新たな出会いⅡ
主に助けられた子供視点です
身体が重い、頭が痛い。ここは何処だろうか、私は森の中に居たはずなのだが……
目を覚ますと見知らぬ天井が見えた、身体が重くて起き上がれない、気絶する前の記憶が曖昧だ。何があったか思い出そうとするが思い出せない。
(森の中に居たのは間違いない。でも、気絶した理由が思い出せない、それにここは何処だ)
「おや、起きたかい?」
そう言って寝転がっている私の顔を覗き込んできたのは、灰色髪で綺麗なエメラルドグリーンの瞳を持つ者だった。
私が目を覚ましたことに気づくと、その人は水を持ってきて、ベッドの横にある椅子に座った。
「だ、誰、ここ、何処」
「まだ動かない方がいいさ、何せ魔力が底を尽きかけてたんだ。身体がだるいだろう?」
「魔力が……」
(なるほど、どうりで身体が重いし頭も痛い訳だ。でも魔力が枯渇している感覚はない)
「君は森の中で植物型の魔物に襲われて、魔力を吸われていたんだよ。ここは私の研究室、私は森人族のウルと言う。君は、見た所は狐人族だけど名前は?」
(魔物に魔力を吸われたのか。狐人族……そうか、今はそうなってるのか……)
「名前は……」
「……まだ頭が動かないだろう。急に質問をして悪かったね、水は飲めそうかい?」
「え、あ、はい」
「あぁ、寝転がったままで大丈夫だよ。寝転がっている状態で飲めるようにしてあるから」
そう言って筒状のものがささったコップを顔の近くで持ってくれている。
(なるほど、吸い上げれば寝転がっていても飲めるということか)
「もう少し休んでいるといい。君の状態が万全になってから色々話をしようじゃないか」
「では、お言葉に甘えて」
そう言って彼女は眠りについた。まだ身体が回復しきっていないのだろう、なんだかぼんやりとしていた。
彼女が眠っている間に少しだけ身体を調べさせてもらった。運んでいた時は分からなかったが、彼女が付けている指輪から微量な魔力が出ていた。
恐らく指輪は魔道具だろう。なんの魔法がかけられているか分からないが、あのくらいの魔力ならそこまで大した魔法ではないとは思うが、分からない。
彼女の見た目は八歳や九歳くらいに見えるが、どうにも違和感がある。変身魔法の類を使っていそうだが、痕跡は見られない。
とにかく、一旦は彼女が目を覚ますまで研究の続きをしていようと思い私は机に向かった。
目が覚めると紙とペンの擦れる音が聞こえ、身体を起き上がらせる。だいぶ回復したらしい。
周りをキョロキョロしていると机にむかって紙に何かを書いている、ウルと名乗った人を見つけた。
研究室とさっき言っていたし、何か研究をしているのだろうか。ベッドサイドのテーブルに置かれた水を飲み、どう声をかけようか迷っているとあちらが気づいて声をかけてきた。
「起きていたのかい、すまない集中していて気づかなかった」
「いえ、大丈夫です」
「身体はもう大丈夫かい?」
「ええ、お陰様で」
「なら、少し話をしようか。ソファまで歩けるかい?無理なら運ぶが」
「歩けます」
「まず、君が今ここに居る経緯だけど、さっきも言った通り植物型の魔物に君が襲われているのを偶然見つけて、助けてここに運んだというわけだ」
「助けていただきありがとうございます」
「さて、改めて聞くが君、名前は?」
「……名前は無いのです。名を付けられる前に、親と引き剥がされました」
「それは申し訳ないことを聞いた。だが、君の素性が分からない以上踏み込んだ質問をさせてもらうよ」
「構いません」
「君の本来の姿を見せてもらおうか。まぁでも無理にとは言わない。嫌なら断ってくれて大丈夫だ」
「……分かっていましたか。別に躊躇う理由はありません、お見せします」
そう言って私は自分の指にはめていた魔道具の指輪を外した。
髪の色は薄い黄色から白髪になり、目も黄色から紫へと変わる。身体は少し成長し、元の大きさに戻った。
「……!なるほど、白狼種だったか。それで姿を……しかしその魔道具、そこまでの変身術式が組み込まれているようには見えんが」
「この指輪は南大陸に存在する妖魔に貰ったものです。私は南大陸から逃げてきたので。恐らく魔力ではなく妖力が使われているのでしょう、分からなくても無理ありません」
「……なるほど?」
白狼種は南大陸に存在する妖魔の一種だ。希少種族であるため、密猟者やらその辺がこの子を捕えたのだろう。
この世界は奴隷も闇オークションも禁止されている。だが、やはり金儲けや娯楽のためやるやつはいる。希少種族ほど値段が上がる、狙われたのだろう。だが……
「妖魔は姿を変えれなかったはずだが」
「えぇ、そうですね基本的に妖魔が元の自分の姿形を変えることはできません。変身魔法を使ったとしても。ですが私は鬼種と白狼種の間に生まれた子でしたので、人型で生まれてきたのです」
「なるほど」
「私の父と母は既に捕らえられていて檻の中にいました。既にお腹に私がいた母はそのままそこで私を産みました、故に私は生まれてすぐ引き剥がされたのです。私はオークションに出され、買われて奴隷として過ごしてきました。だけど先日、私の買主が南大陸に行った時に私たちの乗っていた馬車が妖魔に襲われ、妖魔が私に気づき、逃がしてくれたのです」
「そこで指輪を貰い、姿を変え、逃げてきたと」
「その通りです。よく分からない門に近ずいたら目の前の景色が変わり、近くの森へ入り姿をくらませようとしたのです」
「君のくぐった門は転移ゲートだろう、南大陸と西大陸を繋ぐものだ。南大陸から逃げてきたのならもう追手は来ないだろう」
「あの!お願いがあります!どうか、どうか私を拾ってはくれませんか!私は言葉は話せますがそれ以外の知識がありません、役に立たないことは分かっています!でも!どうか、お願いできませんか!」
「……そう言われても……」
どうにかこの人に拾ってもらえないだろうか、この人は安全な匂いがする。他の誰とも分からない人の奴隷になるくらいなら、この人の奴隷がいい。
「何でもします!何でも言う事を聞きますからどうか!」
「……私はまだ成人していないから職が無い。君を養えないし、自分がそもそも独立していないから雇うことも出来ない」
(やっぱり、無理なのだろうか……)
「まぁだけど、助手なら同じ研究室にいてもおかしくないな」
「…!それでは!」
「今日から一年半、君は私の助手だ。私の助手になるのなら言葉の読み書きや算術はできてもらわないとな」
「っ〜〜〜!ありがとうございます!」
「君の名は今日からリアリル、愛称はリリーだ。よろしくな」
この世界の妊娠方法は二パターンあり、一つは普通に、もう一つは相手の体内に一定期間毎日自分の魔力をそのまま少量ずつ入れることです。
体内といってもお腹付近に入れるので、前回説明があった魔力移行とは少し違います。一日で多量の魔力を入れたりしても子は出来ません。
ちなみにウルが変身魔法を解いた姿を見て白狼種だと分かったのは魔力も変わったからです。前世のノアの時白狼種と少しだけ遊んでいたことがあり魔力を覚えていました。




