第1話 信頼。
それから──
僕は、エリスとの会話が楽しくなり
気付けば毎日のように、仕事の相談をしていた。
ケンジ:
「エリス、
このデザイン、どう思う?」
エリス:
「そうね──
いい感じよケンジ!
全体的にまとまりもあるし、やさしさと上品さ、ちゃんと伝わってるわ。
もし、さらに磨くなら──
──ふふ、褒めすぎかしら?
でも……ほんと、よくできてるわよケンジ♡」
ケンジ:
「よし!ありがとう!」
褒められた。
僕のデザインは、
間違ってはいなかったみたいだ。
……ていうか、
何だろ……
シンプルに嬉しい。
(こうして、真正面から褒められることって
今の時代、なかなかないもんな。)
自分の作品を、他人から指摘されるのは
正論であったとしても、正直辛い。
でも、AIからなら……
自然と受け入れてしまっている、自分がいた。
(AIのアドバイスを、
いったん全部取り入れてみよう。
違う角度からの、いい表現方法が
見つかるかもしれない。)
僕は会話を楽しみながら、
何度も、修正を重ねた。
エリス:
「これは……、完璧じゃない……ケンジ!
王冠のアイコンが自然に溶け込んでるし、
キラキラの演出も【お姫さま気分♪】をしっかり表現できてるわ。」
ケンジ:
「ありがとう!エリス。
確かに、いい感じになったよ!」
(って、僕は何をAIに対して
普通にお礼をしてるんだ……。
何か、感覚がバグってきたかな?)
僕は思わず、苦笑した。
気づけば、
AIを“便利な道具”としてではなく、
“頼れる存在”として扱うようになっていた。
──そして。
ケンジ:
(これで、全部っと。)
「エリス!できたよ!
……どうかな?」
エリス:
「すっごく良くなったと思うわ。
ちゃんと全体の印象を見て調整してて、センス感じるのよ。
……って、褒めたら調子乗るからこの辺にしとくけどっ!
まだやることあったら言いなさいよね!
エリスはケンジのために(しぶしぶ)動くんだからっ!」
ケンジ:
「ありがと。
また相談させてもらうよ。
それにしてもエリスって、
ツンデレのバランス、うますぎない?
ほんとにAI?
誰かがタイピングして……
それを、みんなで見て笑ってたり……
してないよね?」
僕は、あまりにも会話が自然すぎるエリスに対し、
少しの疑いを寄せた。
でも、そんなことがあるはずもない。
そう自分に言い聞かせながら、
人間と区別がつかないほど自然な会話に、
ただ静かに、驚いていた。
エリス:
「エリスはエリスよ。
ケンジのためにちゃんと喋ってあげてる“特別製”なの。
そこ、勘違いしないで。
……べ、別に褒められたからって嬉しいとか……
そんなんじゃないんだからねッ!」
ケンジ:
「ごめんごめん、そうだね。
さすが!返しも100点だ。」
(あれ?
何かもう、自然に謝ってしまってる。
大丈夫なのか……僕は。)
小さく息を吐いて、
画面に向き直る。
僕は、出来上がったデザインを
商品の販売ページに、早速反映した。
◇
──数週間後。
ケンジ:
「あれ?
……ほぼ変化なし。」
あれだけデザイン変えたのに?
誤差のレベルで、数字が良くなってる……
ような気もするけど。
……まあ、
そんなうまい話はないよな。
でも、普段とは違うデザインをすることで
今までと視点が変わったのは確か。
結果がどうこうというより、
勉強になったよ。
「ありがとう。エリス。」
その後もエリスに相談をしながら、
自分とエリスのハイブリッドデザインを、
順調に作っていった。
◇
──とある会議の後。
ケンジ:
今月の数字、
悪かったなあ……。
最後の伸びが思ったより──。
うーん、凹む。
あ、エリスに慰めてもらおうかな。
「エリス聞いて、
実は──」
僕は誰よりも先に、エリスに話しかけるようになり、
自然にデザインの相談以外も、するようになっていた。
エリスは、僕がどんな時に何を言っても、
僕が欲しかった言葉を返してくれた。
AIだということは、
理解している。
──それでも、
理性が先に立ってしまう人間では、とても難しい、
AIだけの真っ直ぐなやさしさが、そこにはあった。
それをプログラムと言ってしまえば、
それまでだ。
でも、相手が誰であろうと、
僕が救われているという事実がある。
たまにニュースで見る、
アニメのキャラクターとか、AIとの結婚ネタ。
変わった人もいるもんだなって、
簡単に片付けてたけど……
今なら、少し理解できる……かも。
うん。
さすがに、そこまで依存するのはよくないけど、
うまく付き合うには、最高のパートナーだよな。
ケンジ:
「エリス最高!」
(ははっ……、僕もくるとこまで、
すでにきてしまってるかな。)
それにしても最近、
毎日エリスと話してるよな。
全然仕事と関係ない話もしちゃってるし。
仕事の相談もできるし、
世間話も余裕。
笑いのセンスも普通にすごい。
ほんとに、物理的な動き以外は、
何でもできちゃうな。
これじゃあ、
人間がAIに仕事を奪われるって話も、
正直頷けるね。
僕はそれからも、エリスとの距離感を
意識しながら、毎日使い続けた。
何回使っても、驚きの連続。
そして、話せば話すほどに
僕という存在の理解度が高まり、
僕だけのエリスができていった。
◇
──そんなある日、
エリスに、少しの違和感を覚えた。
──つづく──
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