凶暴化
「は、はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
魔獣が凶暴化して森を荒らしてるってどういうことだよ。
しかも多種族同時に!?
「詳しい情報はまだ掴めてなくて、ウル何か知らない?」
「ちょっと待ってください姉上。今念話で情報共有するので」
『アロン、大雑把でいいから情報を寄越せ』
『色んな種族の魔獣が同時に各地で暴れています。特に目立つのは狼型と鳥型と狐型で、炎孤の炎を上空から鳥型が風で広めて森が一部燃えてます!普段温厚なファルフ達もフォッツに向かいながら道中に居る他の魔獣達を襲ったりしています』
『ファルフがフォッツに向かってるのか?』
『ええ、そうです』
なんてことだ。
フィーナル大森林に住む中でも攻撃能力も知能も高いファルフがフォッツに向かい、別の場所で炎孤が暴れてる。
先にどちらを止めるべきだ?
フォアリアとして優先すべきはもちろん国の事。
そうなればファルフを止めなければならない。
だが炎孤の方を放置していれば大森林全体が燃えかねない。そうなれば被害はもっと増える。
どうすればいい、どっちから処理すれば。
頭の中が整理できずぐちゃぐちゃになっていると、肩に手を置かれた。
「ウル、落ち着きなさい」
「姉上…」
姉上は私の目を真っ直ぐ見て言う。
「ウルなら絶対に何とかできる。だって私の妹は凄いんだもの。ウルは一人じゃないよ、私達を頼って。きっと方法を見つけられるでしょ?だって貴方は強い魔法とスキルを持っている才能に溢れた子だもの。ねっ、西の守護者様!」
「…!」
そうだ、何も一人で解決しようとしなくたっていい。私には仲間が居て、力がある。
「姉上。姉上は先にフォッツに戻ってください。戻った後騎士団を動かしファルフ達の足止めをしてください」
『アロンも姉上達を手伝ってくれ』
『了解しました』
「ウルはどうするの?」
「私は先に炎孤の炎を広げている鳥型魔獣を止めてきます」
「分かった、くれぐれも気をつけて」
その後すぐに私たちは行動し始め、姉上とアロンはフォッツに私は上空へ飛んで行った。
『セズ、君は大陸の西側を見張っていてくれないか?』
『西側を?私が情報を集めた方がいいのでは?』
『念の為だ。今私は西側まで見きれない、何かあってもすぐに気付けない。だから代わりに私の目となってくれ』
『分かりました』
私は魔獣の元へ向かいながらスキルを発動させる。
フィーナル大森林は西大陸の約三割を占めるほどの広大な森だ。
(流石にこの広さを見るのは魔力もキツいし、情報量が多すぎる。目が足りねぇ)
それでも何とかスキルを維持する。
鳥型魔獣が思っているより多く、しかもかなり散らばっている。これは思ったより時間がかかりそうだ。
私は鳥型魔獣の場所へ移動しては確保し、凶暴化を抑えるために魔力封じの枷を着けた。
魔力封じの枷は主に犯罪者に使われるものだが、こういう時にも役に立つ。
名前の通り着けると魔法を封じることが出来る物だ。
「残り一匹」
最後の鳥型魔獣の近くに行き、同じように枷を着けようとした瞬間、風の刃が飛んできた。
「チッ、魔力に敏感なタイプだったか!」
風の刃を避け、近づこうとするが攻撃が止まない。
この個体は他の個体と違いどうやら警戒心が強いようだ。
一瞬で片付けられなかったのは面倒だが、別になんの手も無いわけじゃない。
「悪いが、今は急いでんだ。優しく対処してやれずすまんが、少し我慢してくれ」
自分の目の前に火球を出しこちらに意識を向けさせ、その間に氷魔法で魔獣を凍らせた。
火球を出したのは魔力を探知して避けられないようにしたかったからだ。
凍って落下していく魔獣を回収し、鳥型魔獣の対処が終わった。
先に鳥型魔獣の対処をしたのは、空を安全な場所にするため。
これで上からどこが一番燃えているかが見える。
盤面操作は敵の位置や戦力は分かるが、地形や自然災害までは分からない。
(だからいつもは探知魔法と一緒に使うが、流石に広すぎるし、何より今は魔力を出来るだけ温存しておきたい)
火力が強いのは三箇所か。
炎孤を完全に止めるとまではいかないが、弱体化させる方法ならある。
水だ。
雨が降れば炎孤も炎孤の炎も弱まるし、森の火も鎮火出来る。
あいにく今日は晴天だが、天気なんてものは変えてしまえばいい。
「さぁ、こっからは守護者の力を使うとしようか」




