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教皇

 聖域へ向かうアロンの後ろ姿を見送ったあと、ウルは世界樹の近くで魔力残滓を探していた。

 世界樹を汚染した方法は分からないが何か痕跡が一つでも残っていればあの三人を追える。

 盤面操作の範囲はフィーナル大森林だけに限定していた。見失ったということは森の外に転移した可能性がいちばん高い。

 なので転移魔法を使った跡を探しているのだが、中々見つからない。


「世界樹を一気にここまで汚染したり、急に消えてその痕跡も無くしたり。一体どんな奴らだよ」


 厄介なスキルか何かを持っているかもしれないと思い、見つけた時の対処法を考える。

 ただ拘束するだけではダメそうだ。


「ダメだな。ここで痕跡を探し続けるより、移動しながら怪しい黒丸を探す方が良さそうだ。ついでに教国にも寄るか」


 大森林内は全てスキルで見ているので教国に転移してもいいのだが、見落とす可能性もあるので飛行魔法で移動する。


 教国に着き、向かったのは中央神殿。教皇のいる場所だ。


「オルド、居るか?」


 神殿の周りや中は混乱した人で溢れていたため、いつも教皇が居る場所へ転移する。

 だがそこに教皇の姿は見えず、別の場所へ向かいながら教皇を探す。

 探している最中に他の誰かに出くわしても大丈夫なように口元にヴェールをつける。


「オルド!」

「龍神様?」


 教皇が居たのは祭壇のある場所で、教皇であるレリアン・オルドは私を見て目を見開いた。


「龍神様、一体何が起こっているのでしょうか。街に瘴気が溢れ、国民は皆混乱しております」

「すまない、今は緊急事態だ。詳しい説明は出来ないが、瘴気は世界樹の大規模汚染によるものだ。頼む、力を貸してくれ」

「世界樹が、汚染されたと、?」

「ショックかもしれないが今は一刻も争う。教国に所属する聖職者達の力を貸して欲しいんだ!」


 世界樹の汚染と言う単語に教皇は顔を青くし、少し放心しているようにも見える。

 時間が無いため教皇の肩をつかみ顔をぐいと近づけ意識を取り戻させる。


「聖職者達を集めてこの玉に浄化魔法を集めてくれ。私の浄化魔法じゃ濃度が足りないのだ」

「これはまさか!?」

「周辺に強力な防護結界を張る。くれぐれも丁重に扱ってくれよ?私の半身なんだ」


 私が教皇に渡したのは神核の半分だ。

 欠けて離れる事で龍神としての力は弱まるが、魔力線だけは繋がっている。

 この玉に浄化魔法を集めてくれれば、魔力線を操り今降らせている雨に繋げ、雨の浄化濃度を濃くすることくらいなら出来る。



「こんな状況でこんな事危険すぎます!」

「少しでも事態を良くするにはこうするしかないんだ。今はこれ以外思いつかない。君達にしか頼めないことなんだ。頼むよ、大陸最高の聖職者が集まる国よ」


 教皇の目を真っ直ぐ見つめ、玉を差し出す。

 教皇は少し苦い顔をしたが、すぐに私の目を見て仕方の無さそうな顔をした。


「我らのようなただの大陸民に、貴方様の意志を否定することなどできません。龍神様直々の頼みとあれば尚更。分かりました、引き受けましょう」

「立派な教国の長がただの大陸民だって?面白いことを言う。ふっ。頼んだよ、世界最高の聖職者様」


 教皇に玉を渡し、神殿を後にする。


 レリアン・オルド。彼の浄化能力は優れた聖職者が十人集まりやっと並べるほどのものだ。彼を超える聖職者は居ない。歴代最高の浄化魔法使い。


「是非長生きして欲しいものだ」


 神殿を後にしてからしばらく周辺を調べたが、ここにも怪しい黒丸は無い。

 残るは大陸の西側。竜の谷や獣国があり、卑しい人間共が悪意をもって近ずく場所。


(だが、狙いがあれだとしても何故ここまで事を大きくする必要がある?)


 そんな事考えたって罪人の思考など読めるはずもない。読めたとて理解できない。

 今までだってそうだった。国からの要請で、自分の目的のために他人を利用し踏みにじる輩達の頭の中を覗いたことが何度かあったが、どいつもこいつもクズばかり。私には到底理解できない理由でくだらない事を犯した者たちだった。

 今回もその類の輩とはまだ分からないが、どうせつまらん理由でこんな事をしでかしたに違いない。


「こんな大事を犯し、楽に死ねると思うなよ」


 発声して気づく、自分の声にかなりの怒気が含まれていることに。

 思ったよりもこの事態に私は怒っているらしい。


 本来は違う魂が違う生を歩むはずだった身体。

 偶然入ってしまったに過ぎない。

 最初は自分に火の粉さえかからなければ他の者などどうだってよかった。

 自分は創造者で、この世界で関わった者たちにする情などないと思っていた。

 だがどうやらその考えは的外れだったようだ。

 自分は思ったよりも、今の生活を今世で関わった人々を気に入っているらしい。


 そんな自分の大切に手を出されたのだ。

 ならば、それ相応の罰を与えてやらねばなるまい。


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