護衛も兼任されてますから
入学からはや三ヶ月、あの野蛮人に絡まれる以外はそれはもう平和な日々を過ごしており、あれに関しても選択実技授業以外で関わることは無いので特に気にしていなかった。
「そろそろ筆記試験があるね。二人はどんな感じ?」
「特に問題はなく、普通の成績を残せるかと。」
「俺も筆記は合格ラインは余裕だな。」
この学園は一年に筆記試験が二回、実技試験が一回ある。合格ラインも決められており、ラインよりも下をとったら再試験だ。
筆記試験の科目は、大陸歴、言語学、魔法生物学、生物学、数学、の五つ。種類は少ないが一つ一つの量がとんでもない。
ちなみに一番簡単なのは生物学、難しいと言われてるのは魔法生物学だ。まぁでも苦手は人によるからなんとも言えないのだが。
「二人とも凄いな。僕は数学がなかなかに苦手だよ。」
「数学なんて公式覚えるだけだろ?魔術式でもあるまい。」
「魔法ばかり使っていたせいで純粋に計算能力が低いんだ。あと応用が出来ない。」
「ってことは公式は覚えてるんだよな?」
「それはもちろん。」
「なら応用のパターンも覚えりゃいい。教えてやるよ、放課後か休日どっちがいい?」
「次の休日にみっちり教えてもらおうかな。」
「ウルはどうする、一緒に勉強するか?」
「私は遠慮しておきます。」
「えー、俺もちょっと教えて欲しいところあったのに。」
「合格点は余裕なのでは?」
「合格ラインはの話だ。得意の場所を絞って合格点は取れるようにしてあるだけで、不得意な所もあるから授業で詰まらないように教えてもらいたかったのに。」
「うーん、時間によりますね。」
「昼過ぎくらいから図書室でやるか。」
「そうだね、そのくらいがいい。」
「なら一時間くらい遅れます。」
「全然いいぜ、なら次の休日の昼過ぎに勉強会な!」
約束の休日の朝。
今日は昼過ぎから図書室で勉強を教えてやらなきゃならない。すごいめんどくさい。断っても良かったが何がなんでもアスが私も巻き込もうとしようとしていた様に見えたため諦めた。
休日は基本的に昼に起きるが今日朝から起きたのには理由がある。朝と言ってもほぼ昼前だが。
今日は陛下に王子の様子を報告する日なのだ。まぁ別にわざわざ帰って報告する訳でもなく、ただ報告書をセズに運んでもらうだけだ。
この報告書を運んでもらう為に私は入学前に鳥型魔獣を探していた。特に緊急性がない場合は決められた日に報告書を飛ばすだけだ。
今の所平和なので特に報告することなどないのだが流石に一国の王に対して"特に問題無し"とだけ紙に書いて送る訳にもいかないので、普段どんな感じに過ごしているかも書いている。
「よし、書けた。毎度毎度書くことが無さすぎて無駄に時間がかかる。」
《サモン、セズ》
「じゃぁいつも通りよろしくね。」
「お任せ下さい。」
報告書を書くだけなら昼過ぎには間に合うのだが、今日は別に用事があった。
外出届を出して正門から出る、見張りの姿が見えなくなった辺りでフードを被り転移魔法を使った。
転移先は学園近くの下町、そのまま少し歩いて武器屋に入った。そう、今日の目的は武器屋である。
ちなみに外出届の理由欄に武器屋に行くなど書けないので本屋に行くと書いた。大嘘である。
武器屋に来た理由は簡単、もうすぐ姉上の誕生日なのである、姉上の誕生日に新しい剣を送ってあげようと思っているのだ。
南大陸の技術はどの大陸よりも進んでいるし、なにより多種族が住む大陸、それはもちろんドワーフも居る。
ドワーフとは素晴らしい技術力を持つもの、ドワーフの打つ武器がこの国では手に入る!そしてこの国に住む一番のドワーフがいる工房がここなのだ、アロンに調べてもらった。
(姉上に素晴らしい剣をプレゼントするのだ、そして喜んでもらう!ふっふっふっ、あの婚約者には負けない、私が一番姉上が喜ぶプレゼント送るのだ!!)
そのためには注文をせねばならない、金ならある、素晴らしい剣を作ってもらおう!
「失礼します、武器の鍛造依頼をしたいのですが。」
「こんな辺鄙な工房に来るとは珍しい奴も居たもんだ。で、依頼は?」
「剣を作って頂きたいのです。そうですね、強化魔物の首くらいは簡単に吹っ飛ばせるレベルの剣は作れますでしょうか。」
「作れるが、高いぞ?こう言っちゃなんだがそんなに金を持ってるようには見えないが。」
「ご安心ください、いくらでも払いますよ。お金は今まで貯めていた分があるので。」
「そうか?ならいいだろう。完成は二週間後だ。」
「わかりました、お金はこれで。」
「おう、確かに。それじゃまた二週間後に受け取りに来い。」
やった、買えた!偏見でもしかしたら難癖つけて断られるかもなんて思ってたけどそんな事なかった!二週間後ならギリギリ間に合うしあの工房は素晴らしい、今後も通わせて貰おう。
約束の時間まで思ったよりまだあるし、食べ歩きでもしてから帰ろうか。小腹も空いたし。
そう思い、屋台で串焼きを勝った瞬間、探知魔法に不穏な魔力を感じた。
(なんだ?変な魔力の流れだな、遠いけど少し見に行くか?いや、でも面倒くさ一)
不穏な魔力の付近をよく探知してみるとよく知った魔力、我が国の王子の魔力がある。しかも不穏な魔力が狙っているのは王子だ。
(はぁぁぁ、勘弁してくれよ。てかなんでこんなとこに、いやそんなこと考えてる場合じゃない。走っても間に合わん。)
「ちっ、クソが。」
判断した瞬間不穏な魔力は敵意を持った魔力反応に変わった。
手段など選んでいられず、王子の真ん前に転移し、防御結界を張り守る。
「ウ、ウル!?」
「何者だ貴様!何故この方を狙った。」
「チッ、護衛は居ないと思ったんだが、息を潜めてたか。」
襲ってきた輩を睨みながら、王子の周りに張った結界を強化する。
おそらく暗殺者であろうやつはしばらくしてその場を去った。追いかけたかったがこの状態で王子を置いていく訳にもいかず、その場に留まる。
(早急に拘束魔法を覚えよう。)
「ウル?どうしてここに?それより今何が…」
(この人はもう少し警戒心を持った方がいいと思う、なんで一人で居るのに探知魔法すら起動してないんだ。)
「貴方を守ったんですよ、全く。もう少し警戒心を持ってください。」
「え、なんで?ウルは僕の前で魔法を使うのを嫌がってたじゃないか。」
「それは、まぁ、私は貴方の護衛も兼任されてますから。ただの同級生ではないですよ、守るための手段を選ぶ程余裕も無かったですし。」
「………」
「とにかく帰りますよ。」




