第三十章 覚悟を決めて
「プーラ・エルドゥーラ 爆砲!」
イグニスに向かって爆発する弾を打ちこんでいく。
「ちい、ちょこまかと!」
テネレッツァはイグニスとベイントス二人を相手に熾烈な戦いを繰り広げていた。
「テネレッツァよ。貴様に面白いものを見せてやろう」
ベイントスの後ろで何かが動いた気がした。
「これぞ、我の最高傑作・数々の魔物と人間を組み合わせ造った究極の戦闘兵器だ!」
ベイントスの後ろから現れたのは、おぞましい体をした、謎の魔物だった。
「アア、アアア…」
テネレッツァはその魔物に見覚えがあった。
「アクセ・マギアの時の…」
そう、武術祭の時に出てきた魔物にそっくりなのだ。
「貴様ら、何人の人を犠牲にした!」
「さあ、知らんな」
魔物が、テネレッツァに襲い掛かる。
「カアアアア!!」
でたらめな魔力と共に、魔法が打ち出されていく。
テネレッツァはその間髪を入れずに
打ち出される魔法にだんだんと押されていく。
「やれ、そのまま殺してしまえ!」
ベイントスの指示に魔物が突進し、剣を生み出して攻撃してくる。
ついに、テネレッツァは地面に叩きつけられた。
「ぐはっ!」
「さあ、とどめをさせ!」
魔物は剣を振りかざし、テネレッツァに向かて振り下ろした。
(ああ、終わったかな…)
思わず目をつむる。
なのに、いつまでたっても痛みがなかった。
不思議に思い、目を開けると刃がテネレッツァの目の前で止まっていた。
「テネ、レッツァサマ…ニゲテ、クダサイ」
その声の主を悟った瞬間、テネレッツァの中で、何かが切れた。
突風が巻き起こり、地面が揺れ、空さえも震え上がる。
それを、遠巻きに眺めている者達がいた。
「あやつの、引き金は大切な者の死、か」
「正確には、大切な者が死に瀕したとき、もしくは穢された時でしょう」
クロノアとアクアは城壁から戦いを眺めていた。
「四神は結界の意地で手が離せん。いざとなったら我々が加勢するとしよう。勝てるかどうかは分からん
がな」
「それでも」
「なんだ、何が起こっている!」
あまりの事態にイグニスも驚きが隠せず、慌てふためいている。
そこに、クラリアが現れた。
「お前たちは、引き金を引いてしまったのだよ。決してひいてはならない引き金を」
そこから現れたのは、顔つきが変わり、額に二本のツノ、竜の尻尾の生えた、別人のようなテネレッツァだった。
「「ならば、こちらも本気を出すとしよう!」」
巻き上がる炎と共に、イグニスとベイントスの姿が変わっていく。
黒の重厚な鎧を身にまとったベイントスと、一段と強い炎を身にまとったイグニスが現れた。
「さあ、始めよう」
テネレッツァは桁違いの速度で二人に詰め寄り、槍を振るう。
「なんの!」
2対1、3人の攻撃ガぶつかるたびに衝撃波が走り、大地が揺れる。
「これは、すさまじいな」
城壁から戦いを見ていたクロノアはただただそんな言葉をもらすことしか出来なかった。
「お久しゅうございます。時空神クロノア様。私の息子、いや娘がお世話になったそうで」
「その呼び方はやめろと言ったはずじゃ、妾は神ではない。後いつ来た」
いつのまにか、朱夏とフィオレがこの場所に来ていた。
「さっき、参りました」
「お母さま」
アクアは、朱夏がいたことに気づき、深々と頭を下げた。
「私にあったと思ったら、すぐに出ていきおって。どこにおるのかと思えばここにおったのか」
アクアは恥ずかしそうにしながら答えた。
「叱責ならあとでたっぷり受けます。なので今はこの戦いを見届けましょう」
朱夏はテネレッツァの姿を眺め、3人に聞いた。
「勝てそうか?」
「勝てない、でしょうね。奇跡でも起きない限り」
「なら、その奇跡が起きることを4人で祈るとしよう」
戦いは五分五分に思えたが、よく見るとテネレッツァが少し押されていた。
「さすがにその力、ずっとは持たないだろう?」
図星だったようで、テネレッツァは顔をしかめる。
(ヴィゴーレ様、エル…ごめんなさい。約束守れそうにないです)
テネレッツァは空に飛び上がり、二人を標準に捉えた。
「プーラ・エルドゥーラ 氷砲 アイス・カヴェア」
イグニスとベイントスが氷の檻に閉じ込められた。
「こんなもの!」
イグニスが炎で溶かそうとしたが、全くその気配がなかった。
「貴様、何をする気だ!」
テネレッツァは何も言わず、4つの武器を出した。
そして、その4つ武器を起点に魔法陣を展開していく。
「貴様、その魔法を使うことがどういうことなのか分かっているのか!」
ベイントスが明らかに焦っている。
「死ぬぞ!貴様も!」
大声で叫んだその一言は、クラリアはもちろん、テネブラエそして、城壁の上に立つ人達にまで聞こえ
た。
「「テネレッツァ!やめろ!」」
クロノアと朱夏が叫ぶ。
それに気づいたテネレッツァは、二人の方を見て、にこやかに笑った。
「さようなら、母上、国のみんな、そしてこの世界。アエテルヌム・ホーラ・グキエラス(永時氷)!」
眩い光が放たれる。その光に見方はおろか、敵まで視界を奪うほどだった。
光が収まり、視界が晴れていくと、そこにテネレッツァとベイントス達の姿はなく、ただ戦闘跡が残って
いるだけだった。
「どうして、どうしてお前がその魔法を使うのだ…」
朱夏は膝から崩れ落ち、大粒の涙を流している。
「どうやっても、時は変えられないか」
「だから言ったでしょ、無理だって」
全員が悲しみに暮れているとき、ヴェリミーアもといアウロラが姿を現した。
「分かっておる。だが諦められなかった」
5人はただただ大切な者がいなくなった戦場を眺めることしか出来なかった。
今回の章はいかがでしたか?
面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。
今後ともよろしくお願いします。




