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『辺境領主の経済無双 ~増税と緊縮で滅びゆく国を、現代知識と積極財政で救う方法~』  作者: 盆ちゃん


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第18話:鉛の暴風と、不平等条約の終焉

第18話:鉛の暴風と、不平等条約の終焉

リュウキアの青空を黒く染め上げ、百騎の飛竜部隊が急降下してきた。

「見ろ! 地上のネズミ共が、海岸にオモチャを並べてお出迎えだぞ!」

「はははっ! 炎のブレスで一網打尽にしてやれ! 我がアーメリア軍の空の恐怖を骨の髄まで——」

飛竜に跨る騎士たちが傲慢な笑い声を上げた、その瞬間だった。

「——対空射撃アンチ・エア開始ファイアッ!!」

アレンの振り下ろした腕を合図に、海岸線に陣取った六門の『手回し式多銃身機関砲ガトリングガン』が、一斉に狂気の咆哮を上げた。

ガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!

鼓膜を突き破るような爆音と共に、一分間に数千発という常識外れの速度で吐き出された鉛の弾丸が、空に向けて分厚い『弾幕の壁』を形成した。

それは魔法の障壁などではない。圧倒的な質量と運動エネルギーを持った、物理的な死の暴風である。

「なっ……がぼァッ!?」

急降下していた先頭の飛竜が、見えない壁に激突したかのように空中で静止し、次の瞬間、全身から血飛沫を噴き出して肉塊へと変わった。硬大な鱗も、分厚い皮膜も、現代科学が生み出した徹甲弾の前では薄紙に等しい。

「ひぃぃッ!? な、何だこの魔法は!?」

「上昇しろ! 上昇して距離を——ぎゃあああッ!」

空の絶対的強者であったはずの飛竜たちが、悲鳴を上げる間もなく次々と空中で四散していく。

弾幕の隙間を縫って逃れようとする者たちも、地上で待ち構えていた数百名のリュウキア兵士によるボルトアクションライフルの精密な一斉射撃によって、容赦なく撃ち落とされていった。

「怯むな! クランクを回し続けろ! 奴らが二度とこの空を我が物顔で飛ばねぇように、徹底的に叩き落とせ!」

アレンの激が飛び、島民たちの怒りを込めた弾丸が空を覆う。

かつてリュウキアの空を蹂躙し、轟音で島民を恐怖の底に陥れていたアーメリアの飛竜部隊は、わずか五分足らずの間に一騎残らず撃墜され、美しいエメラルドの海は彼らの残骸と血で赤く染まった。

「……全機、撃墜確認。我々の完全勝利だ」

「オオオオオオオォォォォォォッ!!!」

海岸に、リュウキアの島民たちの割れんばかりの歓声と、歓喜の涙が弾けた。

数十年にわたる屈辱と恐怖が、彼ら自身の引き金を引く手によって、完全に粉砕された瞬間であった。

 * * *

「ば、馬鹿な……!! 馬鹿な馬鹿な馬鹿なァァッ!!」

アーメリア軍駐屯基地の最奥、豪華な司令室。

マクラーレン将軍は、通信魔道具から届いた『飛竜部隊、全滅』の報告に、髪を掻き毟りながら絶叫していた。

「我が軍の最強部隊が、たかだか数分の間に、しかも地上からの攻撃で全滅しただと!? どんな魔法を使えばそんなことが可能なのだ!」

「か、閣下! 敵の部隊が基地の正門を突破しました! 基地の防衛魔法陣も、未知の爆発物で完全に沈黙……ひぃッ!」

ドゴォォォンッ!!

副官の悲鳴を遮るように、司令室の頑丈な鋼鉄の扉が爆薬によって吹き飛ばされた。

硝煙が舞う中、ゆっくりと足音を響かせて入ってきたのは、黒いコートに身を包んだヴィクトルと、まだ銃身から煙を燻らせているライフルを肩に担いだアレンだった。

「……随分と立派な執務室だな。自国民の血税で他国の将軍にこんな贅沢をさせていたかと思うと、国の経済を預かる者として反吐が出るよ」

ヴィクトルは冷徹なモノクルの奥で将軍を睨み下ろし、忌々しげに室内を見渡した。

「き、貴様ら……! 自分が何をしているか分かっているのか!」

マクラーレン将軍は腰を抜かしながらも、必死に威圧的な態度を保とうと叫んだ。

「我々は同盟国アーメリア軍だぞ! 貴様らの国は『地位協定』によって我々の治外法権を認めている! 同盟軍の基地に押し入り、軍に危害を加えることは明確な条約違反だ! 王都が黙ってはいないぞ、直ちに近衛軍が貴様らを反逆者として討伐に——」

「その王都からの『公式通達』が、たった今届いたところだ」

ヴィクトルは懐から、王国丞相の国璽が押された分厚い書状を取り出し、将軍の顔面に叩きつけた。

「な……に……?」

「読んで字の如くだ。本日この刻をもって、我がヴァルデンシュタイン王国は、アーメリア国との『安全保障条約』および『同盟国地位協定』を完全に破棄する。さらに、これまで支払ってきた『同盟国支援特別維持費(思いやり予算)』の全額停止、ならびにヘノーコ湾の新基地建設の永久凍結を宣言する」

「なっ……ば、馬鹿な! 王都の国防派閥がそんなことを許すはずが——」

「彼らなら全員、地下牢で仲良く鎖に繋がれているよ」

ヴィクトルは冷酷に微笑んだ。

「オズワルド丞相は、すでに国内の『防衛利権』の寄生虫どもを一掃した。もはやこの国に、貴様らアーメリアの顔色を窺い、自国民を売り飛ばす政治家は一人もいない」

将軍の顔から、さぁーっと血の気が引いていく。

政治的な後ろ盾(売国奴たち)が消え去り、絶対的だった条約という名の「ルール」が、紙切れになった瞬間だった。

「条約や法というものはな、将軍。それを担保する『圧倒的な力』があって初めて成立するのだ。お前たちがこの島でふんぞり返っていられたのは、飛竜部隊という軍事的な優位性があったからに過ぎない」

ヴィクトルは一歩踏み出し、床に這いつくばる将軍を見下ろした。

「だが、その優位性は今、我がヴォルフスブルクの『現代科学』によって完全に粉砕された。お前たちはもはや抑止力でも何でもない。ただの『無力な不法滞在者』だ」

「ひっ……!」

「アレン、この男を拘束しろ。アーメリア本国には『武装解除した捕虜』として身柄を返還してやる。もちろん、基地の撤去費用と、これまでこの島に与えた損害賠償は、利子をつけてきっちりと請求させてもらうがな」

「了解だ、天才サマ。おい大将、大人しく立てよ。それとも、俺の『物理法則』で立たせてやろうか?」

アレンがライフルの銃口を突きつけると、マクラーレン将軍は完全に心を折り、惨めに泣き崩れながら両手を上げた。

かくして、王国の南の島を長年縛り付けていた「不平等な治外法権」と「終わりのない基地利権」は、ヴィクトルの冷徹なマクロ経済学と、アレンの常識外れな現代兵器によって、完膚なきまでに叩き潰された。

王都のオズワルド丞相の正式な通達と共に、王国はアーメリアへの実質的な『従属』から脱却し、真の意味での独立国家として立ち上がったのである。

リュウキアの空から不快な轟音が消え去ったその日、島民たちは涙を流して抱き合い、新たな経済発展と自由の幕開けを盛大に祝うのであった。

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