表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/20

メーデー!

前回の投稿から一週間以上経ってしまいました……

 




「み、みなさん急いでください〜! 遅刻しちゃいますよ〜!!」


「わ、わかってるから! だから、大きな声を出さないで……」


「うう〜、一生の不覚だわ……この私が2日酔いなんて……」


「自業自得です。一升瓶を8本も開ければそうなりますよ」



 まだ陽も昇りきっておらず、薄暗い大通りを、僕たち5人は急ぎ足で駆け抜ける。本当はもっと余裕があったはずなんだけど、2日酔いでフラフラなコゼットさんとベティさんのせいで、遅刻ギリギリまで支度に時間がかかってしまった。



「あの〜……今更ですけど、僕が回復魔法で2日酔いを治しましょうか?」


「え? ユウタくんって回復魔法を使えたの!?」


「ちょっと待って! それよりも、2日酔いって治せるの!?」



 キキィッ! 砂煙をあげて、コゼットさんとベティさんがその場で停止する。そしてむせ返るようなお酒の匂いと共に、すごい勢いで詰め寄ってきた。



「え、ええ。多分治せますよ……」


「──お願い。今直ぐ治してちょうだい! このままじゃ仕事にならないわ!!」


「わ、分かりました! 今から治療しますので、そこを動かないでください」



 鬼気迫る顔で僕の方を掴んでくる2人を宥め、魔力を集中していく。一括りに2日酔いって言っても、原因は様々だからなぁ。とりあえずは、肝臓の働きを助けて、頭痛と吐き気を治しておこう。


 ぱぁぁ。魔力によって発生したパールブルーの光が、2人を優し気包み込む。



「多分これで治ったと思いますけど、調子はどうですか?」


「………………」


「………………」



 恐々と2人に尋ねても、まるで反応が無い。ただ蹲って震えているだけだ。

 不審に思ったヒルダさんが、2人の方に手を伸ばし、様子を伺おうとしたら、



「──治ったぁぁぁぁあ!!!!」



 ガバァ! と立ち上がり、勢いよく走り出す。



「これで遅刻せずにすむ!! ユウタくんありがとう!!!」


「ユウ君〜! あとでお姉さんが、たっぷり可愛がってあげるからね〜!!」



 さっきまでの苦しんでいた姿が、幻影だったかのような回復ぶり。ポカーンと立ち止まってしまった僕たちを置いて、走り去ってしまった。



「「「…………」」」



 心地よく感じていた早朝の冷気が、凍えるような温度まで急速に下がったように感じる。ゾクゾクと背中を駆け抜ける悪寒を堪え、ゆっくり後ろを振り返ると──2人の修羅がいた。



「ふ、ふふふ……。私たちを置いていくとはいい度胸ですね」


「ええ。あの2人には、少し説教が必要みたいですね」



 決して怒鳴り散らさず、淡々と語る2人。それが余計に恐怖を増長させた。

 ……怖いよ!! ムッチャ怖いよ!!! ただ話してるだけでこんな恐怖するのが不思議なくらい怖いよ!!!



「ユウタ。私たちも急ぎますよ」



 ギロリ。殺意がこもった視線を、こちらに向けるヒルダさん。逆らったら僕の命はないだろう。



「りょ、了解です!!」



 しゅたっ! と敬礼し、地面を蹴り砕き疾走するヒルダさんを追う。こっちの世界に来てから、ハイスペックの女性を見すぎているせいで、残像を浮かべるほど高速をで走るヒルダさんを見ても全く驚かない。むしろ、安心している僕がいるな……。


 風を切り、砂塵を巻き上げ、早朝の清々しい空気の中爆走した僕ら。結局遅刻してしまい、陰鬱とした気分でギルドの門を潜るのであった──。



「はぁ……。朝から酷い目にあいました」


「ええ。まさか罰として、倉庫の整理をさせられるなんて……」



 はぁ。と、2人のため息が、薄暗い倉庫に消えていく。遅刻をしてしまった僕らは、それぞれ雑用を申しつけられてしまった。しかも、ボルドーさんにである。あの野蛮人代表みたいな人に、社会人としての自覚が足りない! とか言われちゃったよ……。こんな釈然としない気持ちなったのは初めてだ。



「落ち込んでいてもしょうがないですし、切り替えて仕事をしましょう」


「そうですね。こんな埃っぽいところに、長時間いたくないですしね」



 掃除を始める為、裾をまくるヒルダさん。年相応の華奢な腕だが、自分の身長より大きい鎧を、軽々と持ち上げている。

 ……よく、ギャップに萌えるって言うけど、これもそうなのかな……。



「私が重いものを担当しますので、ユウタは資料の整理をお願いします」


「あう……本当は男の僕がやるべきなんですが……よろしくお願いします……」


「気にすることはありません。適材適所ですから」


「たはは……ありがとうございます」



 テキパキと片付けをしていくヒルダさんにお礼を言い、僕も自分の仕事を始める。

 しっかし、さすがは冒険者ギルドの倉庫だな。獣の皮から剣まで、物騒な物のオンパレードだ。うっかり触ると怪我しそうだよ。あんな危険物には近寄らないで、僕はこっちの資料を片付けなくちゃ!!


 黄変してしまっている、無数の紙の山。整理するにも内容を把握しないと始まらないわけで、とりあえず目についた資料を読んでみる。



 ・最近の冒険者の素行について。 近頃の冒険者たちは緩みに緩み、問題行動を頻繁に起こします。その結果、騎士団からの苦情が無視できないものとなり、ここに報告します。


 1 ……万年発情期冒険者シキの痴態について。AAランクの冒険者であるシキは、一日に数十件ものセクハラを働いています。具体的には、強引なナンパ。さらにはスカートめくりといった、成人男性がするとは思えない行動を連発しています。悪質な事に伯爵家の娘にまで手を出し、ウィンチェスター伯爵家と戦闘になりましたが、シキが1000人の兵士を無力化した事によって解決。このような事例が多発している為、我がギルドに各部署から苦情が届いています。



「……うわぁ……変態のくせに強い……」



 このシキって人、この前エルネスタさんにボコられた人じゃん。全然懲りていないんだね……。それに、この人に対する苦情だけで、棚が1つ埋まっているんだけど……よく捕まらないね……。

 未だ見ぬシキさんの人物像が、残念な感じで固まる。まあ、仕方がないよね……、この人のことは置いておいて、続きを読もう。


 ペラ。めくるたびにホコリが舞い上がる羊皮紙に苦戦しながらも、次なる始末書に目を移す。



 2 ……幼児愛好者たちによる、聖護院の集団覗き事件。


 3 ……オカマ達による、盗賊逆レイプ事件。


 4 ……【トラップボックス】ヨミによる、首都地獄化事件etc……



「…………現実は小説より奇なりって言うけど、これはそう言うレベルじゃないよね……」



 見るに耐えなくなり、まだ十分の一も読んでいない資料を閉じる。今までシーシェさん達が、お袈裟に言っているだけだと思ってたけど、全て真実だったんだね。このギルドの冒険者達は、歩く規制対象だ。絶対に世に放っちゃダメな人種の巣窟だよ!!!



「……この人たちと関わらないことを切に願うよ……」



 僕にどうこうできるレベルの人達じゃない。こんな変態どマックスな人たちは、ボルドーさんあたりに対応してもらおう。


 ソッと冒険者に関する資料を脇にどけ、本格的に整理を始める。チラチラと視界に映るヒルダさんも熱心に働いているんだし、僕もパパッと終わらせますか!!!



「さて、お掃除はメイドの腕の見せ所だ! 完璧にこなして見せるよ!!」



 気合を入れて、作業に取り掛かっていく。そのあとは物音だけが倉庫の中を反響し、僕たちはひたすら作業に没頭した。そのおかげか、予想より早く掃除が終わり、受付の奥にある休憩室まで戻ってくることができた。



「お疲れ様です。倉庫整理がこんなに早く終わったのは、間違いなくユウタのおかげですね」



 ふかふかのソファーに座るなり、ヒルダさんが労いの言葉をかけてくれる。この一言だけで、頑張った甲斐があるよね。



「ありがとうございます! ヒルダさんも、テキパキ片付けられてすごいです!! かっこよかったですよ!!」



 実際、無表情ながら、機械のような正確さできっちり収納して行った技量には驚愕した。あんな隙間もなく、ピッタリと物を仕舞えるのは素人にはできないよ。まさに熟練の技といったところだ。



「あまり褒めても何も出ませんよ。私は仕事でやって慣れているだけです」


「そんなことないですよ! 僕はあんなに効率良くできないですもん!!」


「……まったく、ユウタに言われると嬉しくなってしまいます……」



 薄く朱に染まった顔を隠すように、ヒルダさんが立ち上がる。そして、僕の隣まで無言で近づいてきて。



「ユウタ。私は疲れたので、癒しが欲しいのです。協力してくれませんか?」



 と、真剣な顔で聞いてきた。う〜ん、協力するのはいいんだけど、僕に何ができるのかな……。



「そんなに深く考えることはありません。ただ、身を任せてくれるだけで良いのです」


「? それなら、気の済むまでどうぞ。ヒルダさんになら何をされても大丈夫ですよ」


「っ! また貴方はそういう事を……はぁ、いいでしょう。お言葉に甘えさせていただきます」



 濡れたように艶めくツインテールを揺らし、僕の隣に腰を下ろす。ふわ、と柑橘系の香りが鼻孔をくすぐり、僕の心拍数を跳ね上げる。そして、たどたどしい手つきで、僕を抱きしめる。



「ふぅ……。やはり、ユウタを抱きしめていると落ち着きます……」



 熱っぽい吐息を漏らし、僕の頭に顔を埋める。ヒルダさんは僕に抱きついてリラックスしているみたいだけど、こっちは心臓ばくばくだよ!

 ちょうど顔のあたりに、小柄なヒルダさんに似合わない豊満な胸が、制服を押し上げて存在感を放っている。しかも倉庫で動いていたせいか、汗でシャツが透けてブラがクッキリ見えている。ハッキリ言って、かなりエロい。



「……ユウタは似合わないと思うかもしれないですが、実は私は可愛いものが好きなのです……。コゼット達には、笑われると思って言えていないのですが、部屋にぬいぐるみなどを集めているのです……」


「……………………」


「だから、こうしてユウタを抱きしめていると、本当に心が安らぎます。……やはり、おかしいですかね? 私のような無愛想な人間が、可愛いものを好きなんて…………」



 ポツポツと、消え入りそうな声で、独り言のようにヒルダさんが言葉をこぼす。結構シリアスな場面だと思うんだけど、ギャップ萌えでキュン死している僕には返す言葉がない。

 だってさ! いつも無表情だったヒルダさんが、新雪のように真っ白だった頬を染めて、モジモジしてるんだよ!! 男なら、誰でも萌え死ぬ可愛さだよ!!!



「……変な事を話してしまいましたね。忘れてください……」



 かぁぁぁ。湯気が出てしまうほど顔を赤くしたヒルダさんが、照れ隠しに抱きしめる力を強めた。それに比例して、密着度は上がるわけで…………ポヨン。メロンのような胸が、僕の顔を包み込む。布ごしでも感じる、水鞠のような感触。正直、理性が吹っ飛びそうだよ。


 ──でも、今は他にするべきことがある。


 背中に回された手は震えているし、声は掠れていた。ヒルダさんは、自分はおかしいんじゃないかと真剣に悩んでいるんだ。だからこそ、僕がその不安を取り除く。



「──ヒルダさん。おかしくないですよ! とっても女の子らしくて、似合っていると思います!!」


「ふぇ! ユ、ユウタ!?」



 完全に不意打ちだったからだろう。間の抜けた声が、ヒルダさんから聞こえる。そんな女の子らしい反応に笑みを浮かべ、戸惑うヒルダさんに御構い無しに強く抱きしめ返す。



「ヒルダさんは、とっても女の子らしいです。それに、貴方の趣味を笑う人なんていないですよ!!ヒルダさんは、コゼットさん達がそんな器の小さい人に見えますか?」


「あ、あう……えっと……確かに、コゼット達なら受け入れてはくれそうですが……その……」


「恥ずかしがらなくていいんです。僕はヒルダさんのそういう所、可愛くて好きですよ」


「ひゃうっ!!」



 ぽしゅっ! 頭から噴火したように蒸気が上がる。そして『うぅぅぅぅ……』と小さく唸って、揺すっても反応がなくなってしまった。


 ……とりあえず、ミッションコンプリートかな? ヒルダさんは動かなくなちゃったから、このフニフニした感触を堪能してよう!!


 まったりとした空気の中、ヒルダさんは僕を抱きしめ続け、僕はヒルダさんの体の感触を楽しみ続けた──。




 ♢




「それじゃあ、私が来るまでずっと抱き合っていたんですか?」



 僕達と同じように雑用を終え、休憩室に戻ってきたサランさんが、部屋に入るなり呆れるように聞いて来る。



「はい。あまりにもユウタが可愛かったので、つい…………」


「あう〜……心地よくて、離れられなかったんです……」



 と、手を繋いだまま答えた。さすがにサランさんの視線が痛くて離れはしたけど、なんとなく手だけは離せなかったんだよね。それはヒルダさんも同じだったみたいで、照れながらも手を握っていてくれた。



「はぁ……。私が1人寂しく荷物の運搬をしていたのに、2人は楽しそうでいいですね〜」



 そっぽを向き、ぷく〜。拗ねたように、頬を膨らませてしまうサランさん。

 ……ちょっと、調子に乗りすぎたかな? 心配になってヒルダさんを振り返ると、彼女も同じ事を思ったみたいで、引き攣った口を開き、



「……サラン、罰則がまだ2つ残っていましたね。私が発注に関する各部署との連絡を行いますので、貴方はユウタと2人で素材の選別をお願いします」



 機嫌を直してもらおうとする。そして、その言葉通りヒルダさんは、ペントクリップボードを持って部屋を出て行ってしまった。

 ……まさかヒルダさん、僕に丸投げしたのか?



「さ、サランさん! ヒルダさんも行っちゃいましたし、僕たちも仕事を始めましょう!! 僕は何をするのかよくわからないので、教えてもらえると嬉しいです」



 微妙な空気とともに残された僕は、耐えられず口を開く。大きい体を小さく抱えていじけるサランさんは可愛いけど、いつまでも放置しているわけにはいかない。それに、早めに罰則を片付けて通常業務に戻らないと、もっとひどい目に会うそうだ。

 ……全部ヒルダさんから聞いたことで、僕は現実味はないんだけどね……



「わ、わかりました! 私に任せてください!!」



 たゆん。と凶器に匹敵する爆乳を揺らし、サランさんが敬礼する。なんとか機嫌も直してくれたみたいだし、これで一安心かな──



「大変よ! シーシェ達が帰ってきたわ!!!」



 ばん! ドアを蹴破り、コゼットさんが突入してくる。え? シーシェさん達、帰ってきたの?



「あの〜、状況がよくわからないんですが……」



 そんな血走った目で見られても、僕には通じないです。具体的な説明をプリーズ!!



「ええっとね、ああ〜っもう! 焦れったい!! とにかく大変なのよ!!」


「こ、コゼット! 貴方がそんなに慌てていたら、ユウタ君も困っちゃいますよ。少し落ち着いてください」


「え! ……そうね。取り乱していたわ……」



 コゼットさんの声がしぼんでいき、それに伴い部屋の外の喧騒が僕たちにまで聞こえてきた。あの大胆不敵なコゼットさんが取り乱していたんだ。よほどのことがあったんだろう。それがシーシェさん達が帰ってきたことにどうつながるかはわからないけど、みんなが無事に帰ってきているのかが心配だ。

 深呼吸して冷静さを取り戻すコゼットさんを一瞥し、蹴破られたドアから頭を出す。すると、いつも能天気な冒険者達が、真剣な表情で集まっていた。……ものすごい不気味な光景だよ。



「事情はミラベルさんが説明するはずだから、2人も早く酒場まで来て!」



 真剣な表情に戻ったコゼットさんに連れられ、相変わらず酒臭い二階へと足を踏み入れる。さすがに緊急事態には、酔っ払っている冒険者は居なかった。……セクハラして殴られている人はいたけど。


 不思議な威圧感が漂う酒場。無意識のうちに生唾を飲み込み、手を強く握りしめてしまう。

 そんな異様な雰囲気を打ち破り、1人の女性がテーブルの上に仁王立ちをし、



「──お集まりいただき、ありがとうございます。先ほど調査に出ていたシーシェ達の報告を受け、皆さんを召集いたしました」



 凛とした声で、場を圧倒する。決して大きな声ではないけど、不思議と惹きつけられる。そんな魅力を備えた女性だった。

 そして周りの冒険者が注目しているのを確認し、満足げに頷く。1つ1つの動作が、洗練されていて見惚れてしまう。



「皆さんも感じていたかもしれませんが、最近オケアノス樹林で魔物の動きが活発でした。その原因を調査した結果──魔王種が確認されました」


「「「「!!!!」」」」」



 魔王種という言葉に反応し、ざわめきが一瞬にして広がる。僕は言葉の意味がわからず狼狽えるだけだけど、冒険者達の表情は厳しい。



「──静まりなさい! たかが魔王主程度で狼狽えるなんて、それでもアケディアの冒険者ですか!!!」


「「「「「!!!!!」」」」」



 全てを圧倒するかのような凛とした声。それは気高く、奮い立たせるように冒険者達の心に染み込んでいく。そして不安を塗り替え、希望に染め替えた。



「そうだぜ! 俺たちゃぁ、世界最強のアケディアの冒険者だ!! 恐れるものなんて無い!!」


「ああ!! 奇跡の変態集団と呼ばれた俺たちの実力、見せてやんよ!!!」


「ああ〜っん!! ミラベルさ〜〜んっ!! 結婚して〜〜!!!」



 拳を振り上げ、沸き立つ冒険者達。この人たちは、自分たちに誇りを持っているのか、貶しているのかわかりにくいよ! 特に最後の人!! 絶対にあの人がシキさんでしょ!!!


 雄叫びをあげ足をふみならす。そして、興奮した表情で肩を組み、歌い出した。



「僕ら〜変態〜、僕ら〜最強〜!! 雨に打たれ〜風に吹かれ〜! 全てを壊し〜自由に生きる〜アケディア冒険者達〜!!」


(……どんな歌詞だよ!!! コンセプトが全く理解できない!! というか、メロディーがムカつく!!!)



 ハイテンションで歌出した冒険者達を、ただ、ただ、冷めた目で見つめている。これほど単純な人達は見たことがないよ。オレオレ詐欺とか、エロ動画の広告につられる人達だね……哀れだ……。



「これで飲んだくれ達は乗せられましたね。上位ランカー達は喜び勇んで戦うでしょうし、これで戦力は確保できました」


「むにゃ!?」



 うわっ! びっくりした……。いつの間に背後を取られたんだ!? 全く気づかなかったよ……。



「あ! ミラベルさん。お疲れ様です」


「ありがとう。でも、忙しくなるのはこれからよ。あなた達も気を引き締めなさい」


「「はい! 誠心誠意頑張ります」」


「よろしい。それでは仕事を始めてください」



 ビシっと敬礼を決めた、サランさんとコゼットさん。なんかキャラが変わってない!? これがミラベルさんの実力なの!!?

 テキパキと指示を出していくミラベルさんに呆気を取られていると、突然僕のところまで近づき、


「貴方が噂のユウタ君ね。私はギルドマスターの秘書をしているミラベルよ。今回は君の力にも期待しているわ」



 頭を撫でてくれる。僕の身長に合わせてかがんでくれたせいか、フワリとアメジストの髪がシトラスの香りを運んできた。今まで会ったことのない、クールビューティーな美女。

 コミュ障な僕が、美人に突然話しかけられてまともに対応できるはずもなく、



「は、はぁ。ご期待に応えられるかはわかりませんが、やれるだけの事はします」



 気の抜けた返事しかできなかった。



「それで十分よ。貴方は無理のない範囲内で頑張ればいいのだから」



 と、優しい言葉を残し、颯爽と立ち去ってしまう。残された僕といえば、ただ立ち尽くすしかできないわけで、



「──僕にどうしろと?」



 呆然と呟いた。そもそも魔王種と言われても知らないし、コゼットさん達は仕事に行ってしまった。それに肝心のシーシェさん達も見つからないし、僕は何をすればいいんだろう?


 慌ただしく走り回る人の流れを見ながら、所在無く中を見つめるのであった──




些細なことでも、感想をいただけると今後の執筆意欲に繋がるので、送っていただけると幸いいですm(._.)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ