帰国
筆記試験も無事に終わり、長期休みに入ろうとしていた。
「どういうことですか、二人とも。合格ラインギリギリじゃないですか!」
「別に合格したからいいだろ」
「………」
「一問でも間違えば補習でしたよ!」
「補習じゃなかったからいいんだよ。細かいこと言うなって」
「面目ない」
「はぁ、もういいです。それよりそろそろ長期休みに入って、国に一度帰るのでその準備しておいてくださいね」
「安心しろ、準備万端だ」
「それは何よりです。当日校門でロイと合流して、四人で帰りますからね」
「分かってるよ」
長期休み一日目、帰国当日。
入学式の時とは違い、寝坊することなくなんなら一番早く門に着いた。
これが三か月間の学園生活による生活リズムの整い。ふむ、素晴らしいものだな。
そんな事を考えているとロイが来た。アスと殿下の方が早く来ると思ったが、最下位はどうやらあの二人らしい。
「ウルが一番なんて珍しい、帰る途中魔物でも出るんじゃない?」
「失礼な、たまにはこういう日だってあるさ」
「ふっ、そうかもね。じゃあ二人待ちか」
「まぁ、ぼちぼち来るだろう」
「おや、僕らが最後か。待たせて悪かったね」
「ウルが最後じゃないだと?帰り道に魔物が出るかもな」
「おい」
しばらくしてから二人も門に来た。
ロイといいアスといい一体どういう意味だ全く、失礼極まりない。
四人で馬車に乗り、西大陸へのゲートまで乗せてもらいゲートをくぐった。ゲートの先で待機させてもらっていた馬に乗り、国へ向かう。
「やっぱり馬車より馬の方が楽だな、早いし」
「いくら四人乗り用でも少し窮屈だしね」
「まぁ、馬車でも馬でもウルに荷物を持ってもらってるんだけど」
「いい加減収納魔法覚えろ。私にだけ毎回荷物持たせやがって」
「使えるやつが使えばいいだろー?」
「私がいない時どうすんだ」
「そんときゃそんときだ」
「待て、森の様子がおかしい」
「ほんとだね」
「うん?」
「あ?」
後ろでアスと話していると前を進んでいたロイが馬を止めた。それに続き三人とも馬を止める。
今いる場所はゲート配置場所から森へ入る道の手前、森の中にある道はしっかりと整備されており危険度の低い場所に通ってる。
その為いつもは木々の隙間から日があたり、自然を感じられる道なのだが、今はなんだかおどろおどろしい。
「瘴気か?」
「いや、違う。仕方ない、転移魔法で帰るぞ」
「たまにはゆっくり森を見るのもいいと思ったんだがな」
「っ!?」
「どうしたんだ?ウル」
「……ない」
「なんて?」
「使えない。魔法が使えないんだ」
「そんなまさか……」
「本当だね、使えない」
「ここら一体の空魔が乱れてる」
空魔とは空気中に存在する魔力の事、空魔が乱れると身体の魔力の流れが乱れるので魔法や魔術の行使がほとんど出来ない。頑張れば使えるが物凄い集中力が必要だ。
(なんだ?空魔が乱れるだけでここまで空気が淀むか?)
「突っ切るしか無いみたいだね」
「殿下はここでお待ちください。何が起こるか分からないので、私が先に行きます」
(探知魔法も結界魔法もまともに使えない今、王子を前に出すのは危険だ)
念の為馬から降り森道に入ろうとした時、狐型の魔獣が飛び出て来てそのまま私に噛み付こうとしてきた。
(炎孤!?なぜこんなところに、普段はもっと森の奥に居るはずだ。それに、凶暴化してる!)
魔獣は知性がある。故に基本的には人に手を出さないし、人気のない森の深くに住んでいる。こちらから敵意を持って近ずか無い限り襲ってくる事は無い。
だが凶暴化した魔獣は理性を失い本能だけで人を襲う。
それでも炎孤という魔獣はこんな所まで出てこない、凶暴化しても周りの木を数本燃やして終わりだ。
なんだ?何が起きている?普段は美しい道がおどろおどろしかったり、凶暴化炎孤がここまで出てきていたり。いまの森の状態は普通じゃない。
(やばい、魔力探知が出来ないせいで接近に気づくのが遅れた。次の攻撃をかわせない!創造スキルで盾を作っても体制が崩れてる今、意味が無い!)
凶暴化した炎孤の炎をまともにくらえば火傷じゃ済まない。引っ掻かれても、炎をくらっても、片腕が消える。どうすれば!?
《標準固定》
瞬間、目の前の炎孤の首が飛び、核化した。そして炎孤が立っていた位置に炎孤の首を飛ばした者が立っている。
「あ、姉上!?」
「無事か、ウル!」
ウルの姉のスキルの一つが出ましたね!ちなみに炎孤が核化した後にウルは、(いや、創造スキルで目の前に壁作れば良かったんじゃね?)と思ったとか思わなかったとか思ったとか




