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第十話 惑星ミッシェル冒険記①

****


 (つき)(まぶ)しいほど(あか)るく(ひか)って、(あた)一面(いちめん)()らしていた金曜日(きんようび)……いえ、地球(ちきゅう)はもう土曜日(どようび)でしょうか。


 タカヤとショースケは特急(とっきゅう)こすもに()って、ポスリコモスにある宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)本部(ほんぶ)へやってきました。


 今回(こんかい)やってきた目的(もくてき)は……


「ウヒョー ホンブ ヒサシブリ!」


 そう()ってはしゃぎながら、タカヤの(うで)(なか)でパタパタと(あし)触覚(しょっかく)(うご)かしているロボット、ツバサを(しょう)(ぞう)にメンテナンスしてもらうためです。


「ツバサー、あんまり(あば)れたら()ちるよー」


 (しょう)(ぞう)研究室(けんきゅうしつ)がある最上階(さいじょうかい)(つな)がる透明(とうめい)なチューブのようなエレベーターに()()んで、ショースケはツバサの(あし)(さわ)りながら一言(ひとこと)注意(ちゅうい)しました。


「ところでショースケ、今回(こんかい)はポスリコモスに(なに)用事(ようじ)があったのか? (おれ)がツバサをメンテナンスに()れて()くって()ったら一緒(いっしょ)()るって()うから」


「んー? (べつ)()いよ。(ぼく)はポスリコモスが大好(だいす)きだからね、()られるなら毎週(まいしゅう)()たいくらいさ。あ、()()今日(きょう)(そら)虹色(にじいろ)だよ!」


 タカヤの質問(しつもん)(こた)えながら、ショースケは(うれ)しそうに(そと)(ゆび)さしました。 


 地球(ちきゅう)では到底(とうてい)()られない極彩色(ごくさいしき)にカラフルな(そら)を、エレベーターは()るようなスピードでどんどん(うえ)へと(すす)んでいきます。


「…まぁ、()きの特急(とっきゅう)こすもは(ぼく)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)はタダで()れるけど、(かえ)りのUFO(ゆーふぉー)タクシーやワープ装置(そうち)なんかは結構(けっこう)(かね)がかかるから毎週(まいしゅう)()られないけどね」


 ショースケは(ちい)さくため(いき)をつきました。


 特急(とっきゅう)こすもは(しゅう)一本(いっぽん)しか(とき)()()(ちょう)へやって()ないため、(いち)週間(しゅうかん)以内(いない)(かえ)りたければ(ほか)交通(こうつう)手段(しゅだん)使(つか)わなければならないのです。


(はや)(おお)きくなってポスリコモスに()みたいなー、そしたら毎日(まいにち)じーちゃんと発明(はつめい)三昧(ざんまい)するんだ。あ、もちろんタカヤともお仕事(しごと)するから安心(あんしん)してね?」


「ショースケはすごいな、立派(りっぱ)将来(しょうらい)(ゆめ)があるんだな」


「タカヤは()いの? 将来(しょうらい)(ゆめ)


(おれ)は……」


 エレベーターの(なか)に、到着(とうちゃく)()らせるリーンという(おと)(ひび)きました。


「あ、()いたよ!」


 ショースケは一番(いちばん)(そと)()()して、(しょう)(ぞう)研究室(けんきゅうしつ)()かって(はし)って()きます。


「……(おれ)は……」


「タカヤー ドシタノー ダイジョウブ?」


 ツバサは袖無(そでな)しの(ふく)から()たタカヤの()(うで)をプニプニつつきます。


「あ、ごめんごめん。大丈夫(だいじょうぶ)だよ」


 (うで)(なか)のツバサを(やさ)しい笑顔(えがお)でぎゅっと()きしめて、タカヤはエレベーターを()りてショースケの(あと)をゆっくり(ある)いて()いかけました。



****



「ワオワオ ハカセ ゲンキ ダッター?」


「おおツバサ、(ひさ)しぶりじゃのう。むむ……この極上(ごくじょう)()心地(ごこち)…さすがワシの(つく)った発明品(はつめいひん)じゃな!」


 ツバサの()(しろ)なお(なか)(かお)をうずめて、(しょう)(ぞう)何度(なんど)(いき)()いながら(ほお)ずりしました。


「ショースケとタカヤもよく()たな。まあそこの椅子(いす)(すわ)って、(つくえ)(うえ)()いてあるワシが(つく)った(ちゃ)でも()んでくれ」


「え、(ちゃ)ってこれ……?」


 ショースケは()(うたが)います。


 紫色(むらさきいろ)でとろみのある液体(えきたい)からは炭酸(たんさん)のような(あわ)()ち、さらに細長(ほそなが)棒状(ぼうじょう)(なに)かが(なか)でくねくねと(うご)いています。


 きっと(ひゃく)(にん)()いたら(ひゃく)(にん)(ちゃ)では()いと()うでしょう。


「ぼ、(ぼく)……(のど)(かわ)いてないからいらないかな。ねぇタカヤもそうだよね…ってタカヤ⁉」


 ()されたものは(ことわ)れない性分(しょうぶん)のタカヤはすでに(ちゃ)では()(ちゃ)(くち)(ふく)んでいます。


「えっと……独特(どくとく)(あじ)がして……その、おいしい、ですね……」


 タカヤの(かお)はみるみる(あお)くなっていきます。


「タカヤ(なに)してんの! そんな(かお)して美味(おい)しいわけないでしょ、ほら(はや)くぺーして!」


 ショースケはタカヤの背中(せなか)(たた)いてなんとか液体(えきたい)()()させました。


「どうじゃったワシの(つく)った(ちゃ)。さっきここを手伝(てつだ)ってくれている二人(ふたり)にも()ませたんじゃが、すぐに()()して(ひと)(かい)のカフェに口直(くちなお)しに()ってしまったわい」


「そんなもの(ぼく)らに()ませようとしないでよ……」


「えー、(ひと)によって味覚(みかく)(ちが)うんじゃから美味(おい)しいかも()れんじゃろー」


 (しょう)(ぞう)(くち)(とが)らせてブツブツ()いながら、ツバサのメンテナンスを(はじ)めました。


「ヨロシク ハカセー。ア、トコロデ コノアイダ オモシロイ コト アッテ アノサ」


 ……いつまでも(しゃべ)られてはやりにくくて(たま)らないので、(しょう)(ぞう)はツバサのスイッチを()ります。


「ふむふむ……ここは()しここは()し……む、このパーツは交換(こうかん)必要(ひつよう)じゃな」


 (しょう)(ぞう)(つくえ)(した)()いてある(はこ)()けて、(あたら)しいパーツの材料(ざいりょう)()りだそうとしましたが……


「およ? もう()かったかのう……。そうじゃ! 惑星(わくせい)ミッシェルで()ってきてもらう予定(よてい)じゃったんじゃが、隊員(たいいん)急遽(きゅうきょ)体調(たいちょう)不良(ふりょう)()けなくなってそのままじゃったわい」


「え、じゃあメンテナンス出来(でき)ないってこと?」


 ショースケが(くび)(かし)げて(たず)ねると、(しょう)(ぞう)はむむむと(すこ)(あたま)をひねって…突然(とつぜん)(おお)きな(こえ)()しました。


「そうじゃ! ショースケ、タカヤ。ちゃちゃっと()って()ってきてくれんかの!」


()ってくる……って、まさか! わ、惑星(わくせい)ミッシェルで⁉」


 ショースケはプルプル(からだ)(ふる)わせながら、()をこれでもかと(かがや)かせます。


「そうじゃ。惑星(わくせい)ミッシェルに()って、そこにしかない『コール(せき)』と『ヤワクの()』を()ってきてもらいたい」


()く‼ いくいくいく絶対(ぜったい)()く! ねえタカヤ()くよね⁉」


 ショースケのあまりの迫力(はくりょく)に、タカヤはうんともすんとも()えずにただ何度(なんど)かうなずきました。


(じゅっ)(きゅう)(あいだ)はさすがにどこの(ほし)にも()かせてもらえないと(おも)ってたのに! まさかこんなチャンスが(めぐ)って()るなんてじーちゃん様々(さまさま)だよ!」


 ショースケは(よろこ)びのあまり(しょう)(ぞう)()きつきます。


「おーおーワシの(まご)可愛(かわい)いのお! じゃが二人(ふたり)で、ではないぞ?」


二人(ふたり)じゃない?」


(じゅっ)(きゅう)だけ……で()かせたらさすがに本部(ほんぶ)から(なん)()われるかわからんからな。じゃからワシの研究(けんきゅう)手伝(てつだ)いをしてくれておる二人(ふたり)一緒(いっしょ)()ってもらう、よいか? スイ、ティナ」


 (しょう)(ぞう)(とびら)(ほう)()くと、ちょうど(ひら)いた(とびら)から(じゅう)(ろく)(なな)(さい)くらいの褐色(かっしょく)(はだ)(おんな)()二人(ふたり)(ぐみ)(はい)ってきました。


 二人(ふたり)とも、()には(いっ)(かい)のカフェで()ってきたであろうお菓子(かし)をいっぱいに()っています。


 そのうちの一人(ひとり)(みじか)いツヤツヤの黒髪(くろかみ)をパサリとなびかせ、()(なが)(ひとみ)(しょう)(ぞう)をにらみました。


「まったく博士(はかせ)はいつも(きゅう)ですね……この(あと)はポポミル(せい)環境(かんきょう)汚染(おせん)をさらに改善(かいぜん)する薬品(やくひん)実験(じっけん)をするんじゃなかったんですか?」


「それはもうさっきワシ一人(ひとり)()ませたんじゃよ、スイ。で、どうじゃ()ってくれるか?」


 (かお)をしかめているスイに、もう一人(ひとり)(おんな)()がウェーブのかかった(なが)茶色(ちゃいろ)のツインテールを()らしながら(わら)いかけます。


()こうよお(ねえ)ちゃん! なんだか(たの)しそう!」


(たの)しそうって……ティナはいつも楽観(らっかん)(てき)()ぎるわよ。いい? 惑星(わくせい)ミッシェルには危険(きけん)生物(せいぶつ)がいて、そいつは縄張(なわば)意識(いしき)(つよ)いから……」


 くどくどと説明(せつめい)(はじ)めるスイの(よこ)をスタスタ(とお)()ぎて、ティナはショースケとタカヤの(まえ)(あゆ)みを()めました。


「わたしはティナだよ! はじめまして、タカヤくん、ショースケくん!」


「え、(ぼく)らの名前(なまえ)()ってるの?」


「もちろんだよ。(とく)にショースケくんは博士(はかせ)がいつも(まご)自慢(じまん)してるからいろいろ()いてるよー。それに、二人(ふたり)地球(ちきゅう)(じん)史上(しじょう)最年少(さいねんしょう)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)試験(しけん)合格者(ごうかくしゃ)でしょ? 有名人(ゆうめいじん)なんだから!」


「え、えへへー(ぼく)たち有名人(ゆうめいじん)だってタカヤー」


 ショースケはへらへら(わら)いながらタカヤの(うで)をツンツンつつきます。


「ちょっとティナ! まだ(はなし)()わってないでしょ!」


 スイはぷりぷり(おこ)りながらティナの(となり)()ちました。


「えーだってお(ねえ)ちゃんのお(はなし)(なが)いんだもん、()いてたらいつまでも惑星(わくせい)ミッシェルに()けないよー。それに、危険(きけん)生物(せいぶつ)…オンガイルゴンは奥地(おくち)にしかいないじゃない。ねぇ()こうよお(ねえ)ちゃんお(ねが)い!」


「ワシもワシも! スイお(ねが)い! 『コール(せき)』も『ヤワクの()』も安全(あんぜん)場所(ばしょ)()れるものじゃからいいじゃろ?」


 ぶりっ()ポーズをする(しょう)(ぞう)(うす)めでちらりと()(あと)、スイはおねだりするティナに目線(めせん)(うつ)して(おお)きなため(いき)をつきます。


「しょうがないわね。今回(こんかい)だけよ?」


「やったー! お(ねえ)ちゃんだいすきー!」


 左腕(ひだりうで)()きついてきたティナをまんざらでもなさそうに()(あと)(あらた)めてスイはタカヤとショースケの(ほう)へに()(なお)ります。


(わたし)はスイ。足手(あしで)まといにならないでね、あなたたちの子守(こも)りはごめんなんだから」


 (うで)()んで(つめ)たく見下(みお)ろしてくるスイに、ショースケはふんと(はな)()らしてニヤリと(わら)って()せました。


(ぼく)(きり)(たに)ショースケ。そっちこそ、(ぼく)はお(ねえ)さん()りはごめんだよ?」


「お、おいショースケ! すみません……はじめまして、石越(いしごえ)タカヤです。よろしくお(ねが)いします」


 ショースケの(まえ)()って、タカヤは礼儀(れいぎ)(ただ)しく挨拶(あいさつ)をします。


「こちらこそごめんねー。お(ねえ)ちゃん本当(ほんとう)(やさ)しいんだけど素直(すなお)じゃないの」


「ティナ、勝手(かって)なこと()わないの」


「えー本当(ほんとう)のことでしょ? 今日(きょう)だってお菓子(かし)()けてくれたり荷物(にもつ)()ってくれたり……昨日(きのう)だって」


「もうティナ! (あと)()いてあげるからから(いま)()わないで!」


 スイは(みみ)まで()()にしながら右手(みぎて)でティナの(くち)(ふさ)ぎました。


「とにかく! そうと()まれば(はや)()くわよ! 博士(はかせ)博士(はかせ)UFO(ゆーふぉー)()りていいですよね?」


「おう()きに使(つか)っとくれ。そうじゃスイ。物置(ものおき)(あま)っとる制服(せいふく)あるじゃろ、二人(ふたり)一番(いちばん)(ちい)さいサイズを()してやってくれ」


制服(せいふく)って、宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)本部(ほんぶ)職員(しょくいん)の! 宇宙服(うちゅうふく)()わりになるやつだよね、やったー(ぼく)あれ()しかったんだー!」


()すだけよ、(あと)(かえ)してよね」


 スイははしゃぐショースケに綺麗(きれい)(たた)まれた制服(せいふく)二人(ふたり)(ぶん)手渡(てわた)しました。


 タカヤとショースケは物陰(ものかげ)でそれに着替(きが)えます。




「そうじゃタカヤ、ちょっとこっち()てくれるか」


 ショースケより(すこ)(はや)着替(きが)()わったタカヤは、(しょう)(ぞう)()ばれて研究室(けんきゅうしつ)(おく)にある資料室(しりょうしつ)(はい)りました。


 資料室(しりょうしつ)(とびら)内側(うちがわ)からしっかり()めると、(しょう)(ぞう)はタカヤの姿(すがた)をまじまじと()つめます。


「ほう、制服(せいふく)もなかなか似合(にあ)っとるじゃないか。どうした? やっぱり(うで)のあたりが()()かんか」


「はい……普段(ふだん)(そで)()しばかり()てるから、長袖(ながそで)()るとなんだかそわそわして。でも学校(がっこう)制服(せいふく)でも()てたので大丈夫(だいじょうぶ)です」


 タカヤは(うで)(さわ)りながらへにゃりと(わら)いました。


「コスモピースの(ちから)難儀(なんぎ)じゃのお。まあタカヤなら宇宙(うちゅう)()くのに本当(ほんとう)はその(ふく)必要(ひつよう)ないじゃろうが……(ほか)(さん)(にん)(おどろ)いてしまうからな、今回(こんかい)はちと我慢(がまん)してくれ」


 ちらりと(とびら)(ほう)をに()をやり、(ひと)がいないことを確認(かくにん)して(しょう)(ぞう)(つづ)けます。


本題(ほんだい)(はい)らんとな。タカヤ、オンガイルゴンは()っておるよな」


「はい、惑星(わくせい)ミッシェルの奥地(おくち)生息(せいそく)しているかなり(つよ)ET(いーてぃー)ですよね」


「そうじゃ。そいつらが最近(さいきん)何故(なぜ)()れておるらしくてな…近隣(きんりん)(むら)にも被害(ひがい)がでておる。そこで、ワシの(つく)ったこの(ふくろ)をオンガイルゴンの住処(すみか)(ちか)くに()いてきてもらいたい」


 (しょう)(ぞう)緑色(みどりいろ)のリボンがついた(しろ)()(ぶくろ)をタカヤに(わた)しました。


(ふくろ)、ですか?」


「この()(ぶくろ)中身(なかみ)はオンガイルゴンを()()かせる効果(こうか)がある成分(せいぶん)(はな)っておる、それも(ちょう)強力(きょうりょく)じゃ。(たの)んだぞタカヤ……おっとそうじゃ」


 (とびら)()けようとした(しょう)(ぞう)はくるりとタカヤの(ほう)()(かえ)ります。


「もちろんこの仕事(しごと)特級(とっきゅう)のお(まえ)(たの)んでおる。オンガイルゴンは(ちょう)危険(きけん)なモンスターじゃからな…くれぐれも(ほか)(さん)(にん)(ちか)づかせないように、内密(ないみつ)(おこな)ってくれ」


「もちろんわかってます」


 タカヤは()(ぶくろ)大事(だいじ)にエッグロケットの(おく)にしまいました。


「……すまんな。本当(ほんとう)はタカヤに(たの)みたいわけじゃないんじゃが……お(まえ)両親(りょうしん)もここを(はな)れておるし、(むずか)しい依頼(いらい)がこなせる(きゅう)(たか)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)(おお)くない……ワシ自身(じしん)戦闘(せんとう)()きでは()いからのぉ……」


 (めずら)しく(あやま)(しょう)(ぞう)に、タカヤは(くび)(よこ)()ります。


「いえ、お仕事(しごと)(まか)せていただけて(うれ)しいです。是非(ぜひ)やらせてください、この(ちから)出来(でき)るだけ(やく)()ちたいですから」



 ……研究室(けんきゅうしつ)出発(しゅっぱつ)準備(じゅんび)をしているティナは、資料室(しりょうしつ)()じた(とびら)をじっと()つめていました。



****



「うひゃー! これがじーちゃんのUFO(ゆーふぉー)?」


 (あざ)やかな青色(あおいろ)円盤(えんばん)(がた)機体(きたい)(まる)いドームのような(まど)(ひと)()いた、()()いたようなUFO(ゆーふぉー)にショースケは興味津々(きょうみしんしん)です。


 (しょう)(ぞう)一番(いちばん)年長者(ねんちょうしゃ)であるスイに運転(うんてん)方法(ほうほう)(おし)えました。


「ここのパネルのスイッチを()したら自動(じどう)(てき)惑星(わくせい)ミッシェルに()かうように設定(せってい)しておいた。それでは()(にん)とも()をつけて()って()い、(たの)んだぞ」



 UFO(ゆーふぉー)()()んだ(よん)(にん)(しょう)(ぞう)見送(みおく)られながら、(ひろ)(ひろ)宇宙(うちゅう)旅立(たびだ)ちました。


「ここから惑星(わくせい)ミッシェルまではどれくらいかかるの?」


「そうかからないわよ、ワープ機能(きのう)使(つか)って(さん)十分(じゅっぷん)くらいかしら」


 ショースケの質問(しつもん)に、スイは運転席(うんてんせき)(すわ)ってパネルを操作(そうさ)しながら(こた)えます。


「へー案外(あんがい)(ちか)いんだね。そういえばタカヤ、さっきじーちゃんと(なに)(はな)してたの?」


「ああ、ツバサの(あたら)しい機能(きのう)について(はな)してたんだよ。こっそり()やしてショースケを(おどろ)かせたいんだってさ」


 タカヤは(なが)れるように(うそ)()きました。


「えー、(なに)それ。じーちゃんも(へん)なこと(かんが)えるんだから」


「ねぇねぇところでタカヤくんショースケくん。わたしたち(じつ)二人(ふたり)(おな)試験(しけん)合格(ごうかく)した同期(どうき)なんだよー(おぼ)えてる?」


 二人(ふたり)(はなし)()って(はい)るように、ティナはニカリと(わら)って自分(じぶん)(かお)(ゆび)さします。


「はい、(おぼ)えてますよ。試験(しけん)会場(かいじょう)にいる地球(ちきゅう)(じん)ってだけで目立(めだ)ちますから」


「え、タカヤ(おぼ)えてんの。……(ぼく)試験(しけん)記憶(きおく)あんまり(のこ)ってないや、必死(ひっし)だったから」


「あはは、(おれ)はショースケのことも(おぼ)えてるよ。(しょう)(ぞう)さんから(はなし)()いてたし」


「うーん……タカヤ余裕(よゆう)だったんだね。あれ? でも同期(どうき)ってことは…」


 ショースケはスイとティナの(ほう)()きました。


「スイとティナも(じゅっ)(きゅう)だよね? でもじーちゃんは(じゅっ)(きゅう)だけでは行かせられないからって……あれれ?」


「ちょっと。さりげなく()()てするんじゃないわよ一応(いちおう)年上(としうえ)なんだから」


 スイはじろりとショースケをにらみます。


「わたしは()()てで全然(ぜんぜん)いいよー! ふふふ……(じつ)はわたしたち(じゅっ)(きゅう)じゃないんだなー」


 ティナは(むね)につけていたバッジを(はず)して、裏面(うらめん)二人(ふたり)()せました。


 そこにはしっかり『(きゅう)(きゅう)』と()かれています。


「えええええ⁉ なんでなんで同期(どうき)なのに!」


 ショースケは(いそ)いで自分(じぶん)もバッジを(はず)して(うら)()けてみますが、(かな)しいかなそこには『(じゅっ)(きゅう)』の文字(もじ)(ひか)っています。


 ティナは人差(ひとさ)(ゆび)(ほお)()えてうーんと(かんが)えてから(くち)(ひら)きます。


「やっぱりわたしたち本部(ほんぶ)()んでるから、お仕事(しごと)(りょう)(ちが)うんじゃないかな。あんまり(ひま)なときって()いもの」


 ショースケがやっている(とき)()()(ちょう)仕事(しごと)(いっ)週間(しゅうかん)()()しが()いこともざらにありますので、当然(とうぜん)()えば当然(とうぜん)でしょう。


「ううん……なんか不公平(ふこうへい)だ……」


 座席(ざせき)(うえ)(ひざ)(かか)()んで(ほお)(ふく)らませているショースケの背中(せなか)を、(となり)(すわ)っているタカヤがぽんぽんと(たた)きます。


「で、でもでも! (ぼく)らにはタカヤのコスモピースだってあるもの。きっとすぐに()()いて特級(とっきゅう)になっちゃうんだから!」


 (なに)()(かえ)さないとどうにも()()まないのでしょう、ショースケは(すこ)(おお)きな(こえ)()しました。


「コスモピース?」


 スイとティナが(こえ)(そろ)えて(たず)ねます。


「すっごいんだよ! (そら)()んだり(もの)(さが)したり……とにかく(なに)だって出来(でき)ちゃうの!」


 自慢(じまん)げに(かた)るショースケの(よこ)で、タカヤは(かお)(あか)くして(こま)っています。


「ショースケ、あんまりその(はなし)は……」


「えーなんで。あんなにすごいのに! タカヤはもっと自慢(じまん)したらいいんだよ」


 ショースケの(はなし)半信半疑(はんしんはんぎ)()きながら、スイは()()んでいた細長(ほそなが)いクッキーのような携帯(けいたい)食料(しょくりょう)(ふた)()()り、(ひと)つをティナに()()しました。


「へー……そんな(ちから)本当(ほんとう)にあるのかしら。(あと)是非(ぜひ)()せてもらいたいものだわ、ねぇティナ…ティナ?」


 ティナはうつむいて(かんが)(ごと)をしているようです。


「ティナったら。これいらないの?」


「……あ! いるいる。ごめんお(ねえ)ちゃん」


「え! (なに)()べてる! いいなー(ぼく)にもちょうだいよ」


 ショースケが(うし)ろの(せき)からぐぐっと()()()しました。


「あなたたちのなんて()ってきてるわけないじゃない。(ふた)つしかないわよ」


「お(ねえ)ちゃんいじわる()わないの。ほら、わたしたちが半分(はんぶん)こしたら(よっ)つになるじゃない」


「えぇ……もう、仕方(しかた)ないわね」


 スイとティナは携帯(けいたい)食料(しょくりょう)(ふた)つに()って、ショースケとタカヤに(わた)します。


「えへへーありがとう!」


「あ、ありがとうございます!」


 ()(にん)(ひと)欠片(かけら)のずつの携帯(けいたい)食料(しょくりょう)大事(だいじ)(あじ)わっていると、機体(きたい)(かべ)()()けられた緑色(みどりいろ)のランプがピカピカと(ひか)りました。


「どうやら到着(とうちゃく)したみたいね。着陸(ちゃくりく)するわよ、みんな準備(じゅんび)して」



****



 どこまでも(つづ)くエメラルドグリーンの草原(そうげん)(うえ)に、UFO(ゆーふぉー)はふわりと着陸(ちゃくりく)しました。


「うわー……! ここが惑星(わくせい)ミッシェル…(ほん)()んだとおり綺麗(きれい)なところだね!」


 ショースケが(うれ)しそうにぴょんぴょんジャンプすると、地面(じめん)(あし)をつく(たび)にでピンク(いろ)のけむりがもわもわと()(のぼ)ります。


「ちょっとやめてよ。この(あた)りの(つち)はとても(かる)いんだから、(まわ)りが()えにくくなるじゃない」


「えーこれぐらいいいじゃない、スイ……さんは(きび)しいなあ」


 (くち)(とが)らせるショースケに()()けて、スイは右手(みぎて)人差(ひとさ)(ゆび)にはめた指輪(ゆびわ)()()れました。


 指輪(ゆびわ)にはどうやら(ちい)さくしたポスエッグが装着(そうちゃく)されているようで、スイはその水色(みずいろ)のポスエッグの(なか)から地図(ちず)のような(かみ)()()します。


「コール(せき)()れるのはここから右手(みぎて)()ったところで……ヤワクの()()れるのは(ぎゃく)方向(ほうこう)みたいね」


「それなら、二手(ふたて)()かれて()りに()こうよ!」


 ティナがにこりと(わら)って提案(ていあん)します。


「そうね、それが一番(いちばん)効率(こうりつ)(てき)かも。じゃあティナ、(わたし)たちはコール(せき)(ほう)に……」


 スイが(はな)()わるよりも(さき)に、ティナはタカヤの(うで)両手(りょうて)でぎゅっと(つか)みました。


「それじゃあタカヤくん、一緒(いっしょ)()こうか!」


「え、え?」


 ティナはスイと(おな)右手(みぎて)人差(ひとさ)(ゆび)にはめられた指輪(ゆびわ)についたピンクのポスエッグから、スカイボードによく()二人(ふたり)()りの()(もの)()しました。


 困惑(こんわく)しているタカヤの(うで)無理(むり)やり()()って、ティナはタカヤを()(もの)(うし)ろに()せます。


「ちょっとティナ! コンビなんだから(わたし)一緒(いっしょ)でしょ⁉」


(じゅっ)(きゅう)(きゅう)(きゅう)一人(ひとり)ずつの(ほう)がバランスがいいじゃない! お(ねえ)ちゃん、ショースケくんは(たの)んだよー!」


 そう()(のこ)して、ティナとタカヤを()せた()(もの)はヤワクの()()れる方角(ほうがく)へと()えて()きました。



****



「ねえ()って()いていかないでー!」


 ショースケは(さけ)びますが、すでに(とお)(はな)れてしまった二人(ふたり)には(とど)きません。


(まった)くティナは…仕方(しかた)ないわね。ほら、ショースケ()くわよ」


「…(ぼく)には()()てするなって()ったくせに、(ぼく)のことは()()てにするんだー」


 ぶつくさ()いながら、ショースケはスイの(となり)(なら)びます。


(わたし)(ほう)(なな)つくらい年上(としうえ)なんだからいいでしょ。…しまった、()(もの)はティナが()って()っちゃったんだっけ。ねぇショースケ(なに)()ってない?」


「あるにはあるけどー……」


 ショースケがエッグロケットの(なか)からスカイボードを()()()してスイッチを()すと、スカイボードはぼんやり(ひか)りながら空中(くうちゅう)(すこ)()かびます。


「へえ、(わたし)たちが()ってる()(もの)()てるわね」


「ティナさんが()っていた()(もの)多分(たぶん)じーちゃんが(つく)ったんでしょ? (ぼく)のこれもじーちゃんが(つく)ったんだから()てて当然(とうぜん)だよ。さ、燃料(ねんりょう)がもったいないから(はや)()って」


 スイを(うし)ろに()せて、ショースケが右手(みぎて)のハンドルをひねるとスカイボードは空中(くうちゅう)(すべ)るように(すす)(はじ)めました。


 ()(まえ)にはオレンジ(いろ)(みず)たまりやガラスのように()()りした木々(きぎ)など、(はじ)めて()摩訶不思議(まかふしぎ)光景(こうけい)(ひろ)がっています。


「ちょっと。ぐらぐらしてるわよ、運転(うんてん)しながらよそ()しないの」


「ごめんごめん、だってどこを()ても(めずら)しいものばかりなんだもの。それにしても本当(ほんとう)綺麗(きれい)なところだよね」


「そうね、この(へん)(うつく)しい場所(ばしょ)として有名(ゆうめい)よね」


「この(へん)は?」


 ショースケは(まえ)()たまま(たず)ねました。


「ここよりずーっと(さき)に、イアル(やま)っていう(やま)があるの。そこはこの(へん)景観(けいかん)とは全然(ぜんぜん)(ちが)って、(すご)物々(ものもの)しい雰囲気(ふんいき)よ」


「あ、(ぼく)()ってるよ。(ちょう)(つよ)いって有名(ゆうめい)なオンガイルゴンが()んでるところだよね…うぅ、そう()われると(こわ)くなってきた。この(へん)()たりしないかな」


 ショースケが(あた)りをキョロキョロ見渡(みわた)したので、スカイボードはまた(おお)きくグラグラと()れました。


大丈夫(だいじょうぶ)よ。イアル(やま)にはそこでしか()れない(あか)鉱物(こうぶつ)『アズール(せき)』があって、それがオンガイルゴンの主食(しゅしょく)なの。オンガイルゴンはアズール(せき)()れるところの(ちか)くに()(つく)って、その(ちか)くしか行動(こうどう)しない習性(しゅうせい)があるからこの(へん)にはまず()ないわよ。……あ、()えたわね」


 スイが(ゆび)()した(さき)にはエメラルドグリーンに(かがや)岩場(いわば)(ひろ)がっています。


「あそこで()れるのがコール(せき)よ。さ、ぱぱっと()ってティナたちと合流(ごうりゅう)しましょ」



****



「あの、ティナさん?」


「んー? なぁに、ティナでいいよー!」


 運転(うんてん)しているティナは、タカヤの(ほう)()(かえ)らずに(こた)えます。


「いえ、それは(もう)(わけ)ないので……。ええと、なんで(おれ)をこっちに()れてきたんですか?」


「それはねー、タカヤくんに()きたいことがあったから!」


()きたいこと……?」


「うん! 直球(ちょっきゅう)()くね、タカヤくんって……特級(とっきゅう)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)でしょ?」


 ……タカヤはゴクリと(つば)()んだあと、いつも(どお)りにこりと(わら)います。


「あはは、そんなわけないじゃないですか、一体(いったい)どうしたんです?」


(かく)さなくて大丈夫(だいじょうぶ)だよー。ここ惑星(わくせい)ミッシェルでの特級(とっきゅう)としての依頼(いらい)も、博士(はかせ)から()けてるんでしょ? そうだなーおそらく……最近(さいきん)()れてるオンガイルゴンを()()かせて()しい! どう、正解(せいかい)?」


 ティナは周囲(しゅうい)(しろ)(はな)のつぼみで(かこ)まれた(おか)(うえ)()(もの)()めて()りると、()(さお)なタカヤの(かお)(のぞ)()んで(もう)(わけ)なさそうに(わら)いました。


「ごめんね、(おどろ)かせちゃったね。お(ねえ)ちゃんやショースケくんと一緒(いっしょ)のままじゃタカヤくんが特級(とっきゅう)仕事(しごと)()けないと(おも)って()()したの。安心(あんしん)して、お(ねえ)ちゃんはこのこと()らないから」


「……どうして()ってるんですか」


「うーん、本当(ほんとう)偶然(ぐうぜん)なの。まずはお仕事(しごと)として宇宙警察(うちゅうけいさつ)隊員情報(たいいんじょうほう)整理(せいり)をしていたときに、今年(ことし)試験(しけん)合格者(ごうかくしゃ)(かず)(あたら)しく十級(じゅっきゅう)になった(ひと)(かず)()わなかったの。さらに去年(きょねん)一人(ひとり)いたはずの特別(とくべつ)宇宙警察(うちゅうけいさつ)……試験(しけん)()けずに宇宙警察(うちゅうけいさつ)仕事(しごと)(まか)されている(ひと)がいなくなっていることに()がついて。担当(たんとう)(ひと)()いたら、その(ひと)今年(ことし)試験(しけん)()かって正式(せいしき)宇宙警察(うちゅうけいさつ)になったって、そしてそのすごい能力(のうりょく)によって特級(とっきゅう)(えら)ばれたらしいって(おし)えてもらったの。(だれ)とは(おし)えてくれなかったけどね」


 ティナは()(もの)をポスエッグの(なか)にしまいながら(つづ)けます。


「その(すこ)(あと)だったかな。博士(はかせ)のコンビの……(わか)地球(ちきゅう)(じん)のお(にい)さんが研究室(けんきゅうしつ)(たず)ねてきて。博士(はかせ)(はな)しているところにお(ちゃ)とお菓子(かし)()って()ったら……ちょうど特別(とくべつ)宇宙(うちゅう)警察(けいさつ)だった(ひと)(はなし)をしてたの」


 ……タカヤは(なに)()いません。


「そのお(にい)さんがね、すごく真剣(しんけん)(はな)してたから。きっと特別(とくべつ)宇宙警察(うちゅうけいさつ)だったのはお(にい)さんの大切(たいせつ)(ひと)で、そしておそらく……地球人(ちきゅうじん)なんだと(おも)ったの。地球人(ちきゅうじん)今年(ことし)試験(しけん)合格者(ごうかくしゃ)はわたしたち姉妹(しまい)とタカヤくんとショースケくんだけ」


 ティナがその()(かが)んで(ちか)くに()えていた(ひと)つだけ(くろ)(はな)のつぼみをつつくと、(はな)()くと同時(どうじ)にポロンとピアノのような(おと)()りました。


 すると周囲(しゅうい)(しろ)いつぼみが連鎖(れんさ)するように(ひら)いていき、(うつく)しいメロディーを(かな)でながら(あた)一面(いちめん)()(しろ)花畑(はなばたけ)になっていきます。


「それで今日(きょう)博士(はかせ)一人(ひとり)資料室(しりょうしつ)()ばれたタカヤくんを()て、さらにショースケくんからコスモピースの(はなし)()いて確信(かくしん)したの。あ! 依頼(いらい)のことは博士(はかせ)研究室(けんきゅうしつ)にオンガイルゴンが()れて(こま)ってるって()かれた(かみ)(ころ)がってたからそれかなって」


 ……(ちい)さく(ひと)(いき)()いて、タカヤは(すう)()(すす)んでティナの(となり)(かが)みました。


「すごいですね、全部(ぜんぶ)正解(せいかい)ですよ」


「やっぱりそっか。ごめんね、タカヤくんには(はな)さずにこっそりサポートすることも(かんが)えたんだけど……それはそれでタカヤくんがやりにくいかなって。安心(あんしん)して、(だれ)にも()わないから」


「そうですね……(はな)していただけなかったら、バレてるんじゃないかってずっと警戒(けいかい)していたと(おも)います。…(おれ)のこと、(かんが)えてくださってありがとうございます」


 タカヤがぎゅっと口角(こうかく)()げて、(とし)似合(にあ)わない、()()けたような笑顔(えがお)()かべて()せるのをティナはじーっと()つめていました。


「ねえ、特級(とっきゅう)だってショースケくんにも()ってないのは博士(はかせ)()められてるから?」


「はい。すごいですね、なんでもお見通(みとお)しだ」


「ふふ、(いま)のタカヤくん()てたらわかるよ。博士(はかせ)()めてる理由(りゆう)


 検討(けんとう)もつかないタカヤは、きょとんとした(かお)()けます。


博士(はかせ)はねー、タカヤくんに()どもでいて()しいんだよ。だってショースケくんといるときのタカヤくんはとってもかわいいもの!」


 ティナはにこーっと(わら)ってタカヤをぎゅっと()きしめました。


「か、かわいい……ですか⁉」


「うん! あ、もちろん(いま)もとってもかわいいけどね?」


「ええと……ありがとうございます……?」


 ()ずかしそうに(うで)(なか)(かた)まっているタカヤを数回(すうかい)よしよしと()でた(あと)パッと(はな)して、ティナはシャキッと()()がりました。


「さて、お仕事(しごと)再開(さいかい)しようか! (じつ)はヤワクの()はここで()れるんだよ」


 (さき)ほどたくさん()いた(しろ)(はな)()(なか)には、よく()ると(くろ)いとげとげの()(みの)っています。


「これがヤワクの()……ですか?」


「そう。(すこ)()(かた)特殊(とくしゅ)でね、最初(さいしょ)(ひと)つだけある(くろ)いつぼみを(さわ)らないと全部(ぜんぶ)(はな)(ひら)かない仕組(しく)みなの。ちゃんと事前(じぜん)調(しら)べて()たんだから」


 得意(とくい)げにティナは(わら)いました。


(たし)かに、これは()らなかったら()れないですね。ティナさん、ありがとうございます」


 (かが)んだまま(はな)()ているタカヤの背中(せなか)を、ティナは()()すようにポンと(たた)きます。


「ほら! ここはわたしに(まか)せて、タカヤくんは特級(とっきゅう)のお仕事(しごと)()っておいで! くれぐれも()をつけてねー」


「いいんですか?」


「うん。ヤワクの()(じゅっ)()くらい()れば十分(じゅうぶん)だから、わたし一人(ひとり)大丈夫(だいじょうぶ)だよ! ほら、(いそ)がないとお(ねえ)ちゃんたちがコール(せき)()って(もど)ってきちゃうよ! ()った()った!」


「は、はい! ありがとうございます!」


 タカヤはコスモピースの(ちから)解放(かいほう)して両目(りょうめ)禍々(まがまが)しく(かがや)かせると、()にも()まらぬスピードで()んでいきました。



「ひゃー……あんなにすごいんだ! わたしたち本当(ほんとう)()かされちゃうかもだから頑張(がんば)らないとなぁ」


 タカヤが()えなくなった(あと)もしばらく(おお)きく()()ってから、ティナはもう一度(いちど)(かが)んでヤワクの()(ひと)つずつ採取(さいしゅ)(はじ)めました。




 ……その様子(ようす)(とお)くの(くさ)むらから(なが)める、(おお)きな(あか)(ひとみ)(ひと)つありました。


挿絵(By みてみん)

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