呪刻
「へぇ、呪いや錬金の類いが得意なんだ」
「うん、そうなんだ」
あの後、キファ様とグローヴ様は予定があるからと自分の大陸に帰り、現在私とレソトシアだけが聖域にいる状況だ。
二人共用は無いので、聖域をまわりながら自分の得意な事等を話していた。
「呪いにかかった人とかも見れば分かるし、どんな呪いなのかも分かるんだ」
「それは凄いね」
「だからね、君の身体から出てる呪いの気配もずっと感じてるんだ。だけど、どんな呪いか見抜けんから気になるんよ。ねぇ、教えてくれへん?」
「……!?」
レソトシアは急に立ち止まり私に詰め寄ってきた。
口調も急に変わり、目が完全に獲物を捉える目だ。
私は自分の体質について言うべきか少し悩み口を開く。
「まぁ、これから長い付き合いになるし、解呪も出来るなら知っててもらって損は無いか」
「教えてくれるん?」
「あぁ」
長話になるのでその場に簡易的な椅子を作り座る。 そして私は自分の身体について話し始めた。
「私は幼い頃に魔力暴走を起こしたんだ。その暴走が強力過ぎてすぐに止めることが出来なかった。長い時間暴走状態にあったせいで、後遺症が残ってしまってね。これも後遺症の一部だよ」
私はスボンを出来る限り捲り、右の太ももをレソトシアに見せた。
「それは……」
私の右ももは半透明で、その部分に触れても何の感触も無い。
「これは一部でしかないよ、他にも後遺症はある。今は封印しているけど、封印をとけば、目を合わせたものを服従させ、耳は心の声を聞き、口は強力な呪言を、右手は触れたものの未来を、左手は触れたものの過去を見る」
「呪刻やね。何らかの原因により、身体に刻まれる呪い。本来持ち得ない力…か。その数の呪刻をよぉ封印したね、誰が封印術式を作ったん?」
「私の師匠だよ。魔力暴走を止めてくれたのも師匠だ」
「へぇ、凄いお師匠さんやね」
「まぁな」
「でも、ほんまに話してよかったん?」
「いいんだ、もしもの時の為に君には封印術式知ってもらいたいし。いつか話そうと思ってたことだ。こんな早く話すとは思わなかったがな」
しばらくの間沈黙の空気が流れる。
レソトシアの顔は俯いていて見えない。
(まぁ気味悪いわな)
呪刻は畏怖の対象だ。呪刻を持つものは不幸をもたらすとも言われている。
そんなものは迷信でしかないが。
私の家族や周りに居た者達は呪刻に対して偏見がなかったので特に怖がることもなかったが、普通はまぁ、こんな反応になるんだろう。
仕方ない事だ。関わりが最低限になるだけ、そう思い椅子から立ち上がった瞬間レソトシアが俯いたまま話す。
「ねぇ」
「何だ?」
「君がさっき言ってくれた呪刻の中に未来を見るって言うてたのもあるけど、どんなふうに見えるん?」
「え?」
「なぁ、どんな風なん?」
顔を上げたレソトシアの目はキラキラしており、立ち上がった私にものすごく近づいてくる。
「え、えっと…確定した未来だけが見えるけど」
「変わるかもしれんもんは見えんって事?」
「う、うん、そうだけど……ち、近い」
「触れたものって人も対象なん?」
「そう、だよ」
近いからと少し下がれば、下がった分だけ詰め寄ってくる。
下がっても下がっても詰められ、バランスを崩し尻もちをついてしまった。
そのまま肩に手を置かれ完全に確保される。
「なぁ、君の呪刻一個でええから見せてくれん?」
「いや、危険だし。ていうか気味悪くないのか?」
「何が?」
「だって、呪刻なんてみんな怖がるだろ、気味悪がるだろ」
「僕そんな変な偏見ないから。大体呪いの刻印なんて言うからみんな怖がんねん。何が呪いや、むしろ神からの祝福みたいなもんやん。本来持ち得ない力を持ってんねんで?珍しいやんか、すごいやんか」
肩に置かれてる手の力がどんどん強くなる。
ていうか痛い。
珍しいものを見て興奮しているのだろうか、ともかく偏見は持たれて無さそうだ。
「それに、君はその力を別に悪用してへんのやろ?ならええやんか、怖がる理由なんてなんも無い」
「それはそうだけど」
(この人ちょっと変だな)
肩に置かれた手を退かし、私は立ち上がる。
同じく立ち上がった彼の目を見て、嘆息する。
「それでも危険だから、必要も無いのに封印を解くことはしない」
「えーケチんぼ」
「あのなぁ」
私は呆れ顔で彼を見る。
「ま、ええわ。これから長い付き合いになるんや、見る機会はいつか来るやろ」
そう言って彼はまた歩き始めた。私もその後について行く。
聖域は広くまだ見回り終わってないのだ。
「君の秘密は呪刻以外にもまだありそうやしな」
「……それは蛇神の力でそう感じたのかい?」
「さぁな?ま、これから同期として仲良うしよや」
「そうだな」
そうして私達は残りの場所は特に何事もなく平和に見回った。




