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第十三話 カズの優しい宝物

****


「みんな! いらっしゃーい!」


 玄関(げんかん)待機(たいき)していたカズは、ピンポンの(おと)()こえてすぐに自宅(じたく)のドアを(ひら)きました。


「まだ七月(しちがつ)なのに(あつ)いよね。さ、(はい)って(はい)って!」


本当(ほんとう)(あつ)かったよ……()けるかと(おも)った……」


 ショースケはTシャツの(すそ)で、(ひたい)(たき)のような(あせ)(ぬぐ)います。


「ショースケ、(あつ)(あつ)()()ぎなんだよ! 余計(よけい)(あつ)(かん)じただろ!」


()らないよそんなこと。レンが勝手(かって)にイライラして(あつ)(かん)じたんじゃないの」


 炎天下(えんてんか)(なか)(ある)いてきた(つか)れからか、レンとショースケはじろりと(するど)くにらみ()いました。


「まぁまぁー、人様(ひとさま)のおうちなんだからケンカしないでよー。……にしてもタカヤすごいねー、(あせ)(ひと)つもかいてないじゃんか」


 ミオはタカヤの(からだ)(うえ)から(した)までじろじろ()ます。


「あ、あはは……(あつ)いの()れてるから、かなぁ? そうだカズ、これ」


 (くつ)(そろ)えて玄関(げんかん)()がって、タカヤはカズに茶色(ちゃいろ)紙袋(かみぶくろ)手渡(てわた)しました。


「ブラウニー()いてきたんだ。みんなの(ぶん)と……カズのご家族(かぞく)(ぶん)()いてきたから(あと)()べてくれると(うれ)しいよ」


「え! ありがとう、タカヤの(つく)ったお菓子(かし)美味(おい)しいからみんな(よろこ)ぶよ!」


 カズがニコニコ(わら)いながらリビングに(つな)がる()()()けると、玄関(げんかん)にクーラーの(つめ)たい(かぜ)がさーっと()()みます。


「ふわぁー(すず)しい……()(かえ)った気分(きぶん)だよ」


 (いそ)いでリビングに()()んだショースケは、両手(りょうて)(かお)(あお)ぎながらその冷気(れいき)をふんだんに()()みました。


 すると(うし)ろから、タカヤがショースケの背中(せなか)をぽんっと(たた)いて(こえ)をかけます。


「ショースケ、(さき)にあいさつするぞ」


「あ、うん! そうだったね」


 全員(ぜんいん)(おく)和室(わしつ)(はい)って、カズのお(かあ)さんの写真(しゃしん)(かざ)られた仏壇(ぶつだん)(まえ)一列(いちれつ)(なら)んで()()わせてから、みんなは(ふたた)びリビングに(もど)って()ました。


麦茶(むぎちゃ)どうぞー! あ、タカヤのくれたブラウニーも()けたよー」


「ありがとーカズー。おれもう(のど)カラカラだー」


 ミオはカズがローテーブルに()いたばかりの麦茶(むぎちゃ)(はい)ったグラスを(ひと)()()って、()ってましたと()わんばかりに一気(いっき)()()しました。


「おいミオ! ()ったまま()むなよ、行儀(ぎょうぎ)(わる)いだろ!」


 そう注意(ちゅうい)したレンは座布団(ざぶとん)(すわ)って、タカヤの()いたブラウニーを(ひと)つ、(だれ)よりも(はや)(くち)()れます。


「……うまい」


「そっか、よかった。レンがさ、(まえ)にナッツが(はい)ったのが()きだって()ってたから今回(こんかい)はいっぱい()れてみたんだ」


「ふ、ふーん……? そうかよ」


 (となり)(すわ)るタカヤからわざと(おお)きく()()らして、レンは(うれ)しそうに口元(くちもと)(ゆる)ませたままブラウニーをもう(ひと)頬張(ほおば)りました。


「ねえねえ(なに)するー? 今日(きょう)はね、お(とう)さんもおじいちゃんもおばあちゃんも(おとうと)(いもうと)もみんなお()かけしてるから、ここはぼくらの(しろ)なんだよ!」


 カズは麦茶(むぎちゃ)をちびちび()みながらえへへと(わら)います。


(ぼく)、あんまり経験(けいけん)()いんだけどこういう(とき)(なに)をするものなの?」


 両手(りょうて)にブラウニーを(にぎ)ったショースケが(たず)ねると、()かいに(すわ)ったミオがギラリと()(かがや)かせました。


「それはやっぱりゲームでしょー。ほらやろー(いま)すぐやろー!」


「えー……ゲームはミオの一人(ひとり)()ちじゃねーか」


「みんなより(なん)(じゅう)(ばい)練習(れんしゅう)してるんだからおれだって()たなきゃ(こま)るよー? いいじゃんレン、やろうよー」


 (いや)そうに(まゆ)をしかめるレンの(うで)を、ミオはぐいぐい()()ります。


「……仕方(しかた)ねーな、ちょっとだけだぞ」


「じゃあぼくの部屋(へや)移動(いどう)しようか!」


 麦茶(むぎちゃ)とブラウニーをお(ぼん)()せて、みんなはカズを先頭(せんとう)()(かい)へと()がって()きました。



****



「ごめんね、ちょっと(あつ)いけどしばらく我慢(がまん)して」


 グリーンのカーテンを()めながら、カズはエアコンのスイッチを()れました。


 (まど)から(はい)った()すような日差(ひざ)しでほかほかになっているカズの部屋(へや)には、たくさんの図鑑(ずかん)(はい)った本棚(ほんだな)やゲーム()(つな)がった(ちい)さめの(ふる)いテレビがあります。


 ミオはまるで自分(じぶん)部屋(へや)であるかのようにいそいそとゲーム()(ちか)づいて、(なに)にしようかとゲームソフトを(さぐ)って……レンはそれを(うし)ろからやれやれと(なが)めていますが……


 タカヤとショースケの視線(しせん)窓際(まどぎわ)(たな)(うえ)()いてある、(あや)しく(ひか)るまだら模様(もよう)(おお)きな(いし)にもう(くぎ)()けです。


 二人(ふたり)(かお)見合(みあ)わせました、だってあれはどう()ても……惑星(わくせい)シュレンティで()れる宝石(ほうせき)、ラクトモンドだからです!




 (いま)から七日(なのか)ほど(まえ)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)本部(ほんぶ)からとある連絡(れんらく)(はい)りました。


()とし(もの)、ですか?」


 タカヤが(ちい)さくしたエッグロケットを(にぎ)りしめて応答(おうとう)します。


「はい。先日(せんじつ)(とき)()()(ちょう)(おとず)れた宇宙(うちゅう)(てき)(だい)富豪(ふごう)のマルーボさんから、(おお)きなラクトモンドをそちらで()としてしまったとの連絡(れんらく)(はい)りました」


「わかりました、()つけ次第(しだい)本部(ほんぶ)(おく)ります」


 そう返事(へんじ)をして、タカヤはエッグロケットをポケットにしまいました。


「ショースケ、どこかでラクトモンド()たか?」


()てるわけないじゃん。というか……それって(だれ)かに(ぬす)まれちゃったんじゃないの? ラクトモンドってめちゃくちゃ高価(こうか)宝石(ほうせき)でしょ。お(かね)()(くら)んだET(いーてぃー)さんがいてもおかしくないよ」


 (ぼく)だって()しいもん、とショースケは自分(じぶん)のお財布(さいふ)事情(じじょう)のことを(かんが)えてため(いき)をつきます。


「そうだよな……マルーボさんには(もう)(わけ)ないけど、()つかる可能(かのう)(せい)(ひく)いだろうな。しかもラクトモンドは地球(ちきゅう)物質(ぶっしつ)()てるからコスモピースの(ちから)使(つか)っても捜索(そうさく)(むずか)しいし……」


 (あたま)(なや)ませながら、タカヤも(ちい)さくため(いき)をつきました。




 ……そんなラクトモンドがまさかこんなところにあるなんて!


「ね、ねぇねぇカズー?」


「なーに? ショースケ」


「あの(いし)ってさー……どこで(ひろ)ったの?」


 ショースケはラクトモンドを(ゆび)さします。


「ああ! いいでしょあれ。(いっ)週間(しゅうかん)(すこ)(まえ)くらいに海辺(うみべ)(ひろ)ったの! ぼくの宝物(たからもの)にしようと(おも)って」


 カズは大事(だいじ)そうにラクトモンドを()(まわ)しながら(つづ)けます。


本当(ほんとう)学校(がっこう)()って()ってみんなに()せたかったんだけど…この(いし)片手(かたて)()てないくらい(おお)きいし、()()(わり)(おも)いから()って()けなかったんだー」


「そうなんだー……あのさ、(きゅう)なんだけど……」


 ショースケは()いにくそうに(くち)をもごもごさせながら、ちらりとカズの(ほう)()ました。


「その(いし)(ぼく)にくれたりしないかなー……なんて」


「えぇ⁉ ダメダメ、ダメだよ! すっごく綺麗(きれい)だから、()しくなるのはわかるけど!」


「だ、だよねー……」


 ショースケはズボンのポケットの(なか)のエッグロケットを(にぎ)ってテレパシーを(おく)ります。


(どうする? タカヤ。まさかこっそり(ぬす)むわけにもいかないし……)


(そうだな……どうしてもカズが(わた)さないなら、宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)本部(ほんぶ)(たの)んで記憶(きおく)操作(そうさ)をしてもらわないといけなくなる。なんとか自分(じぶん)から手放(てばな)して()しいんだけど……)


「タカヤー、ショースケー? 準備(じゅんび)できたよー(はや)くやろうー!」


 ゲームの起動(きどう)完了(かんりょう)したミオは、テレビの(まえ)でそわそわと(からだ)()らしています。


 とりあえず様子(ようす)()ながら(かんが)えようと、二人(ふたり)はエッグロケットから()(はな)してコントローラーを(にぎ)りました。



****



「……タカヤちょっと下手(へた)()ぎない?」


「え、(いま)()ちたキャラクターが(おれ)の?」


「そうだよ! さっきからそう()ってるじゃんか!」


 ショースケはやいやいとタカヤのプレイに(くち)()します。


「タカヤは大体(だいたい)(なん)でもできるけどさー、ゲームだけは苦手(にがて)だよねー」


 またもや余裕(よゆう)(いち)()()ったミオが、ブラウニーを頬張(ほおば)りながらニヤリと(わら)います。


「あはは……(おれ)だって苦手(にがて)なこといっぱいあるよ。ミオはやっぱりゲーム上手(うま)いな」


当然(とうぜん)一日(いちにち)(なん)時間(じかん)練習(れんしゅう)してると(おも)ってるのー。今度(こんど)こそ大会(たいかい)優勝(ゆうしょう)目指(めざ)してるんだからー」


 ミオがそう()いながらさりげなくコントローラーを操作(そうさ)して、『もう一度(いちど)プレイする』を選択(せんたく)しようとするのをレンは見逃(みのが)しません。


「おい! ちょっとだけって約束(やくそく)しただろ!」


「まだ(じゅっ)(かい)しかやってないじゃーん! ちょっとって二十(にじゅっ)(かい)くらいでしょー?」


「そんなわけねーだろ! ほら、もう()わり!」


 (じゅっ)(かい)全部(ぜんぶ)()()だったレンはむすっとしたままコントローラーを片付(かたづ)けます。


「えぇー……レンのケチー」


 ほっぺをぷくーっと(ふく)らませているミオの(あたま)を、カズはよしよしと(やさ)しく()でました。


(つぎ)(なに)するー? あ、トランプあるよーババ()きしようよ!」


「え、ババ()き……」


 ショースケはぎゅぎゅっと(まゆ)をしかめました。


「なんだよ、ショースケ(よわ)いのか?」


 (うれ)しそうにニヤニヤ(わら)うレンに、ショースケはいやいやとすぐさま()(かえ)します。


「そ、そんなわけないじゃん! (すく)なくともレンよりは(つよ)いんだから!」


「はぁ⁉ じゃあ勝負(しょうぶ)しようぜ」


 二人(ふたり)はバチバチ火花(ひばな)()らします。


()まりね! じゃあ(くば)るよー」


 カズは()れた()つきでカードをシャッフルすると、(いつ)つに()けて(くば)(はじ)めました。




「レンさー、(はや)くジョーカー()いてくれない? (ぼく)もう(つか)れたんだよ!」


「オレだって(つか)れたよ! ショースケこそ(はや)()けよ!」


 お(たが)(かお)丸出(まるだ)しで、(よわ)すぎて決着(けっちゃく)()かない二人(ふたり)()いておいて……



「しかしタカヤ本当(ほんとう)にババ()(つよ)いよねー、なんかコツとかあるのー?」


 ミオがくつろぎながら(たず)ねます。


「コツかはわからないけど……相手(あいて)()いて()しそうな(ほう)(ぎゃく)()く、とか。目線(めせん)のクセとかを()て、()きたそうな場所(ばしょ)にジョーカーを()って()くとか……かな?」


「へー……タカヤっていろいろ()てるんだね! ぼくはよくわかんないや」


 カズは(つぎ)(あそ)予定(よてい)のすごろくを()()てながらニコニコと(わら)いました。


 ……さてさて、いつまでも(あそ)んでいるわけにはいきません。


「なぁカズ? ちょっとこの(いし)(さわ)らせてもらっていいか?」


「いいよー! やっぱりタカヤもその(いし)()になる? かっこいいよねー!」


 タカヤはポケットの(なか)のエッグロケットから(ちい)さな機械(きかい)()()すと、それを()のひらに(かく)したままラクトモンドに(ちか)づきました。


 (おお)きなラクトモンドに機械(きかい)をぎゅっと()()てて、(おも)さや材質(ざいしつ)のデータを()ります。


(……やっぱりマルーボさんが()としたラクトモンドで間違(まちが)いなさそうだ。おそらくこの(いし)にはキラキラ()をかけて()かったんだな……さて、どうしよう?)


 本部(ほんぶ)にカズの記憶(きおく)操作(そうさ)してもらえば、簡単(かんたん)にラクトモンドを()(もど)すことができるでしょう。


 しかし……


記憶(きおく)操作(そうさ)便利(べんり)なことだけじゃない……カズの(なか)のラクトモンドと(むす)びついてる記憶(きおく)にも影響(えいきょう)()て、()えてしまったりする可能(かのう)(せい)がある。たとえば……今日(きょう)みんなで一緒(いっしょ)(あそ)んだこと、とか)


 大事(だいじ)友達(ともだち)記憶(きおく)です、出来(でき)ることなら()()れたくはありません。


(そのためには……カズに自分(じぶん)からラクトモンドを手放(てばな)してもらわないと)


 タカヤはラクトモンドが(かざ)ってある(たな)(まえ)()ったまま(かんが)()みます。


 その姿(すがた)を、ショースケは(のこ)()(まい)のトランプを右手(みぎて)(にぎ)ったまま(うし)ろからじーっと()ていました。


(タカヤ、(いま)ラクトモンドのデータを()ってたな……ってことは、あれが使(つか)えるかも!)


「おいショースケ(はや)()けよ……」


 レンも(のこ)()(まい)のトランプを(にぎ)って、(つか)()った(かお)でショースケをにらみます。


「……ねぇレン。(ぼく)たち、かれこれ(じゅっ)(ぷん)くらいジョーカーを()()ってるじゃん?」


「……そうだな」


正直(しょうじき)もう(つか)れたよね……? だからさ、二人(ふたり)とも()ったことにしない? (ぼく)このままやってても()わる()がしないもの」


「……今回(こんかい)だけだぞ」


 二人(ふたり)同時(どうじ)()(なか)のトランプを(ゆか)()き、レンはその()にぐったりと(よこ)たわりました。


 ショースケは()()がり、(おお)きく()びをしながらわざとらしく(こえ)()します。


「あー(つか)れた! (ぼく)トイレに()きたいなーでも場所(ばしょ)がわかんないからタカヤに案内(あんない)してもらおうかなー!」


「あ、案内(あんない)ならぼくがするよー? だってぼくの(いえ)だし」


 カズが()()がろうとするので、ショースケは必死(ひっし)にタカヤに視線(しせん)(おく)ります。


「い、いや! (おれ)()れて()ってくるよ!」


 カズが(ある)(はじ)めるよりも(さき)に、タカヤは(いそ)いでショースケを()れて部屋(へや)()ました。



****



 (ねつ)がムンムンとこもった廊下(ろうか)で、二人(ふたり)はこそこそと(はな)()います。


「どうしたんだよ、ショースケ。(なに)()(かんが)えが()かんだのか?」


(まさ)しくその(とお)りだよ。タカヤさっき、機械(きかい)でラクトモンドのデータ()ってたでしょ? あれちょっと()してくれない?」


 タカヤはエッグロケットの(なか)から(ちい)さな機械(きかい)()りだしてショースケに(わた)します。


「このデータを、まずは(ぼく)のタブレットに()れて……そしてこれ!」


 ショースケは(しろ)くてやわらかそうな、粘土(ねんど)のような(かたまり)()()しました。


「ふっふっふ……これねー、この(あいだ)宇宙(うちゅう)通販(つうはん)()ったんだー。まあ()ててよ!」


 青白(あおじろ)(ひかり)(はな)つタブレットの画面(がめん)(うえ)に、ショースケが(しろ)(かたまり)をのせると……


 (しろ)(かたまり)はみるみるうちに、カズの部屋(へや)()いてあるラクトモンドそっくりに姿(すがた)()えていくではありませんか!


「わ……っ! すごい!」


「でしょでしょ? この偽物(にせもの)のラクトモンドを、本物(ほんもの)のラクトモンドと()()えればいいんだよ! でも……」


「でも?」


 タカヤは(くび)(かし)げながら偽物(にせもの)のラクトモンドを()()げてみて……ショースケの()いたい(つづ)きがなんとなくわかりました。


「……これ、すごく(かる)いな」


「そうなんだよ……(おも)さはコピー出来(でき)なくて。カズが()ったら一瞬(いっしゅん)異変(いへん)()()くだろうけど……まぁ、それさえ誤魔化(ごまか)せれば大丈夫(だいじょうぶ)だと(おも)うよ」


「うーん、地球(ちきゅう)(がい)物質(ぶっしつ)をカズの(いえ)()いておくのは不安(ふあん)だけど……とりあえずマルーボさんにラクトモンドが(かえ)すのが(さい)優先(ゆうせん)だもんな」


 二人(ふたり)(はな)()いが終了(しゅうりょう)したタイミングで、部屋(へや)(とびら)(ひら)いてカズがぴょこっと(かお)()しました。


「あれ、そんなところにいたの? なかなか(もど)ってこないから心配(しんぱい)してたんだよ」


「えーっと……ちょっとお(なか)(こわ)しちゃってさー! あ、タカヤもお(なか)(こわ)したから()(ばい)時間(じかん)がかかったんだよ。ね、タカヤ!」


「え……あ、ああうん! そうなんだよ!」


「そうなの? 大丈夫(だいじょうぶ)?」


 カズが不安(ふあん)そうに(まゆ)()げるので、二人(ふたり)はいやいやと両手(りょうて)をぶんぶん()りました。


「もう(なお)ったんだ、だから大丈夫(だいじょうぶ)だよ。ほら、部屋(へや)(もど)ろうショースケ」



****



(つぎ)オレの(ばん)ねー。えーっと、(ろく)。いちにぃさん……」


 ミオが自分(じぶん)紫色(むらさきいろ)のコマをぴょこぴょこと(うご)かします。


 みんなですごろくをやっている(あいだ)にも、ショースケはちらちらと頻繁(ひんぱん)(たな)(うえ)のラクトモンドを確認(かくにん)していました。


 (すき)()偽物(にせもの)のラクトモンドと()()えなければなりませんが……問題(もんだい)はそんなタイミングがあるかどうかです。


 だってここはカズの部屋(へや)、タカヤとショースケが二人(ふたり)きりになれる可能(かのう)(せい)(きわ)めて(ひく)いでしょう。


「おい、(つぎ)ショースケの(ばん)だぞ」


「あ! ごめんごめん」


 レンに()われてショースケはサイコロを(ころ)がします。


 ……(かんが)(ごと)ばかりしているためか出目(でめ)(いち)ですし、()()しに(もど)されるしでショースケの(あお)いコマの(すす)具合(ぐあい)散々(さんざん)です。


 一番(いちばん)にゴールして、みんながすごろくにまだ集中(しゅうちゅう)している(あいだ)にこっそり()()える……という方法(ほうほう)はどうやら使(つか)えそうにありません。


 ……と、その(とき)


 ピンポーン、とカズの(いえ)()(りん)()りました。


「お(きゃく)さんかな? ぼく、ちょっと()てくるね」


 カズが()()がって部屋(へや)(あと)にします。


「あ、じゃあオレはその(あいだ)にトイレ()ってくるー」


 ミオもカズに(つづ)くように(とびら)をくぐったため、部屋(へや)にはタカヤとショースケとレンの(さん)(にん)だけになりました。


 これはラクトモンドを()()える絶好(ぜっこう)のチャンスです!


(タカヤ! (なん)でもいいからレンの注意(ちゅうい)()らしておいてくれない?)


(え! ……わ、わかったやってみるよ)


 ポケットの(なか)のエッグロケットから()(はな)して、タカヤは(となり)(すわ)るレンの()(うし)ろから両手(りょうて)(おお)いました。


「レン? だ、だーれだ!」


「な、(なん)だよ(きゅう)に! (だれ)って…タカヤに()まってるだろ!」


「あはは……正解(せいかい)


 そう()って(わら)いながらも、タカヤは一向(いっこう)両手(りょうて)をレンの()から(はな)そうとしません。


 ショースケはその(あいだ)にラクトモンドを()()えようとしますが……(おも)ったより(おも)かったのか、もたついて時間(じかん)がかかっています。


「タ、タカヤ(なん)()(はな)さねぇんだよ!」


「え、ええっと……(おれ)がもう(すこ)しレンとこうしてたいから。ダメ?」


「なっ…! だ、ダメじゃねぇ、けど…」


 レンがニマニマと(ゆる)口元(くちもと)必死(ひっし)(おさ)えているうちに、ショースケはやっとラクトモンドの()()えが完了(かんりょう)したようです。


 タカヤがレンの目元(めもと)から()(はな)すと同時(どうじ)に、(とびら)(ひら)いてカズとミオが(かえ)ってきました。


「ただいまー! お(きゃく)さんね、(となり)のおばあちゃんだった! この(まえ)おばあちゃん()(にわ)(くさ)()手伝(てつだ)ったから、お(れい)にってお菓子(かし)(わた)しに()てくれたの。お(れい)なんていいのにねー!」


 カズはニコニコと(もと)()場所(ばしょ)(すわ)(なお)します。


「カズって本当(ほんとう)(やさ)しいよねー…あれー? レンなんかいいことあったー?」


 ニヤニヤ(たず)ねてくるミオに、レンはぶっきらぼうにそっぽを()きながら(こた)えます。


「べ、(べつ)(なに)もねぇよ! それよりすごろく、(つぎ)カズの(ばん)だぞ!」


「あ、そうだった! ……あれ?」


 レンからサイコロを()()ろうと(ひだり)()いて…(おく)にある(たな)()(はい)ったカズはぴたりと(うご)きを()めました。


(いし)()きが()わってる……(だれ)(さわ)った?」


「え……さ、(さわ)ってないよ! カズの勘違(かんちが)いじゃない⁉」


 ショースケは一生懸命(いっしょうけんめい)精一杯(せいいっぱい)しらを()ります。


「えー、だってこの(とが)った部分(ぶぶん)(みぎ)にあったはずだもの。ほら、こんな(ふう)に……」


 (もと)あった(かたち)(もど)そうと、カズは()()がって(いし)両手(りょうて)()()げて…そのまま()(かい)、パチパチとまばたきをしました。


 (いし)をゆっくり()いて、もう一度(いちど)()()げて……それを(さん)(かい)()(かえ)したあと、カズはみんなの(ほう)にくるりと()(かえ)って今日(きょう)一番(いちばん)大声(おおごえ)()げます。


「なんか……すっっっごく(かる)くなってる!」


「え、えー⁉ そんなわけないじゃーん!」


 (たき)のような()(あせ)をかきながら、ショースケは(なん)とか誤魔化(ごまか)そうと(こえ)(しぼ)()しました。


(いし)(かる)くなんてなるかよ」


「だってレン、ぼくこれを海辺(うみべ)から()って(かえ)るの大変(たいへん)だったのに……(いま)(おも)さならすいすい(はこ)べちゃうよ! あっ! もしかして……」


 カズは()をキラキラキラッと(かがや)かせます。


「えへへー(じつ)はぼく最初(さいしょ)から(あや)しいと(おも)ってたんだー。この(いし)ってさ、もしかして特別(とくべつ)(いし)なんじゃないかなぁ⁉ 例えば…宇宙(うちゅう)から()たとか!」


 ……ショースケはもう(おも)いっきり()()らすことしかできません。


「えー宇宙(うちゅう)からー? 隕石(いんせき)ってことー?」


 ミオが(ちか)づいてツンツンと(いし)をつついてみます。


「ふふー……(じつ)はぼくのお(とう)さんの()()いにそういうの研究(けんきゅう)してる(ひと)がいるんだー! その(ひと)(たの)んだら調(しら)べてもらえるかも!」


 ニコニコ(わら)うカズを()ながら、タカヤはポケットの(なか)のエッグロケットを(にぎ)ります。


(……なあショースケ。あの偽物(にせもの)のラクトモンドって(なに)出来(でき)てるんだ?)


(…グラクラ(せい)()ET(いーてぃー)、ユラトブレのウロコからだよ。調(しら)べられたら……まぁ大騒(おおさわ)ぎになるだろうね)


 大変(たいへん)なことになってしまいました、さてどうしましょう!


(とにかく調(しら)べられるのはまずい! ショースケ、ラクトモンドをもう一度(いちど)本物(ほんもの)()()えて(なん)とかしよう!)


(こんなにみんながラクトモンドに注目(ちゅうもく)してるのにどうやって()()えるのさ⁉)


(ええーっと……えーっと……!)


 タカヤはたくさん(かんが)えますが……なかなか()(あん)()かびません。


(それに()()えちゃったら、ラクトモンドをマルーボさんに(かえ)せないよ! (なに)(べつ)方法(ほうほう)(かんが)えないと……)


 ショースケも(むね)(まえ)(うで)()んで必死(ひっし)(あたま)をひねります。


(ううん、カズに(いし)(なに)かと交換(こうかん)して! って(たの)()むとか……? でもでも、そんなに(ぼく)らがあの(いし)()しがるのも(あや)しいし……!)


 いっぱい(かんが)えすぎて、ショースケの(あたま)はもうパンク寸前(すんぜん)です。


(うーんうーん、ああもう! いっそのことマルーボさんがカズの(まえ)(あらわ)れて、『それは自分(じぶん)のものだから(かえ)して』って()ってくれたらいいのに! そしたらカズは(やさ)しいから、絶対(ぜったい)(かえ)してくれると(おも)うのになぁ……)


 そう(かんが)えて(ふか)―いため(いき)()いたショースケが(かお)()げると……(おどろ)いたような表情(ひょうじょう)のタカヤと()()いました。


 そして途端(とたん)に、タカヤはにっこりと(わら)います。


(どしたのタカヤ、そんな(かお)して)


(ショースケのおかげでいい作戦(さくせん)(おも)いついたんだ! 協力(きょうりょく)してくれないか?)



****



「ごめん、(きゅう)なんだけど……(おれ)用事(ようじ)(おも)()したから(かえ)らなきゃ」


 すごろくを一番(いちばん)にゴールしたタカヤが()()がると、カズは(まゆ)をしょんぼりと()げながら()()って()ます。


「えー⁉ タカヤもう(かえ)っちゃうの? せっかく(あそ)びに()てくれたのに……」


「ごめんな。また(あそ)びに()させてもらってもいいかな?」


「もちろんだよ! あ、お見送(みおく)りに()くね!」


 カズもレンもミオも、タカヤを見送(みおく)るために部屋(へや)から()()きます。


 ショースケは(ねん)のため、(たな)(うえ)偽物(にせもの)のラクトモンドを本物(ほんもの)()()(なお)してからみんなの(あと)()いました。


「それじゃ、また学校(がっこう)で。今日(きょう)はありがとう」


 午後(ごご)(さん)()(まわ)っても(よわ)まることの()日差(ひざ)しの(なか)、タカヤは(おお)きく()()りながら(かど)()がって()えなくなりました。


「バイバーイ……うぅ、やっぱりタカヤって毎日(まいにち)(いそが)しそうだよね。せっかく今日(きょう)(なが)一緒(いっしょ)(あそ)べると(おも)ったのに」


 タイル()りの玄関(げんかん)(まえ)で、カズはがっかりと(かた)()とします。


(むかし)はそんなことなかったのにねー、なんかおれたちに内緒(ないしょ)(なら)(ごと)でもしてるのかなー? ねぇショースケなんか()らない?」


「し、()らないよ! それよりさ、えーっと……あの(くも)! なんかすごく(へん)(かたち)してない⁉」


 ミオの()いかけに(はげ)しく(くび)(よこ)()ってから、ショースケは(そら)(ゆび)さしました。


(べつ)普通(ふつう)じゃねーの。なぁ(あつ)いから(はや)(なか)(はい)ろうぜ? ずっと()(おく)られてもタカヤも(こま)るだろ」


「いやいやいや! よく()(へん)(かたち)だから!」


 (いえ)(なか)(もど)ろうとするレンを、ショースケは(うで)()()って()()めます。


「なんだよ! (べつ)(へん)じゃねーって!」


「いやすごく(へん)! (へん)だからまだ(かえ)らないで!」


「んー……そんなに(へん)かなぁ……?」


 カズとミオも不思議(ふしぎ)そうに(そら)見上(みあ)げていると…



「どこに()っちゃったのかしら……」


 (しろ)いワンピース姿(すがた)女性(じょせい)(なが)(かみ)()らしながら、カズの(いえ)(まえ)(とお)りかかりました。


「あ……そこのアナタたち。ちょっとお(はなし)いいですか?」


 女性(じょせい)(こま)ったような表情(ひょうじょう)()かべて、(あた)りをキョロキョロ見回(みまわ)してから(くび)(かし)げます。


「どうしましたか?」


 カズは()をきょとんと(まる)くして()いかけました。


(じつ)(わたし)(さが)(もの)をしていて……海辺(うみべ)でまだら模様(もよう)(おお)きな(いし)()くしてしまったんです。それで……いろんな(ひと)()いて(まわ)っていたら、この(あた)りで()かけたって()われて。(なに)()りませんか?」


「え! ええっと……ちょっと()っててください!」


 女性(じょせい)(いま)にも()()しそうな(うる)んだ(ひとみ)()たカズは、すぐに玄関(げんかん)(とびら)()けて()(かい)へと()()がります。


 そしてさっきよりも(なん)だか(おも)くなった()がするラクトモンドを不思議(ふしぎ)そうに(かか)えて、玄関(げんかん)(まえ)(もど)ってきました。


「もしかして……この(いし)のことですか?」


「あ!」


 女性(じょせい)(うれ)しそうに(かお)をほころばせると、カズから(いし)両手(りょうて)()()ります。


間違(まちが)いありません、(わたし)()くした(いし)です! アナタが()っていてくださったんですね。本当(ほんとう)にありがとうございます!」


 大切(たいせつ)そうに(いし)()いて、女性(じょせい)深々(ふかぶか)とおじぎをすると(かど)()がって(かえ)って()きました。



 その姿(すがた)()えなくなっても()()(つづ)けるカズに、ミオが(はな)しかけます。


「まさか海辺(うみべ)(ひろ)った(いし)()(ぬし)がいたとはねー……カズ残念(ざんねん)だったねー、宝物(たからもの)にするんだーってすごく()()ってたじゃん」


「え、全然(ぜんぜん)残念(ざんねん)じゃないよ? (たし)かにあの(いし)はかっこよかったけど…お(ねえ)さんの(もと)(もど)れて(いし)もきっと(よろこ)んでるもの!」


 さも()たり(まえ)のように、カズはニコニコと(わら)います。


「ふーん……カズって本当(ほんとう)(やさ)しいよねー」


 その屈託(くったく)のない笑顔(えがお)()られて、ミオもへにゃりと(かお)(ゆる)ませました。


「なぁもう部屋(へや)(もど)っていいか……? おれもう(あつ)くて……」


「わ! レン(かお)()()! (はや)(はい)って麦茶(むぎちゃ)()もう!」


 カズが玄関(げんかん)(とびら)()けると、みんなは(すべ)()むように(いそ)いで(いえ)(なか)へと(はい)っていきました。



****



(タカヤ、上手(うま)くいったね!)


 ショースケはカズの(いえ)のリビングで麦茶(むぎちゃ)()みながら、ポケットの(なか)のエッグロケットを(にぎ)ります。


(ああ、ショースケのおかげだよ。これでカズも本部(ほんぶ)記憶(きおく)操作(そうさ)()けなくて()むはずだ)


 (しろ)いワンピースの女性(じょせい)(あた)りに(だれ)()ないことを確認(かくにん)してから(あか)いエッグロケットにラクトモンドを収納(しゅうのう)すると、なにやら(あや)しい薬品(やくひん)(からだ)()きかけて……タカヤへと姿(すがた)()えました。


(この(あいだ)ポスリコモスに()ったときに()っておいた変身(へんしん)スプレーが(やく)()ってよかったよ)


 そうタカヤは(わら)いますが……この変身(へんしん)スプレー、ショースケの記憶(きおく)(ただ)しければめちゃくちゃ高価(こうか)だったような……。


 (かんが)えるのも(こわ)いので、ショースケは(べつ)話題(わだい)()()します。


(ねぇタカヤ、(いし)無事(ぶじ)()(もど)せたんだしもう一回(いっかい)(あそ)びにおいでよ。みんな(さび)しがってるからきっと(よろこ)ぶよ)


(うーん……ありがたいけど、(おれ)この(あと)本当(ほんとう)用事(ようじ)があるんだ)


(え、(なん)の?)


(あはは、ちょっとツバサと(あそ)約束(やくそく)してるだけだよ。じゃあショースケまた明日(あした)


 ポケットの(なか)のエッグロケットから()(はな)して……タカヤはもう一度(いちど)エッグロケットを(つよ)(にぎ)ります。


「はい、フラモ(せい)巨大(きょだい)なモンスターが(あば)れてる……すぐに()かいます。UFO(ゆーふぉー)は…いつもの場所(ばしょ)ですね。了解(りょうかい)しました」



****



「ねぇカズー? これって(むかし)写真(しゃしん)?」


 ショースケはグラスの(なか)麦茶(むぎちゃ)をグッと()()すと、(かべ)にたくさん(かざ)ってある写真(しゃしん)(なか)(いち)(まい)()をやりました。


「そうだよー! ぼくらが三年生(さんねんせい)になったばかりのときにあった遠足(えんそく)写真(しゃしん)!」


 写真(しゃしん)にはお弁当(べんとう)()べながらピースをするカズとミオと、(すこ)(うつむ)いているレンが(うつ)っています。


「あれ、タカヤがいないね? このときはタカヤと一緒(いっしょ)にお弁当(べんとう)()べなかったの?」


「あ、そういえばタカヤそのとき入院(にゅういん)してたからいなかったね!」


 カズはショースケの(ぶん)麦茶(むぎちゃ)のおかわりをなみなみと(そそ)ぎながら(おも)()します。


「え! 入院(にゅういん)⁉」


「ショースケは()いてないんだ? タカヤは三年生(さんねんせい)になってすぐ、二ヶ月(にかげつ)くらい入院(にゅういん)してたんだよ! ねぇミオ?」


「そーそー、まぁおれたちは病院(びょういん)名前(なまえ)(おし)えてもらえなかったからお見舞(みま)いにも()けなかったけどねー。レンは(とく)にすっごく心配(しんぱい)してて、毎日(まいにち)手紙(てがみ)()いてタカヤのおうちのポストに()れてたよねー……わっぷ」


 レンは(まゆ)をつり()(かお)()()にさせて、ミオの(くち)片手(かたて)(ふさ)ぎながらショースケをにらみます。


「おい、ショースケ! さっきまでの(はなし)タカヤには()うなよ!」


「え、レンが毎日(まいにち)手紙(てがみ)()れてたこと?」


「そ、それもだけど! タカヤが入院(にゅういん)してたって(はなし)だよ! タカヤが自分(じぶん)からショースケに(はな)してねーのに、オレたちが勝手(かって)(はな)したって()ったら(こま)るかもだろーが」


「なるほどねー……わかった()わないよ」


 ショースケは(のこ)(ふた)つになったタカヤが()いたブラウニーを遠慮(えんりょ)()頬張(ほおば)りながら、また(かべ)(かざ)ってある写真(しゃしん)たちに目線(めせん)(もど)しました。


「ねぇねぇ、まだちょっと時間(じかん)あるけど(なに)するー? あ! (じつ)はさっきまでは()してなかったんだけど、(よん)人用(にんよう)のゲームソフトがあるんだー。よかったらそれやらない?」


「やる! やるやるすぐやろー!」


 カズの提案(ていあん)にミオはすぐさま(ひとみ)をギラつかせます。


「えー、またミオの一人(ひとり)()ちじゃねー?」


大丈夫(だいじょうぶ)だよレン、これは()()けのゲームじゃなくて協力(きょうりょく)するゲームだから。じゃあもう一回(いっかい)ぼくの部屋(へや)()こうか! ほら、ショースケも()こう?」


「うん! あ、その(まえ)に……最後(さいご)のブラウニーいただきまーす!」


 階段(かいだん)(のぼ)(さん)(にん)背中(せなか)を、ショースケは(くち)をもぐもぐさせながら(いそ)いで()いかけました。


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