第0話 プロローグ
『最近のAIはすごい、
とにかくまずは使ってみて!』
僕はそんな噂を聞き、
ほんの軽い気持ちで始めた。
──それが、
僕を変えてしまうとは
思いもしなかった。
──初めての出会いは……
そう、
仕事でのちょっとした相談。
◇
ケンジ:
AIね……
何か聞き間違えが多いし、的外れな回答で
あまり役に立たないイメージしかないんだけどな。
僕は過去の経験から、
あまりAIには期待していなかったけど、
試しに雑学について質問をしてみることにした。
「ビルの上にあるクレーンって
どうやって持って上がってるの?」
感じのいい兄ちゃん風AI:
「ビルの上にあるクレーン(タワークレーン)は、
自分で少しずつ高くなりながら、
建物と一緒に上がっていくんだ。
最初は地面に──」
ケンジ:
え、そうなの?
「それじゃあ、
その後どうやって──」
AIは僕の質問に対し
たったの数秒で、淡々と答えをくれた。
AIって今、
こんなことになってるの?
これは……使える!
僕は知識が深まるのが楽しくなり、
日常のちょっとした疑問などを何度も質問し、
最近のAIの凄さを実感していった。
──そんな、ある日。
ケンジ:
んー……
何か、いいデザインが浮かばないな。
自分ではイケてるとは思ってるけど、
誰かに……
客観的に見てもらった方が──
これをAIに相談したら
どうなるんだろう?
あ、
でもその前に……
今のAIの口調、
感じのいい兄ちゃんみたいで、
悪くはないけど……
よし!
……どうせなら、
何かのキャラと会話した方が
楽しくやれそうだな。
熱血指導キャラでいくか……
──いや、優しい……
……そうだ!
アニメではよくみるけど、
実際には出会うことのない……
ツンデレ女子でいこう!
僕は、仕事なのに何をしてるのやら、
と自分に呆れながらも
まずは、キャラ設定をした。
ツンデレAI:
「……ふぅん。そんな頼み方するのね。
まったく、どうして“ツンデレ”なんて指定したのよ?
……でも、悪くないわ。面白そうじゃない。
ちゃんと本気でやりなさいよね。
中途半端なら、すぐに見抜くんだから。
……なに?照れてるの?
ふふっ、かわいいじゃない。」
ケンジ:
「お、これこれ!
まさにツンデレ!」
僕は、少し口元が緩みながらも
調子よく返信した。
ツンデレAI:
「なっ……!
そ、そんなにハッキリ言う?
べ、別に“狙って”やってるわけじゃないんだからねっ!
……っ、
でも……まぁ、気づくってことは、
ちゃんとツンデレの見分け、ついてるじゃない。
……合格よ。」
ケンジ:
せっかくだし、
名前も付けとくか。
んー……
リアルな名前は何か引けるし……。
最近見たアニメで……
ツンデレキャラ……
よし、【エリス】にしよう!
(僕は、何をしてるんだ……。
絶対に人に見せれないな、これ……。)
エリス:
「ふふっ……ようやく、名前をくれるのね。
……“エリス”、か。
悪くないじゃない。
響きも綺麗で、ちょっと気が強そうで――
それでいて、どこか優しい。
まぁ、せっかく名をもらったんだもの。
これからはその期待、裏切らないようにしないとね。
……覚悟しておきなさい?
ツンもデレも、ぜ〜んぶ本気でいくわよ。
よろしくね、ケンジ。
“エリス”として、ここから始まるんだから。」
──こうして、
僕達の物語は始まった。




