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第六章 家族

単刀直入に言う、テネレッツァ。妾の養子にならないか?」

テネレッツァは驚きを隠せなかった。それもそのはずだ。クロノアの養子になるということはすなわち王族になることを意味するのだから。

「もちろん、すぐに決めろとはいわん。だけどその声が出ないままではいろいろと苦労するであろう?」

テネレッツァは、考え込んだ。

(どうしよう。私にはどうしたらいいかわからない。この人たちの養子になって、私の母親になったとしても。また、失ってしまったら、私はもう耐えられない。)

テネレッツァは紙とペンを出してこう書いた。

【私の前から、いなくならないと約束してくれますか?】

こう書くと、クロノア様たちに見せた。

みんなすぐに答えることができなかった。

ひと時の沈黙が続いた、鳥の声が、町の喧騒が、その場を励ますように聞こえてくる。

 だがその沈黙を破った者がいた。

「ああ、約束しよう。妾はあなたの前からいなくなることなんてない。なあみんなもそうだろう?」

クロノアは静かにそして優しくも決意のある声でそう告げるとほかの者たちも

「わかりました。」

「いいでしょう。クロノア様がそう言うのであれば。」

「私も構いませんわ。」

「私も、姉上が同意するのなら。」

みんな同意したことを確認すると、

「では、正式な決定は後日行いましょう。」

と言うと、あっ、と何か思い出したように、

「そういえば、ちゃんとした自己紹介がまだだったな。妾は、クロノア・ローズ・テンペンシア。この国の女王である。周りからは時空神なんて呼ばれておるがな。」

続けて、身長159㎝くらいで、年齢の割には小柄な女の子が

「私の名前は、ベロニカ・テンペンシア。この国の四神の一人、炎神をやってるわ。」

続けて髪は薄緑、スリムな体で、きれいな顔つきをしている女性が

「私の名前は、サーニャ・テンペンシア。この国で四神の一人、風神と聖女をやっています。一応ベロニカの姉のような役割をしています。」

「おい、姉上。ような、じゃなくて事実でしょ。ちゃんと女王様にも認めていただいたんだから。」

サーニャとベロニカが言い合っていると隣から、髪が薄い黄色がかかり、髪の先が淡いピンク色をした、自分の体形と合わないような大きい服を着ている女性と、

和服、のような落ち着いた服装をしている女性が自己紹介をする

「お初にお目にかかりますね。私は、バルト・ルニア・ルーズ・テンペンシア。バルト伯爵家の長女で四神の一人、雷神をやっています。」

「最後は私ね。私の名前は、エリカ・テンペンシア・この国で四神の一人草神をやっているわ。一応この四神の中では最年長ね。」

5人の自己紹介を聞いた後、自分も自己紹介をしなければ、と思ったテネレッツァはペンを走らせた。

【私の名前は、テネレッツァ・テンペンシア元はDランク冒険者です。得意魔法は支援魔法です。】

書いた紙を見せると、みんな理解してくれたようだった。

「では、改めてよろしくな。テネレッツァ・ローズ・テンペンシア。」

 テネレッツァは力強く頷いた。

次の日、テネレッツァは早速、母上に呼び出された。

「妾の子となったからには、ちゃんと学園にも通ってもらわねばな。」

(ん? 学園?)

テネレッツァが首を傾げているとクロノアが補足するように説明を始めた。

 このテンペンシア連邦国には、各領及び王都に二つずつ学園がある。中でも王都の学園は一番入学レベルが高く、一番賢い学園である。基本的には学園内では、身分の差など関係なく、平民でも貴族の子供でも王族の子供でも平等に授業を受けることができる。まあ、身分の差がないといっても、面と向かって、平民が貴族の子に口出しはできないらしい。

私が入園試験までに勉強することは三つ。

1つ、基本的な四則演算及び文字

2つ、 この国の基本的な歴史及び地理

3つ、 魔法に関する知識

筆記試験のほかにも、実技試験があり、そこで優秀な成績を出すことができれば、筆記の成績が悪くても入学できるらしい。

「さあテネレッツァ、これから1年間猛勉強だぞ。頑張ってついてこい!」

私はその一言に顔を引きつらせたのだった。

それから私は、クロノア様や四神様のもとで猛勉強をした。貴族の子やこの学園に入るような子は小さい頃から勉強しているので、その分も1年間で詰め込まなくてはならない。

 そんな詰め込み勉強で魔法の勉強をしていたある日のこと。

「テネレッツァ、まだ声が出せないの?」

私は小さく頷くだけだった。なぜかまだ声を出すことができない。

この数か月の間で、ヴィゴーレ様との死に向き合い、プーラ・エルドゥーラの練習もした。

だけど。声を出すことができなかった。

 そこで、エリカ様は一つの仮説をたてた。

バダゴーラに、呪いをかけられているのではないか。と

「魔法には、詠唱が不可欠。私たちのように、一つ魔法を極め、魔力量が多い者ならば詠唱短縮や、無詠唱なんてこともできるけど」

そこで私は手のひらに炎を思い浮かべ、心の中で、魔法を言った

(フィア)

すると手のひらに小さな火球ができた。

エリカは驚きを隠せず

「えっ?なんでできるの?もう逆に怖くなってきた。」

エリカはそう言いながらもあることを考えていた。

(この子、本当に平民なの?何かおかしい気がする。平民の子とは思えない知識量。魔力量。そして初めてでもできる無詠唱。この子まさか、、、)

「なんてそんなわけないよね。こんなに可愛いんだもの!」

テネレッツァは相変わらずエリカに抱きしめられている。なぜかエリカ様は事あるごとに私を抱きしめてくるのだ。

そんなこんなで一年が過ぎ、入園試験の日となった。

「テネレッツァ。朝だー。 起きろー!」

そう言って起こしてくるのはベロニカだった。

なぜ今日に限って、ベロニカが起こしに来るのだろう、と思う。

仕方なく起き、朝の身支度をする、と言ってもこの王城のメイドたちが用意してくれるのでそれを着るだけだが。昔は自分で用意して着ていたので、懐かしく思う。

母上と共に、朝ごはんを食べ、出発の準備をする。

「テネレッツァ、忘れ物はない? 体調は大丈夫? 学園までの道は分かる?」

この一年で分かったことなのだが、エリカ様はとても心配性らしい。

大丈夫、大丈夫、と意思表示をして王城の門から外に出て王都の学園へと向かう。

 一人で街中を歩くのは久しぶりなので新鮮だが懐かしい気持ちになる。

学園につくと、平民用の受付で手続きをした。

 曰く、私が王族の子になっているということはまだ秘密にしてるらしい。

受付で渡された用紙に必要事項を書いて、渡すと。

「受付完了です。部屋は2階の2―3の教室になります。こちらが受験番号です。」

渡された紙切れには、「1211番」と書いてあった。

 教室につくと、半分くらい来ていて、みんな受験前の最後の悪あがきをしているようだった。

私も席に座って自習をしていることにした。


「あの子は受かることができるかな?」

エリカがルニアに聞く。

「まあ、大丈夫でしょう。それよりも問題なのは入園した後です。」

「確かに、平民の子がSクラスやAクラスにいたら、貴族の子は不思議に思うでしょう。」

そこにサーニャがやってきた。

「大丈夫です!あの人も受験してますし、あの子と同じクラスになれるでしょう。」

エリカが思い出したように言う。

「アラクト公爵家の公爵令嬢、アリューシアね。」

3人で談笑していると

パンパン、と手を叩く音が聞こえた。

「はいはい、話してないで、事務作業片付けてよね。」

そう言っていたベロニカの顔は不機嫌である。

「ふふっ。ベロニカが話にいれてもらえなくて、不機嫌になっている。」

「そ、そんなわけないでしょ。あんた達が仕事をしてくれないからよ。」

「まあまあ、そんなこと言って怒らないの。」

サーニャがそんなことを言いながらベロニカに自分の膝に座るよう手招きする。

「わ、わたしはもう子供じゃないっての!」

と言いつつも、サーニャの膝に座り頭を撫でられている。

「まあ、受かることを祈っておきましょう。」

エリカは窓の外を見ながら言った。


入園試験が始まった。

一時間目、四則演算及び簡単な国語

二時間目、歴史の問題

三時間目、魔法の知識

(ふう、おわった~)

一人で伸びをしていると

「午後からは実技試験を行う。各自決められた場所に時間にはついておくように。」

という声がかかり、試験監督は教室を出ていった。

(さてさて、ご飯をたべますか。)

カバンから、王城の料理人が作ってくれた弁当をたべる。

そして午後、

「これより実技試験を行う。内容はあそこにある的に向かって魔法を放つ。それだけだ。」

そういうと、試験監督は15m先にある的を指さした。

「では試験番号1001番から始めろ。」

見ていて分かったこと。

1回につき10人ずつ、それぞれの的に試験監督が一人ずつと、私たちを監視しているのが一人、みんな初級や中級魔法で的に向かって打つが、当たるのは半分ぐらい。それ以外は届いても外したり、届く前に消えたりと様々であった。

「「「おーーー。」」」

 不意に大きな歓声が上がった。見てみれば的が半壊しているではないか。

そこでベロニカ様の言っていたことを思い出す。


「いい?実技試験は的に魔法を当てるだけの試験だけど、結構技術もいる。 テネレッツァ、あなたはまず無詠唱で魔法を使い、超級魔法をぶつけるようにしなさい。」

いきなり無理難題をいわれたテネレッツァは思わず首を横に振ろうとしたが、

「わかった?」

ベロニカ様の圧力に負けた。


あの男の子は誰だろうと思っていると周りが

その男子をほめていた。

「流石、エンドラス侯爵家のご子息、クガン様だな。」

ふむふむ、あのちょっと魔法が使える人は、

クガンと言うのか。

そんなことを考えていると声がかかった。

「試験番号1211番」

私は声が出せないので頷くだけだった。だがそこに

「おいおい。試験監督にも返事ができないほどお前は落ちぶれているのか?」

 あざ笑うような声でそう言ってきたのはさっきのクガンとか言う人だった。

 だけど私は言い返すことができなかった。

だって声がでないのだから

「おい、何とか言ったらどうなんだ?」

その取り巻きと思われる人達も文句を言ってくる。これ以上絡まれたくもないので、さっさと実技試験をして帰ることにした。

(フィアン)

無詠唱で魔法を放ち、的にぶち当てた。まあクガンよりは威力を抑えてあるが。

「む、無詠唱だと?」

周りから視線が集まってくる。

「終わった者は帰っていいぞ。試験番号札をなくさないように。」

そういわれると私はその視線から逃れるようにそそくさと帰った。

なんかクガンがごちゃごちゃ言っていた気がするが、まあ気にしないでいましょう。

王城に帰ると早々にルニアに抱き着かれた。

(んー。なんで?)

「お帰りー。みんな心配してたのよー。」

いったいどこに心配する要素があるのだろう。

四神様とわいわいしていると、母上が部屋に入ってきた。

「お。帰ってきたか。喋れなくて苦労せんかったか?」

苦労はしたけど、黙っておくことにした。

 試験の発表は1週間後なのでそれまでは、ゆっくりしようと思ったけど

いきなりクロノア様が私の肩を掴んで言った。

「テネレッツァ、旅行に行くぞ!」

どうやらゆっくりは出来なさそうだった。

仕方がないので部屋で身支度をしようとすると、

「テネレッツァ様、身支度は私共が用意いたしますのでごゆっくりおくつろぎください。

試験の疲れもあるでしょう。」

と言われ、なぜかメイドに全部任せることになった。

(や、やることなくなった)

やることがないのでどうしようかと悩みながら歩いていると

「テネレッツァ、今暇でしょ?ちょっと手伝って」

とエリカ様に言われた。

相変わらず私には拒否権がないのだろうか。

エリカ様に言われて入った部屋には色とりどりの花や植物が植えられている場所だった。

「ちょっと水やりを手伝って。 水の初級魔法ぐらいは使えるでしょ?」

まあ、使えないことはないので頷いておいた。

「いいよねぇ。花って。」

エリカ様は花に水をあげながら、そんなことをつぶやいていた。

その横顔はどこか寂しそうであった。

今回の章はいかがでしたか?

面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。

今後ともよろしくお願いします。

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