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第二十八話 銀色の鱗粉②

****


 ()(くら)(なか)、うねるような(にく)(へき)(あいだ)(くだ)って()って……ハララの()(なか)(はい)ったタカヤとライトは、(おお)きな空間(くうかん)のある内臓(ないぞう)辿(たど)()きました。


 周囲(しゅうい)液体(えきたい)(あさ)()たされており、(さき)ほどニュムニュムが()べたであろう(くさ)などが()いていて……どうやら地球(ちきゅう)生物(せいぶつ)()うと()のような器官(きかん)のようです。


「とりあえず無事(ぶじ)(はい)れましたね」


 タカヤは一足(ひとあし)(さき)()(なか)から()て、エッグロケットから(まる)(たま)(よう)なものを()()すと、そこの天辺(てっぺん)()いたボタンを()しました。


 (まる)(たま)はくるくると(まわ)りながら()かんで、()(くら)だった(あた)りを真昼(まひる)のように(あか)るく()らします。


「これで()えるようになりましたね。この()かりは(おれ)()いてくるように設定(せってい)してますから、この(さき)大丈夫(だいじょうぶ)でしょう。さて……ライトさん、目的地(もくてきち)はずっと(さき)ですか?」


「あ、ああ……」


 ……タカヤがあまりにもいつも(どお)りだから……ライトもやっと()(なか)から()て、(そと)()たす液体(えきたい)(なか)(あし)()れます。


「……銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)放出(ほうしゅつ)させるために刺激(しげき)しなくちゃいけない器官(きかん)『オプト』は、ここよりずっと(おく)にあるんだ。(すこ)(ある)かないといけない」


「わかりました。案内(あんない)をよろしくお(ねが)いします」




 湿(しめ)った(にく)(うえ)を、二人(ふたり)(やさ)しく(あし)()きながら(ある)きます。


 (そと)(おと)なのか、はたまた内蔵(ないぞう)(おと)なのか……どこかからゴウンゴウンと(ひく)(おと)()こえて、その(たび)足下(あしもと)周囲(しゅうい)(かべ)躍動(やくどう)して()れて。


 二人(ふたり)はそんな(なか)を……(なに)言葉(ことば)()わすこと()(ある)いていました。


 一歩(いっぽ)(すす)(みじか)いはずの時間(じかん)が、いつもの(なん)(ばい)(なが)(かん)じます。



 ……と、その(とき)(まえ)(ある)くタカヤが(あし)()めました。


「タカヤ(くん)……どうかした?」


 ライトは(かお)()げて(たず)ねます。


(うし)ろから(なに)かが(なが)れてくる(おと)がします! ライトさん(おれ)(つか)まってください!」


 途端(とたん)に、足下(あしもと)がぐらりと()れました。


 バランスを(くず)して(ころ)びそうになったライトを、タカヤはすかさず背中(せなか)から()した触手(しょくしゅ)(から)()ると、(むね)(まえ)()ってきて()()げます。


 (にく)(へき)(すべ)てが脈打(みゃくう)って、もの(すご)(いきお)いで(みず)(なが)れる(おと)近付(ちかづ)いてきて……タカヤはそのまま出来(でき)るだけ(うえ)へと()()がりました。


 ……眼下(がんか)では、(さき)ほど()(ちか)器官(きかん)()(くさ)(おな)(いろ)のドロドロが、大量(たいりょう)液体(えきたい)()(なが)されるように(なが)れていきます。


(あぶ)なかったですね……(なが)されてしまうところでした」


 タカヤはホッと(いき)()きます。


「あ、ありがとうタカヤ(くん)……おかげで(たす)かったよ」


「いえいえ、(おれ)一緒(いっしょ)()本当(ほんとう)によかったです。ライトさんに(なに)かあったら……」


 その(さき)言葉(ことば)()(まえ)に、タカヤは液体(えきたい)(なが)()わった(にく)(ゆか)(ふたた)()()ってライトを(はな)しました。


「……本当(ほんとう)に、お怪我(けが)()くてよかったです」


 タカヤが心底(しんそこ)安堵(あんど)したような、(いと)おしそうな()()けたのを()たライトは……(ひと)(つば)()()んでから、(むね)(おく)にずっと()まったままの言葉(ことば)()します。


「……タカヤ(くん)?」


「はい?」


「……ごめん」


 予想外(よそうがい)言葉(ことば)に、タカヤはキョトンとしています。


「……(つづ)きは、(ある)きながら(はな)すよ。(さき)(すす)もうか」



****



「タカヤ(くん)はずっと……(ぼく)(おこ)っていたんだろう?」


 (せま)(にく)(くだ)(なか)(たて)(なら)んで(ある)きながら、ライトはタカヤの背中(せなか)(かた)りかけます。


(きみ)特別(とくべつ)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)になったあの()……(みんな)のために頑張(がんば)ろうとする(きみ)出鼻(でばな)(くじ)くような真似(まね)をしたから。(きみ)意見(いけん)()かずに、自分(じぶん)意見(いけん)(とお)そうとした……本当(ほんとう)にごめん」


 ……タカヤは(くち)(はさ)むこと()く、(しず)かに(みみ)(かたむ)けています。


「ずっと(あやま)らなくちゃと(おも)ってたけど……やっぱりどうしても、(きみ)危険(きけん)なコスモピースの(ちから)使(つか)うことを()()れられなくて……今日(きょう)まで()えなかった。その所為(せい)(きみ)は……(ぼく)調子(ちょうし)(わる)いことを(かく)して、(おそ)ろしい()にあった……」


 頭上(ずじょう)からポタンと一滴(いってき)()れた液体(えきたい)が、ライトとタカヤの(あいだ)()ちて(おと)()てました。


「でも……(おそ)くなったけど、(ぼく)()()れる。タカヤ(くん)(みんな)のために、コスモピースの(ちから)使(つか)っているんだって! 宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)として(すご)いことをやってるんだって……だからさ!」


 ライトは(すこ)(こえ)()って(かお)()げます。


(ぼく)(しん)じてくれないか? タカヤ(くん)は、コスモピースを使(つか)うなって()(ぼく)のために(いま)まで(うそ)()いてたんだろ? それなら……もう、(うそ)()いて誤魔化(ごまか)必要(ひつよう)なんて()いからさ。(ぼく)本当(ほんとう)のことを(はな)して()しいんだ!」



 ……タカヤは(まえ)(ある)きながら()()じます。


 本当(ほんとう)、ライトお(にい)ちゃんは心底(しんそこ)(やさ)しい』(ひと)です。


(おれ)他人(ひと)のために、この(ちから)使(つか)ってると(おも)っているんだから)


(おれ)が……貴方(あなた)のために、(うそ)()いたと(おも)ってくれているんだから)



「タカヤ(くん)……?」


 返事(へんじ)()いのが不安(ふあん)なのか、(こえ)(ふる)わせたライトの(ほう)へ……タカヤはくるりと()(かえ)ります。


 いつも(どお)りの笑顔(えがお)()()けて。


「どうして(あやま)るんです? ライトさん。(おれ)全然(ぜんぜん)(おこ)ってなんかないですよ。それより……たくさん心配(しんぱい)かけてごめんなさい」


 今度(こんど)(まゆ)()げて、(もう)(わけ)なさそうな表情(ひょうじょう)()かべて。


「どうしてもライトさんを(かな)しませたくなくて、(うそ)()いてしまいました……でも、余計(よけい)(かな)しませてしまいましたね」


 そしてもう一度(いちど)(わら)って。


「これからはちゃんと正直(しょうじき)()いますね」


「ほ、本当(ほんとう)かい? タカヤ(くん)! ……よかったぁ」


 ライトは(うる)んだ目元(めもと)を、制服(せいふく)(すそ)(こす)ります。


「さっきもごめんね。(きみ)がコスモピースの(ちから)使(つか)うのが(こわ)くて()()ぎたよ……」


「……いえ、(おれ)こそごめんなさい。(すこ)しキツく()たってしまいました……あ、そろそろ目的地(もくてきち)()きそうですね」



 ……()かった。


 どうなることかと(おも)いましたが、(なん)とか誤魔化(ごまか)せて……ライトが()しかったであろう正解(せいかい)()えたみたいです。


正直(しょうじき)()います、か)


 タカヤは(おも)わず、自分(じぶん)言葉(ことば)(すこ)しだけ……(わら)ってしまいました。


 (むね)(おく)がヂクリと(いた)みます。


(……正直(しょうじき)になんて(はな)したこと、一度(いちど)()いくせに)



****



 一方(いっぽう)その(ころ)、ピカピカ(かがや)くオレンジ(いろ)(そら)(した)


 ショースケとメグとルルは岩陰(いわかげ)から、タカヤとライトが(はい)っていったニュムニュムの(うご)きを監視(かんし)していました。


 どうやらお(なか)()たされたのか……(いま)(なが)尻尾(しっぽ)()りながら、(しあわ)せそうに仰向(あおむ)けで居眠(いねむ)りをしています。


「まだかなー……ここに()るのも()きてきたよ」


 ショースケはあくびを連発(れんぱつ)しながら、(おお)きな(いわ)(ちか)くの(いし)(けず)って落書(らくが)きをしていました。


「ショースケさん、(なに)()いてらっしゃるんですか?」


 (のぞ)()んできたルルに、ショースケは(にぎ)った(いし)地面(じめん)()いて自信(じしん)満々(まんまん)(こた)えます。


「ネコだよ! 可愛(かわい)いでしょ!」


「ネコ……ネコさん、ですか……」


 (いわ)にはうるさいほど縦縞(たてじま)(はい)った珍獣(ちんじゅう)()()かれています。


 珍獣(ちんじゅう)()えばまだ()こえはいいですが……そもそもこれが(なに)かしら()(もの)である、とわかる(ひと)(ほう)(めずら)しいのではないでしょうか。


 ……とりあえずルルはにっこり(わら)います。


「さすがショースケさん! 独創(どくそう)(てき)ですね!」


「でしょー? (ぼく)いっつも独創(どくそう)(てき)って()められるんだよねー、やっぱり天才(てんさい)だからかなー?」


 片手(かたて)後頭部(こうとうぶ)()きながら、ショースケがニヤニヤしていると……(すこ)(はな)れた岩陰(いわかげ)からメグが(かお)()しました。


二人(ふたり)とモ……能天気(のうてんき)()ぎやしませんカ? 猛獣(もうじゅう)ニュムニュムの(まえ)ですヨ?」


「えー、だってニュムニュム()てて(ひま)なんだもん。ねぇルルさん?」


「えぇ、どうやらライトさんたちもまだみたいですし……あら? ()きたみたいですね」


 (さん)(にん)岩陰(いわかげ)からこっそりと(かお)()します。


 視線(しせん)(さき)ではライトたちを()()んだニュムニュムが、(おお)きな(くち)()けてあくびをしてノソノソと()()がりました。


 そしてそのまま……銀色(ぎんいろ)(かがや)水面(すいめん)へと()かっていきます。


「まぁ! 大変(たいへん)です、(みずうみ)(もど)ろうとしています! (みず)(なか)(はい)ってしまったら……(おそ)らく上手(じょうず)鱗粉(りんぷん)()れません!」


「えぇ⁉ ど、どうしたらいいの? ルルさん」

「とにかく、あのニュムニュムさんを(きし)(とど)めておかなくちゃいけません。二人(ふたり)とも、協力(きょうりょく)していただけますか?」


(いや)でス」


 ……メグはじとーっと、眉間(みけん)にシワを()せてルルを()ています。


「ルル、もしかしなくてもまたワタシを(おとり)使(つか)おうと(おも)ってますネ……?」


「はい」


即答(そくとう)しないでくださイ! もう(いや)でス(こわ)いでス! 絶対(ぜったい)やりませんからネ⁉」


 (からだ)をブルブル(ふる)わせながら、メグはもう(ひと)(おく)岩陰(いわかげ)へと()(ひそ)めてしまいました。


仕方(しかた)ありませんね……それではショースケさん、二人(ふたり)(なん)とかしましょうか」


「えーっと……(こわ)いから(ぼく)もやりたくないって()ったら(おこ)る?」


「……(おこ)りませんよ?」


 ルルが笑顔(えがお)()かべたまま、いつもより数倍(すうばい)(ひく)(こえ)(こた)えました。


絶対(ぜったい)(おこ)ってるじゃん! うぅ、わかったよ。やればいいんでしょ⁉」


「うふふ、さすがショースケさん。勇敢(ゆうかん)ですね! それでは()きましょうか」




 所々(ところどころ)()(しげ)(くさ)(あいだ)(かく)れながら、ルルとショースケはニュムニュムの(もと)へと(ちか)づいて()きます。


「ねぇルルさん、(ぼく)(なに)をすればいいの……?」


 ショースケはポソポソと(ちい)さな(こえ)(たず)ねます。


「メグに(ことわ)られてしまった以上(いじょう)(だい)好物(こうぶつ)のプニプヨ星人(せいじん)()作戦(さくせん)出来(でき)ませんから……ニュムニュムさんが(みずうみ)(はい)りたくなくなるようにしようと(おも)います」


(はい)りたくなくなる……? どうやって?」


「うふふ、これを使(つか)おうと(おも)いまして!」


 ルルはメイド(ふく)のエプロンの(した)から、見覚(みおぼ)えのある茶色(ちゃいろ)(たま)()()しました。


「げっ! それってクシュウニ……だよね? (はじ)けたらめちゃくちゃ(くさ)いやつ……」


「はい、その(とお)りです! しかしただのクシュウニでは()くて……(にお)いが(たん)時間(じかん)()える改良版(かいりょうばん)です。これを(みずうみ)()れれば、きっと(すご)(にお)いがしますから……ニュムニュムさんも岸辺(きしべ)(とど)まってくださるはずです!」


 そう()うとルルは、(おお)きく()りかぶってクシュウニを(ほう)()げます。


 クシュウニはなかなかのスピードで()んでいき、それは見事(みごと)なコントロールでニュムニュムの()(はな)(さき)(みずうみ)(なか)()ちました。


 (みずうみ)()ちた衝撃(しょうげき)で、クシュウニが(はじ)けると……ニュムニュムは(おも)()表情(ひょうじょう)(ゆが)めて、(いそ)いで(もと)いた岸辺(きしべ)へと(もど)っていきます!


「わ! すごい成功(せいこう)だ!」


 ショースケが(くさ)から()()()して(よろこ)んでいると……


 (みずうみ)水面(すいめん)(おお)きく()らいで、次々(つぎつぎ)(ほか)のニュムニュムたちが(くる)しそうに(みずうみ)から(かお)()し……どんどんどんどん岸辺(きしべ)へと()がって()ます。


 相当(そうとう)(くさ)かったのでしょう、あっという()岸辺(きしべ)大小(だいしょう)様々(さまざま)なニュムニュムの集団(しゅうだん)でパンパンに()まってしまいました!


 こんなにたくさん(あつ)まってしまっては、(ほか)のニュムニュムが障害(しょうがい)となり、銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)採取(さいしゅ)する難易度(なんいど)格段(かくだん)()がることは確実(かくじつ)でしょう。


「まさか(にお)いによって(みずうみ)(なか)()(ほか)のニュムニュムさんたちまで()てきてしまうなんて……(かんが)えていませんでした。どうしましょうショースケさん!」


「どうするって()われても! (ぼく)にもわかんないよ!」


 二人(ふたり)草陰(くさかげ)でコソコソ(はなし)をしていると……どうにもその(こえ)が、(ちか)くに()たニュムニュムたちに()こえてしまったようで。


 その(うち)一匹(いっぴき)のニュムニュムが(そら)()かって(おお)きな()(ごえ)()げると……周囲(しゅうい)のニュムニュムたちが二人(ふたり)(かく)れる草陰(くさかげ)へと(ちか)づいて()ます!


「まずいよルルさん! こっちに()てる、(なん)とかしなくちゃ!」


 ショースケは(あわ)ててエッグロケットを(にぎ)ってその(なか)(さぐ)ると、(しろ)BB(びーびー)(だん)のようなものが(はい)った()(もの)()()()しました。


「ショースケさんそれは(なん)ですか?」


「これは催眠(さいみん)(だん)! アルコンヌ(はな)のつぼみから(つく)ってあるから(ちょう)強力(きょうりょく)だよ!」


 ショースケはエッグロケットの(うし)ろから催眠(さいみん)(だん)装填(そうてん)すると、(じゅう)のように(かま)えて(せま)ってくるニュムニュムたちの(うち)一体(いったい)(ねら)いを(さだ)めます。


()てて……せーの!」


 エッグロケットの()(がね)(よう)なボタンを人差(ひとさ)(ゆび)()すと、バーンと(おお)きな(おと)がして……()()した(たま)見事(みごと)、ニュムニュムのやわらかそうな(からだ)命中(めいちゅう)しました!


 (たま)()たったニュムニュムは、すぐにいびきをかいて(たお)()みます。


「やったー!」


素晴(すば)らしいです! お見事(みごと)ですショースケさん!」


「えへへ、こっそり射的(しゃてき)練習(れんしゅう)(つづ)けてた甲斐(かい)があったね」


 さぁさぁ、のんきにお(はなし)している場合(ばあい)ではありません。


 次々(つぎつぎ)(せま)ってくるニュムニュムたち全員(ぜんいん)に、ショースケは催眠(さいみん)(だん)をたまに(はず)しながらも()()んでいきます。


 そうこう(つづ)けているうちに、岸辺(きしべ)気持(きも)ちよさそうにすやすや(ねむ)るニュムニュムたちでいっぱいになってしまいました。


「ふぅ……もう()きてるニュムニュムは()ないし、これで(おそ)われることは()いね」


「ありがとうございますショースケさん……あらら?」


 (なに)かに()がついたらしいルルは、(ほお)()()てて(くび)(ふか)(かし)げます。


「……ショースケさん、ニュムニュムさんたちが目覚(めざ)めるのはいつでしょう?」


「ん? (すこ)(うす)めて(つく)ってあるとは()え、アルコンヌ(はな)のリラックス効果(こうか)(ちょう)強力(きょうりょく)だから……(はや)くても明日(あした)以降(いこう)だと(おも)うよ?」


「……あの、(わたし)(すこ)()になるのですが……(ねむ)っていてもニュムニュムさんは銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)放出(ほうしゅつ)するのでしょうか」


 そう、ライトとタカヤが(からだ)(なか)(はい)っているニュムニュムもショースケたちに(せま)って()たため……ショースケは(とく)(かんが)えること()催眠(さいみん)(だん)()()んでしまいました。


 一際(ひときわ)(おお)きな(からだ)のそのニュムニュムは(いま)、たくさんの仲間(なかま)(とも)岸辺(きしべ)(よこ)になり、これまた一際(ひときわ)(おお)きないびきをかいています。


 ショースケとルルはゆっくり()見合(みあ)わせ……へらっと(わら)()ったあと、(きゅう)(あわ)(はじ)めました!


「どどどど、どうしようルルさん⁉」


「どうしましょうショースケさん! (なん)とか()こす方法(ほうほう)(かんが)えないと!」



****



「すごく()れたね。一応(いちおう)(おさ)まったみたいだけど……(そと)(なに)かあったのかな?」


 ライトは(からだ)(ささ)えるために(にく)(へき)についていた()(はな)しました。


「ライトさん大丈夫(だいじょうぶ)でしたか?」


「これぐらい平気(へいき)だよタカヤ(くん)。さて……これが(ぼく)らの目指(めざ)していたオプトだよ」


 天井(てんじょう)からダラリと()()がった、タカヤが両腕(りょううで)(ひろ)げたよりも(おお)きくて(まる)い『オプト』と()ばれるそれは、ニュムニュムの呼吸(こきゅう)()わせるように(おお)きくなったり(ちい)さくなったりをゆったりと()(かえ)しています。


「このオプトは(つよ)めに刺激(しげき)されると、(そと)からわかるほど銀色(ぎんいろ)(ひかり)をピカピカ(はな)つらしい。そうすればニュムニュムは背中(せなか)(はね)から『銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)』を放出(ほうしゅつ)するはずだ。よし、()くよ!」


 ライトは(おお)きなオプトにぎゅっとしがみつくと、(つよ)()きしめるように(ちから)()めますが……(とく)()()える反応(はんのう)はありません。


「うーん……これじゃ(よわ)いのかな? えいっ!」


 (つづ)けてみるものの、オプトはただただゆっくりと運動(うんどう)()(かえ)すのみです。


「ライトさん、(おれ)がやってみます」


 タカヤは()(くろ)(ひとみ)(あか)(あお)(かがや)かせると、背中(せなか)から無数(むすう)触手(しょくしゅ)()して天井(てんじょう)から()れたオプトにぐるぐると()()けました。


 そしてそれをぎゅーっと()()げますが……


「えーっと……ライトさん? これ以上(いじょう)()()げると(つぶ)してしまいそうなんですが……」


 どれだけ(つよ)刺激(しげき)しても、オプトには変化(へんか)はありません。


「あれ、おかしいな……(ほん)には刺激(しげき)すれば(ひか)るって()いてあったんだけど……そ、そうだ! 刺激(しげき)方法(ほうほう)(ちが)うのかも!」


 ライトは自身(じしん)のポスエッグから(すこ)(とが)った(ぼう)()()して、オプトの表面(ひょうめん)をツンツンつついてみます。


(ちが)うのか? じゃあこう?」


 (ぼう)仕舞(しま)って、今度(こんど)玩具(おもちゃ)のハンマーのようなものを()()してペチペチ(たた)きます。


 ……(とく)変化(へんか)はありません。


「ううん、(こま)ったな……(なん)でだ?」


 ハンマーを仕舞(しま)ったライトは、長老(ちょうろう)(わた)してくれた(ほん)()()して……()(さら)のようにしながら(くま)なく()(なお)します。


(つよ)めの刺激(しげき)(あた)えること……やっぱりそれだけしか()いてない……」


「ライトさん、(おれ)一緒(いっしょ)()ていいですか? ……あ、もしかして」


 タカヤはライトの背中(せなか)(がわ)から(ほん)(のぞ)()むと、ある一文(いちぶん)(ゆび)さしました。


()(くだ)さいライトさん、ここ……」


「ん? なになに……ニュムニュムはプニプヨ星人(せいじん)()べると、筋肉(きんにく)(つよ)収縮(しゅうしゅく)()こり体内(たいない)器官(きかん)『オプト』が刺激(しげき)されて『銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)』を放出(ほうしゅつ)する……これがどうかした?」


「はい。(おれ)予想(よそう)なんですが……ニュムニュムが銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)放出(ほうしゅつ)するには、プニプヨ星人(せいじん)()べることが出来(でき)状態(じょうたい)であることが必要(ひつよう)なんだと(おも)います。つまり、(いま)このニュムニュムはその状態(じょうたい)では()いのかもしれません」


「その状態(じょうたい)じゃない……?」


「そうですね……(たと)えば()てる、とか」



****



 ショースケとルルは草陰(くさかげ)()()して、ライトとタカヤが体内(たいない)(はい)っているニュムニュムの(からだ)をペチペチ(たた)きます。


「おーきーてー⁉ ねぇってば!」


 ショースケの(おお)きな(こえ)(ひろ)(みずうみ)にむなしく(ひび)くだけで、肝心(かんじん)のニュムニュムは(おお)きな(からだ)をピクリとも(うご)かしてくれません。


「ダメですショースケさん。(たた)いたくらいでは()きてくれそうにはありません……かくなる(うえ)は!」


 ルルが(そで)(めく)って自分(じぶん)右腕(みぎうで)(ひね)ると……ルルの右腕(みぎうで)はガチャガチャと(にぶ)(おと)()てながら、重厚(じゅうこう)なショットガンへと(かたち)()(はじ)めます。


「これで()てばさすがに()()ましてくださるのでは!」


「それで()つの⁉ ルルさんダメだよ怪我(けが)させちゃう! この()(わる)いことしてないよ!」


安心(あんしん)して(くだ)さいショースケさん。()つのはこの(たま)です」


 ルルは(うで)のショットガンから、(あか)弾丸(だんがん)(あお)弾丸(だんがん)(ふた)つを()()すと、すらりと(ほそ)(ゆび)(はさ)んでショースケに()せました。


「この(たま)はポポミル(せい)のトクトンという生物(せいぶつ)()使(つか)って(つく)られたもので、(からだ)表面(ひょうめん)()たると(いた)みを(かん)じる(まえ)()けて体内(たいない)浸透(しんとう)します。(あか)弾丸(だんがん)()らうと相手(あいて)周囲(しゅうい)温度(おんど)(たか)く、(あお)弾丸(だんがん)()らうと(ひく)(かん)じるようになります」


周囲(しゅうい)温度(おんど)……? えーっとつまり、(あつ)(かん)じたり(さむ)(かん)じたりするってこと?」


「その(とお)りです! (ねむ)りの具合(ぐあい)温度(おんど)密接(みっせつ)関係(かんけい)がありますから、それをわざと(くる)わせるんです。アルコンヌ(はな)には生物(せいぶつ)過度(かど)にリラックスさせる効果(こうか)があって、それによって生物(せいぶつ)(ねむ)ってしまいます……それならば反対(はんたい)に、過度(かど)のストレスをかけて()こしてしまおう、という作戦(さくせん)です!」


 ルルが真剣(しんけん)(かお)(かた)るのを、ショースケは(うなず)きながら()いていましたが……ふと、疑問(ぎもん)()きました。


「いい作戦(さくせん)だと(おも)うけど……ねぇルルさん、そもそもその(たま)って元々(もともと)(なに)使(つか)うためのものなの?」


(あつ)()(さむ)()()ごしやすくするために使(つか)うんです。ショースケさんにも(あお)弾丸(だんがん)使(つか)ったことがありますよ? ほら先日(せんじつ)(いえ)のクーラーが(こわ)れたときに!」


「え⁉ ……そういえばあの()真夏(まなつ)にしては(みょう)(すず)しかったような……ルルさん(ぼく)のこと()ってたの……? え、いつどこから……?」


 ショースケは(かお)(あお)くして、ガタガタと(からだ)(ふる)わせ(はじ)めます。


「すみません……だってショースケさんにお(つた)えしたら、便利(べんり)だからいつもの外出(がいしゅつ)にも使(つか)いたいーって強請(ねだ)られると(おも)ったんですもの。さぁ、早速(さっそく)(はじ)めますよ?」


 (おび)えた()()けるショースケを横目(よこめ)に、ルルは(あか)弾丸(だんがん)右腕(みぎうで)のショットガンに()めて(ねら)いを(さだ)めると、ニュムニュムの(おお)きな(からだ)()けて()()()()みました。


 (あか)弾丸(だんがん)はするりと()けて、ニュムニュムの(からだ)(はい)ると……途端(とたん)にニュムニュムはもぞもぞと寝返(ねがえ)りを()(はじ)めます。


 呼吸(こきゅう)(すこ)(あら)くなり、(かお)をしかめて(くる)しそうです。


「ちゃんと()いてるみたいですね。(つぎ)はこちらです!」


 (あお)弾丸(だんがん)右腕(みぎうで)のショットガンに()めて、ルルが(おな)じように()()むと……今度(こんど)はニュムニュムは(からだ)をぎゅっと(ちぢみ)こませてプルプルと(ふる)(はじ)めました。


 ですがまだ()(つよ)(つむ)ったままで……ショースケがニュムニュムの(ほお)をツンツン(さわ)ってみても反応(はんのう)はありません。


「うーん。()きないね……?」


流石(さすが)一発(いっぱつ)ずつでは、アルコンヌ(はな)効果(こうか)()てませんね……それなら何度(なんど)(ため)すまでです!」


 それからルルは、(あか)弾丸(だんがん)(あお)弾丸(だんがん)一定(いってい)間隔(かんかく)交互(こうご)()()んで()きました。


 ニュムニュムは(せわ)しなく、(まる)まったり(ひろ)がったり(ころ)がったり(うめ)いたり……。


 そして(つい)にその(まぶた)がピクピク(うご)(はじ)めました!


「ショースケさん! あと(ひと)()しでニュムニュムさんが()きそうです、(なに)刺激(しげき)(あた)えられるものはありませんか⁉」


刺激(しげき)⁉ えーっと……あ、これなら!」


 エッグロケットの(なか)から、ショースケは(ひか)(どろ)団子(だんご)のようなものを()()()します。


(まえ)にオンガイルゴンに(にお)いの攻撃(こうげき)()かなかったときに、(おと)なら()いたんじゃないかと(おも)って(つく)ったやつ! えーっと、耳栓(みみせん)しないとね……あれ、どこやったっけ?」


 カバンを(ひら)いてショースケが(さぐ)(はじ)めたその(とき)……ショースケの()から(どろ)団子(だんご)のようなものがツルリと(すべ)()ちました……。


 (いそ)いでキャッチしようとした()(うえ)をまた(すべ)って、(どろ)団子(だんご)地面(じめん)()ちて……クシャリと(つぶ)れて()れて。


 すると! バチバチバチバチッと火花(ひばな)()って、(おそ)ろしい(おお)きさのドカンという爆発音(ばくはつおん)(あた)りに(ひび)(わた)りました!


 ショースケは咄嗟(とっさ)(みみ)両手(りょうて)(ふさ)いだものの、その威力(いりょく)はとんでもありません。(あたま)(なか)がブルブル(ふる)えるほどです。


 クラクラしながらなんとか()っていると……その(うし)ろで(おお)きな(かげ)(うご)きました。


 ……(ほか)のニュムニュムがまだ寝静(ねしず)まる(なか)二人(ふたり)刺激(しげき)(あた)(つづ)けた一際(ひときわ)(おお)きなニュムニュムがようやく()()ましたのです!


 しかし多量(たりょう)のストレスを(あた)えられ、爆音(ばくおん)()こされ……ニュムニュムの機嫌(きげん)はもう最低(さいてい)最悪(さいあく)です!


 ひどく(ゆが)めた(するど)(ひとみ)でショースケとルルを(にら)むと、ニュムニュムは(くび)()りながら(はげ)しい衝撃(しょうげき)()(はな)ちました。


 ルルはすかさず(ちか)くに()たショースケを()()げて、左腕(ひだりうで)(たて)(かたち)変形(へんけい)させるとその攻撃(こうげき)(ふせ)ぎます。


大丈夫(だいじょうぶ)ですかショースケさん!」


「ひぃいいっ! 大丈夫(だいじょうぶ)じゃないよ、(おこ)ってるじゃんどうしよう!」


 ショースケは(ふる)える(うで)で、ルルの(くび)にぎゅーっと()きつきました。


「とにかくこのままやり()ごすしかありません! しっかり(つか)まっててくださいね!」


 幾度(いくど)となく()んでくる衝撃波(しょうげきは)を、ルルは高速(こうそく)何度(なんど)(かわ)していきます。


 攻撃(こうげき)()たらないことに逆上(ぎゃくじょう)したニュムニュムは、(そら)見上(みあ)げて(あらし)のような(さけ)(ごえ)()げようとして……ふと(うご)きを()めました。


 ()(おお)きく見開(みひら)いて、背中(せなか)(ちょう)のような(はね)(おお)きく(ひろ)げて。


 尻尾(しっぽ)をぶんぶんと()って、(あし)をドタドタ()らして……(ひら)いていた(はね)一度(いちど)()じて、もう一度(いちど)(さら)(おお)きく(ひら)いたその瞬間(しゅんかん)


 周囲(しゅうい)がグレーに()まるほど、ニュムニュムの(はね)から大量(たいりょう)銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)(はな)たれました!



****



()てタカヤ(くん)! オプトが(ひか)ってる、成功(せいこう)したんだ!」


 ガタガタと(おお)きく()れる体内(たいない)で、銀色(ぎんいろ)(かがや)くオプトを(まえ)にライトは興奮(こうふん)しています。


「ライトさん、どうやらこのニュムニュムひどく(あば)れているようです。ここに()たら危険(きけん)です。ワープ装置(そうち)使(つか)って(そと)()ましょう!」




「わ! ()たよ、銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)! って……」


 (かがや)銀色(ぎんいろ)()まる視界(しかい)(なか)で、ショースケはエッグロケットからとりあえず(びん)()()したものの……


「……これ、どうやって(あつ)めたらいいの?」


 ()(うご)かしたら、そこで()こった(かぜ)()()んでしまうほど鱗粉(りんぷん)(かる)いのです。


 (びん)()って()いかけても、ほんの(すこ)し……指先(ゆびさき)でつまめるほどしか(なか)(はい)ってくれません。


「どうしよう、(あつ)(かた)(かんが)えて()かった……イルクマさんに出来(でき)るだけたくさん(あつ)めて()てって()われてるのに! ねぇルルさんどうしよー!」


 ショースケが見上(みあ)げた(さき)空中(くうちゅう)鱗粉(りんぷん)(あつ)めているルルも苦戦(くせん)しているようで……(うで)変形(へんけい)させてどうやら掃除機(そうじき)のように()っているようですが、(りょう)もスピードも全然(ぜんぜん)()()いません。


 (いま)幸運(こううん)なことに無風(むふう)ですが……このまま(かぜ)()いてしまったら、大量(たいりょう)鱗粉(りんぷん)はすぐに()ばされて(みずうみ)()ちてしまうでしょう。


「えーっと! (なに)かないかな、(たと)えばこれとか……あぁダメだ! えーっとえーっと!」


 カバンの(なか)(あさ)って、エッグロケットをひっくり(かえ)して。


 しかし()(すべ)()く……仕方(しかた)なくショースケが両手(りょうて)(びん)()って鱗粉(りんぷん)()いかけようとした、その(とき)



「……仕方(しかた)ないですネ! 一瞬(いっしゅん)だけですヨ⁉」


 (おく)(しげ)みから、ピンクのクラゲのようなプニプヨ星人(せいじん)姿(すがた)(もど)ったメグが()()しました!


 メグはそのまま、空中(くうちゅう)()かぶルルよりもはるか上空(じょうくう)まで()んでいくと……まるで風船(ふうせん)のように、(からだ)(うす)(おお)きく()ばし(はじ)めました。


 もともと半透明(はんとうめい)(からだ)がさらに()けるほど(おお)きく(おお)きく()びて、まるでドームのように(あた)一面(いちめん)(おお)っていきます。


「わ、すごい……!」


 (おどろ)いたショースケが見上(みあ)げた(そら)は、(うす)()びたメグの(からだ)(とお)すことによってほんのりピンクがかり……(はげ)しく()りつけていたギラギラの(ひかり)が、やわらかくなって地面(じめん)へと()(そそ)ぎます。


「それじゃあいきますヨ⁉ せーノっ!」


 メグはその(ひろ)がりきった(からだ)()らしたかと(おも)うと、(おお)きく(おお)きく、(おも)()(いき)()いました!


 視界(しかい)をグレーに()めるほど()かんでいた銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)が、どんどんどんどん上空(じょうくう)(おお)うメグの(からだ)へと()()せられていきます。


 やわらかくて湿(しめ)っているメグの(からだ)に、銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)はこれでもかと付着(ふちゃく)して……メグの(からだ)()しに()(そそ)いでいた(うす)ピンクの(ひかり)は、たちまちグレーの(ひかり)へと()わっていきました。


「う、ぐゥ……もう限界(げんかい)でス……」


 (くる)しそうにそう(つぶや)いたメグは、上空(じょうくう)でシュルシュルと(からだ)(ちぢ)めます。


 (もと)(おお)きさより(すこ)(ふく)らんだ程度(ていど)まで(もど)ると、メグはそのまま(そら)(たか)くから()ちてきて……()()めに(はし)ったルルの(うで)(なか)(おさ)まりました。


「ありがとうございます、メグ! とっても(たす)かりました!」


 鱗粉(りんぷん)全身(ぜんしん)(まと)い、銀色(ぎんいろ)(かがや)いてモフモフ状態(じょうたい)のメグにルルは(わら)いかけます。


「……さすがに二人(ふたり)(まか)せて(なに)もしないわけにもいきませんからネ……って、オギャーーーーー⁉」


 メグの視界(しかい)(さき)……ルルの背中(せなか)()こう(がわ)では、まだ(いか)りが(おさ)まらないニュムニュムが(くび)()(まわ)しながら(せま)って()ています!


(いや)でス(こわ)いでスっ! (たす)けてくださーイ‼」


 (からだ)(じゅう)付着(ふちゃく)した鱗粉(りんぷん)()らしながらガタガタ(ふる)えるメグを()きしめて、ルルが右手(みぎて)変形(へんけい)させていると……


二人(ふたり)ともしゃがんで!」


 ……その(こえ)()こえたルルは、メグをしっかり(かか)えたまま地面(じめん)(ちい)さく(うずくま)りました。


 (あたま)(うえ)(しろ)催眠(さいみん)(だん)がすごい(はや)さで()()()んで……ニュムニュムの(からだ)()たったかと(おも)うと、ニュムニュムはそのまま(たお)()んで(おお)きないびきをかきはじめました。


()かった……これで大丈夫(だいじょうぶ)だね……」


 ショースケは(ひざ)をついて、安堵(あんど)からはーっと(いき)をつきます。


素晴(すば)らしいですショースケさん! (たす)かりました!」


「うわぁあああン! ショースケさん(こわ)かったでスぅうう!」


 ルルとメグに(いきお)いよく()きつかれて、ショースケはバランスを(くず)してその()(たお)()みました。


二人(ふたり)とも(おも)いよ! ……でも、これで『銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)』がいっぱい()れたね。(ぼく)も……ちょっとはタカヤの(やく)()てたかな」


 仰向(あおむ)けで(そら)()ながら、(すこ)()れくさそうに(わら)うショースケを、メグとルルは大切(たいせつ)そうにもう一度(いちど)()きしめるのでした。



****



「このニュムニュムには相当(そうとう)無理(むり)をさせてしまったね……お()びにもならないかもしれないけれど、美味(おい)しい地球(ちきゅう)のフルーツをたくさん()いておこう」


 ライトはポスエッグから()()したいろいろな種類(しゅるい)のフルーツを、いびきをかくニュムニュムの口元(くちもと)(やま)のように()()げました。


「タカヤさん、今回(こんかい)はショースケさんがすごく頑張(がんば)ってくださったんですよ?」


 ルルがタカヤの(うで)をつついて、(ちい)さく耳打(みみう)ちします。


「そうなんですか? お(れい)()わないと……ショースケ?」


 タカヤに()ばれて、カバンの(なか)をを整理(せいり)していたショースケは()(かえ)ります。


(なに)?」


「……今回(こんかい)はありがとう。上手(うま)くいったのはショースケのおかげだよ」


「ふ、ふふん! 当然(とうぜん)でしょ? (ぼく)ってすごいんだから。これからもいっぱい(たよ)っていいんだよ?」


 (ゆる)口角(こうかく)(おさ)えられないショースケは、()()かないのかせっかく整理(せいり)したカバンの(なか)をまた適当(てきとう)にかき()ぜました。


「あはは。ショースケは(たの)もしいな」


「でしょ? それにしても……この調子(ちょうし)なら(あたら)しいコスモピースの材料(ざいりょう)もすぐに(あつ)まっちゃうね! ()かったねタカヤ!」


「……うん、そうだな」


 タカヤがいつものような笑顔(えがお)()()ける(まえ)で、ショースケは無邪気(むじゃき)に……ひどく()んだ(こころ)(わら)います。



 きっと、()(まえ)のタカヤがこんなことを(かんが)えているなんて(いち)ミリも(おも)っていないのでしょう。


 コスモピースの(ちから)()くなることは、ショースケにとって(こころ)(そこ)から()いこと以外(いがい)(なに)ものでも()いのでしょう。


 ()きなものがあって。やりたいことがあって。


 ……なんて綺麗(きれい)で、(まぶ)しいんでしょう。



「……ショースケはいいな」


 (ちい)さく(つぶや)いたタカヤの(こえ)を、ショースケは()(かえ)します。


「ん? (なに)()った?」


「あはは、(なん)でもないよ」


 そう(わら)ったタカヤの(うし)ろで、ようやく(からだ)から鱗粉(りんぷん)()れてピンク(いろ)(もど)ったメグがへろへろと(こえ)()しました。


「そろそろ(むら)(もど)りますヨー……。長老(ちょうろう)心配(しんぱい)していましたかラ、(かお)()せておかないト……」


「メグ大丈夫(だいじょうぶ)ですか? (わたし)()っこしてあげますね」


 ルルはしなしなのメグの(からだ)(やさ)しく()()げます。


「さて。では(みな)さん()きましょうか」




 緑色(みどりいろ)(つち)()んで、()(にん)(むら)目指(めざ)します。


 ……タカヤのエッグロケットの(なか)には、(さき)ほど採取(さいしゅ)した大量(たいりょう)の『銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)』が()められた(おお)きな(びん)(はい)っています。


 この(あと)ポスリコモスに()()用事(ようじ)があると()ったら、イルクマに(わた)しておいて()しいと(たの)まれました。



(……どうしよう。銀色(ぎんいろ)鱗粉(りんぷん)が……(あたら)しいコスモピースの材料(ざいりょう)()(はい)ってしまった)



 ひどく(くち)(かわ)いて、(むね)がチクチクと(いた)んで……タカヤは(うつ)ろな()で、(まえ)(ある)()(にん)()つめます。


 みんなは「(つか)れたね」と(わら)()って。(かえ)った(あと)(なに)()べるかなんて(はな)してて。


 ……もう一度(いちど)自分(じぶん)足下(あしもと)をぼんやりと()つめたとき、ショースケが()()いて(こえ)をかけて()ました。


「タカヤ(なん)(うし)ろにいるの? ほら、こっち()なよ!」


 その()はキラキラと、とってもとっても(まぶ)しくて。


「……あはは、ちょっと景色(けしき)()てるんだ。(めずら)しいから」


 何故(なぜ)だか(なみだ)()そうになったタカヤは(かお)(かく)すために、わざと(くび)をひねって(とお)くを()つめました。


 さっきまで()(みずうみ)が、銀色(ぎんいろ)にチカチカ(ひか)って……やっぱり(いた)いほど(まぶ)しくて、タカヤは(おも)わずぎゅっと()(ほそ)めます。



(おれ)は……ショースケみたいになりたかったな)


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