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第二十五話 希望

****


「ねぇねぇタカヤ! ()()()てっ!!!」


 金曜日(きんようび)学校(がっこう)()わりの午後(ごご)()時過(じす)ぎ。


 タカヤの(いえ)にやって()たショースケは、玄関(げんかん)ドアをくぐるなり大騒(おおさわ)ぎです。


「どうしたんだよ、ショースケ」


「どうしたなんてもんじゃないんだよ! ほら、これ()てっ!」


 ショースケはカバンの(なか)からバッジを()りだして、タカヤの(かお)(まえ)にずずいっと()せつけました。


「えーっと……(きり)(たに)ショースケ、(きゅう)(きゅう)……お、ショースケ(きゅう)(きゅう)になったのか! おめでとう!」


「そう! さっき(いえ)(かえ)ったら本部(ほんぶ)から連絡(れんらく)()てたの! しかし……自分(じぶん)()うのもなんだけど、(ぼく)この(あいだ)結構(けっこう)なことやらかしたと(おも)うのによく昇格(しょうかく)出来(でき)たよねー」


 (くち)ではそう()いながらも、ショースケは(ほお)(ゆる)んで仕方(しかた)がありません。


「きっとショースケが(いま)まで頑張(がんば)って()たからだよ」


「えへへー、そうかなぁ。ところでタカヤ、今日(きょう)(たし)かじーちゃんに()ばれたんだよね? どうやらライトさんも()ばれて本部(ほんぶ)()ってるみたいでさ、もう(いえ)()なかったよ」


「ああ。(しょう)(ぞう)さんに連絡(れんらく)()ったら、ショースケも一緒(いっしょ)()れて()てくれって()われたんだ。出来(でき)るだけ(いそ)いでって(たの)まれてるし、もう()かないとな」


 タカヤは普段(ふだん)()()っている和室(わしつ)()()()けました。


 その(たたみ)(うえ)には、長方形(ちょうほうけい)(おお)きな(わく)()てて()いてあります。


「え、これってもしかして……ワープ装置(そうち)⁉」


「そうだよ、ポスリコモスまで直接(ちょくせつ)()くことが出来(でき)るんだ。(まえ)(とう)さんと(かあ)さんが使(つか)ってて、(いま)(おれ)がたまにつかってるよ」


「タカヤこんなの()ってたの⁉ ()ってよ、そしたら特急(とっきゅう)こすもに()らなくてもいつでもポスリコモス()放題(ほうだい)じゃん!」


 ポスリコモス大好(だいす)きなショースケは()(かがや)かせます。


「うーん、でも(うご)かすのには特別(とくべつ)なエネルギーが必要(ひつよう)で……そのコストが(たか)いから、(おれ)もどうしてもの(とき)以外(いがい)使(つか)ってないよ」


「ちなみに、一回(いっかい)使(つか)うのにいくらくらいかかるの?」


「えーっと大体(だいたい)……」


 タカヤがぽしょぽしょショースケに耳打(みみう)ちすると……


「……うん! (ぼく)特急(とっきゅう)こすもに()るからいいかな!」


 ……どうやらショースケのお給料(きゅうりょう)事情(じじょう)では無理(むり)があったようです。


 そこへ階段(かいだん)からドコドコ(おと)()てながら、ロボットのツバサが(いっ)(かい)()りてきました。


「ア! ショースケ ヤット キタネ! ホラ、ハヤク イコウ!」


 ツバサは触覚(しょっかく)をぶんぶん()らしてとっても上機嫌(じょうきげん)です。


今日(きょう)はツバサも一緒(いっしょ)()くの?」


「ソウ! ショウゾウ ガ キテモ イイヨ ッテ! ボク、タカヤ ノ リョウシン ニ アウ ノ ハジメテ! タノシミ!」


「あ、ツバサ()ったことないんだー」


 ショースケが何気(なにげ)なく(くち)にすると……ツバサは触覚(しょっかく)()(ほん)使(つか)って、器用(きよう)にショースケのふくらはぎを(つね)りました。


(いた)(いた)い! え、(なに)⁉」


「ツバサ、(いた)いことしたらダメだろ……さ、ポスリコモスに()くか」


 タカヤはツバサを()きかかえて、ワープ装置(そうち)上部(じょうぶ)()いたボタンを()しました。


 (なに)()かった四角(しかく)(わく)(なか)に、虹色(にじいろ)のマーブル模様(もよう)のモヤが(あらわ)れます。


「うーん……(いま)からこれをくぐったら、あれだけのお(かね)がかかるのか……」


「ショースケ、(いま)はそれは()にしなくていいから。ほら()くぞ」


 タカヤとツバサが(さき)にくぐった(わく)(なか)を、ショースケも(いそ)いで()いかけるようにくぐって()きました。



****



 宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)本部(ほんぶ)()(しろ)廊下(ろうか)(すす)んで、(つた)えられていた部屋(へや)(とびら)(ひら)くと……部屋(へや)(なか)では、春子(はるこ)(じゅん)(いち)とライトがお(ちゃ)()みながら談笑(だんしょう)していました。


「あら。タカヤ、ショースケくん、()てくれたのね! ……まぁ! もしかしてあなたツバサ?」


 春子(はるこ)はにっこり(わら)って、すぐにツバサを()()げます。


「ソウ! ボク ツバサ! タカヤ ノ カアサン スッゴク タカヤ ソックリ!」


「うふふ、そうでしょ? いつも()われるの。きゃー、やわらかくって可愛(かわい)い! ねぇ(じゅん)(いち)(さわ)ってみて?」


「ふむ……マシュマロ、みたいだな……」


 ……ツバサが二人(ふたり)にもみくちゃにされている(あいだ)に、タカヤとショースケはライトと(おな)じテーブルに()きました。


「ねぇライトさん、のんきにお(ちゃ)なんて()んでていいの? (ぼく)たち(いそ)いで()てって()われたんだけど」


 ショースケはテーブルの()(なか)()いてあるお菓子(かし)にすぐさま()()ばし、(ふう)()けながら(たず)ねます。


「うん、(ぼく)もそう()われて(いそ)いで()たんだけどね……どうも客人(きゃくじん)()きないらしいんだ」


(きゃく)? (だれ)()てるの?」


「そう。今日(きょう)春子(はるこ)さんと(じゅん)(いち)さんが(もど)ってきたときに一緒(いっしょ)()れて()たって()いてるよ。そうでしたよね?」


 ライトが(こえ)をかけると、春子(はるこ)はツバサを(むね)(かか)えたまま(うなず)きました。


「ええ。ごめんね、到着(とうちゃく)直前(ちょくぜん)()(はじ)めちゃって……とってもマイペースな(ひと)なのよ。一緒(いっしょ)UFO(ゆーふぉー)()っている(あいだ)()てばかりだったし、いろんな質問(しつもん)もしたけれど全然(ぜんぜん)(こた)えてもらえなくて……ちょっと(こま)っちゃった」


 春子(はるこ)(ちい)さくため(いき)()くと……




()きましたけどー?」




 ……突然(とつぜん)部屋(へや)()(なか)見慣(みな)れないET(いーてぃー)(あらわ)れました。


 宝石(ほうせき)のように(かがや)(くろ)(からだ)……以前(いぜん)出会(であ)ったココレヨさんと(おな)じオラブ星人(せいじん)のようですが、左目(ひだりめ)(まえ)にはモノクルに()(まる)くて透明(とうめい)なレンズが()いています。


(まった)くー、突然(とつぜん)こんなところに()れてきて……()きたら()らない部屋(へや)()ましたからー、わざわざこっちから出向(でむ)いて()てあげましたよー?」


 ふてくされているオラブ星人(せいじん)(くび)をゴキゴキ()らしたかと(おも)うと……(まばた)きをする()にタカヤの(まえ)()っていました。


()いたかったですー、コスモピース……まさかこの(あいだ)ので(こわ)れないなんて予想外(よそうがい)でしたー。(おも)ったより(からだ)適合(てきごう)しているのかもしれませんねー」


 オラブ星人(せいじん)感情(かんじょう)()もっていない(こえ)淡々(たんたん)(しゃべ)ります。


「この(あいだ)……? (なに)かあったのか……?」


「さぁ……ねぇライトくん(なに)()ってる?」


 不安(ふあん)そうな表情(ひょうじょう)()かべた(じゅん)(いち)春子(はるこ)に、ライトが(なに)()えないでいると……オラブ星人(せいじん)突然(とつぜん)、タカヤの(うで)(つか)みました。


「さぁ、()きましょーコスモピース」


「え……()くってどこへですか……?」


(わたし)()たオラブ(せい)ですよー。(すく)ないですが、あそこには(わたし)(あつ)めた材料(ざいりょう)がありますからねー」


材料(ざいりょう)……?」


「はいー」


 オラブ星人(せいじん)左目(ひだりめ)のレンズに()れると……突然(とつぜん)空間(くうかん)(おお)きく()けて、ワープ装置(そうち)(なか)のような虹色(にじいろ)のモヤが(あらわ)れます。


今度(こんど)こそコスモピース、アナタを()()るための生物(せいぶつ)(つく)材料(ざいりょう)ですー。さぁ、()きます……よー?」


 ……ライトがタカヤの(からだ)を、(うし)ろから()きしめるように()()りました。


「あのー、アナタはいらないから()なくていいんですけどー? (はな)してくださいー」


()かせるわけないだろ! 一体(いったい)どういうつもりだ!」 


 もの(すご)剣幕(けんまく)で、ライトはオラブ星人(せいじん)(にら)みました。


 その(あいだ)にショースケも春子(はるこ)(じゅん)(いち)もツバサも、タカヤの(からだ)(つか)んでオラブ星人(せいじん)とは(ぎゃく)方向(ほうこう)()()ります。


 ……どうも(ちから)(よわ)いらしいオラブ星人(せいじん)は、そのままズルズルと()()られ……(たま)らずタカヤを(つか)んだ()(はな)しました。


「うーん、馬鹿力(ばかぢから)ですねー……(まった)くー。どういうつもりもなにもー、(わたし)はコスモピースを()って(かえ)るために、わざわざあんなに(おそ)UFO(ゆーふぉー)()ってここまで()てやったんですー。感謝(かんしゃ)して()しいくらいですよー?」


 オラブ星人(せいじん)苛立(いらだ)ちを()さえられないのか、わざとらしく(あし)()らします。


「ちょこまかと邪魔(じゃま)ですねー……アナタたちなんて、(わたし)頭脳(ずのう)にかかれば(いま)すぐ()してしまえるんですよー? 仕方(しかた)ないー、わからせてあげましょうかー」


 大層(たいそう)面倒(めんどう)くさそうに(かお)をしかめて、オラブ星人(せいじん)がまた左目(ひだりめ)のレンズに()れました。


 すると部屋(へや)(じゅう)のあちこちの空間(くうかん)()けて、その(なか)から銃口(じゅうこう)のようなものがいくつも(あらわ)れます。


(べつ)(きず)つけたいわけでは()いんですけどー、邪魔(じゃま)をするのが(わる)いんですよー? ……大人(おとな)しくしててくださいねー」


 オラブ星人(せいじん)がもう一度(いちど)左目(ひだりめ)のレンズに()れようとした、その()を……


「やめてください」


 ……()()いた(とき)には、タカヤの背中(せなか)から()びた触手(しょくしゅ)(から)()っていました。


 さらに(かぞ)()れない本数(ほんすう)触手(しょくしゅ)背中(せなか)から()やしたタカヤは、それを使(つか)って空間(くうかん)から(あらわ)れた銃口(じゅうこう)()にも()まらぬ(はや)さで(すべ)()()()えると……そのままオラブ星人(せいじん)(からだ)大量(たいりょう)触手(しょくしゅ)()()けて拘束(こうそく)します。


(おれ)もあなたを(きず)つけたいわけでは()いんですけど……(おれ)大切(たいせつ)(ひと)(きず)つけるなら容赦(ようしゃ)はしません。(わる)(おも)わないでくださいね」


 タカヤは(あか)(あお)に……コスモピースの(いろ)になった(ひとみ)(するど)(かがや)かせました。


 (うご)きを(ふう)じられたオラブ星人(せいじん)(とく)(あば)れることも()く、興味深(きょうみぶか)そうにその姿(すがた)()つめています。


「コスモピース……こんなことも出来(でき)るんですねー。これぐらいしゃ(かな)いませんかー……さすが、(わたし)最高(さいこう)傑作(けっさく)ですー」




 するとそこへ、血相(けっそう)()えた(しょう)(ぞう)部屋(へや)へと()()んできました!


「おい! アイツが()らん、どこへ()ったか()らんか……って(なん)でここに()るんじゃいっ!」


 (しょう)(ぞう)はバタバタと、拘束(こうそく)されたままタカヤを()つめているオラブ星人(せいじん)(ちか)づいて、(おお)きな(こえ)怒鳴(どな)()けます。


「やっと()()めたと(おも)ったら、(なに)(あば)れとるんじゃ!」


「うーるーさーいーでーすー……なんですかーアナ、タ……」


 さも不快(ふかい)そうに(かお)(ゆが)めたオラブ星人(せいじん)はやっと、()(せん)だけを(うご)かして(しょう)(ぞう)()て……それはそれは、でっかいため(いき)()きました。


「……やっとわかりましたー……(へん)だと(おも)ったんですー。この宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)、でしたっけー? ここの(いた)るところにある設備(せつび)道具(どうぐ)ー、(わたし)がはるか(むかし)(つく)ったものにあまりにも()すぎていますからー」


 オラブ星人(せいじん)はまた(ひと)つため(いき)()くと、(しょう)(ぞう)(ほう)(かお)()けます。


「その特徴(とくちょう)……アィーシャの()ですねー? そしてアナタは、アィーシャの記憶(きおく)一部(いちぶ)継承(けいしょう)しているー……()ってますかー?」


「……ほう、さすがじゃのう。()ただけでわかるか」


「わかりますよー……それにしても、まさかあのアィーシャがコスモピースを(ぬす)んでいたなんて。いくら(さが)しても()つからないわけですー……まぁ、おおよその理由(りゆう)推測(すいそく)できますから(おこ)()()きませんけどー」


 ……二人(ふたり)会話(かいわ)に、周囲(しゅうい)()いていけません。


(しょう)(ぞう)おじさん、アィーシャって(だれ)ですか? (ぼく)祖母(そぼ)祖父(そふ)のあだ()……では()さそうなんですが」


 ライトが困惑(こんわく)していると、オラブ星人(せいじん)(おお)きく(くび)(かし)げて……その(からだ)をぐにょぐにょ変形(へんけい)させ(はじ)めました。


「もしかしてー……アナタ()ってないんですかー? まぁー、そこに()るコスモピースは()っているでしょうけどー」


 そしてそのまま、(うす)隙間(すきま)からタカヤの拘束(こうそく)(のが)れたオラブ星人(せいじん)……いえ、オラブ星人(せいじん)だと(おも)っていた生物(せいぶつ)は……()りガラスのように()(とお)った(からだ)をしたET(いーてぃー)姿(すがた)()えました。


 ()()メートル以上(いじょう)あり、(なが)(くび)(ほそ)(うで)、すらりとして(ひざ)()(あし)……そして左目(ひだりめ)(まえ)には、変身(へんしん)(まえ)から装着(そうちゃく)していた透明(とうめい)なレンズが()かんだままです。


「……(いま)となってはこの宇宙(うちゅう)(わたし)とアナタ二人(ふたり)だけのー……トリスタル星人(せいじん)()(のこ)りであるとー」


 (くち)()生物(せいぶつ)……トリスタル星人(せいじん)(からだ)から、そう(こえ)(はっ)しました。


「……ああ、(いま)(いま)まで()ってなかったわい!」


 ニヤリと(わら)った(しょう)(ぞう)は、ぐにょぐにょと粘土(ねんど)のように(からだ)変形(へんけい)させて、()(まえ)ET(いーてぃー)とそっくりに姿(すがた)()えました。


「この姿(すがた)(もど)るのは数十(すうじゅう)(ねん)ぶりじゃよ……おお、(なつ)かしい感覚(かんかく)じゃのう!」


 (しょう)(ぞう)はそのままほんの(すう)()(まわ)りを(ある)いてみましたが……


「……しかしこの姿(すがた)、めちゃくちゃ(うご)きにくいのう。(ひざ)()がらんし……このままじゃ(かた)()りそうじゃ」


 そう()って(ひと)()びをすると、すぐに地球(ちきゅう)(じん)姿(すがた)(もど)ってしまいました。


「えー、もう(もど)るんですかー? 本当(ほんとう)姿(すがた)(うご)きにくいなんて、アナタ(へん)なこと()いますねー」


「ワシらに本当(ほんとう)姿(すがた)なんてあって()いようなもんじゃろ? さて……その(かお)、お(まえ)名前(なまえ)はイルクマじゃな? ……まさかお(まえ)がこんなことを仕出(しで)かすなんて(おも)わんかったよ」


「こんなことー……? (なん)のことですかー。それより……アィーシャの記憶(きおく)一部(いちぶ)とはいえ継承(けいしょう)してるというのはやっかいですねー。名前(なまえ)まで()られているとはー……とっても不快(ふかい)ですー」


 イルクマは心底(しんそこ)(いや)そうに、(なが)(くび)()げて(うつむ)きます。


「……さて、イルクマ。面倒(めんどう)くさいことは()きじゃ、単刀直入(たんとうちょくにゅう)()う。もう(ひと)つのコスモピースを(わた)してくれ」


「……はいー……?」


「とぼけるな!」


 (しょう)(ぞう)はイルクマのなだらかな(かた)(つか)みました。


「コスモピースは……イルクマ、お(まえ)発明品(はつめいひん)じゃ。ただ……惑星(わくせい)トリスタルが()()となった(いま)、トリスタルでしか()れない材料(ざいりょう)多用(たよう)する必要(ひつよう)があるコスモピースをもう(つく)()すことは出来(でき)ない、そうじゃろう?」


 ……イルクマは(あたま)()げたまま(うご)きません。


「……お(まえ)がコスモピースを惑星(わくせい)トリスタルから()()したことはわかっとる。そして……そのコスモピースの強大(きょうだい)(ちから)独占(どくせん)するために、お(まえ)にとって邪魔(じゃま)存在(そんざい)であるタカヤを攻撃(こうげき)したこともな!」


 周囲(しゅうい)(おどろ)いた様子(ようす)()()いて、(しょう)(ぞう)はまくし()てるように(つづ)けます。


「ワシらはタカヤの(なか)(はい)っているコスモピースを相殺(そうさい)して、タカヤを(もと)人間(にんげん)(もど)すために……どうしても、もう(ひと)つコスモピースが必要(ひつよう)なんじゃ。(たの)む、(わた)してくれ……危害(きがい)(くわ)えたくない」


 ……イルクマは(うご)きません。


「……っ! ()いとんのか!」


 (しょう)(ぞう)(つか)んだイルクマの(かた)(はげ)しく()すると、イルクマの(なが)(くび)(おお)きく()れてその表情(ひょうじょう)()えました。


 ……すると、イルクマは()()じていて……あろうことか、すやすやと寝息(ねいき)()てています。


「……()とる⁉ おい! ()きんかい!」


 ぶんぶん(かた)()すられたイルクマはやっと()()ましたものの、(ねむ)たそうに目元(めもと)(こす)ります。


「ふわぁー……。だってー、ワケがわからないことばかり()うんですもんー。(ねむ)たくなっちゃいましたー」


「わからない?」


(たし)かにコスモピースを発明(はつめい)したのは(わたし)ですー。でもー、もう(ひと)つのコスモピースなんて()ってませんー。(たし)かにもう(ひと)存在(そんざい)しましたけどー……ずっと(むかし)(こわ)れちゃいましたー」


 イルクマは(かた)にのせられた(しょう)(ぞう)()を、(ほそ)(うで)でうざったそうに(はら)いのけながら(つづ)けます。


「そしてー、そこのコスモピースを攻撃(こうげき)したのは事実(じじつ)ですけどー……その理由(りゆう)はアナタたちが予想(よそう)しているものとは(ちが)いますー。コスモピースは(わたし)最高傑作(さいこうけっさく)であり……最悪(さいあく)発明(はつめい)ですー。この宇宙(うちゅう)にあってはならないー……ですから」


 イルクマはひどく、底抜(そこぬ)けに(つめ)たい()をして()せた(あと)……ゆっくり、左目(ひだりめ)のレンズに()れました。


(わたし)が、この()で……()()ると()めたんですー」


 すると部屋(へや)(じゅう)空間(くうかん)に、さっきとは(くら)べものにならない(かず)()()出来(でき)て……その(なか)からは(さき)ほどより頑丈(がんじょう)そうな銃口(じゅうこう)無数(むすう)()()して()ました。


「さぁ……(なが)ったらしいお(しゃべ)りは()わりですー。()きますよー、コスモピース」


 ……タカヤがもう一度(いちど)コスモピースの(ちから)(みんな)(まも)ろうとするのを()て、イルクマは淡々(たんたん)(こえ)をかけます。


「……(いま)(ふせ)いだって無駄(むだ)ですよー? アナタが(わたし)(もと)()るまで、(わたし)何度(なんど)でもここを……アナタの大切(たいせつ)なものを攻撃(こうげき)しますー。でもー……もし、アナタが(わたし)(もと)()るなら、もうここには二度(にど)(かか)わりませんー、約束(やくそく)しましょうー」


「……それは、本当(ほんとう)ですか」


 (あか)(あお)星々(ほしぼし)()かぶ、どこまでも(くろ)(ひとみ)を……タカヤはイルクマへ()()()けました。


「ええー、本当(ほんとう)ですともー。(うそ)()いても(わたし)利益(りえき)がありませんからー」


「……そうですか」


 タカヤはいつものように(わら)うと、コスモピースの(ちから)()いて……一歩(いっぽ)一歩(いっぽ)、イルクマへと(ちか)づいて()きます。


()ってタカヤ! ダメだよ!」


 ショースケを筆頭(ひっとう)に、(みんな)がタカヤの(もと)()かおうとしますが……無数(むすう)銃口(じゅうこう)一斉(いっせい)(ねら)いを(さだ)めて()て、身動(みうご)きが()れません。


邪魔(じゃま)しないでくださいー。(うご)いたらアナタたちの(あたま)()くなりますよー?」


 ……タカヤがイルクマの(ほそ)(うで)()ろうとした、その(とき)




「すいません(おく)れましたーっ!」


 部屋(へや)(とびら)がバーンと(ひら)いたかと(おも)うと……ヒカルが(あせ)だくで、(いき)()らして(はい)ってきました。


(おも)ったより仕事(しごと)長引(ながび)いちゃって……ってえぇ⁉ (なに)これ、どういう状況(じょうきょう)⁉」


 部屋(へや)(じゅう)出来(でき)空間(くうかん)()()にヒカルが動揺(どうよう)していると……


「もう、ヒカル(はや)いわ? ()いていかないで」


 その(うし)ろから、エイギスがコツコツと足音(あしおと)()らして(はい)ってきました。


 すると……




「エイギス……?」


 イルクマが()見開(みひら)いて、ポツリと(つぶや)きました。


 ……部屋(へや)(じゅう)(あらわ)れていた空間(くうかん)()()(すべ)て、みるみるうちに()じていきます。


「あら? 貴方(あなた)、ワタシの名前(なまえ)()ってるの? まぁ! (なん)だかワタシに()姿(すがた)をしているのね、(うれ)しいわ!」


 エイギスは(うれ)しそうに、イルクマと、その(となり)()るタカヤの(もと)へと(あゆ)みを(すす)めました。


「……どうして、アナタがここにいるんですー……?」


 (ふる)えた(こえ)で、イルクマは(たず)ねます。


「えっと……ワタシは宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)だからここにいるのよ? ねぇタカヤ、この(かた)()()い?」


「ええと……(おれ)今日(きょう)(はじ)めて()いました」


 エイギスとタカヤが(はな)すのを()たイルクマは……(なが)(くび)(ちから)()()れました。


「……エイギス?」


「なぁに? そうだ、貴方(あなた)名前(なまえ)()きたいわ。(おし)えてくれるかしら?」


「……そうでしたねー……(わたし)は、イルクマですー。エイギス……アナタにとって、そのコスモピース……地球(ちきゅう)(じん)は、大切(たいせつ)存在(そんざい)なのですかー?」


「タカヤのこと? もちろんよ!」


 エイギスは(なが)睫毛(まつげ)()らして、(しあわ)せそうに(わら)いました。


「タカヤはね、ワタシのコンビのヒカルの(おとうと)なの! それでね、とっても(やさ)しいのよ。ワタシ、タカヤのこと大好(だいす)きなの!」


「……そうですかー。記憶(きおく)()くなってもー……エイギスは、(すこ)しも()わりませんねー」


イルクマは(いと)おしそうに、そして……()()しそうに()(ほそ)めると……(きゅう)(しょう)(ぞう)(ほう)()きました。


「そこのアナター……(しょう)(ぞう)、でしたっけー? ……ここに資源(しげん)(そろ)っていますかー?」


「……は? 資源(しげん)?」


 ぼんやりと二人(ふたり)様子(ようす)()ていた(しょう)(ぞう)は、あまりにも突然(とつぜん)()いかけられて()()けた(こえ)()してしまいましたが……イルクマはお(かま)いなしに(しゃべ)(つづ)けます。


「コスモピースをもう一つ(おな)じコスモピースで相殺(そうさい)する……()(かんが)えですが、それは不可能(ふかのう)ですー。(わたし)(つく)ったコスモピースは(ちから)(つく)()して放出(ほうしゅつ)するためのものー……もし相殺(そうさい)するのなら、(ちから)吸収(きゅうしゅう)することに特化(とっか)した(あたら)しいコスモピースが必要(ひつよう)ですー。そしてそのコスモピースなら……惑星(わくせい)トリスタルの材料(ざいりょう)()くても(つく)()せるかも()れませんー」


 ……周囲(しゅうい)(きゅう)なイルクマの態度(たいど)変化(へんか)について()けません。


「え、えーっと……一体(いったい)どうしたんだ?」


 タカヤたちを(まも)るように(まえ)()ったライトが(くび)(かし)げていると……イルクマはこの(うえ)なく不満(ふまん)げにライトを見下(みくだ)しました。


「わからないんですかー? アナタ、相当(そうとう)(あたま)(わる)いですねー」


「あ、(あたま)(わる)い⁉ (なん)だお(まえ)失礼(しつれい)だな! さっきみたいにまた()()って、そこら(じゅう)()()(まわ)してやろうか⁉」


 勉強(べんきょう)だけは()出来(でき)ると(おも)って()きてきたライトです、(いま)までそんなことは()われたことがありませんので……うっかり(くち)(わる)くなってしまいます。


「あーやだやだー、野蛮(やばん)ですねー……(まった)仕方(しかた)ないー。理解(りかい)()いついてないようなので、わかりやすく(はな)してあげましょうー」


 イルクマは気怠(けだる)そうに、(なが)(くび)()すりました。


「アナタたちの目的(もくてき)は、この地球人(ちきゅうじん)からコスモピースを()()すことー。そして(わたし)目的(もくてき)は、コスモピースを完全(かんぜん)()()ることー……その両方(りょうほう)は、エネルギーの吸収(きゅうしゅう)特化(とっか)した(あたら)しいコスモピースを(つく)()すことで(かな)えることが出来(でき)ますー。つまりー……この(わたし)がアナタたちごときに協力(きょうりょく)してー、(あたら)しいコスモピースを(つく)ってやってもいいと()ってるんですー!」




 ……(とき)()まったように(しず)かになった部屋(へや)(なか)で、(しょう)(ぞう)一番(いちばん)(くち)(ひら)きました。


「それは……本当(ほんとう)か?」


(なん)(わたし)がこんな()ずかしい(うそ)()かなくちゃならないんですー?」


 プライドの(たか)いイルクマはいたく不機嫌(ふきげん)です。


「しかしー……(わたし)(ほう)(そろ)っている材料(ざいりょう)(いち)(わり)にも()たないのでー、アナタたちに(のこ)りの材料(ざいりょう)(すべ)(あつ)めてもらいますー。いいですねー?」




「ねぇ(じゅん)(いち)……? これって……そういうこと、よね?」


「ああ、春子(はるこ)。つまり……タカヤのコスモピースを()(のぞ)くことが出来(でき)るんだ……!」


本当(ほんとう)……? (ゆめ)じゃ()いのね……!」




「ヒカル(くん)! ()いた⁉ タカヤ(くん)(たす)かるんだよ!」


「うん、ライトお(にい)ちゃん! ()かった、()かったよ……! えーん……エイギスぅ……」


「もう、ヒカル()かないの。でも……()いちゃうほど、(うれ)しいことなのね」




「ねぇツバサ? (ぼく)よくわかんないんだけど……タカヤのコスモピースが()くなるってことは、タカヤがあの(とき)みたいに、コスモピースの(ちから)(あぶ)ない()()うことが()くなるってことだよね?」


「ソウイウ コト ダネ ショースケ!」


「それってすっごくいいことじゃん! やったー!」




 各々(おのおの)(よろこ)びの(こえ)()げている(なか)……イルクマが左目(ひだりめ)のレンズに()れると、()(まえ)空間(くうかん)(おお)きく()きました。


 空間(くうかん)(なか)には虹色(にじいろ)のモヤが(ひろ)がっています。


(わたし)一度(いちど)オラブ(せい)研究室(けんきゅうしつ)(もど)って道具(どうぐ)材料(ざいりょう)()ってきますねー……はぁ面倒(めんどう)くさいー。でも仕方(しかた)()いですねー……エイギスのためですー」


「それはワープ装置(そうち)か?」


 (しょう)(ぞう)興味深(きょうみぶか)そうに(のぞ)()みました。


「そうですよー。まぁ簡単(かんたん)(づく)りなんで、丈夫(じょうぶ)なトリスタル星人(せいじん)……(わたし)とアナタしか使(つか)えませんがねー。おっとそうだー」


 モヤの(まえ)(あし)()めたイルクマは突然(とつぜん)(からだ)をぐにょぐにょと変形(へんけい)させると……中性(ちゅうせい)(てき)地球(ちきゅう)(じん)へと姿(すがた)()えました。


 栗色(くりいろ)のやわらかそうな(かみ)に、(むらさき)()れた(ひとみ)。そして左目(ひだりめ)(まえ)には、変身(へんしん)(まえ)(おな)透明(とうめい)なレンズが()いています。


 そして(しょう)(ぞう)真似(まね)したのでしょう、白衣(はくい)()ているのですが……随分(ずいぶん)適当(てきとう)真似(まね)たのか、(そで)から()()ない(ほど)オーバーサイズです。


()こうでは(だれ)にも()わないでしょうしー……ここではこの姿(すがた)(ほう)目立(めだ)たなくて()みそうですからねー。じゃあ、いってきますー」


 (おお)きな(おお)きなあくびをして、イルクマはモヤの(なか)()えていきました。



****



「ねぇねぇ、じーちゃん⁉」


 ショースケは()ぐさま(しょう)(ぞう)()きつきます。


「じーちゃんってトリスタル星人(せいじん)なんでしょ⁉ あのトリスタル伝説(でんせつ)の!」




 トリスタル伝説(でんせつ)


 惑星(わくせい)トリスタルには無限(むげん)(いのち)()った生物(せいぶつ)()んでいて、(ちょう)高度(こうど)文明(ぶんめい)(さか)えていたと。


 ……そしてその生物(せいぶつ)文明(ぶんめい)はある()突如(とつじょ)として()えてしまったという(はなし)です。




「え⁉ (しょう)(ぞう)さんトリスタル星人(せいじん)なの⁉」


 その()()なかったヒカルとエイギスはびっくりです。


「そうじゃよ、ほれ」


 (しょう)(ぞう)はぐにょぐにょと、イルクマと(おな)じトリスタル星人(せいじん)姿(すがた)変身(へんしん)しました。


「まぁ……! (しょう)(ぞう)もワタシと()姿(すがた)になれるのね、(うれ)しいわ」


「そうじゃろうエイギス。しかし……この(からだ)(つか)れるからのー、また()()いたら変身(へんしん)してやるわい」


 そう()うと、(しょう)(ぞう)はすぐに見慣(みな)れた地球(ちきゅう)(じん)姿(すがた)(もど)って(かた)(まわ)します。


「ねぇ、じーちゃんそれよりっ! じーちゃんがトリスタル星人(せいじん)ってことは……(ぼく)も、もしかしてトリスタル星人(せいじん)⁉ 不老不死(ふろうふし)だったりする⁉」


「いや、地球(ちきゅう)(じん)じゃけど」


 キラッキラの()()けてきたショースケに(たい)して、(しょう)(ぞう)冷静(れいせい)()(はな)ちました。


「ショースケの(とう)さんのショータは、ワシが完璧(かんぺき)地球(ちきゅう)(じん)変身(へんしん)してたときの()どもじゃからな。おそらく完全(かんぜん)地球(ちきゅう)(じん)じゃよ……まぁ多少(たしょう)頭脳(ずのう)()()いどるみたいじゃがな」


「えー……なんかショック」


 ショースケはどんよりと(かた)()とします。


「おお、そうじゃ。ワシ、ライトの(かあ)さんとは本当(ほんとう)兄妹(きょうだい)じゃないが……そういうところも(かんが)えて完璧(かんぺき)変身(へんしん)しとるからのう、ライトとショースケの血縁(けつえん)関係(かんけい)はあるぞい」


 (しょう)(ぞう)はあっけらかんと(わら)いました。


「いや、そこはどうでもいいけど……」


「どうでもいいとか()わないでくれよショースケ(くん)大事(だいじ)なことだろ⁉ ……あれ、ところでタカヤ(くん)は?」


 ライトは部屋(へや)(じゅう)見回(みまわ)しますが……タカヤの姿(すがた)()えません。


「ああ、タカヤなら……さっきトイレに()くって部屋(へや)()たよ?」


 ヒカルは(よろこ)びを(おさ)えられないのか、口角(こうかく)(ゆる)みきったまま(こた)えます。


「それにしても本当(ほんとう)によかった……(とう)さんと(かあ)さんが頑張(がんば)ってくれたおかげだよ! ありがとう!」


「いや……ヒカルや(みんな)(ささ)えてくれたおかげだ。なぁ春子(はるこ)?」


「うん。それに……イルクマさんはエイギスを()(かんが)えを(あらた)めてくれたの、二人(ふたり)()てくれなかったら本当(ほんとう)(あぶ)なかったわ」


 春子(はるこ)言葉(ことば)に、エイギスは(なが)(くび)()げて(うつむ)きました。


「そうなの? ……やっぱりワタシはあの(ひと)のこと(おも)()せないから、(なん)だか(もう)(わけ)ないわ。ヒカル、どうしたらいいと(おも)う?」


「まぁ……(おも)()すことがあったら、その(とき)(あらた)めて(はな)したらいいんじゃないかな?」



 部屋(へや)には、(あたた)かい、(しあわ)せな時間(じかん)(なが)れていました。


 こんなにも希望(きぼう)()ちあふれた気持(きも)ちは……とってもとっても(ひさ)しぶりでした。



****



「タカヤ ヘン ナノー。オウチ デ トイレ ナンテ イッカイモ イッタ コト ナイ ジャナイ」


「あはは……()くこともあるんだよ」


「エー?」


 タカヤはツバサを(かか)えたまま、()(しろ)廊下(ろうか)(ある)いて()って……これまた(しろ)(とびら)(まえ)()まりました。


「じゃあ()ってくるから。ツバサはここで()ってて」


「ハーイ。ハヤク モドッテ キテネー」


 ツバサは三本(さんぼん)触覚(しょっかく)をふわふわ()らします。


 それに(こた)えるようにタカヤは右手(みぎて)()って……(とびら)をくぐって(うし)()(かぎ)()めました。



 ここはトイレでは()く……タカヤがコスモピースの(ちから)()()れた部屋(へや)です。


 (すみ)にあるベッドへと(ある)いて()って……タカヤはその(うえ)腰掛(こしか)けました。




 コスモピースの(ちから)使(つか)って(みな)(やく)()つこと。


 そして……もう(ひと)つのコスモピースと相対(あいたい)して、それを(こわ)して、この宇宙(うちゅう)平和(へいわ)(まも)って()えること。 


 それが、自分(じぶん)役目(やくめ)だと(おも)っていました。


 (から)っぽな、(だい)(きら)いな自分(じぶん)(のこ)った、たった(ひと)つの希望(きぼう)でした。



 ……でも、(こわ)さなければならないコスモピースなんて……役目(やくめ)なんて最初(さいしょ)から存在(そんざい)しなくて。


 そして……



「この(ちから)が……()くなる……?」



 心臓(しんぞう)がバクバクと(おと)()てて、()(まえ)()(くら)で。


 (あたま)が、ひどくクラクラします。




「ネェ タカヤー? マダー?」


 ……ツバサが(そと)から(とびら)(たた)(おと)で、タカヤはハッと()がつきました。


「あ、ごめんごめん。(いま)()くよ……」


 ()()がって、いつものように(わら)おうとして……



 何故(なぜ)でしょう、上手(うま)(わら)えません。



「タカヤー? ドウシタノー?」


「ごめんツバサ……やっぱりもうちょっと()って」



 もう一度(いちど)ベッドに腰掛(こしか)けたタカヤは両手(りょうて)(かお)(おお)いました。


 ズキズキと(むね)(いた)くて……どうしようもなく(くる)しくて。



(……(なに)()(おれ)に、(もど)るのか……?)



(そんなの(いや)だ)


挿絵(By みてみん)

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