姉妹共闘
「あ、姉上!?」
「無事か、ウル!」
「姉上、何故ここに!?それより、魔獣を倒して大丈夫なんですか!?」
魔獣は生態系に関わる為、討伐が禁止されている。
凶暴化により人的被害が広がったら核化の許可が降りることがあるが、ごく稀だ。
「炎孤による被害報告が最近多くて、核化許可が降りたんだよ。詳しい説明は後でするから、ウルも手伝って。ウル達が帰ってくる前に終わらせるつもりだったんだけど、おかしいくらい量が多いんだよ」
「わかりました」
《創造》
「アス、ロイ、それで殿下を守れ!私は手伝って来る、少ししたらスキル共有するから下手に動くなよ!」
「あぁ、わかった」
《盤面操作》
ウルの固有スキルの一つ、盤面操作。
発動した時点で戦況が上面図で頭に入ってくる、味方の位置、敵の位置、戦力の偏りが分かる。
どこに誰を配置するべきか、どう動くべきか、戦況を有利に出来る動きが見えるのだ。それと同時に味方陣営全員が念話出来るようになる。
スキル共有をすれば共有した者にもウルほど正確ではないが、何となく戦況が分かるようになる。魔力探知が出来ない今、何となくでも敵のいる位置がわかる方がいいだろう。
(くっそ、魔法が使いずれぇ。共有するのはとりあえずあの三人だけでいい、その他の姉上や騎士団は私が念話で指示出来る)
「共有が来た。って、なんだこれ……」
「どうして炎孤がこんなに居るんだ?」
「炎孤は普段、こんなに群れないはずなのに。一体何が起こっているんだろうね」
「とりあえず、こっちに向かってきてる奴は居ねぇな、変に動くより待機してた方が安全そうだ」
「そうだね」
スキル共有を発動させながら、ウルは姉と一緒に東側に向かっていた。数が多いのは西側だが東側の方がやばい。
「ウル、本当にこっちでいいの?報告によると西に大量発生してるみたいだけど」
「西のは凶暴化せずに巻き込まれて驚いて威嚇してるだけの個体が多い、数は居れどあれなら他の騎士達で抑えられます。まずいのは東側に居る二体です、あれは元が強化種の炎孤、そして二体とも凶暴化してる。戦力的にやばいのはこの二体。一緒に行動してる所から見て番でしょう、この二体の凶暴化のせいで辺り一帯の空魔が乱れ、他の炎孤も凶暴化したり混乱しているんでしょう。なので、あの二体を先に止めないと事態は収まりません。」
「一瞬でそこまで分かるなんて、流石固有スキル。強いね」
「呑気な……とりあえず着いたら一体ずつに分けます、二体同時に来られたら流石にきつい」
「一人一体対応すればいいじゃない」
「番ですよ?連携されて挟まれ焼かれ終わりです。なので二人で一体ずつ対処します。出来ればオスの方から」
「もう一体はそのあいだどうするの?」
「姉上には一瞬オスを連れて離れてもらいます。確か注意集中スキル持ってましたよね、それで一瞬離れてもらった隙にもう一体を閉じ込めます。」
「お姉様を囮にしようと?」
「余裕でしょ?」
「当たり前」
「なら、お願いしますね!」
話が終わったタイミングで丁度番の炎孤の場所に着いた。作戦通り、姉上がオスの炎孤のヘイトをかい、そのまま少し離れる。その間にメスの炎孤を檻で囲い、炎を吐けないように口枷をする。そして姉上に念話で戻ってくるよう伝える。
「仕事が早いね!」
「そちらこそ」
「で、魔法は使えそう?」
「無茶言わないでください。ここが一番空魔が乱れてる。いつもみたいにすぐ発動は出来ません、ワンテンポ遅れです」
「ならメインは剣だ、自分の好きなタイミングで魔法を打ってくれていいよ」
「タイミングを合わせないと危険ですよ!?」
「お姉様に任せなさい!」
「後から文句言わないでくださいね」
「もちろん!」
そう言って左右に別れ攻撃を仕掛ける。
核化させるには一定の傷を負わせるか、首を飛ばすしかない。
だが、私の剣は創造で即興で作った物、強化種の首を飛ばすほどの強度はない。姉上の剣も刃こぼれし始めている、おそらくずっと対応に追われ、手入れする時間がなかったのだろう。
(いや待てよ、あの剣なら……)
スタミスでドワーフに頼んで作って貰ったあの剣、強化魔物の首は簡単に吹っ飛ばせるようにしてもらった。強化魔獣の方が硬さはあるが今使ってる剣よりマシだろう。帰国する数日前に完成し、受け取った。本当は姉上の誕生日に渡す予定だったが、仕方ない。今は緊急事態だ。
「姉上!」
「どうした?」
「この剣を使ってください!今使ってるやつより何倍もマシです!」
そう言って姉上の真上に剣をだした。それをすかさず姉上はキャッチする。
「ほぉ、この剣なら確かに首を飛ばせそうだ。でも……」
「隙は私が作ります!遠距離から魔法でバランスを崩させます!タイミング、合わせてくれるんでしょう?」
「ふっ、もちろん!」
私は前線から離脱し後方で魔術発動の準備をした。
この状況で炎孤の体制を崩すには正確に炎孤の足場だけを狙うのが一番いい。でも土属性魔法はあまり得意じゃない。少なくとも魔力が乱れてる今、魔法として発動するには正確さがかける。だから魔法より発動は遅れるが正確さの高い魔術を使う。
術式計算をしっかりやり、座標を固定。あとは炎孤がそこに来れば。
(遠距離からバランスを崩すなら誘導して欲しい場所があるはず、どこだ、どこに誘導すればいい。)
目を見張らせながら炎孤の攻撃をかわしていると一瞬地面が光った。
(あそこね)
場所が分かり、うまい具合に炎孤をそちらへ誘導する。
(今だ!)
魔術を発動し、炎孤の着地点の足場を崩す。野生動物なので少しの凸凹やぬかるみなどは意味が無い、なのでそれはもう大きい段差を作った。下半身ごと上に持ち上げる形で。
下半身を穴などに落とし、上半身を上向きにしてしまったら首を落とす時炎を吐かれる。その為上半身を下にして視野を狭めた。
そのタイミングを逃す事なく、姉上は炎孤の首を落とした。
メスの炎孤の方に行くと、口枷が壊れておりこちらに炎を吐こうとしてきた。幸い、思ったよりオスの討伐に時間がかからなかったので、檻はまだ壊れていなかった。
なので、もう一度口枷をし姉上が首を落とす。
そうして凶暴化した強化種番の炎孤の討伐が終わった。
「西もほとんど終わってますね。あとは核を全部回収して撤収ですか?」
「その通り、折角だし一緒に帰るか」
「まぁ、道は同じですしね」
その後、全ての核を回収して、騎士団と三人と合流し国へ帰った。
炎孤は通常個体が1m、強化種個体が2.5mほどです。
スキルも魔力を使って発動するので、魔法程ではありませんが多少の使いづらさがあります。創造スキルで二体とも閉じ込めなかったのは、魔力の乱れにより、スキルが弱体化していて、強度が足りなかったからと、活発に動くオスを閉じ込められるほど正確な位置にスキルを出せなかったからです。メスはウルに炎を吐いた後の隙を狙って閉じ込めました。魔獣は基本口枷をしてしまえば体当たりか引っ掻きくらいしか出来ません。




