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特別短編4 メグの最高の日

****


 今(いま)から一(いち)年(ねん)以上(いじょう)前(まえ)のその日(ひ)。


 メグはとっても浮(う)かれていて、やわらかいプニプヨ星人(せいじん)の体(からだ)をぽよんぽよんと弾(はず)ませながらポスリコモスの市場(いちば)を歩(ある)いていました。


 なんとなんと…超(ちょう)超(ちょう)超(ちょう)レア物(もの)である、地球(ちきゅう)のアニメのブルーレイディスクを入手(にゅうしゅ)したからです!


 メグは地球(ちきゅう)が大好(だいす)きで、特(とく)にその中(なか)でもアニメが大(だい)大(だい)だーい好(す)きなのですが…住(す)んでいるプニプヨ星(せい)にそんな趣味(しゅみ)の人(ひと)はもちろん居(お)らず…。


 ということは当然(とうぜん)、プニプヨ星(せい)では地球(ちきゅう)のアニメに関(かん)するものなんて手(て)に入(はい)らないため、暇(ひま)があるときにわざわざこのポスリコモスまで出向(でむ)いては、掘(ほ)り出(だ)し物(もの)のアニメグッズを探(さが)しているのでした。


「はぁー…今日(きょう)は最高(さいこう)の日(ひ)でス、いい買(か)い物(もの)が出来(でき)ましタ! これでおうちにある『でーぶいでーぷれーやー』で新(あたら)しいアニメが見(み)られますネ!」


 でも…どうやらこのアニメのブルーレイ、地球(ちきゅう)の数字(すうじ)で3と書(か)かれている気(き)がします。


「うう…もしかしてまた、前(まえ)の話(はなし)や続(つづ)きが気(き)になるパターンですカ…」


 しょんぼりと触手(しょくしゅ)をくねらせるメグには…ある夢(ゆめ)があります。


 それはいつか、得意(とくい)の変身(へんしん)能力(のうりょく)で地球(ちきゅう)人(じん)に変身(へんしん)して…地球(ちきゅう)人(じん)として、地球(ちきゅう)で生活(せいかつ)すること!


 そうすれば、アニメだって見(み)放題(ほうだい)、グッズだって買(か)い放題(ほうだい)で…もしかすると、憧(あこが)れの『アキバ』にだって行(い)けるかもしれません!


 しかし現実(げんじつ)は厳(きび)しく…そもそもET(いーてぃー)は、まだ文明(ぶんめい)の発達(はったつ)していない地球(ちきゅう)に住(す)むのは基本(きほん)的(てき)に禁止(きんし)されていますし…ちょっと地球(ちきゅう)旅行(りょこう)をするのにだって結構(けっこう)なお金(かね)がかかります。


「ふゥ…プニプヨ星(せい)でモジェリを育(そだ)ててる、しがないワタシには夢(ゆめ)のまた夢(ゆめ)ですネ…」


 お財布(さいふ)の中(なか)の残(のこ)り少(すく)ないお金(かね)を見(み)つめて、メグがため息(いき)を吐(つ)いていると…




 突然(とつぜん)、大(おお)きな何(なに)かがメグの小(ちい)さな体(からだ)にぶつかりました!


「わ、ワ⁉」


 メグはその場(ば)に転(ころ)んで、お財布(さいふ)の中身(なかみ)や買(か)ったばかりのブルーレイが辺(あた)りに散(ち)らばります。


「ごめんなさい! よそ見(み)をしていました…お怪我(けが)はありませんか⁉」


 やわらかい体(からだ)のおかげで一切(いっさい)怪我(けが)はありませんが…メグは頭(あたま)を持(も)ち上(あ)げてびっくりしました!


 何(なん)とぶつかって来(き)たのは…メグの憧(あこが)れ、地球(ちきゅう)人(じん)です!


 もちろん地球(ちきゅう)人(じん)を見(み)たことがない、というわけではありませんが…いつも遠目(とおめ)でチラリと見(み)かける程度(ていど)なので、こんなに近(ちか)くで見(み)るのは初(はじ)めてです!


 どうやら服装(ふくそう)的(てき)に宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)らしいその地球(ちきゅう)人(じん)は、慌(あわ)ててメグの落(お)とした小銭(こぜに)を拾(ひろ)った後(あと)、一緒(いっしょ)に落(お)ちているアニメのブルーレイに手(て)をかけました。


「これも、貴方(あなた)のですか?」


「は、はイ! あぁっ、わ、割(わ)れていませんカ⁉」


 メグは慌(あわ)ててブルーレイのパッケージを開(ひら)いて…中(なか)のディスクが傷(きず)ついてないことを確認(かくにん)して心底(しんそこ)ほっとしました。


「よ…よかっタ…おうちの『でーぶいでーぷれーやー』で見(み)られなくなったらどうしようかと思(おも)いましタ」


「でーぶい…ああ、DVD(でぃーぶいでぃー)プレイヤー…あれ? でもそれ」


 地球(ちきゅう)人(じん)はメグの持(も)つパッケージを覗(のぞ)き込(こ)みます。


「これ、ブルーレイディスクですよ。DVD(でぃーぶいでぃー)プレイヤーでは見(み)られません」


「エ⁉」


「これを見(み)るためには、専用(せんよう)のプレイヤーが必要(ひつよう)ですね…ってあれ⁉ 大丈夫(だいじょうぶ)ですか⁉」


 …あまりのショックでメグはもうドロドロに溶(と)けそうです。


 せっかくここまで来(き)て手(て)に入(い)れたのに見(み)られないなんて…これじゃあまた何百(なんびゃっ)回(かい)見(み)たかわからない、数(かず)少(すく)ない持(も)ってるDVD(でぃーぶいでぃー)の中(なか)ではまだ新(あたら)しい方(ほう)の『ドキドキ♪メイド大(だい)作戦(さくせん) 六(ろっ)巻(かん)』を見(み)るしかありません。


 メグが地面(じめん)に突(つ)っ伏(ぷ)してシクシク悲(かな)しんでいると…自分(じぶん)を心配(しんぱい)して跪(ひざまず)いてくれている地球(ちきゅう)人(じん)の手(て)に持(も)っているものが目(め)に入(はい)りました。


「…あレ。それもしかしてモジェリの芽(め)ですカ?」


「え、この花(はな)をご存(ぞん)じなんですか⁉ そうか…貴方(あなた)はプニプヨ星人(せいじん)ですもんね」


 …地球(ちきゅう)人(じん)の持(も)っている透明(とうめい)な瓶(びん)の中(なか)に植(う)わっているモジェリの芽(め)は、何(なん)だかとっても弱(よわ)っています。


「うーン…そのモジェリ、オレンジの光(ひかり)が足(た)りませんネ」


「オレンジの光(ひかり)?」


「はイ。プニプヨ星(せい)には色(いろ)とりどりの空模様(そらもよう)がありまス。モジェリの芽(め)が大(おお)きく育(そだ)つのは、オレンジ色(いろ)の空(そら)から光(ひかり)が降(ふ)ってくる日(ひ)でス。このポスリコモスで言(い)うト…今日(きょう)の光(ひかり)はモジェリの芽(め)にはあんまり良(よ)くないですネ」


「す、すごい…待(ま)ってくださいメモしますから!」


 地球(ちきゅう)人(じん)はポケットから取(と)り出(だ)した紙(かみ)束(たば)にペンを走(はし)らせました。


「ありがとうございます。僕(ぼく)、どうしてもこのモジェリを…地球(ちきゅう)人(じん)に毒(どく)の無(な)い状態(じょうたい)で大(おお)きく育(そだ)てたくて。でも全然(ぜんぜん)わからなくて…困(こま)っていたところなんです」


 メグはアニメで見(み)たことあります…これは、地球(ちきゅう)人(じん)の『悲(かな)しい顔(かお)』です。


「地球(ちきゅう)人(じん)に毒(どく)の無(な)いモジェリ…それはとっても難(むずか)しそうですネ。ワタシも結構(けっこう)長(なが)くモジェリを育(そだ)てる仕事(しごと)をしてますガ、聞(き)いたことがありませんン」


「やっぱり、そうですよね…ああ、お時間(じかん)取(と)らせて申(もう)し訳(わけ)ありません」


「いえいエ! 憧(あこが)れの地球(ちきゅう)人(じん)と話(はな)せて感激(かんげき)でス!」


「憧(あこが)れ…? そういえば、地球(ちきゅう)のアニメのブルーレイを買(か)ってましたね。お好(す)きなんですか?」


「はイ!」


 メグは触手(しょくしゅ)をぶわっと伸(の)ばして体(からだ)を膨(ふく)らませました。


「地球(ちきゅう)はすばらしいでス! 学園(がくえん)、戦隊(せんたい)、メイド、サムライ…素敵(すてき)なものがいっぱいでス! ああ、ワタシも一度(いちど)でいいから地球(ちきゅう)に住(す)んでみたイ…ハっ!」


 妄想(もうそう)が止(と)まらないメグは、やっと正気(しょうき)に戻(もど)って頭(あたま)を振(ふ)ります。


「すみませン…地球(ちきゅう)のことについて考(かんが)えるといつもこうデ…」


「それなら…地球(ちきゅう)に住(す)んでくれませんか?」


「エ?」


 …あまりに突拍子(とっぴょうし)も無(な)い地球(ちきゅう)人(じん)の言葉(ことば)に、メグはとっても不(ふ)抜(ぬ)けた声(こえ)を出(だ)してしまいました。


「僕(ぼく)、今(いま)は地球(ちきゅう)に住(す)みながら毒(どく)の無(な)いモジェリの花(はな)を咲(さ)かせる研究(けんきゅう)をしているんです。是非(ぜひ)、貴方(あなた)のモジェリに関(かん)する知識(ちしき)と技術(ぎじゅつ)をお借(か)りしたい」


「エ、エ?」


「もちろんお給料(きゅうりょう)も出(だ)しますし、僕(ぼく)と…もう一人(ひとり)のアンドロイドと同居(どうきょ)にはなりますが住(す)む場所(ばしょ)も保証(ほしょう)しましょう。あ、それに…」


「ソ、それニ…?」


「僕(ぼく)の家(いえ)、ブルーレイプレイヤーありますから。それ、見(み)られますよ」


「住(す)みまス!!!!」


 メグは超高速(ちょうこうそく)で頭(あたま)を何度(なんど)も上(あ)げ下(さ)げします。


 …地球(ちきゅう)ではこの動作(どうさ)は賛成(さんせい)を表(あらわ)すはずです!


「助(たす)かります! それならお時間(じかん)があるときに宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)本部(ほんぶ)で手続(てつづ)きを…」


「今(いま)すグ行(い)きまス!」


「え、今(いま)すぐ⁉」


 メグはぴょこぴょこ飛(と)び跳(は)ねたかと思(おも)うと…その体(からだ)をむにゅむにゅ変形(へんけい)させて、メイド服(ふく)を着(き)たピンク色(いろ)の髪(かみ)の地球(ちきゅう)人(じん)へと姿(すがた)を変(か)えました。


「やっト…やっと何年(なんねん)も練習(れんしゅう)してたこの変身(へんしん)が使(つか)えますネ!」


「わぁ…さすがプニプヨ星人(せいじん)、すごいですね…!」


「そう言(い)えバ、名前(なまえ)をまだ言(い)ってませんでしたネ。ワタシはメグウカミノ、 長(なが)いのでメグって呼(よ)んでくださイ!」


「メグさんですね。僕(ぼく)はライトです、黒(くろ)武(たけ)来(らい)人(と)」


「ライトさん! まさしく地球(ちきゅう)人(じん)っぽいですネ、覚(おぼ)えましたヨ。さぁさぁ早速(さっそく)本部(ほんぶ)に行(い)きましょウ!」


 長(なが)いスカートをひらりと翻(ひるがえ)して、軽(かろ)やかに走(はし)って行(い)くメグを、ライトは慌(あわ)てて後(うし)ろから追(お)いかけます。



 ああ、これから一体(いったい)どんな楽(たの)しいことが待(ま)っているのでしょうか!


 今日(きょう)はメグのプニプヨ星人(せいじん)生(せい)が…運命(うんめい)が変(か)わった最高(さいこう)の日(ひ)です!


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