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第二十四章 世界大戦の始まり

戦場に向けて、テネレッツァ達は進み始めた。

「私は空を、テネレッツァ様は地上をお願いします」

「分かった~」


「はあ、本当に大丈夫なんでしょうか」


気の抜けた返事に呆れながら、エルは魔法の準備を始めた。


「テネレッツァ様、私の魔法を開戦の合図といたしましょう」


「了解」


テネレッツァは、ゆったりと敵軍に近づいていく。


もちろん、真正面からいくほど馬鹿ではないので、横からだ。


「さあ、開幕です!風魔法 応用せよ! ウィンド・バラ―ジュ(風の弾幕)!」


大量の風弾が敵軍に降り注ぐ。



同時に、テネレッツァも進軍を開始した。


「残花残霊槍 一限解放 千鬼乱桜」


自身を強化し、敵軍に突撃する。


「残花残霊槍 乱桜!」


鬼神の如く、敵を切り裂き戦場を混乱させていく。







ルミエール教国の陥落は実に面倒であった。


国全体に結界を張られ、ルミエールの奴らは籠城を選択しおった。


「おい、あれの用意はできているか?」


「深淵の兵器 アビス・インパクトですね。用意はできております」


「では、それを放ったと同時に全軍に前進するように伝えろ」


「了解いたしました」


部下は下がり、その旨を伝にいった。


「っくっくく。あいつらの泣き叫ぶ顔を想像しただけで笑いがでるわい」


主将は笑みを浮かべながら空を見上げた、その時であった。


空から、大量の砲撃が来たのである。


「ちい、あっちから攻撃を仕掛けてきたか!おい、アビス・インパクトの準備をしろ1」


「はっ!」


アビス・インパクトは、人族二人分ぐらいの大きさの巨大な大砲である


「これなら、結界もろともルミエール教国を吹き飛ばせるだろう」





「なんでしょう、あれは」


エルがその存在に気が付いたときには、もう遅かった。


「放て!」


ものすごい轟音と共に、ルミエール教国に向かって強烈な一撃が放たれた。


「まずい!」


とっさに危険を感じ取ったエルは、最大の防護魔法を展開した。


「極大精霊魔法 インペルト・フルニート・シード(精霊大結界)!」


結界とアビス・インパクトの一撃がぶつかる。


「ぐっ。なんて一撃なの…」


エルがだんだんと押されていく。


「まずい、このままでは…」


エルは周りを見る。だが何もない。どうしようもない。


「ならば!」


エルは結界の形を変え、自分に集まるようにした。


「大精霊魔法 フルニート・バースト!」


相殺しようと攻撃を撃つがわずかにアビス・インパクトの方が、威力が勝っていた。


空中で大爆発が起きる。


そこでテネレッツァは初めて察した。


「エル!」


周りの敵を吹き飛ばし、爆発した場所の下まで走る。


「邪魔だ!そこをどけ!」


もちろん敵が進路を阻んでくるが今のテネレッツァにはそんなこと関係ない。


爆発による衝撃でボロボロになったエルが落ちてくる。


ギリギリのところでキャッチしようと滑り込む。


「エル、大丈夫⁉」


「ごほ、ごほ。だ、だいじょうぶ、です。ごはっ」


エルが、青い血を吐いた。


明らかにダメージがすごい。


「早く治療を!」


ルミエール教国に逃げ込もうとしたとき、もう一発アビス・インパクトが撃ち込まれた。


バリー――ン!


大きな割れる音と共に結界が崩れ落ちていく。


その音はルミエール教国にいる者の心を折るには充分であった。


「そ、そんな、結界が…」


もはやイリアもただただ結界を崩れていくのを見ることしか出来なかった。


「イリア様!ここは危険です!教殿へ退避を!」


「もう、どこにも逃げ場はありません。この結界が崩れ、門も制圧されては…」


もはや生きることすら諦めた顔をしているイリアにバグナは怒鳴った。


「何を言いますか!あなたが死んでしまっては本当にこの国は終わってしまいすぞ!」


「そうですね。あなたの言う通りですね」


イリアは涙を拭い立ち上がった。


「全員に伝えなさい!教殿へ退避せよ、と」


「はっ!!」


バグナは城壁を降りていき、みんなに指示を出していた。






エルは血を吐き、全身に傷を負いながらも、まだ戦おうとしていた。


「これほどの軍です。どこかに主将がいるはず。そいつさえ倒せば」


「それは無理な話だなぁ。エルバフィーアよ」


声のする方を向いてみると、見覚えのある男が立っていた。


「ガンドラ!貴様、なぜここにいる!」


テネレッツァは激昂し、ガンドラに槍先を向ける。


「実に愉快だ。ルミエール教国を落とすだけでなくこんなおまけもついてくるとは」


ガンドラは大笑いをしながら、全軍に指示をだした。


「全軍突撃!教国を制圧せよ!人族はなるべく殺すなよ?あとで使えるからな」


「外道め…」


エルはなにか逆転の一手はないかと思考を巡らせていた。


「ガンドラ!貴様だけはこの手で殺してやる!」


テネレッツァはもはやガンドラ以外眼中になく冷静さを失っている。


「おやおや、16のガキ風情に人を殺せるかな?ご丁寧にさっきの戦闘も誰一人殺していないようだし

な」


「え?」


エルはびっくりしてテネレッツァが暴れた後を見る。


確かに、全員倒れてはいるが、息はあった。


「うるさい。お前だけは許さん」


槍を構え、突撃する。


「お前にわしは殺せん!ぬん!」


担いでいた斧を振りかざし、槍をはじく。


「おらおらどうした!お前の実力はそんなものか!」


エルから見ても明らかに劣勢なのはわかっていた。


「私には、どうしようもない。ヴィゴーレ様、私はどこで選択を間違えたのでしょうか」


エルはただ、傷ついた自身の体を少しでも治しながら、テネレッツァが勝つかもしれないという、一筋の

希望にかけていた。


「断獄斬!」


テネレッツァが吹き飛ばされ、城壁にたたきつけられた。


(もう時間がない。テネレッツァ様に私の遺志を、ヴィゴーレ様の遺志を託すとしましょう)


エルは覚悟を決め、よろよろになりながら立ち上がった、


「精霊神化!」


天まで届きそうな光と共に、辺りに突風が巻き起こる。


「なんだ!何をしやがった!くそ精霊!」


「エ、ル?」


「テネレッツァ様、どうかもう選択を誤らないでください。いつなん時でも冷静であることを忘れないで

ください」


「エル?嫌だよ、そんな遺言みたいなこと言わないで!」


「さようなら、テネレッツァ様。また、どこかでお会いできることを祈っております。精霊魔法 フルニート・テレポート(強制移動)」


その瞬間、テネレッツァがその場から消えた。


「おい、あのガキをどこへやった」


「それは、ご自分でお探しください」


よく見ると、ルミエール教国の国民はおろか兵士も全員いなくなっていた。


「おや、あっちはあっちでうまく逃げましたか。これで、何も心配しなくて済みますね」


余裕綽々であたりを眺めるエルにムカついたガンドラは魔法を発動し殺しにかかった。


「暗黒強化!」


「神霊魔法 デウス・イース(神風弾)」


二人の攻撃がぶつかり合い、衝撃波が飛び交う。


「刺し違えてでも、あなたを殺します」


「できるかな。精霊風情に!」


二人の戦いはますます激しくなっていく。


辺り一帯には穴が開き、ガンドラは味方もろとも吹き飛ばしている。


(もはやこの力が尽きるのも時間の問題)


「極大神霊魔法 フルニート・デウス・フォルトゥーナ(神霊の息吹)!」


聖炎がガンドラに襲い掛かる。


「く、ぐあぁぁ!!!」


辺り一帯が業火に包まれる。


もはや、地獄絵図であった。


満身創痍でエルは呟く。


「これで、倒せたでしょうか」


また、エルは血を吐き、その場にうずくまった。


それを狙っていたかのように、敵がわらわらと現れる。


「全員は…倒せませんよね」


もはや戦う力すら残っていないのに、エルは立ちあがり魔法を準備する。


「主将は倒しました。後は頼みましたよ。テネレッツァいや、アイリア・サーナ・エクセドラ様」


副将の一人が剣を突き立て、激怒し言った。


「全軍、奴を殺せ!!」


(さあ、最後の悪あがきと行きましょう)







ルミエール教国から脱出した人々は鬼竜国エクセドラの跡地まで、イリアの力によって逃げ延びていた。


「この辺りにいると思うのですが…」


バグナを含むルミエール教国の人々は周りを警戒しながら注意深く進んでいく。


だんだんと視界が開けていき、そこには襲撃にあった都市のような場所が広がっていた。


「ここが、鬼竜国エクセドラ、の跡地」


「いちいち跡地って言わないでくれます?」


バグナが感心していると不機嫌なルーナとヴェントが家と家の間から出てきた。


「これはこれは、ルーナ様にヴェント様、お出迎えありがとうございます」


「いえいえ、朱夏様より丁重に、と仰せつかっておりますので」


ヴェントは笑顔で話しかけてくるが、ルーナは未だにバグナたちを警戒しているようだった。


「ここで立ち話もなんですので、私たちが用意した避難所までお越しください」


ヴェントは手招きをし、私たちに来るように促してきた。


だが、ルーナはバグナのことを睨みつけ、


「お前らがテネレッツァ様を追放したこと、まだ許してないからね」


それだけ言うと、一足先に行ってしまった。


「あれは、私の失態ですな」


バグナは空を見上げ、後悔するように言った。


(しかし、あの時我々を救って下さったのは、見間違いでなければエルーナとマイルーナいやテネレッツァ。一体どうして…)


考え事をしながら歩いていると、ヴェントに声をかけられた


「どうかしたかい?バグナ騎士団長さん」


「いえ、少し考え事をしていただけです」


「どんなことだい?」


バグナは少し苦しい顔をしながらも話をつづけた。


「実は、私たちを救って下さったのは、おそらくテネレッツァ達ではないかと。なぜ、追放したはずの私

たちを救いに来るのか分からないのです」


「あっはっは。まさかそんなことで悩んでいたのかい?」


ヴェントは歩きながら、笑っていた。

「答えは簡単さ。テネレッツァ、だからだよ。あの子は人のためなら自分の命だってかけるような子。例えそれが一度追放してきた国だったとしてもね」

そんな、天使のような子がいるか。とバグナは思いながら避難所へと歩いていった。






「ここは、一体…」

傷だらけでろくに動くこともできないの少女テネレッツァは、どこかも分からない場所に飛ばされていた。

「早く、エルを助けに行かないと」

テネレッツァは無理やり体を動かそうとしたが、激痛が体中に走った。

「ああああ!痛い、痛いよお。こんなのじゃろくに動けない。かといって回復しようにも自己回復の魔法なんて知らないし」

もう無理なのかな、と思いながら、テネレッツァはだんだん気が薄れていくのを感じた。

(や、やばい。せっかくエルが逃がしてくれたのにこんな、ところで、死ぬ、なんて…)

テネレッツァはそのまま大木に寄りかかるようにして、気を失った。


今回の章はいかがでしたか?

面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。

今後ともよろしくお願いします。

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