両立せよ
「それじゃ行ってきます」
「飛び級ですぐ帰ってくるんじゃぞ」
「行ってらっしゃい」
「飛び級はしませんけど、特待生にはなってきますよ。仕事しなきゃいけなくなったので」
研究室の隣に建っている小屋から出て、師匠とリリーに挨拶をした。
ゲートを使わず、転移魔法で直接独立都市グルトン行く。アカデミー内に転移し、そのまま受付を済ませる。二週間前の入学試験に受かった私は、今日から魔法アカデミー生です。
時は戻り今年の新年の式典の時。ウルは陛下に呼び出され、フォッツの役所の一室に待機していた。
ここは宰相や中央周辺領主達が主に使う仕事場だ。役所の隣には王家の家?城?屋敷?がある。すぐに陛下へ重要書類に目を通してもらうため、隣に建てられたのだ。
王家の家はなんというか、城とは違うし、家というのもなんか質素な感じがする。かといって屋敷と言うとなんかちょっと威厳ないかなぁと思うが、まぁ国でいちばん大きい屋敷だ。
役所の一室で待機していたウルは、役所から王家の屋敷に繋がっている道を使い、屋敷の中へ招かれる。部屋に着くと父がおり、しばらくしてから陛下も来た。要件は何となく想像が着く。
「ウル、お主は今年で十七になるな」
「はい」
「だが今年から魔法アカデミーに通うらしいではないか」
「えぇ、そうです」
「だがお主が成人したらこの国周辺の森の管理者となる事が決まっておったのは知っているか?」
「……存じ上げませんでした」
「お主の父が決めていた事じゃ」
「そうでしたか」
私は父に視線を送る。聞いていないけど?と。
父は私の視線に気づくと目をふいと逸らした。
内容はやはり想像通りに仕事のことであったが今年からというのは一切知らなかった。
「お主には国周辺の森の管理者としてフォアリアの名を背負ってもらう」
「ですが私はアカデミーへ行きます。管理などしている間はございません」
「大丈夫だ、お主は優秀と聞いておる。両立出来るだろう?」
「……仕事内容が分かりません」
両立しろという意味だろうが、したくても仕事内容も分からない状態でできるわけが無い。そもそもアカデミーは全寮制だ。どうしろと?帰ってこいと?
「大丈夫だ、ここに居るグレーズ公爵が説明してくれる。だからな?この紙にお主のサインが欲しいのだよ」
「……承知しました」
「今からお主はグレーズ・フォアリア・ユトゥールだ。お主の仕事ぶり、楽しみにしておるぞ。それでは私はこれで失礼する、あとはグレーズ公爵に任せたぞ」
「……」
「……」
残された私と父の間に沈黙が流れる。
なんか言ったらどうでしょうか?忘れてたんでしょう?私がこの仕事をし始める年齢を。
グレーズ家の仕事があるのは分かっていたことだ、だけど成人した瞬間からなんて聞いていなかった。そもそもまだ成人していないし。
「父上、なにか言うことがあるのでは?」
「……そうだな、仕事の説明をせねばな」
「父上?」
「大丈夫だ!お前ならできる!頑張れよ!ウル!」
「……」
そして現在。新年早々そんなことがあったもんで、私は特待生にならなければいけなくなった。回想でも言った通り、アカデミーは全寮制。そして外出は貴族学園の時よりも厳しい。
だけど、その例外がある。それが特待生だ。
特待生になり、単位を取得すれば何をしていてもいいらしい。外出もいちいち許可は要らない。
特待生になるためには試験で、筆記実技共に九.五割以上の点を出せばいいと言う。
ちなみに試験の難しさは魔塔お墨付きだ。現在学生の特待生の人数は五人。四学年ある中の五人だ。
五人全員入学後初めての試験では特待生になれなかったらしい。
初めての試験は一ヶ月後、私はそこで九.五割以上取らねば終わる。
そうだな、真っ暗闇のだだっ広い空間で真っ黒な紙を見つけるくらいの難易度だと思う。まぁだから出来ないこともないくらいの難易度ってことだ。
つまり何が言いたいかっていうと、父上をしばらくは許さないってこと。
とりあえず試験に備えるとしよう。
「あの論文を書いた者がアカデミーに入学したらしい」
「それは、楽しみだね」
「魔鉱石の耐久度の論文。これは魔道具界を一気に躍進させる」
「アカデミーからの試験結果報告が楽しみだ」
「見極めさせていただこうじゃないか、ウル。果たして君の実力と思考は、魔塔公認一級魔法士に辿り着くのか」
貴族学園編と魔法アカデミー編は最初はくっつけちゃう予定でしたが、思ったより貴族学園編が長くなり、というか肉の話になり、分けることになりました。二編ともそんなに書く予定はなかったんですけどね。魔法アカデミー編は!予定通りに!行くといいなぁ……




