第17話 203番がない
試験が終了した。
今まで張っていた糸が緩み、ふぅ、と空気が抜けた。
その空気に乗って心が飛んでしまいそう。
そして一週間後の合格発表を待つ。
合格発表は受験校での発表とホームページでの発表があるから、わざわざ会場に行く必要はない。現地に行くと、合格した人の喜びと落第者の悲嘆が混じり合う状況で、私がその落第者として存在したくない。
不合格の不安が半分以上、受かっていると良いなという希望が少量。
自己採点はそこまで悪くなかった。それでも合格発表で受験番号が表示されるまで不安は拭えない。一週間なんで待たせず、さっさと発表してほしい。
不安と緊張に襲われ続ける日々が続いて、今日、合格発表がされる。
私の部屋。可愛げはない薄緑色をベースとした、淡い色のカーテン、ベッド、机が置かれている。
椅子に座ってスマホを睨み、体を左右に回転させて待ち望む。
大学のホームページを開きながら画面左上のデジタル時計を見る。
午前9時55分
あと5分で結果が発表される。
時計を見ていても、1分の進みが遅く感じる。ホームページを開いたままでは、緊張の糸も張ったままで精神がすり減っていく。
一度気を紛らわせようと、スマホのアプリを開いてみんなのつぶやきを見る。
みんな、緊張していたり、祈っていたり、余裕ぶったりしている。中にはすでに発表された他大学の結果を見て、喜び、騒ぎ、落胆した阿鼻叫喚のつぶやきが流れていた。
つぶやきに精神が引きずり込まれそうで、心臓に悪い。急いでアプリを閉じる。
時刻は9時59分
あと1分で発表される。
じっとデジタル時計を見る。
いっこうに動かない。
普段の1時間よりこの1分が何よりも長く感じる。もう10時になっていいだろう。
ピッと時刻が変わり10時になる。
急いでブラウザの更新ボタンを押して読み込みし直す。しかしぐるぐると読み込んだまま動かない。
いつまで経ってもページが変わらない。
「はやく……! 早く読み込んでよ!」
サイトにアクセスが集中しているせいで全く繋がらない。
電波の本数を見てもキチンと四本すべて立っている。スマホをガッチリ掴んで、早くつながれ……と祈っていたらページが切り替わり、合格発表のページが映し出された。
そこにあった合格発表者の番号欄。
急いで自分の203を探す。
100番台までは一気にページを飛ばして──
────190 192 195 196 198 199 200 202 204 207────
ピロンと鳴った。
『大丈夫?』
母からの連絡だった。
おそらく母も結果を見たのだろう。
なんて……なんて返せば、いい……のかな。
スマホを握ったままベッドへ倒れ込んだ。チャットを開かなければ既読はつかない。
画面を眺めながら布団に潜る。
暗くじめりとした布団の中で、眩しく光るスマホの画面が目に刺さる。
見間違いかもしれない。
もう一度、大学の合格発表欄を見る。
……190 192 195 196 198 199 200 202 204 207 209 212……
見間違いでも、別の場所に載っているわけでもない。何回、何回、何回、見返しても私の203番は無い。結果が変わるわけじゃないのに何度もホームページを読み込んで、番号を確認しても私の番号は無い。
数回繰り返して、ようやく目の前の現実が滲んで、ボヤケて、涙で番号が見えなくなって、気付く────私は、落第した。




