イースアース
自然異世界転移ゲート、それは空間の歪みにより生み出されるもので、触れると別の世界へ飛ばされてしまう危険なゲートである。
今日は森の南側の様子を見に来ていた。
飛行魔法で移動中に、魔力探知に複数の魔力反応が出たので気になりそこへ行ってみた。
反応的に魔獣の群れだろうが、何やら少し様子がおかしい。
近くに着き、少し上空から様子を窺う。
そこにはファルフの群れと近くにはイースアースがあった。
ファルフとはフィーナル大森林に住む狼型の魔獣の事で、普段は温厚で知性も魔獣の中ではトップクラスに高く、物凄く大人しい魔獣だ。
知性がある分強く攻撃方法も多い、敵対すると厄介な相手でもある。
とりあえずファルフをイースアースから離れさせるために近づく。
すると私の接近に気がついたファルフが同時に攻撃をしてきた。先程も言ったがファルフは温厚な魔獣である。
私は咄嗟に結界を張って攻撃を弾く、そのまま結界を維持してファルフ達に声をかけた。
「待ってくれ、こちらに敵意はない。落ち着いてくれ」
だがファルフ達は威嚇を辞めることなくこちらをずっと警戒してる。
言語が通じない相手では無いため私は不思議に思い少し群れを観察する。
「群長が居ない…?」
小声で言ったがファルフ達には聞こえていたのだろう。その発言を聞いてまたこちらに攻撃を放ってきた。
ファルフの群長は少しだけ色が違うため見れば一発で分かるのだが、ここにいるファルフ達はみな同じ色だ。
どうやら群長が居なくなり混乱しているようだ。
(近くにあるイースアースとその周りを不安そうに探っていたファルフ…群長がイースアースに呑まれたか)
と言ってもファルフがよく分かりもしないものに不用意に近づくとは思えない。
つまり、偶然群長が居た位置にイースアースが出現したと考えるのが妥当だろう。
ともかく、イースアースの処理は私の仕事の一つだ。早いところ処理しなければなるまい。
そうと決めたら、一旦ファルフ達を檻を創って閉じ込め、イースアースの周りを改めて魔力探知する。
イースアースの処理の仕方は、まず付近にいる者達を遠ざける。
その次にイースアースを結界で囲み、周りを探知して、イースアースの先から別世界の生物がこちらに来ていないか探る。
今回は見当たらないので大丈夫だが、もし見つけたら保護してそのまま一緒にイースアースの先へ行く。
そしてイースアースの先の別世界に来たら、同じように結界を張り、周りに私達の世界から来てしまった子がいないか探る。
もし見つけたら保護して帰す。
最後に別世界側の空間の歪みを先に直して、戻って自分の世界側の空間の歪みも直せば、両世界からイースアースが無くなる。
そんな訳で別世界側に来てみたが、森だ。
いや別に変な所に飛ばされるよりマシなんだけど、森って探すのちょっと面倒なんだよな。
土地勘無いから迷うし。
とりあえず広範囲に探知魔法を作動し、迷い込んだであろうファルフの長を探す。
イースアースに結界を張って、帰り道迷わないように印も残しておく。
そして森の中を歩いて探し始めた。
飛行魔法を使った方が楽なのだが、この世界に飛行魔法があるか分からないし、そもそも魔法があるか分からないし、誰かに見られたらまずいので使えない。
そして数分間歩き続け探しているが中々見つからない。もしかしてどっかに連れてかれてしまったのだろうか。
ファルフが見慣れない場所でそんなに歩いてどっか行くとは思えないため、最悪なパターンのもしもを想像してしまう。
探知範囲をもう少し広げようとし、立ち止まった時横の茂みがガサッと物音を立てた。
なんだろうと警戒していると、茂みから出てきたのは見た事のない気持ち悪いなんか少しでかい生物だった。
ちなみに別世界の生態系に勝手に手出しするのももちろんダメだ。
羽っぽいのが高速で動いてブンブンとなんかちょっと不快な音を立てている。
足は細く六本生えており、恐らく触覚が頭から生えている。
何より気持ち悪いのは目だ。なんかなんだろう、ギョロってしてる。気持ち悪い。
何となくやばい気がしたので背を向けずに少しずつ距離を取る、が、急にこちらに向かって飛んできた。
信じられない気持ち悪さに私は全力ダッシュして後先考えず逃げる。
我武者羅に逃げている途中でファルフの魔力反応を見つけた。
ファルフの方目掛けて気持ち悪いやつから逃げながら走る。
(きもいきもいきもいきもいきもいきもい!え?殺していいでしょ!無理無理無理まじで無理!なんで殺しちゃダメなの?生命の危機を感じる。身体が全力であれを拒絶している。早くファルフ回収して逃げなきゃやばい!ていうか撒かなきゃダメだ。じゃないとイースアース処理できない!でもあいつ飛んでるんですよね。どうまけと?)
思考がぐちゃぐちゃになりながらファルフの元へ向かう。
だが一向に撒ける気配はなく、仕方ないと割り切り魔法で撃退する。
(もういい!あれから逃げれるならなんでもいい!ルール違反の罰は受けるから、今はとにかくあれを消す!)
私は魔法で羽を焼き、ついでに触覚も焼いといた。
これでもう追いかけてはこれないだろう。
そして急いでファルフの元へ向かう。
「見つけた!そこのファルフ!」
見つけたファルフはその場に座っており、私の声に反応して耳をピクリとさせ、こちらを向いた。
「貴方は?」
「事情は後だ、とりあえずダッシュで帰るぞ!」
「ワウ!?」
私はファルフを抱き抱えてイースアースがあった場所に転移する。
一回ルール違反したんだから二回目も変わらん。
そして先にファルフを帰し、超特急で空間の歪みを直し、自分もイースアースに触れて元の世界へ帰る。
帰った後にこちらからも歪みを直し、イースアースを消した。
「はぁ、死ぬかと思っ、おぇぇぇぇぇ」
別世界での魔法使用ルールを違反した罰が来た。
罰の内容は違反度による。
今回はギリギリ命に関わるかもしれなかったということで頭痛と吐き気だけで許されたらしい。
微妙なラインなため五分間はこの状態らしい。
まぁ、これで済んだだけマシだ。
私がぶっ倒れてるところに先程保護したファルフの群長が来た。
「守護者様、お助け頂きありがとうございました。急にあの場所に飛ばされたあとよく分からない生物に追われ、逃げたのですがその際足を怪我してしまい、そのまま帰る方角も分からなくなってしまっていたのです」
「そりゃ、災難、だった、な」
油断したら吐きそうだ。気をつけねば。
「助けに来てくださる前に少しだけ他のもの達が無礼を働いたと聞きました。申し訳ありません」
「き、気にしてないよ」
「ですが…」
五分経ったのだろう、身体が元に戻ってきた。
「それより、君の怪我をどうしようか。私は治癒魔法が使えないし」
「治るまで大人しくしていますので、心配無用です」
「いや、イースアースのせいで起こったことだから、私が治さないとなんだよね。……そうだ!君名前持ってる?」
「いえ、持ってません」
「なら君に名付けしてもいいかな?そしたら私の魔力が吸えるからその位の傷なら治るだろうし」
「よろしいのですか?」
「ファルフの群長なら大丈夫でしょ。そういう訳だから、君の名前は今日からウェスで」
「ウェス……素敵な名です。ありがとうございます」
魔法生物への名付けという行為はその者と深く繋がることとなる。名を授かった者は授けた者に属することになり、知識や力等も少しだけ与えられる。
と言っても契約とは違い、自由の身なので特に何をする訳でもない。
(魔法生物に名付けをしたのは久しぶりだな)
名付けられたウェスに私の魔力が少し吸われ、ウェスの怪我は治った。
「よし、治ったね。それじゃまたどっかで会えるといいね」
イースアースも処理したし、今回のイースアースの先はなんかきもい世界だったのでだいぶ疲れた。
私は転移で家に帰り寝ようとしたが、あの気持ち悪い生物が頭から離れないせいで眠れなかった。
エルディアには虫が存在してません。
ウルが別世界で見たのは少しでかい蜂です。
だけどウルはノアの時から一度も虫を見たことがないので、本当に初めて見る気持ち悪さらしかったです。




