それぞれの動き
時は少し遡り、北の守護者が各守護者達に連絡した後。
自宅に居たクルーヴはキファテッドからの連絡を受け、外に出て状況を整理していた。
世界樹の大規模汚染によって溢れ出てくる瘴気。それによって土地が汚染されるのを最優先で防がなければならない。
溢れ出てくる瘴気によって土地が汚染されれば更に瘴気は濃くなるし、植物にも影響を与えてしまう。
南の守護者の能力は地を制し、武を司る。
力を使って土地の汚染を防ぐことは出来るが、瘴気の侵食を根本的に解決することは出来ない。
できれば西の加勢に行ってあげたいが、自分の力ではそこまで余裕は生まれないだろう。
自分が出来るのは、地を制しながら浄化魔法を流し入れる事だけだ。
「浄化魔法が得意でよかった。キファのように時を操ることは出来ないが、それでも時間は稼げるだろう」
自分は残念ながらここを離れることは出来なそうだ。
だからただ願うしかない。
「頼むぞウル。スヴィンが自慢していた君の実力、見せてくれ」
そして同時刻、同じくキファテッドより連絡を受けたレソトシアは師と合流していた。
「お師匠様、世界樹が汚染したって。僕は一体何をすればええの?」
少し混乱した様子でシアは師匠へと視線を送る。
「落ち着け。今神核を持ち、東の守護者として活動しているのはお前なんだ。だから俺はあくまでサポートしか出来ない。俺は島国の方へ行って生まれた魔物共を消してくる。お前は本大陸の方で魔塔主に協力を要請し片付けろ。幸い東大陸はほぼ人族しか居ない、ほかの大陸と違って魔法生物への注意をそこまでしなくていい、だから瘴気と魔物だけに集中しろ」
「でも、妖精族は…」
「彼らなら大丈夫だろう。賢く敏感な種族だ、もう瘴気の影響のない所へ逃げているはずだ」
「そうですね。分かりました、とりあえず魔塔に行ってきます。お師匠様、どうか気をつけてください」
「お前もな」
そう言って師匠と別れシアは魔塔へ向かった。
魔塔主であるリング・エスタは守護者達が動き始める前に異変に気づき、魔塔に所属する魔法士達を動かしていた。
「なんだ?何が起きているんだ。森の中ならともかく、普通の街中にまでこんなにも濃い瘴気が溢れ出ている?」
「エスタ!」
目の前に転移してきた自分と全く同じ容姿をしているこの男は僕の弟で、先程他国へ調査を命じ向かわせていた。
「テイラー。なにか分かったかい?」
「他の国も同じように街中や川や平原関係なく瘴気が出てた。何カ国か回ったがどこも同じだ、島国の方は分からねぇがもしかしたら大陸全土に瘴気が溢れてるのかもしれねぇ」
「そんなまさか…本当にそんな事が起こっているのなら、世界樹に何かあったとしか」
「その通りや」
テイラーからの報告を聞き、最低限の情報を整理しつつ推理をしているとどこからか声が聞こえてきた。
姿が見えるより先に僕の推理を肯定する。
一体何者なのか。
「誰だ!?」
テイラーが警戒し円形結界を張る。
「すまんな、変に警戒させてしもうた。僕は蛇神。魔塔主、君に協力して欲しいんや」
僕ら二人の前に転移してきた彼は自分を守護者様だと言う。
(魔力量から見て、本当だと信じたいが)
「申し訳ありませんが何か確証を得る事をして貰えませんか?混乱に乗じた詐欺師の可能性もあるので」
「ま、急に現れてこんなこと言ったて確かに信じへんわな。僕と君は挨拶しとらんかったし。ま、見とき」
そう言って彼は少しだけ僕らから離れて何かの詠唱を始める。
「我と契約せし蛇よ、契約に応じその力を貸したまえ海を制するものよ知恵を司るものよ我にその権能を与えくだされ、我が名は蛇神、東の大地を守りしものである」
詠唱が終わった途端、彼の魔力量が跳ね上がる。
僕とテイラーが顔を見合せている間にこちらに近づいた彼が言う。
「見ときって言うたけど、僕あんまり見た目変わらんの忘れとったわ」
「いえ、流石にあの詠唱と詠唱後の魔力量増加、そして何よりそのお顔に浮き出た鱗を見れば本物だと分かります。無礼をお許しください」
「ええねんええねん、警戒は大事やからな。それより魔塔主君、君の部下達には浄化よりもこれから出てくる魔物の討伐を優先して欲しい」
「ですが、浄化しないと土地が」
「いや、それより今一体何が起こってるんですか?さっき世界樹に何かあったとエスタが言った時にその通りって」
テイラーが話に割って入ってきた。
そういえばまだ状況を話されていない。
「せやったな。簡潔に説明するで。今、世界中に瘴気が溢れ出てる、その原因は世界樹が大規模汚染されたからや。だから溢れ出続ける瘴気の浄化より、限られた魔力しか使えんのなら魔物討伐の方がええんや」
「「なっ!?」」
明らかな異常事態だとは思っていたがまさか世界樹が大規模汚染されているなんて誰が想像できるだろうか。
ともかく、瘴気が出続けるのなら言われた通り魔力を温存して魔物討伐をした方がいいだろう。だが、
「蛇神様もわかっておられるはずです。東大陸は別名豊穣大陸。土地が汚染されれば多大な影響が!」
「安心せぇ、浄化は僕がする。そこまで得意ではないけどやらんより百倍マシや。すまんな、本来は討伐も僕がやるべき事なんやけど、何せまだ力をまともに使ったことがないんや。やから、君らの力を貸してくれ」
蛇神様はまだ代代わりしてから数年しか経っていない。僕が魔塔主になったよりも後に就任したというのに、こんな状況でも冷静に指揮出来るのは流石知恵を司ると言われるだけのものだ。
「分かりました、我々魔塔の魔法士は魔物討伐に集中致しましょう」
「あぁ、頼むで」
僕はテイラーと共に瘴気濃度が高い場所へ向かいながら部下に指示をだす。
蛇神様と離れて暫くしてから雨が降り始めた。
どんよりした空気ではいたが曇ってなどいなかったのに。よく観察すると雨には微量の浄化魔法がかかっていた。
一体誰がこの雨を降らせているのだろうか。
「この雨の魔力、まさか…」
東大陸に雨が降り始めたと同時に北と南大陸にも同じく雨が降る。
「っ!この雨は!」
「はは、まさかここまでとは」
視点はクルーヴ→レソトシア→魔塔主→レソトシア→キファテッド→クルーヴ
です




