就任
涼節が終わった。言われていた通り、私は師匠の後を継ぐため師匠と共に聖域に来ていた。
「久しぶりだな、ウル」
「北の守護者様、お久しぶりです」
聖域に着くとそこには、北の守護者様が居て私達に話しかけてきた。
「そう堅苦しくなくていい、昔みたいに名で呼んでくれ」
「ですが…」
「いいんだ。口調もいつも通りでいい。俺の前で猫を被る必要は無い」
久しぶりにあったキファ様は全く変わっておらず、相変わらず気さくな人だ。
「ところで、何故キファ様はここに?」
「こいつここに住んでるからな」
「えっ?」
私の問に答えたのは本人ではなく師匠で、驚いた顔でキファ様を見ていると、またまた師匠の口から説明された。
「こいつは自分の家を持ってないらしくてな、建てるのも面倒だから基本的にここに居るんだ」
「まぁ、仕事も少ないしね」
そんな理由で?とも思ったが、本人がいいならいいだろう。
「聖域は素晴らしいよ、丁度いい気温と美しい風景、そして誰にも邪魔されない。なんて素晴らしい場所だろう」
そう言ってうっとりした顔をしている。
随分とこの場所が気に入っているらしい。
聖域は昔十八番と自分が動物や魔法生物と戯れるために創った場所だ。
守護者と許可された者以外入れないと言われてるが、私と十八番も普通に入れる。
今は十八番は居なさそうだが、あいつもここが好きなのでいずれ鉢合わせるかもしれない。
「さて、ウル就任の儀をするぞ」
「あ、はい」
「あーあこれでスヴィンとは遊べなくなるのか。隠居先に押しかけようかな」
「やめろ」
師匠が儀式をする場所へ歩き始めたので私もその後ろをついて行く。
野原を少し歩き林へ入り、奥へ進む。
林の中に少し開けた場所があり、そこには神獣と創造者の石像があった。
石像は左から、虎、龍、前世の私、十八番、鬼、蛇、とあり、創造者の像は顔が見えなくなっている。
虎、龍、鬼、蛇は守護者の神核の力元の神獣だろう。神核は神獣の力を集めたものだ。
なので核の力を引き出すと、見た目に変化がでる。
一時的に獣化したり角が生えたりだ。
「ウル、準備はいいな?」
「はい」
石像の前に、師匠と向き合って立ち就任の儀を始める。
「我は龍の神獣の力を借りし西の守護者、ヴェイル・スヴィン。今ここで、龍神獣の力を委譲する」
師匠がそう唱えると龍の石像が光った。
そして師匠の身体から神核が出てくる。
師匠の詠唱に続き私も詠唱をする。
「我が名はグレーズ・ユトゥール。今ここに、龍神獣の力を継承し、西の守護者となることを誓う」
石像の光が収まり、神核が私の身体に入ってくる。
石像の台座をよく見てみると何かが刻まれている。
「これって」
「歴代守護者の名前だ」
そう話していると、台座にスヴィンの名前が刻まれた。どういう仕組みなんだろうか。
この石像は私が居た頃は無かったものだ。
なので後から足されたものだろう。
どういう仕組みで名前を刻んでいるのかと考えていると、身体が急激に重たくなった。
恐らく神核が入ったことにより、身体が神核を異常物体だと思い反発してるのだ。
器としての適正はあるが、最初は異物として身体が反応するので身体が受け入れるまではしんどさが来るだろう。
しんどさを和らげるために眠るらしいが、思った以上に身体がだるくて、その場に座り込んでしまう。
「あ、言い忘れてたが、眠ってる間一回完全獣化するから、広い場所に行けよ」
「はぁ?なんでもっと早く言わねぇんだよ、ざけんな」
そういう大切な事は事前に言ってもらわねば困る。
移動しろと言われても身体がだるくて動けない。
「言い忘れてたのが悪いな。もう動けんだろう、運ぶから大人しくしろ」
師匠は私の身体を担いで、最初の野原ではなく別のもっと広い草原に私を運んだ。
「運び方に愛がない…」
「運んでやってるんだから文句言うな」
「あんたのせいだろ」
草原の真ん中の方まで来た師匠は私をポイとほかり、寝転がってる私の隣に座った。
「三ヶ月の眠りが覚めたら、お前は西の守護者だ。隠居する西大陸をちゃんと守ってくれよ?後継者君」
「はい、はい、わかって、ます、よ」
段々と眠たくなってきた。このまま眠り、次に目が覚めるのは三ヶ月後だ。
目が覚めたら自分がどんな姿になっているか少し楽しみだ。神核適合後、少し姿が変わる場合もあるらしいからな。
「あぁ、もう一つ言い忘れてたが、お前が起き上がった後に」
師匠が何か言っていたが、全て聞きとる前に眠りに落ちてしまった。一体何を言おうとしたんだろうか。
思考する間もなく、そのまま私は深い眠りについた。




