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龍神獣の力

「さぁ、こっからは守護者の力を使うとしようか」


 守護者には各々力がある。

 そして龍神獣の力は空を制し、空間を操る。

 神核の力を引き出せば豪雨を呼ぶのは簡単だ。


「我と契約せし龍よ、契約に応じその力を貸したまえ(そら)を制すものよ、(くう)を操るものよ、我にその権能を与えくだされ、我が名は龍神、西の大地を守りしものである」


 これは神核の力を引き出すための詠唱だ。

 途端、私の髪は黒く染まり、目は紫色に変色する。頭には龍の角が生え、魔力も倍くらい増えた。

 

 私は力を使い豪雨を呼んだ。

 これでもう炎が燃え広がることはないだろう。

 あとは時間が経って鎮火するのを待つだけだ。

 このまま弱った炎孤を止めに行ってもいいが、フォッツが少し心配なのでそちらを見に行く。

 フォッツに向かうと中、ファルフの群れを見つけた。あの群れもフォッツに向かっているようだ。

 なぜファルフ達がフォッツを襲うのかが分からないがとにかく止めなければ。


(この群れは……)


 群れに近づいて気づいたがこの群れは凶暴化していない。それにこの群れの魔力を知っている。


「ウェス!」


 私は群長に呼びかける。


「守護者様、ご無事でしたか!」

「何があった?何故フォッツに向かっている?」

「群れの者から凶暴化したファルフ達がフォッツ方向に向かっていると聞いたので、何か手伝えないかと」

「危険だ、君達は安全な場所に避難するんだ」

「ですが、今森はどこも安全とは言えません。ならばせめて自分達にできることをと思ったのです。それに守護者様が一番大変でしょうから少しでも別の所の対処へまわれるようにと」

「……」


 確かに今は少しでも人手が欲しい。

 私が直接指示できる者なら尚更。

 ここで私がフォッツに行き戦力が偏りすぎるよりは、いいのかもしれない。


「……お言葉に甘えて力を借りよう。悪いがフォッツを頼む。君達の事は私から伝えておこう」

「お任せ下さい」


 ウェス達に任せ、私は炎孤の対処へ向かう。

 ウェス達がいればフォッツの防衛戦力は十分だろう。


『アロン、そちらに今からファルフの群れが行くがその群れは味方だ。みなにそれを伝えておいてくれ』

『了解しました。主様はお一人で大丈夫ですか?』

『大丈夫だ。私は今から炎孤の対処に向かう。何かあればすぐに報告しろ』

『はっ』

『セズ、西側は何も無いか?』

『えぇ、今の所特に何も無いです。やはり私もそちらに加勢を』

『いやいい。まだ見張っていてくれ』


 念話で指示を出しながら炎孤のいる一箇所目の場所に着いた。

 神核の力を引き出している時は身体能力も上がるため力加減を気をつけながらじゃないと、炎孤達を必要以上に傷つけてしまう。


(こんなことになるなら、凶暴化解除の魔法でも作るんだったな。そっちの方が百倍楽だ)


 凶暴化は自然に収まるのを待つか、浄化魔法をかけるかで治る。

 私は浄化が不得意だ。その為無駄に魔力を使ってしまうし、時間も掛かる。

 先程のように魔力封じの枷を使ってもいいが、いちいち作って着けてをする時間もない。

 それに鳥型とは違い炎孤やらは枷を着けるのも一苦労だ。

 だったらまだ不得意な浄化の方が時間や手間がかからない。

 一体一体に丁寧にかけていくのは非効率なので、広範囲に浄化魔法を展開する。

 浄化を発動し一斉に凶暴化を治す。


「くっそ、浄化魔法なんて大嫌いだ!」


 普段ならこの程度の魔法制御は簡単なのに、不得意属性という理由でやりずらくて仕方ない。

 フォッツが襲われてさせいなければ、フォッツの魔法使い達に頼んだというのに。

 鳥型魔獣によって炎がここまで燃え広がっていなければ教国に援助を要請できたのに。


 そんなこと考えたところで意味などなく、私は浄化しては炎孤のいる場所に移動し、また浄化を発動させていた。


「ふぅ、これで終わり…」


 最後の場所に広範囲浄化を発動し、炎孤の処理が終わった。

 フィーナル大森林全域へのスキル展開と鳥型魔獣の処理、神核の力を借りて天気を変え、その後広範囲浄化魔法。

 流石に疲れた。魔力も十分の一程消費しただろうか。

 だがまだ全て終わったわけではない。フォッツが心配だ。早く様子を見に行かないと。

 転移する前に姿を元に戻し、転移しようとした瞬間アロンから念話が来た。


『主様!騎士団長殿が!』


 念話が来た瞬間、転移場所をアロンの座標へずらし転移する。


「何事だアロン!姉上がどうか…したの…か……」


 私の目に写ったものは、右腕を失くし、腹に深い傷を負って倒れている姉上の姿だった。


「……っ!!おい!この隊の治癒魔法士は!」

「……申し訳ありません。フォアリア卿。私の力では、もう…」

「団長殿は二体の強化個体を引き連れて戦っていたのですが、途中で少し空魔が乱れ、魔力探知が出来なくなった途端に背後から別のファルフに襲われ、少し体制を崩した時に…」

「空魔が乱れた途端だと?それはまるで…」


(まるでそのファルフが操られていたようではないか)


 こんな状況なのに、戦況の報告による分析だけは冷静で嫌になる。


 姉上を救うにはどうすればいい?先にそちらを考えなければ。戦況分析など後でいい。今はこちらに頭を使え。

 何故、何故こちらは冷静に分析出来ない。

 まだ姉上は息をしている。まだ間に合う。

 だけど、この傷を治せるほどの治癒魔法士はここには居ない。

 このままじゃ間に合わなくなる。どうすれば…


「落ち着いて、ウル。貴方は一人じゃない。仲間が居る 」


 ハッとする。姉上が別れる前にくれた言葉だ。

 一度落ち着け、私。混乱する暇があるなら頭を回せ。方法がどこかにあるはずだ。


 前世も今世も治癒拒絶体質で使おうと思わなかった。だけど、一つだけ心当たりがある。

 やれるかどうかは分からない。

 だけど、やってみないと分からない。

 私は姉上の横に座り、前世の記憶を頼りに詠唱を始めた。

 

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