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第二章:青い日々

紗希と悠斗の付き合いは、誰もが羨むような青く、眩しいものだった。大学のサークルで、彼の真面目さと人当たりの良さに惹かれ、自然と交際が始まった。悠斗は、いつも紗希の小さな気まぐれやわがままに笑顔で付き合ってくれた。紗希にとって、彼は世界の中心であり、彼の隣は最も安全で安心できる場所だった。


しかし、卒業し、社会に出て、二人の人生のベクトルは少しずつずれ始めた。悠斗は自分の仕事である社会貢献度の高いインフラ系のプロジェクトに情熱を傾け、その献身ぶりは目を見張るものがあった。だが、その揺るぎない情熱と、いつまでも変わらない紗希への献身的な優しさは、時に重荷に感じられるようになった。彼の愛は、あまりにも静かで、安定しすぎていたのだ。


決定的な変化は、交際から一年が経った頃、紗希の心の中に訪れた。悠斗は完璧すぎた。あまりにも優しく、紗希の望むことをすべて先回りして叶えてしまうため、紗希は彼に対する一方的な甘えが、恋愛特有の緊張感やスリルを奪っていることに気づき始めた。「このままでは、私は永遠に成長しない」という焦燥にも似た感情が彼女を支配した。彼女はいつしか、もっと自分を振り回し、予期せぬ感情を揺さぶるような刺激、つまり「不確実な情熱」を持つ相手—今の恋人である和馬のようなスリリングな存在を無意識に探し始めていた。


「私たち、別れよう。ごめんね、悠斗。もう、好きじゃない。私が何しても怒ってくれない。あなたと一緒にいると、自分がダメになっていく気がするの」


別れを告げたあの日、悠斗の顔は、驚愕と悲しみで、すべての感情が抜け落ちたように透明だった。彼は理由を問いただすことも、責めることもなかった。少しの沈黙の後、ただ静かに、「わかった。君がそう決めたなら」と言って、あえて振り返ることもなく紗希の家を後にした。その優しさが、かえって紗希の心に、切り裂くような罪悪感を残した。


紗希は自由になったことに安堵しながらも、彼の純粋な愛をバッサリと切り捨てた自分に、深い罪悪感を覚えた。その罪悪感は、三年経った今も、今の刺激的な恋人である和馬の存在と重なって、チクリと胸を痛めている。特に、彼がまだ一人だという事実を知った今、その痛みは鋭さを増した。

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