まっているのでおおよその範囲を絞り、その範囲の中で人目に付きずらい場所から探していく。
「こっちはもう時間で解決するが、あの二人は上手くやってるだろうか」
竜の谷の問題を解決し、犯人を捕まえたところで状況は少ししか変わらない。世界樹自体を浄化しない限り、瘴気は溢れ魔物は出続ける。
正直こんな事をするよりも世界樹を浄化するのが一番の方法だと思うのだが
「ウルは何を考えているのか…」
たしかに世界樹汚染という大罪を犯した者を捕らえるのは大切だ。だが、そんなものは後から魔力を辿ればいつでも捕えられるはずだ。
自分が知らない情報もあるだろうが、それにしたって考えが読めない。最終的にどうやって世界樹を浄化するつもりなのだろうか。
呪具を探しながら考えを巡らせる。だが結局辿り着く考えは、よく分からないという疑問だけだった。
キファテッドが母竜達と対峙している同時刻。スヴィンもまたウルの指示通り動こうとしていた。
「叩き起して情報を聞き出せと言われてもなぁ。そういうのはあまり得意ではないのだが」
聞き出して欲しいと言われたのは小竜の場所と仲間の人数の二つ。
「…とりあえず起こすか」
既にウルによって拘束されているので、顔に水をかけ起こす。
「ぶわぁ!」
「お目覚めか?罪人よ」
「なんだ?俺は確か…」
気絶したショックで少し記憶がとんでいるのだろう。自分がどう拘束されたか覚えて無さそうだ。
少し周りを見た後にこちらを睨んでくる。
睨まれる筋合いは無いのだが。
「さて、二つだけ質問させて頂くよ。君の仲間の数は?小竜はどこへやった?」
竜人族であるスヴィンの眼は竜眼といい、本人が敵と認識したものに対して威圧を与える。
その威圧はスキルの威圧とは比べ物にならないほど相手に恐怖を感じさせるものだ。
ちなみにスヴィンはこの事を完全に忘れている。敵に対して竜眼は無意識に発動するからだ。
「あぁちなみに、お前に回答拒否権はないぞ」
スゥッと細められた目が相手をとらえる。
スヴィンとて怒っているのだ。育った場所をぐちゃぐちゃにされ、可愛がっていたリアリルもボロボロにされた。
(存在価値のない下等種が)
先程までこちらを睨んでいた男は段々と威勢がなくなり、体を震わせ少し呼吸が乱れていた。
そこまで怖い顔はしていないと思うのだが。
「は、話す!話すから、その目で俺を見ないでくれぇ!」
急に何にそこまで怯えているかは分からないが、話してくれるなら別になんでもいい。
「ならまずは仲間の人数から言ってもらおうか」
「な、仲間は俺を含めて五人。それと、俺達に道具を貸してくれた協力者が一人だ」
(五人だと?ウルが見たのは三人と言っていた。なら残り一人はどこに?)
「ちなみにその協力者はお前らと共に行動していたのか?していないならなにか特徴は…」
「ぐっ!あっ、、、がぁっ!、!」
「おい!どうした!」
突然目の前の男は苦しそうにしながら身体をうねらせている。
(なんだ?仲間の事を話したからか?遠距離からの精神系魔法か?いや、なら探知出来るはずだ。まさか、誓約魔法でもかけられていたか?)
「おい、しっかりしろ!」
「あい、つは、西大陸に、こだわ、、って、」
「…っ!」
苦しみ始めた原因も探りきれずに死なせてしまった。
「クソッ!小竜は何処なんだ!何よりまずいのは罪人とはいえ重要参考人だ。それをみすみす目の前で…!」
拳を思いっきり地面に叩き付ける。手元にあった唯一の情報源を無くしてしまったのだ。
「…今はこんなことをしている場合じゃない。過ぎたことは戻せん。早く小竜を探しにいかねば」
一度深呼吸をして自分を落ち着かせる。これではウルのことをとやかく言える立場ではない。
とりあえず小竜を探しながらキファとウルに連絡を入れなければ。
そうと決めたら早々に動こうと立ち上がり足を動かした瞬間後ろから声がした。
「小竜の、居場所なら、、私、わかってま、す」
声の方に顔を向ける。
「リアリル!」
そこには先程まで眠っていたリアリルが立っていた。
「立って大丈夫なのか?まだ休んでいた方がいいのでは」
「大丈夫です。それよりも、早く小竜達を、迎えに行かないと」
かなり深手を負っていたはずなのにもう目覚めるとは。だがまだ完治しておらず、塞がっていない傷が多い。
立ち姿もふらふらしていて危なっかしい。
「まだ動くのは危険だ。場所だけ教えてくれれば向かうから休んでいるんだ」
「いえ、私が行かないと、ダメ、、なんです。お願いします、私を連れていってください」
まだ呼吸も安定していないしふらふらなのに、その目には確かな決意が見えた。
「……はぁ、分かった。連れていこう。お前を運ぶから案内してくれ」
「はい!」
リアリルを担ぎ案内通りに飛んでいく。言われた場所に向かいながら念話をする。
『こちらスヴィン。今から小竜が居ると思われる場所に向かう。そっちの状況はどうだ?』
『俺の方は母竜を片付けた後、母竜達が暴れる原因となった大元を見つけて今解析中だ』
『そうか。そういえば仲間の人数をはかせたが五人と言っていた』
『五人?捕まえたやつ一人とウルが追った三人だけじゃなかったのか』
『あぁ、どこかにまだ一人いるはずだ。気をつけてくれ』
『分かった。それよりウルの方はどうだ?』
『……ウル?』
待てども待てどもウルから返事が返ってこない。この念話はウルのスキル共有によって繋がっているものなので、スキルが共有されているうちは念話自体は繋がっているはずだ。
なのに何故返事が返ってこないのか。
『まさか……』
いや違う。スキルも共有されたままだし雨も降り続けている。だから大丈夫だ。何も無い。きっといつものように集中して聞いてないだけだろう。大丈夫だ。大丈夫に決まってる。あいつが負ける事はない。
少しすればあちらからなにか言ってくるだろう。
だから、待っていればいい。
(そうだよな、ユトゥール…)
少しずつ更新していきます。ですがペースは以前に比べてかなり落ちます。ご了承ください




