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第三章:悠斗にとっての予期せぬ奇跡の始まり

静かなカフェのテーブル。目の前に、僕が三年前に手放した世界がある。信じられない。札幌行きのフライトなんて、どうでもよくなった。この再会は、僕がこの三年間、無意識に待ち望んでいた、神様がくれた最後の奇跡なんじゃないか。


「本当にびっくりした。全然変わらないね」


紗希がそう言って笑う。ああ、この笑顔。この声。脳裏に焼き付いて離れない、僕の太陽だ。ただ彼女の前に座っているだけで、凍り付いていた僕の時間が動き出すのを感じる。


(変わらないのは、僕の見た目じゃなくて、気持ちの方だよ。僕は紗希を忘れられないせいで三年も一人だったんだから)


僕はカップのコーヒーを一口飲み、全身の細胞に平静を装うよう言い聞かせる。仕事の話、最近のニュース、当たり障りのない会話を選んで進める。紗希の反応を、一挙手一投足見逃さないように。紗希が昔みたいに、僕の冗談に声を上げて笑ったとき、体中の血液が湧き上がるような喜びを感じた。


しかし、その高揚感はすぐに不安に変わる。紗希が放つ、僕が知らない「満たされている」オーラ。紗希の瞳の奥には、僕が踏み込めない、確固とした自信が見える。僕が紗希から離れた間に、紗希は僕の愛とは違う、強い光を放つ誰かを見つけたのだろう。僕が三年も誰とも付き合わなかったという事実は、紗希にとっては何の意味もないことだったのだろうか。


「そういえば、今の仕事は順調なの?大阪への出張があるってことは、それなりに責任あるポジションにいるんだね」


僕が尋ねたとき、紗希は一瞬、何かを隠すような、曖昧な表情をした。


「うん、まぁね。そこそこ。でも、悠斗こそ、すごいね。出張で飛び回ってるなんて。本当に立派になったんだね」


会話の隙間に、耐え難い沈黙が流れる。僕は意を決して、最も聞きたかった、そして聞きたくなかった質問を投げかけた。


「ところで、紗希は、最近、誰かいい人できたの?」


口から滑り出た言葉を、すぐに後悔した。聞きたくない。聞きたくないけれど、確認しなければ、この三年間、僕の心の中に居座り続けた未練は、永遠に僕を苦しめ続ける。この再会は、すべてを終わらせるための、最終確認なのだ。

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