準備
「いい加減起きんか、バカ弟子が!」
「っでぇ!」
恐らく師匠の蹴りを腹に入れられ目を覚ます。
起きたら何故か身体がびちゃびちゃだった。
「まさかお前が水をぶっかけても起きないとは。そんなに眠りが深いとは知らんかったぞ」
「……いやいやいやいや、いきなり押しかけて、魔法打ってきて、水ぶっかけて、腹蹴って起こすって、どんな暴君ですか!?」
「そもそもお前が隠れたのがいけないのだろう!?」
「だってぇ!師匠に位置がバレると修行やら何やらで研究する暇を与えてくれないじゃないですか!!」
「うるさい!お前が未熟なのが悪いわ!」
「はぁぁぁ!?」
「…あの、二人とも落ち着いてください」
ハッと我に返る。そもそも何故リリーと師匠が一緒に居たのかを聞かねばならないのだった。こんなくだらない言い合いをしている場合じゃない。
「リリー、何故師匠と一緒に居たんだ?何故これをここに連れてきたんだ!」
「おい」
「森で声を掛けられて、ウルさんの知り合いだって言われたので」
「嘘だったらどうするんだ!危ないから今後は初対面の不審者と話したらダメだ」
「おい」
「でも、ウルさんに教えてもらった嘘を見抜く魔術をしっかり使いましたよ」
「嘘を見抜く?」
「いつの間に使えるようになったんだ…」
「最近です。なので、話しかけられた時知り合いだって部分は本当で、迷ってるって部分が嘘なのは分かってましたよ」
「……なるほどな」
「で、話は終わったか?」
「まぁ、はい」
「では、次はわしからの質問じゃ。お前、姿を一年も見せずアカデミーに入る準備はもちろん終わってるんだろうな?」
「それはもちろん。でもまだ一年もありますけど」
「先に論文を提出しないといけないからな、それの確認をしておきたかったというのにお前は変な隠蔽魔法を使いよって」
「論文はかけました」
「で、題材は?」
「耐久度の足りない魔鉱石に術式を入れきる、というものです。最近魔鉱石の耐久に困ってた事があったんですが、なんと硬度の低い物にも複雑な術式を刻むことができたんですよ!それを論文にしました」
「ほぅ?わしはてっきりついさっき話題に出ていた嘘を見抜く魔術とやらを論文にしたと思っておったのだが、それは論文にせぬのか?」
「そんなもの大々的に発表したら悪用されるだけです。あの術式は信用出来るもの以外には教える気はありません」
「なるほどな、しかし本当に見抜けるのか?見抜けるとしたら一体どういう原理で」
「簡単に説明すれば、目線や表情の硬直、声の上ずり、呼吸の仕方とかを感知してですね。まぁ百パーセントとは言えないですね。せいぜい七十パーセントくらいでしょうか」
「そんな魔術つくって、何に使う気だ?」
「……私用です」
この嘘を見抜く魔術は前世の私を殺したやつを見つける時に使う予定だ。今はまだ百パーセントを出せないが少しづつ制度をあげればいい。
この十六年間何もしていなかった訳ではない。容疑者を絞り、どう問い詰めるか考えていた。
だが、今の状態じゃ容疑者と接触も無理だ。力も圧倒的に足りない。
本番は守護者になってから、あの神格は主に前世の私が作ったもの。神格の力が使えるようになれば、少しは近づく。
(容疑者全員何年だって生きられるんだ。いくらでも時間をかけてやるさ)
「聞いてるのか?ウル」
「へっ?」
「はぁ、お前はいい加減考えに没頭するのを辞めろ」
「…よく分かりましたね」
「それで、お前がアカデミーに行ってる間、この子はどうするのじゃ」
「リアリルの事ですか?普通にここで暮らしてもらおうかと」
「それなら、わしがこの子を預かっても良いか?」
「えっ?でも」
「お前が寝てる間に事情は聞いておる。わしならこの子を強くして安全な仕事を与えてやれる。もちろん将来お前が関われる場所でな。魔法も使えるようじゃし悪くない提案だと思うが?」
「うーんそうですね。リアリルがいいならいいですけど」
「どうじゃ?」
「あの、私、やってみたいです。いつまでもウルさんにお世話になる訳にもいきませんし。読み書きも算術も教えて貰いましたから、最低限は大丈夫だと思います」
「なら、決まりじゃ」
「ところで安全な仕事って?」
「それはこの子の成長具合で決める」
「ふーん」
「そんなことよりお前、論文は書き終わったと言っていたな?」
「えっ?」
「なら、残りの一年はわしの仕事を手伝いながら修行じゃ」
「あっ」
そうして私は師匠に引きずられながら外に連れていかれる。抵抗虚しく私は師匠の修行という名のただの手伝いをさせられた。
ちなみに師匠は私の研究室に住み込んだ。
そんな生活をして一年。いよいよ東大陸の独立都市グルトンへの出立の日だ。
Q,研究室にそんなにベッド入るんですか?
A,スヴィンとウルは空中でふよふよ浮きながら寝るのが好きなのでリアリル以外ベッドを使ってません。
今回師匠は怒っているのでかなり素の口調が出ちゃってます




