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第二十八章 最後の希望

謎のメイドが何か魔法を唱えるとゲートが開いた。


「どうぞ、こちらへ」


テネレッツァは言われるがままに進んでいく。


潜り抜けた先に広がっていたのは、果てしなく続く夜の世界と、そびえたつ六本の塔だった。


「ここが、フィニス?」


「はい、そうです。ついてきてください」


メイドについていき、塔と塔の間を抜けると、外からは見えなかった大きな街が姿を現した。


街は、淡い黄色のレンガ造りの建物が多く、道行く人々の髪は一様に黒かった。


「うそでしょ。どっから現れたの?」


「ふふ、そう思いますよね。それも含めてご説明いたしますので皇城へ参りましょう」


少し進むと、地面に魔法陣が張られた場所に立つように言われた。


「それでは、参ります」


メイドが魔力を込め、魔法陣を展開すると目の前が急に変わった。


(これって、転移?)


テネレッツァはなぜそんな高度な魔法があるのか不思議に思いながら、王城の廊下を進んでいく。


どれも街と同じレンガだが、高級そうに見えていた。


そして、メイドは一室の戸を叩いた。


「皇陛下、かの者をお連れいたしました」


「入れ」


中から、少し枯れた声が聞こえ、扉が開かれた。


「どうぞ、中へ」


テネレッツァが中に入った途端、空気が変わった。


張り詰める、ちょっとでも気を抜けばおしつぶされそうなほどに重い空気である。


「ほお、これに耐えるとは」


「皇よ!おやめください!万が一に死んでしまったらどうするのですか!」


その横で立っていた、まだ若く見える兵士が皇と呼ばれて男を止めている。


「なに、この程度では死なんと我も分かっておる。それに今のはほぼ全力じゃぞ?」


平然ととんでもないことを言いながら、テネレッツァの方へ向き直り立ち上がって、頭を下げた。


「先ほどの非礼は詫びよう。あなた様の力を試したまで、どうかお許しください。竜姫様」


「へ?」


テネレッツァはいきなり自分のこと竜姫と呼ばれたことを理解できず、唖然としている。


「な、なぜ私が竜姫だと?」


「それは、まあお座りください。話はそれからです」


言われるがままに机を挟んで反対側の席に座る。


すると、さっきのメイドがいつの間にか飲み物を出してきた。


「安心下され。毒などではありませぬ。この土地でとれる、茶葉を使ったものです」


テネレッツァはカップを口に運び、一口。


「…おいしい」


テネレッツァは、思わず笑みがこぼした。


「お気に召されたようで何より。では話をしよう。儂の名はテネブラエ・フィニス。この島の皇をしておる」


続いて、その横にいた漆黒の瞳に張りのある顔の兵士が前に出てきて


「私の名は、ドラ・フィニス。皇の専属護衛兼宰相兼軍師を務めております」


テネレッツァは、なんかこの人だけ重労働じゃない?と思いつつ、自分の紹介をした。


「私の名前は、テネレッツァ。本名はアイリア・サーナ・エクセドラだけど、テネレッツァって呼んでく

ださい」


にこやかな笑顔であいさつした後、再度座る。


「それで、なぜあなたは私が竜姫であると知っているのですか?」


テネブラエは何でもないように告げた。


「アウロラに聞いたのじゃよ。この前、ここに来たからの」


テネレッツァは、その名前に聞き覚えがなかった。


「失礼ですが、どなたですか?」


テネレッツァの一言にテネブラエ達は目を丸くしている。


「おや、あの人は言っていなかったのか。なら、あなたにはヴェリミーアと言った方がいいかな?」


テネレッツァはその一言に食いつくように前かがみになる。


「母は!母がどこにいるのか知らないですか!」


「落ち着きなされ。お前の言う母がヴェリミーアか朱夏かどっちか分からん。どっちじゃ」


「はっ。すいません。ヴェリミーアの方です」


テネレッツァは自分のしでかしたことに気づき赤面している。


「ヴェリミーアが言っておったよ。お主は、世界を変える最後の希望だと」


「私が、ですか?」


「そうだ、といってももう一人いるのだがな」


テネブラエが先ほどのメイドに目配せをする。


すると、メイドは静かに頷き体を魔力で包み込んだ。


姿が変わったメイドの姿は、黒のコートに、紫色の目の美しい女性であった。


「初めまして、私はクラリア・フィニス。この国の皇女よ」


「この方も、最後の希望の一人なのですか?」


「ああ、あなたとクラリア、二人ならば世界を変えられると、言っていた」


テネレッツァは不思議でならなかった。


ヴェリミーアがいかに強いと言えど、なぜそこまで言い切れるのか。


「それで、私をここに連れてきた理由は?」


「お主も一緒にテンペンシア連邦国へ行ってほしいのじゃ」


「ん?今なんと?」


「だから、わしらと一緒にテンペンシア連邦国を救いに行ってほしいのじゃ」


テネレッツァは思わず顔をしかめた。


それもそのはずで、一度は追放され、自分が負けた敵がいるのだから。


「拒否は…できませんよね。分かりました。行きましょう」


三人のせがむような目に負け、テネレッツァは行くことにした。


「テネレッツァよ、最大限の用意をしておいてくれ。こちらから出せる物はなるべく出そう。恐らくこれ

が、大陸最後の戦いになるだろうからな」


テネレッツァはその言葉に息を呑んだ。


案内された客室で、テネレッツァは一人準備をしていた。


「私の人生って、ほんと波乱万丈だよなー」


12歳の時のことを思い出していた。


「あの時までは、平和だったのに。いや、バダゴーラと戦った時からか、私の人生が狂い始めたのは」


テネレッツァは、プーラ・エルドゥーラを撫でながら、一人心細そうに座っていた。






「クラリアよ。頼んだぞ。お主とテネレッツァだけが頼りなのじゃ」


「分かっております」


テネブラエとクラリアが話していると、ガシャガシャと音を立てながら、全身骨の魔物が入ってきた。


「あ、帰ってきたか。ノクティス」


ノクティスと呼ばれた魔物は何も言わず、ただただ頷いていた。


「役者は揃った。兵も揃えた。後は、深淵と獄を止めるだけじゃ」


開けない夜の空を眺めながら、テネブラエは言った。


「わしらが、残りの魔人と軍勢を食い止める。そのうちに大将の首を討ち取れ。躊躇はするな、よい

な!」

「御意。皇よ」






そんなこんなでまともに休む暇もなく、二日後に出発となった。


「個人的には、一週間ぐらい欲しいんだけどなあ」


皇に面と向かって言えるわけもなく、残り二日間を自身の休養に当てた。


そして、出発の日。


大きなゲートの前には総勢12万の兵士達と、ノクティス、テネブラエ、ドラ、クラリア、テネレッツ

ァ、そしてフィニス・エンド・ドラゴンが並んでいる。


「皆の者!準備は良いか!」


「「「「「「「おおぉぉ!!!!!」」」」」」」


「さあ征くぞ!最終決戦の地へ!」


テネブラエがゲートに向かって魔力を込め、ゲートを開通させた。


(もう後戻りは出来ない。みんなの思いを受け継いで、私は、私を救ってくれたみんなのために勝って見

せる。どんな手を、たとえこの命を捨ててでも)


今回の章はいかがでしたか?

面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。

今後ともよろしくお願いします。

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