第二十三章 戦場へ
私達は、獣人族の人たちに見送られながら、獣人族の大地を出発した。
「テネレッツァ様、まずどこに行きますか?」
「うーん。着く場所にもよるけど、ルミエール教国かな」
船はベラリアに行った時と同じで、すごい速度で進んでいく。
海上で四日ほど過ごしていると、段々と陸地が見えてきた。
「不思議なこともあるもんだね。あそこ、私たちが出発したとこじゃない?」
「確かに、そうかもしれませんね」
ゆっくりと速度を落とし、岸に船をつけた。
「で、ここからどっちに行けばいいんだろ」
テネレッツァは、きょろきょろ周りを見渡していた。
すると、
「ガアア!!」
近くの木々から、オーガと思われる魔物と、それを守るようにゴブリンが現れた。
「あちゃー。ばれちったか。仕方ない、エル!やるよ!」
「承知いたしました」
なぜ、ゴブリンがオーガっぽい魔物を守っているのかテネレッツァ達は見当がついていなかったが、とり
あえず倒すことにした。
「ウィンド 5連」
エルの魔法でゴブリンが吹き飛び
「プーラ・エルドゥーラ 貫通弾」
テネレッツァによってオーガっぽい魔物の腹に風穴が開き、そのまま倒れた。
「いやあ、手厚い歓迎だねー」
「ある意味そうですけど」
試しに周囲を探査してみると、見覚えのある反応があった・
「テネレッツァ様、何かありましたか?」
てくてく歩いていくと、古ぼけた焚火後があった。
「間違いなくここは、私達の出発したばしょですね」
エルもこれを見て確信したようだった。
再度周囲を見渡すと、あたりが出発した時よりも、荒れ果てているように見えた。
「なんか、廃れていない?」
「あら、奇遇ですね。私も思いました」
エルは風魔法を使い、周囲の草を切り飛ばした。
「では、ルミエール教国へ行きましょう」
テネレッツァは、半分あきれ顔で
「それ、する意味あった?」
「えーと、なんかやらないと落ち着かなかったので」
少しため息を漏らしながら、テネレッツァはルミエール教国へと出発した。
「神よ、偉大なる創造神ラ・ノマリアよ。我は祈り奉る。その御心を持って我は力を奮う。アルカナ・バースト(神秘の一撃)!」
軍勢の中に大魔法が飛び、また兵士が葬られていく。
ルミエール教国では、まだ深淵と獄、そしてバングラス帝国の侵攻を受けていた、
幸いなことに、教都の大結界が生きているので、空からの侵入はなくこの国の門も一つしかないので守り
が固めやすかった。
「テンペンシア連邦国へ、救援の手紙は届いたでしょうか」
イリスは早々にこの状況はこの国だけでは打破できないと思い、この大陸で唯一残っているテンペンシア
連邦国に救援の手紙を送っていた。
侵攻開始から一週間。
何とか耐えてはいるが、押すこともできない状況だった。
「報告です!テンペンシア連邦国へ救援の手紙を届けに行った者から連絡がありました」
「して、返事は?」
「それがどうやら、あちらも侵攻されているようでして、何とか中に入り王城に届けたのですが、あちら
も救援を送る暇がない、とのことでした」
予想はしていた。だが、戦況は想像以上に悪かったようだ。
「分かりました.では、皆の者!籠城の準備をせよ!好機が来るまで耐えるのだ!」
兵士はその号令に素早く従い、準備を始めた。
(救世主たる者は現れるでしょうか)
少し小走りで、ルミエール教国への道を進んでいく。
どこもかしこも荒れ果てていて、とても街道とは思えなかった。
「そういえば、この道って私たち途中から入ったけど、どこに続いているんだろうね」
「たしか、ルミエール教国の領地の一つの港町、だったと思います」
「ふーん」
途中、何体も魔物が出てきたがすぐに蹴散らして進んでいった。
この時、テネレッツァはずっと違和感を覚えていた。
(なんか「世界の理」が、出せ、って言っているような…)
テネレッツァは試しに杖を出してみた。
すると、杖は光り輝き始めた
「え!なになに!なんなのこれ!」
テネレッツァは何が何だかわからず、エルも呆然としていた。
少しすると、杖の光は収まりその場に突き刺さった。
「一体何だったんだろう」
杖を取ろうと、テネレッツァが触れた瞬間、ばちっと弾かれた。
「え?」
そして、杖から文字が浮き出てきた。
「テネレッツァ。いざという時は4つの神器を使いなさい。さすればあなたを助けてくれるでしょう」
テネレッツァが読み終わったのを感知したのか文字が消えて、テネレッツァの収納魔法の中に入っていっ
た。
「どういうこと?4つの神器って。私持ってないけど」
「おそらく、これは先人の言い伝えではないかと。あまり気にしなくてもよいのでは?」
エルは何事もなかったかのようにテネレッツァに言ってきた。
「そうだね。今はルミエール教国に急がないと」
走っていくこと1時間、もともと曇っていった空が、さらに暗くなり始めた。
「そろそろ、夜ですかね。今日はこの辺りで休みましょう」
「そうだね。私もうへとへとだよ~」
その場に座り込むテネレッツァを眺めながらエルは野営のための準備を始めた。
「風魔法、応用せよ、フィード・プロテオーネ(風結界)」
結界をはり、夜ご飯の準備をする。
しかし、ここまで管理が行き届いてないとなると余程まずい状況なのだろうか。
テネレッツァはそんなことを思いながら、エルがしたくしているのを見ていた。
「夜ご飯は獣人族の方に貰った、保存食にしましょうか」
「またあれ?」
「仕方ないでしょう。今までならこの辺りで野菜や魔獣が狩れましたが今はそうはいきません」
「はーい」
エルに諭され、テネレッツァは渋々保存食を口にしていた。
次の日もルミエール教国へと走っていった。
今日はテネレッツァの支援魔法で体を強化して走っているのでいつもよりも体が軽くなっている。
「いつもの三倍以上の速さで移動ができるよ!すごいね!支援魔法って!」
テネレッツァはうっきうきになりながら、魔物を蹴散らし進んでいく。
それに対してエルは精霊なので空を飛ぶことが出来る。
走り続けること5時間。間に休憩を取っていたとは言え、テネレッツァの息も上がり始めたころ、見覚え
のある城壁が見えてきた。
「あれって、ルミエール教国の城壁だよね?」
「ええ、確かにそのようですが…」
エルがその周りを注視してみたと思ったら苦い顔になった。
「だいぶ押されているようです。そして、ここより少し遠くの場所に、朱夏様達の反応が。おそらく、国
を先に脱出していたのでしょう」
同じようにテネレッツァも周りを見ながら、ふと思ったことがあった。
「なんで空から侵入しないんだろう」
「結界のおかげでしょう。おそらくイリア様かアルノマリア様が張った結界かと」
近づいていきながら、そんな話をしていると魔物の数と種類が尋常ではないことにテネレッツァは気が付
いた。
「あれが、深淵の魔物?なんか全体的に、黒いというか青いというか…マグマみたいな色をしている獄と
は大違いだね」
エルも同じことを思っていたようで、うんうんと頷いていた。
「ですが、体内の魔力量の反応が違います。明らかに深淵の方が、強い」
「いや、それは分かっているよ」
テネレッツァは戦闘の準備をする。
「今回は初めから全部出しておくのですか?」
「うん。何があるか分からないからね」
テネレッツァは収納魔法から、プーラ・エルドゥーラ、神弓テルヌミス、世界の理、残花残霊槍を出し、
いつでも取り出せるようにした。
プーラ・エルドゥーラと神弓テルヌミスは背中に、世界の理は宙に浮かばせる形で、そして手に残花残霊
槍を持ち支援魔法をエルと自分にかけた。
「準備、できた?」
「もちろん、いつでも行けます」
「じゃあ行こうか。戦場へ」
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