第二十七章 古代遺跡に眠るもの
遠ざかる城壁を背に、テネレッツァは進んでいく。
「ここから西に三日か。すこし遠いなあ」
愚痴をこぼしながら進んでいると、ヘルバが文句を言うな、と言わんばかりにないた。
「そうだね。文句を言っても何も始まらないものね」
すると、目の前に気の形をした魔物が現れた。
「グルルアアア!」
樹の魔物が叫ぶと同時に地中から葉っぱの魔物が大量に出てきた。
「木に葉っぱって。燃やすしかないじゃん」
にやけ顔で魔法を発動する。
「中級魔法 フィアン!」
葉っぱの魔物が一斉に燃えて死んだ。
「ちょっと焦げ臭いなって、あれ?木の奴死んでないし」
よくよく見てみると、炎を吸収していた。
「木なのに、火吸収するのってあり?」
テネレッツァはめんどくさそうにしながら槍を構え、切り裂いた。
「乱桜!」
ぼとぼとと燃やすのに丁度いい木が落ちてきた。
「やったー。これで夜をしのげる」
収納魔法にしまい、また進んでいく。
半日も進むとだんだんと周りの景色が変わっていく。
「あれ?いつの間にか背の高い木ばっかりになってる」
辺りもだんだん暗くなってきており、テネレッツァは森の中で休むことにした。
「ほら、ご飯だよ。ヘルバ」
ヘルバに人参と呼ばれる植物をあげ、テネレッツァはもらった食べ物を軽く調理して食べていた。
「えーと。お肉の野菜炒め?」
テネレッツァは貰った料理帳を片手に鍋で調理していく。
「ふう。これでいいのかな?」
出来上がった料理を頬張りながら、テネレッツァは貰った地図を眺めていた。
「一体何があるんだろ」
ご飯を食べ終わり、後片付けもすみ後は寝るだけというころ、森の中で不審な音がした。
「ん?何の音?」
注意深く周りを見渡す。
だが、焚火の明かりだけではよく見えなかった。
「初級魔法 フィア!」
小さな炎を木の枝に灯し、音のする方へ投げる。
すると、なにか人影が見えた。
「人?いやにしては動きが遅いような」
のそのそと歩いてくる。
焚火で照らされたその体は、すでに朽ち果てていた。
そして、辺りに鼻をつまむような腐臭が漂い始める。
「なんなの!くっさーい」
テネレッツァは思わず鼻をつまんでしまう。そうでもしないと耐えられないのだ。
「支援魔法 嗅覚正常化」
鼻が臭いにおいを感知しないようにして、槍を出す。
この死者は動きが遅いのですぐに倒すことが出来た。
「一体何なの」
これだけかと思い安心したのも束の間、木々の間から次々と死者が現れた。
「これは…きりがないね。ヘルバ!」
テネレッツァは素早く荷物をまとめ、ヘルバにまたがった。
「逃げるよ!この森は危ない」
走ること30分森を抜け、テネレッツァは草原にたどり着いた。
「ここなら、大丈夫?」
馬を降り、辺りを見渡して安全を確認した後、休む準備を始めた。
「それにしても、なんでいきなり…。村や王国にいた時はそんなことなかったのに」
テネレッツァは思考を巡らせる。
(夜にいきなり現れた死者。だが村にいた時は現れなかった。ということは出現に何か条件が?)
冷静に一つずつ考えていく。
そして、テネレッツァは一つの結論に至った。
「もしかして、明るさと地面?」
思い返してみれば、村の地面は土だったが、夜でも明かりが焚かれていた。
そして王国の地面はすべて整備されている。
「なら、支援魔法陣 暗明」
この魔法は、ヴェリミーア母さんが昔造った魔法。
設置した場所は明るいのに近くの人には暗く見えるという、なんとも不思議な魔法だった。
(まさか、こんなところで役に立つなんてねー)
魔法陣を設置し、やっとのことでテネレッツァは寝ることが出来た。
ヘルバも一緒に。
二日目、テネレッツァは地図を見ていると移動が短縮できそうな場所を見つけた。
「ここなら、結構短縮できそう」
王はこの線通りに行けばよい、と言っていたが早く着くことにこしたことはないので、その場所に行って
みることにした。
「うわあ、そういうこと?」
到着したテネレッツァの前に広がっていたのは朽ち果てた橋とその周りに群がる死者たちだった。
「だからこっちの道を書いていなかったんだね」
テネレッツァが何とかして通れないかと思っていた時、ヘルバが背中を口で叩いた。
「うん?どうしたヘルバ」
ヘルバはテネレッツァに自分の背中に乗るように言っているようだった。
「乗ればいいの?」
促されるようにテネレッツァはヘルバに乗った。
すると、ヘルバがいきなり橋に向かって走り出した。
テネレッツァたちの目の前には昨日見たような死者の群れがいるというのに
「ちょ、ちょっと⁉どうするのさ!」
テネレッツァは焦って止めようとしたが、ヘルバそのまま死者を吹き飛ばして突き進み、そして橋に向か
って、飛んだ。
「え?ええええ!」
そして、そのまま空中を蹴り、反対側まで行ってしまった。
「はあはあ、死ぬかと思った」
テネレッツァはこう見えて高いところは苦手らしい。
「何はともあれ、これで大幅に短縮できたね。さあ、進んでいこう」
そのまま、林の中を進んでいく。
さらに2時間ほど林の中を進んでいくと、目の前が急に開けた。
「これが、古代遺跡…」
テネレッツァの目の前に建つのは、石造りだが苔がいたる所についている、まさに廃墟となった建物だっ
た。
入り口から、中を覗き込むと下に階段が続いていた。
「これ、中に入れないって言っていたけどどうなんだろう」
テネレッツァが階段に足を踏み入れようとした時、何かに弾かれた。
「魔法陣に置き換えてっと。リバース!」
メキメキと遺跡を囲んでいた透明な壁が崩れた。
「これで、入れるかな?ヘルバはここで待ってて。いざとなったら逃げれるようにしておいて」
テネレッツァはヘルバに魔法をかけ、場所がわかるようにした。
「さあ、入ろうか」
一歩ずつ遺跡の中へ踏み入っていく。
すると、壁についていた松明が一人でについた。
「これ、結構深いよね」
エルから貰った旅人の服が汚れるなあ、と思いながら進んでいくと階段がなくなり、部屋が現れた。
「この遺跡、ダンジョンっていうやつかな?」
昔、ヴィゴーレが教えてくれたなあ、と感傷に浸りつつ進んでいくと、死者が数体現れた。
「支援魔法があってよかった~。なかったら臭すぎて死んでたかも」
敵をなぎ倒し、さらに奥に進んでいくとまた階段があった。
「どんだけ深いの」
進んでも、進んでも同じような階層が続いており、流石にテネレッツァも何かがおかしいと気づいた。
「もしかして、他に先に進む場所があるのかな」
テネレッツァがキョロキョロと周りを渡していると壁に文字が書かれているのを見つけた。
テネレッツァは、魔法で壁を照らしながら、文字を読み解いていく。
「これって、ウチェロ様が時々口にしていた言葉、鬼竜語?」
壁にはこう書かれていた。
「入口は鬼のツノの生える場所に、カギは竜の尻尾の生える場所に」
なんのこっちゃ、と思いながらちょっとずつ解読していく。
かろうじて分かったのは
「鬼のツノ 竜の尻尾 場所。これしかわかんないや」
テネレッツァは、手探りでこの階層にある物を調べていく。
部屋は正方形でその中に柱が四本、小さな正方形の点になるように建てられていた。
そして、柱にはそれぞれ、竜と鬼の彫刻がされている。
「お!見つけた見つけた!ここになんかすればいいんでしょ」
テネレッツァが適当に触っていると柱が光り、中央に穴が開いた。
「ええ…。なんか開いた」
穴を除くと、風を吹き抜けているのをテネレッツァは感じた。
「この穴、下に空間がある?」
飛び降りなければ先へ進めないのだが、高いし下が見えないし、なによりも飛び降りるのが怖い。
「ええい!もうどうにでもなれ!」
テネレッツァは覚悟を決め、穴に飛び込んだ。
テネレッツァは落ちながら段々と自分の落ちる速度が落ちていくのを感じた。
「見たことない魔法」
テネレッツァは目を輝かせ、周囲を見るがなんせ落ちていっているので何も見えない。
床が見えたと思ったその瞬間、テネレッツァの体が宙に浮き、そしてゆっくり落ちていった。
「親切設計だなあ」
感心しつつ、一本しかない道を見つめる。
「ごくっ。何があるんだろう」
少し進むと、古ぼけた扉が鎮座していた。
一見、鍵はかかっておらず、誰でも開けれそうである。
「さあて、中にはどんな物が…」
テネレッツァが触れようとした瞬間、体中に雷魔法のような衝撃が走った。
テネレッツァは思わず手を放し、少し離れる。
「もしかして、またリバースで壊す感じ?」
自分で応用しといていうのもあれだが、この魔法結構強い。
テネレッツァはリバースで罠の魔法陣を破壊し、扉を開けた。
「うわあ……」
その先に待っていたのは、中々に広い空間の中にひっそりとたたずむ、「ゲート」である。
その場に足を踏み入れると、奥の方へ何かが動くのが見えた。
「すいませーん!誰かいるのですかー?」
警戒心皆無の質問をすると、黒と白のメイド服を身に包んだ人族?の女性がゲートの横からひょっこりと
現れた。
そして、テネレッツァの姿を見るなり
「お待ちしておりました。竜と鬼姫の血を継ぐ者よ」
「お待ちしておりました?」
テネレッツァは頭がこんがらがってきた。
(ええと、この人は多分人族で、なぜかここにいて、それで私の正体を知っていて…)
テネレッツァは考えれば考えるほどに分からなくなり、ついに思考を放棄した。
「あなた様は、アイリア様でいらっしゃいますよね?」
いきなり、自分の本名を言われたテネレッツァは驚きが隠せなかった。
(な、なんで知ってるの)
テネレッツァの顔からは、うっすらと汗が流れてきている。
「立ち話もなんですから参りましょう。我が世界フィニスへ」
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