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第二十二話 今度こそ、二人で①

****


 ここは宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)本部(ほんぶ)(さん)(かい)


 ()(しろ)廊下(ろうか)()かれている(なが)いベンチに、ショースケは(すわ)っていました。


「ネェ、ショースケ」


 ショースケの(ひざ)(うえ)で、ロボットのツバサが(こえ)をかけましたが……ショースケからの返事(へんじ)はありません。


 いつものお()()りの(あお)いカバンを(となり)()いたまま、ただただ、ぼんやりと……もう数時間(すうじかん)、ショースケは(しろ)(ゆか)と……地球(ちきゅう)から()ってきたタカヤのバッジを()つめています。


 何度(なんど)()ても、そこには『特級(とっきゅう)』の(ふた)文字(もじ)()いてありました。


 ……あの()も、この()も、ああ、あの(とき)も……きっとずっとそう()かれていたのでしょう。


「ツバサ」


 ショースケはほんの(すこ)(あたま)()()げて、(ひさ)しぶりに(こえ)()しました。


「ナニ、ショースケ」


「ツバサは……タカヤが特級(とっきゅう)なこと()ってたんだよね」


「ウン」


 ツバサはいつものように触覚(しょっかく)()らしたりはせず……わざとロボットらしく淡々(たんたん)(こた)えます。


「……じーちゃんも、ライトさんも、()ってたんだよね」


「ウン」


「……そっか」


 そう(こた)えると、ショースケはまた、タカヤのバッジをぼんやりと()つめ(はじ)めました。




 それから(いち)時間(じかん)ほどして、まだベンチに(すわ)ったままのショースケとツバサの(もと)(しょう)(ぞう)がやって()ました。


「ショースケ、ツバサ。タカヤは……この()(かた)(ただ)しいのかはわからんが、一命(いちめい)()()めた」


 ……ショースケとツバサはバッと(かお)()げます。


「まだ安心(あんしん)出来(でき)んが、このまま順調(じゅんちょう)()けば(じき)回復(かいふく)するじゃろう」


「ヨカッター……ハカセ、アリガトー!」


 ツバサはやっと触覚(しょっかく)()って、ショースケの(ひざ)(うえ)でぴょんっと一回(いっかい)()ねました。


「ネェ、ショースケ! タカヤ ブジ ダッテ! ショースケ……?」


「……じーちゃん、(なん)(ぼく)に……タカヤが特級(とっきゅう)だって(おし)えてくれなかったの」


 (つか)()った()()()(しょう)(ぞう)()けて、ショースケは(たず)ねます。


「……タカヤと……ショースケ、お(まえ)のためじゃよ」


 (しょう)(ぞう)はショースケの(となり)腰掛(こしか)けました。


「ワシはどうしても、タカヤのためにお(まえ)とコンビを()ませたかった。じゃがショースケ……お(まえ)相手(あいて)特級(とっきゅう)だと()ったら、きっと……(いま)のように自然(しぜん)(せっ)することは出来(でき)んかったじゃろう」


 ……ショースケはまた、タカヤの(にぶ)(ひか)るバッジに()をやります。


「……(だま)ってて、すまんかった。タカヤにはワシから口止(くちど)めしていたんじゃ、アイツを()めんでやってくれ」


「……(べつ)に、(おこ)ってるわけじゃないよ」


 (ひざ)(うえ)のツバサをベンチに()ろして、タカヤのバッジをポケットに()()んで、ショースケは()()がりました。


「ただちょっと、(さび)しいだけ」


 そう()って、ショースケは(ある)(はじ)めます。


「どこへ()くんじゃショースケ」


 ……(しょう)(ぞう)(こえ)返事(へんじ)すること()く、カバンをベンチに()いたまま、ショースケは()(しろ)廊下(ろうか)(さき)()えていきました。



****



博士(はかせ)


 ベンチに(すわ)っていた(しょう)(ぞう)に、いつものメイド(ふく)()(つつ)んだルルが(こえ)をかけます。


「スイさんとティナさんが、(とき)()()(ちょう)無事(ぶじ)到着(とうちゃく)したそうです。(あと)(こま)かい案内(あんない)(とう)はメグに(まか)せてあります」


「ありがとう、ルル……タカヤもショースケもライトもここへ()とるからな。二人(ふたり)()わりに(すこ)しの(あいだ)(とき)()()(ちょう)担当(たんとう)してくれると()ってくれて(たす)かったわい」


「それと……」


 ルルは(すこ)()いにくそうに(うつむ)きます。


「……ライトさんがお()びです。博士(はかせ)研究室(けんきゅうしつ)()っているから()()しいと……」


「……そうか。わかった、すぐ()かう。ルル、ツバサと……このカバンを(たの)めるか」


 (しょう)(ぞう)はツバサを()()げてルルに(わた)すと、ショースケが()いて()ったカバンをベンチに(のこ)し、(おも)(こし)()げて研究室(けんきゅうしつ)へと()かっていきました。



****



「んー……のどかなところねー」


 (とき)()()公園(こうえん)時計台(とけいだい)(うえ)


 ()きさらしの屋根(やね)(した)()いてある(みどり)のベンチに(すわ)って、スイは()けるような青空(あおぞら)見上(みあ)げていました。


「それにしても、タカヤに(なに)があったのかしら……博士(はかせ)にも、とても()けるような雰囲気(ふんいき)じゃ()かったから(いそ)いでここに()たけれど……心配(しんぱい)ね、ティナ」


 ……(となり)のティナが(なに)(しゃべ)らないので、スイは(はなし)(つづ)けます。


「ショースケも(すわ)って(うつむ)いたままだったし……そうよ、ショースケが()ってたバッジ……あれ、タカヤのよね。まさか特級(とっきゅう)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)だったなんて……道理(どうり)ですごい(ちから)使(つか)えるわけよ」


 ……やっぱりティナが(なに)(しゃべ)らないので、スイは(まぶ)しく()りつける太陽(たいよう)を、(ゆび)隙間(すきま)からに(にら)みつけました。


(いま)時期(じき)はこんなに(あつ)いのね……地球(ちきゅう)(もど)ってくるのも(ひさ)しぶりだもんね」


「お(ねえ)ちゃん……」


 ……ふと(くち)(ひら)いたティナは()いていて。


 スイはそれに気付(きづ)かないフリをして……空気(くうき)()んで、(とお)くまで()()える山々(やまやま)(なが)めながら返事(へんじ)をします。


「なぁに」


「わたしね、()ってたの」


 やわらかい(かぜ)が、二人(ふたり)(あいだ)()()けました。


「タカヤくんが特級(とっきゅう)なことも……コスモピースの(ちから)無理(むり)をしてて、危険(きけん)状態(じょうたい)なことも()ってたの。それで……いつか、(こわ)いことが()きるんじゃないかって、(おも)ってたの」


 ポツリポツリと、ティナは(ちい)さく(つぶや)きます。


「タカヤくんが()わないでって……(こわ)()をしてて。もし()ったら、タカヤくんに(きら)われてしまいそうで……(だれ)にも()わなかった」


 (なつ)()わりが(ちか)いことを(しめ)す、()()すような(せみ)(こえ)と、どこかから()こえる(とり)(こえ)時計台(とけいだい)(なか)反響(はんきょう)して。


「でも……わたしが(だれ)かに()ってたら、こんなことにならなかったのかなって。(すく)なくとも……もし、ショースケくんに()ってあげてたら……あんな(かな)しい(かお)させないで()んだかなって……」


 (なみだ)(こぼ)れて、(かわ)ききった(ゆか)のタイルの(うえ)()みを(つく)ります。


「……()められても、(たと)え……タカヤくんに(きら)われても……()わなきゃ、いけなかったなぁ……」


……スイは(だま)って、ティナの(からだ)()()せました。


 二人(ふたり)(こころ)とは裏腹(うらはら)に、天気(てんき)はうざったい(ほど)快晴(かいせい)です。



****



 薄暗(うすぐら)研究室(けんきゅうしつ)には、ライトが一人(ひとり)()っていました。


 (とびら)()けて(しょう)(ぞう)(なか)(はい)ると……ライトはすぐに(しょう)(ぞう)()()ります。


「どういうことですか、(しょう)(ぞう)おじさん」


「……(なん)のことじゃ、ライト」


「とぼけないでくださいよ!」


 ()()らそうとした(しょう)(ぞう)(むな)ぐらを両手(りょうて)(つか)んで、ライトは(こえ)()()げました。


「……どうして、タカヤ(くん)があんなことになったって(ぼく)(つた)えたとき、貴方(あなた)(おどろ)かなかったんですか! それどころか、タカヤ(くん)の……コスモピースのための特殊(とくしゅ)治療(ちりょう)設備(せつび)まで、ここにすでに準備(じゅんび)してあった!」


 ……(なに)()わない(しょう)(ぞう)(にら)()け、ライトは言葉(ことば)をぶつけ(つづ)けます。


「まさか……()ってたんですか? (とき)()()(ちょう)にイレギュラーな存在(そんざい)()ることも、それでタカヤ(くん)が……こうなることも! ()ってて、(ぼく)(だま)ってて……タカヤ(くん)をあんな()()わせたんですか⁉」


「お(まえ)(おし)えてたら……どうなったんじゃ?」


 (しょう)(ぞう)()似合(にあ)わない、(みょう)()()いた(こえ)(はっ)しました。


 その様子(ようす)(すこ)(おそ)れを(かん)じ、(むな)ぐらを(つか)んでいた()(はな)したものの……ライトはさらに()(かえ)します。


「それは……(きゅう)(たか)隊員(たいいん)応援(おうえん)(たの)むとか……そうだ、先日(せんじつ)春子(はるこ)さんと(じゅん)(いち)さんがここに(もど)っていたんだから、二人(ふたり)にも手伝(てつだ)ってもらっていれば!」


 ……(おも)わず、(しょう)(ぞう)(かわ)いた(わら)いが(こぼ)れました。


「はっ……コスモピースの(ちから)使(つか)ってもああなるような存在(そんざい)に、お(まえ)らが()てるわけないじゃろう」


 その(かお)が、(いま)にも()()しそうに()えて……今度(こんど)はライトが(くち)(つぐ)みます。


()てもしないのに……お(まえ)らは()かって()くんじゃろう? そうしたら……無意味(むいみ)被害(ひがい)()えるだけじゃ」


「でも……そうだ! (しょう)(ぞう)おじさんだってタカヤ(くん)(おな)特級(とっきゅう)でしょう⁉ 貴方(あなた)技術(ぎじゅつ)があれば……!」


「ワシが!」


 (うつむ)いた(しょう)(ぞう)が、(かた)(ふる)わせて(さけ)びました。


「ただの……模倣品(もほうひん)のワシの技術(ぎじゅつ)が、アイツに()てるわけがないじゃろう……!」




 ライトが部屋(へや)(あと)にして、(しょう)(ぞう)一人(ひとり)薄暗(うすぐら)部屋(へや)(まぶ)しい画面(がめん)(まえ)(すわ)っています。


 画面(がめん)には、春子(はるこ)(じゅん)(いち)()るUFOへの通信(つうしん)開始(かいし)するためのボタンが表示(ひょうじ)されていて……でもまた、そのボタンを()すことが出来(でき)ないまま、(しょう)(ぞう)画面(がめん)電源(でんげん)をブツンと()りました。


「……タカヤを(たの)むと、()われておったのになぁ」


「のう……春子(はるこ)(じゅん)(いち)。ワシは……どうしたら()かったんじゃ」



****



「ヒカル、()(もの)()ってきたわ。タカヤはどう?」


 特別(とくべつ)治療室(ちりょうしつ)(もど)ってきたエイギスは、椅子(いす)(すわ)っている……目元(めもと)(あか)()らしたヒカルに(こえ)をかけました。


「ありがとう、エイギス。()てよ……タカヤの(からだ)(もと)(もど)ってきたんだ」


 エイギスから紙袋(かみぶくろ)()()って、ヒカルは部屋(へや)中心(ちゅうしん)にある、(おお)きくて透明(とうめい)なボールのようなものを(ゆび)さしました。


 その(なか)では、タカヤが()()じています。


「まぁ、本当(ほんとう)ね。さっきまでは……()いにくいけれど、とても地球(ちきゅう)(じん)とは(おも)えない()()だったものね」


 エイギスがそう()うと、ヒカルも(うなず)きました。


「うん……(もど)って()かったよ。(おれ)にはよくわからないけど……肖造(しょうぞう)さんが()うには、タカヤが(いま)までエネルギー貯蔵庫(ちょぞうこ)()めてたコスモピースのエネルギーと……この、虹色(にじいろ)(なに)かの(かたまり)? のおかげでタカヤはギリギリ(たす)かったんだってさ」


 ヒカルが(ゆび)をさした(さき)にある、部屋(へや)天井(てんじょう)()()けられた虹色(にじいろ)(ひかり)をピカピカ(はな)つエネルギーの(かたまり)は……以前(いぜん)タカヤが惑星(わくせい)ミッシェルでET(いーてぃー)胸元(むなもと)から(つか)()ったものです。


 それを見上(みあ)げながら、エイギスは()口元(くちもと)()てました。


「これ……なんだか()ってる()がするの」


()ってる?」


 ヒカルの()いかけに、エイギスは(なが)(くび)(かし)げて睫毛(まつげ)()らします。


「ええ。(なつ)かしいというか……(へん)よね、(はじ)めて()たのに」




 二人(ふたり)(はな)していると特別(とくべつ)治療室(ちりょうしつ)自動(じどう)ドアが(ひら)いて、(あお)いカバンを(かた)から()けたルルと、その(うで)()かれたツバサが(はい)ってきました。


 ツバサはすぐに(うで)(なか)から()()りて、タカヤの(はい)った透明(とうめい)なボールへと()()ります。


「タカヤー! オキテ タカヤー!」


「こらツバサ! ()らしたりしたらダメだ、ほらこっち」


 ヒカルがすぐにツバサを()()げました。


「ネェ ヒカル。 タカヤ ハ モウスグ オキル?」


「うーん、(しょう)(ぞう)さんは明日(あした)くらいには()きるんじゃないかって()ってたよ」


「ソッカー……タカヤ ハヤク オキテネ。イッショ ニ アソボウネ」


 ツバサは三本(さんぼん)触覚(しょっかく)で、透明(とうめい)なボールの表面(ひょうめん)(やさ)しく()でました。


「ところで……ヒカルさん、エイギスさん、お二人(ふたり)はずっとこの部屋(へや)にいらっしゃいましたか?」


 ルルは右手(みぎて)(ほお)()てて、(こま)ったように(くび)(かし)げて(たず)ねます。


「ワタシは(すこ)(はな)れていた時間(じかん)もあるけれど……ヒカルはこの部屋(へや)にずっと()るわよね?」


「うん、大体(だいたい)()時間(じかん)くらいは()るかな。どうかしましたか?」


(じつ)は……ショースケさんの姿(すがた)をしばらく()ていなくて。もしかしてこの部屋(へや)()ていないかなと(おも)ったのですが……」


 心配(しんぱい)そうな表情(ひょうじょう)()かべてルルが(うつむ)いていると、ヒカルの(うで)(なか)でツバサがバタバタと手足(てあし)(うご)かしました。


「ショースケ、ヒドインダヨ、ルル! チキュウ カラ イッショニ キタノニ、ボクノコト オイテ ドッカ イッチャッタノ!」


「どっか……どこに()くとかは()っていませんでした? ツバサさん」


「バショ ハ ワカンナイ。デモ、アッチ ニ イッタヨ!」


 ツバサは触覚(しょっかく)をピッと(まえ)(たお)しました。


「あっち……ではさすがにわかりませんね。とにかく、もう(すこ)(さが)してみます。ツバサさんも一緒(いっしょ)()ていただけますか?」


「アイアイサー」


 ルルはツバサをヒカルから()()って()()げると、透明(とうめい)なボールの(なか)(ねむ)るタカヤへ(ふか)一礼(いちれい)します。


「ルル、もしこの部屋(へや)にショースケが()たら(つた)えるわね」


「ありがとうございます、エイギスさん。それでは……タカヤさんをよろしくお(ねが)いしますね」


 自動(じどう)(ひら)いたドアの(まえ)でもう一度(いちど)(ふか)(れい)をして、ルルとツバサは特別(とくべつ)治療室(ちりょうしつ)()()きました。



****



 ショースケは一人(ひとり)で、どこまでも(しろ)廊下(ろうか)(ある)いていました。


 宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)本部(ほんぶ)(なか)はまるでいつも(どお)りで、ショースケの(よこ)(いそが)しそうな隊員(たいいん)たちが(はし)()けていきます。


 きっととても(にぎ)やかなはずですが……ショースケにはその(こえ)が、その(おと)が、(みょう)にくぐもって()こえて。


 (あたま)(なか)にも(きり)がかかったようで。


 ぼんやりと……ただ、どうしてもあの()()たくなかったから、(あし)(うご)かしていました。




 そのまま(ある)いて(ある)いて、()()くとショースケは出口(でぐち)真逆(まぎゃく)にある、一階(いっかい)搭乗口(とうじょうぐち)エリアに()ていました。


 ここでは(いま)からUFO(ゆーふぉー)()って宇宙(うちゅう)旅立(たびだ)つ、たくさんの隊員(たいいん)たちが準備(じゅんび)(すす)めています。


 ……(すこ)(つか)れてしまったショースケは、(はし)(ほう)にある椅子(いす)腰掛(こしか)けて、その様子(ようす)(なが)めていました。


 そういえば、スイとティナと……タカヤと、惑星(わくせい)ミッシェルへ()ったときもここへ()て、ワクワクしながら(あお)UFO(ゆーふぉー)()()んだのでしたっけ。


 ……なんだか随分(ずいぶん)(むかし)のことのような()がします。



 ポケットに()()れて、タカヤのバッジを(うら)()けて()()して……それを()ながら、ショースケはまたぼんやりと(かんが)えます。


 ……どうしてタカヤは(おし)えてくれなかったのでしょう。


 どうして(しょう)(ぞう)も、ライトも(おし)えてくれなかったのでしょう。


 わかっています、理由(りゆう)があることは……でも。


 もし自分(じぶん)が、もっと(つよ)かったら?


 もし自分(じぶん)が、タカヤが特級(とっきゅう)だと()っても()らがないくらい、対等(たいとう)にいられるくらい(つよ)かっったら……みんなは(おし)えてくれたかも()れない。



 そんな(かんが)えがふと(よぎ)ったとき……搭乗口(とうじょうぐち)(なに)やら(あわ)ただしくなりました。


 ……どうやら隊員(たいいん)二人(ふたり)(きゅう)旅立(たびだ)てなくなったらしいです。


 ショースケが他人事(ひとごと)のように、(さわ)がしい(こえ)()(なが)していると……一人(ひとり)隊員(たいいん)がズカズカと(ちか)づいてきました。


「ねえ、(きみ)ちょっといい?」


 隊員(たいいん)()むくじゃらな(からだ)をグイッと近付(ちかづ)けて、ショースケの()っているバッジを(のぞ)()みました。


(きみ)、タカヤ隊員(たいいん)って()うんだね……え、特級(とっきゅう)なの⁉ ちょうどよかった! (いま)すごく(こま)っててさ、よかったら(たす)けてもらえない?」


「え? えぇと……」


 ショースケが言葉(ことば)(かえ)すよりも(さき)に、隊員(たいいん)(はなし)(つづ)けます。


(じつ)三級(さんきゅう)のコンビが()られなくなっちゃって。()わりになれる(さん)(きゅう)以上(いじょう)隊員(たいいん)(さが)してるんだ! 特級(とっきゅう)(きみ)なら十分(じゅうぶん)すぎるくらいだ。場所(ばしょ)惑星(わくせい)ミッシェル、どうかな?」


 ……惑星(わくせい)ミッシェル、以前(いぜん)四人(よにん)()った(ほし)です。


 ショースケの()(なか)にあるバッジはタカヤのもので、ショースケ自身(じしん)(じゅっ)(きゅう)なのです……この仕事(しごと)絶対(ぜったい)()けてはいけません。


 なのに。


「いいよ、()っても」


本当(ほんとう)⁉ (たす)かるよ……ところで(きみ)、コンビは?」


「……(いま)(べつ)仕事(しごと)をしてる」


 ショースケは咄嗟(とっさ)(かお)(そむ)けました。


「そうなんだ、まぁ(いっ)(きゅう)以上(いじょう)隊員(たいいん)一人(ひとり)での仕事(しごと)許可(きょか)されてるから大丈夫(だいじょうぶ)か。……あれ、(きみ)よく()たら制服(せいふく)()てないね。(わす)れちゃった?」


「……うん、今日(きょう)仕事(しごと)のつもりで()たんじゃないから」


「そっか! それなら()こうの()()しスペースで()りてくるといいよ。(もう)(わけ)ないんだけど(いそ)いでもらっていい?」


「わかった」


 ()()がったショースケは足早(あしばや)()()しスペースへ()かい、地球(ちきゅう)(じん)(よう)制服(せいふく)()りると(となり)部屋(へや)でそれに着替(きが)えます。


 そして(むね)にタカヤのバッジを()けて、もう一度(いちど)さっきの隊員(たいいん)(もと)(もど)りました。


「おかえり! (くわ)しい仕事(しごと)内容(ないよう)地図(ちず)(きみ)のポスエッグに(おく)らせてもらうね」


 隊員(たいいん)が、()っていた四角(しかく)機械(きかい)をショースケがポケットに()れていたエッグロケットにくっつけると、機械(きかい)のランプがピカピカと点滅(てんめつ)します。


「これでよし! さぁ、(きみ)UFO(ゆーふぉー)はこれだよ。自動(じどう)惑星(わくせい)ミッシェルに()かうようになってるから操作(そうさ)はいらないからね。それじゃ、(たの)んだよ!」


 隊員(たいいん)はそう()って肉球(にくきゅう)()いた()()ると、バタバタと()のところへ()ってしまいました。



 (あか)UFO(ゆーふぉー)()()んで、ショースケは出発(しゅっぱつ)のボタンを()します。


 (とびら)()まって、機体(きたい)(おお)きく()れてあちこちが(ひか)って……あたふたとしている(あいだ)に、いつのまにか(まど)(そと)には、さっきまで()たポスリコモスが(ちい)さく()えました。



 大変(たいへん)なことをしてしまいました、バレたら(おこ)られるどころでは()みません。


 不安(ふあん)(ふる)える右手(みぎて)を、ショースケは左手(ひだりて)でぎゅーっと()さえ()みます。


 ……でも、もし、もし。


 もしこの仕事(しごと)自分(じぶん)(ちから)だけで()えることが出来(でき)たら……もっと(つよ)くなれる()がしたのです。


 タカヤと対等(たいとう)に……なれる()がしたのです。



****



 UFO(ゆーふぉー)以前(いぜん)()たときのようなエメラルドグリーンの草原(そうげん)では()く、沼地(ぬまち)()(なか)にあるピンクの(おお)きな(いわ)(うえ)着陸(ちゃくりく)しました。


 (あた)一面(いちめん)粘度(ねんど)(たか)そうな黄色(きいろ)(どろ)(おお)われていて、ぶくぶく(あわ)()つその(ぬま)は……一度(いちど)(あし)()()んでしまえば()()せそうにありません。


 ショースケはUFO(ゆーふぉー)からそーっと()てくると、(いわ)(うえ)(おそ)(おそ)(あし)()ばして()()ちました。


「うう、(すべ)ったら()わりだよ……ええっと、目的地(もくてきち)は……あっちかな」


 エッグロケットでもらった地図(ちず)確認(かくにん)して、ショースケは(とお)くの景色(けしき)()をやります。


 目的地(もくてきち)はイアル(やま)(ちか)く。


 そこにあるらしい(いずみ)から()いている、特別(とくべつ)液体(えきたい)()んでくることが今回(こんかい)のショースケの仕事(しごと)です。


「イアル(やま)っていえば……あのオンガイルゴンが()んでるところだよね……」


 以前(いぜん)(おそ)われた記憶(きおく)(よみがえ)って、ショースケは身震(みぶる)いしましたが……自分(じぶん)(からだ)()きかかえて必死(ひっし)(ふる)えを(おさ)えると、ぎゅっと眉間(みけん)にシワを()せて(まえ)()きました。


「……()こう。(いそ)いでほしいって()われてるし」




 エッグロケットの(なか)からスカイボードを()()()し、それに()ったショースケは、(うし)ろに()いたボタンを()してから(みぎ)ハンドルをグルリと(ひね)ります。


 スカイボードは(ぬま)(うえ)(すべ)るように、なかなかのスピードで(まえ)へと(すす)(はじ)めました。


 ……あの()タカヤに()せたスカイボードの(しん)機能(きのう)である水上(すいじょう)走行(そうこう)、まさかこんなに(はや)く……こんなところで使(つか)うことになるとは(おも)いませんでした。



 どこまでも(つづ)いているんじゃないかと(おも)われた黄色(きいろ)沼地(ぬまち)をやっと()けて、さらにその(さき)水色(みずいろ)(やま)(ひと)()えて……ショースケは赤褐色(せきかっしょく)岩場(いわば)辿(たど)()きました。


 (おお)きな(いし)がゴロゴロと(ころ)がっていて、(すな)()じりの(かぜ)()()れ……ショースケは(くち)(はい)った砂粒(すなつぶ)をペッペッと()()します。


(いずみ)(たし)かこの(あた)りなんだけ……ど⁉」


 (きゅう)にブワッと突風(とっぷう)()いて、スカイボードはバランスを(くず)すと、(ちか)くの(おお)きな(いわ)正面(しょうめん)からぶつかってしまいました。


「わっ! いたた……ってエネルギーのパーツが()れてる⁉ 大変(たいへん)だ!」


 ショースケは(いそ)いでスカイボードから()りて、前側(まえがわ)()いているドーム(じょう)部分(ぶぶん)(さわ)って(たし)かめます。


「よかった、(はし)れないほど(こわ)れてはないみたい。これが(こわ)れたら(ぼく)本当(ほんとう)遭難(そうなん)しちゃうもんな……」


 ショースケはほっと(むね)()()ろしました。


「でも、ここではこれ以上(いじょう)使(つか)わない(ほう)()さそうだ。ということは……うーん、(ある)くしか()いか……」


 スカイボードをエッグロケットの(なか)(もど)して、ショースケは(いわ)()(すす)(はじ)めます。


 これ以上(いじょう)(すな)(くち)(はい)らないように左腕(ひだりうで)口元(くちもと)(おお)ったまま、(いわ)(のぼ)ったり()りたり……(つか)れて()まってしまいそうな(あし)一生懸命(いっしょうけんめい)(うご)かしました。



 そうしてしばらく(ある)(つづ)けていると……にわかに(すな)()じりの(かぜ)()んで、()いだことのないフルーツのような(あま)(かお)りをのせたやわらかい(かぜ)()きます。


 足下(あしもと)にはさっきまでのゴツゴツした(いわ)とは()って()わって、ふわふわの金色(きんいろ)(くさ)()(しげ)り、(まえ)()くと……金色(きんいろ)(ちい)さな(いずみ)(ひかり)反射(はんしゃ)してキラキラと(かがや)いていました。


「あった! (いずみ)……きっとこれのことだよね!」


 ショースケはエッグロケットの(なか)から(おお)きな(びん)()()すと、(いずみ)(みず)()(はじ)めました。


「いっぱいに()れて、(あと)はこれを()って(かえ)ればいいんだよね」


 (びん)(くち)スレスレにまで金色(きんいろ)(みず)()れてギュッと(ふた)()めると、ショースケはそれを(ふたた)びエッグロケットの(なか)(もど)します。


「さて! (かえ)らなきゃ……なんだけど……」


 ショースケはフラフラと、ふわふわの(くさ)(うえ)(こし)()ろしました。


 ここまで(ある)いてきて、緊張感(きんちょうかん)からずっと()()っていて……正直(しょうじき)(なか)もぺこぺこだし、もう(うご)けないほどヘトヘトです。


「ちょっとくらいなら(やす)んでいいかなぁ……ここ、あったかいし……(ねむ)く、なってきた……」



****



「みゅー?」


 ……(みょう)にやわらかい(なに)かが(かお)()れて、ショースケはやっと()()ましました。


「んー……なにぃ……? って、本当(ほんとう)(なに)⁉」


 (うす)いピンク(いろ)(からだ)をしたそれは、ショースケの両手(りょうて)(おさ)まってしまいそうなほど(ちい)さくて、おまんじゅうのようにまん(まる)で、クリックリの(くろ)(ひとみ)()()ぐショースケに()けています。


「みゅーん」


「な、(なに)この()(もの)⁉ ああ、あんまりくっついて()ないで……!」


「みゅーん!」


 (うす)ピンクの()(もの)は、()()がったショースケの(あし)にスリスリと(あま)えてきました。


 ……仕方(しかた)なく、ショースケはそれを両手(りょうて)(すく)って()()げます。


「うーん……警戒心(けいかいしん)()いし、多分(たぶん)(なに)かの()ども……だよね? (おや)はどこに()っちゃったんだろう」


 周囲(しゅうい)をキョロキョロ見回(みまわ)しても、ふわふわの金色(きんいろ)草原(そうげん)(ひろ)がっているばかりです。


「さっきまでの(みち)()(もの)には()わなかったし、やっぱりこの(さき)から()たのかな?」


「みゅーん」


 ……残念(ざんねん)ながら翻訳機(ほんやくき)使(つか)っても会話(かいわ)出来(でき)そうにありません。


「そうだ! タブレットで(なん)()(もの)調(しら)べてみれば……って、そういえばカバンに()れっぱなしで()ってきてないや……。あ、あのね、(きみ)!」


 ショースケは()(もの)をのせた()のひらを、(かお)(たか)さまで()げて(はな)しかけます。


(ぼく)もう()かなきゃいけないんだ。だから……その、ここに()いていくけど(ゆる)してね!」


 そう()って()(もの)金色(きんいろ)(くさ)(うえ)()くと、ショースケはさっきまでの(みち)()(かえ)(はじ)めました……が!


「みゅっ、みゅ、みゅぎゃぁあああああああああっ!!!!」


 (ちい)さな()(もの)はやわらかい(からだ)波打(なみう)たせながら、(しん)じられないほどの爆音(ばくおん)()(さけ)びました!


 咄嗟(とっさ)にショースケは(みみ)両手(りょうて)(ふさ)ぎますが……そんなもので(ふせ)げるような可愛(かわい)いらしい音量(おんりょう)ではありません、(みみ)がもげそうです!


「え、え⁉ そんな()かないで……!」


「ぎゃぁあああああああああああああっ!!!!!」


「わかった! わかったから!」


 ショースケは(いそ)いで()(もの)(ちか)づいて、もう一度(いちど)(やさ)しく()()げました。


(おや)(さが)せばいいんでしょ! 一緒(いっしょ)()てあげるから……だからお(ねが)い、これ以上(いじょう)()かないで……」


 たった(すう)(びょう)()(ごえ)()いただけですが、ショースケはもうゲッソリしてしまって……もう一回(いっかい)あの()(ごえ)()いたら、今度(こんど)本当(ほんとう)(みみ)()れてしまうかも()れません。


 そんなショースケの気持(きも)ちも(つゆ)()らず、()(もの)(うれ)しそうにニコーッと(わら)いました。


「みゅっ!」


「……仕方(しかた)ない、()こうか。えーっとこの(さき)は……本格(ほんかく)(てき)にイアル(やま)のふもとだね、注意(ちゅうい)しないと……」


 ショースケは()(もの)(かか)えたまま、予定(よてい)には()かった(みち)(ある)(はじ)めました。


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