第二章 戦いの後に
戦闘はすぐに終わった。だが周りにはたくさんの負傷者がいた。
それを見かねた私は、ヴィゴーレ様に、
「全員に回復魔法をかけてもいいですか?」
と聞いてみた。
「お前、回復魔法もつかえるのか?まあ、別に構わんが。」
耳元で囁くように続けて言う
「あまり、力は露見させない方がいいぞ。これは忠告だ。力の使い方には気を付けた方がいい」
ちょっときつい言い方で言ってきた。けれども、頭をくしゃくしゃに撫でられた。
「だがその人を思いやる心は素晴らしい。思いやりすぎて、自分の命を無駄にしないようにな。」
と豪快に笑いながら言っていた。すると、不意に馬車のドアが開かれ、侍女に連れられて、二人の少女が下りてきた。
一人は、私と同じぐらいの身長だろうか、薄い銀色の髪をした、可愛い女の子だった。
もう一人は、私より少し身長が高く、凛とした姿の桃色の髪をした、言うなれば絶世の美少女である。
「テネレッツァ、頭を下げな。王の御前だ。」
「えっ」と思いながらも、ヴィゴーレ様に倣って頭を下げた。
「よいよい、頭を上げてくれ。おぬしらは妾の命の恩人なのだからな。」
「御冗談を。あんな魔物、クロノア様であれば一人で倒せたでしょうに。」
(え、ヴィゴーレ様、この国の王様とお知り合いなの?)
心の中で、そんなことを考えていると横から、
「先ほどは、有難うございました。ヴィゴーレ様がいなければ、どうなっていたことか。」「いえいえ、アリューシア公爵令嬢もご無事で何よりです。」
全く話についていけない私に
「テネレッツァ、こちらはクロノア・ローズ・テンペンシア女王陛下、そしてその隣におられるのがアリューシア・ルーズ・テンペンシア公爵令嬢だ。」
開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。なんてたって王国の貴族と王族が目の前にいるのだから。
さらに、私は貴族階級について何もわからなかった。
「公爵って?」
「公爵ってのは、王族を除く貴族階級の中で一番位が高い貴族のことだ。」
「へ?」
まだ、開いた口が塞がらないでいると、
「クロノア様とアリューシア様は何故このような場所に?」
「私がお忍びで、アリューシアの父の治める領に遊びに行っておったのじゃよ。」
「そして、旅程が終わって王都に戻ろうとしたらあのような事態に。」
クロノア様はともかく、アリューシア公爵令嬢はまだ怖がっているらしく、手が震えていた。無理もない。12歳くらいの少女がいきなりあんな血濡れた戦いを見てしまったのだから。
私はそこで、
「あのー、失礼でなければ気分鎮静化の魔法をかけてもよろしいでしょうか。」
三人の視線が一気にこっちに向いた。やめてほしい。はずかしい。
「私は別に構わんと思うが、本人がよい言うものか。」
そう言ってアリューシア公爵令嬢の様子を伺うヴィゴーレ。
「よろしいですけど、変な魔法かけないでくださいね。」
上目遣いでそう言うアリューシア公爵令嬢に
「大丈夫ですよ。では「気分鎮静化魔法」」
唱えると同時に、アリューシア公爵令嬢の体が光に包まれて、終わったときには手の震えも止まっていた。だけど
「アリューシア様!」
緊張が解けてしまったのか、疲れて眠ってしまった。
「この子は私が馬車で連れて帰るとしよう。」
「では、我々もご一緒いたします。」
王都までの道のりは特に何事もなかったが、なぜか、「馬車に一緒に乗ってくれ」と言われた。
ヴィゴーレ様は二つ返事で了承したけれど、私にはとても気まずい時間だった。
「では、私たちはここで。またどこでお会いしましょう。」
「うむ」
クロノア様たちは王城へ私たちはギルドへ向かった。
「おーい、カレラ。依頼の完了手続きを頼む。」
「はいはい、ちゃんとできたの?」
「もちろん、薬草と毒消し草、あと上薬草が何個かあったから、取ってきたぞ。あ、これを受けたのはテネレッツァだから、あいつの名前で頼む。」
なんか知らないけど、依頼の完了手続きが終わってしまった。
「ほら、今日の依頼料だ。」
そう言って渡されたのは、銀貨が一枚と銅貨が三枚だった。
「まあ、初日の成果としては、いいだろ。この調子で明日も頑張ろうな。」
「はい!それではおやすみなさい。」
そう言って家に帰っていくテネレッツァを、後ろから眺めていた。
「明日から、退屈しない毎日になりそうだ。」
微笑みながら、そういった。
「ただいまー」
「おかえりなさい。どうだった?」
「初日から、いろんなことがあった。」
「まあ、食事の時に話を聞くから、手を洗ってきな。」
「はーい」
(そろそろ、頃合いだろうか。)
ヴェリミーアの手には一冊のノートを持っていた。
食事の時、テネレッツァはいろんな話をした。
相方がsssランク冒険者になったとか、女王陛下に会ったとか、とても初日とは思えないような話だった。
(そうか、あいつとも出会ったか。ならもういいだろう。)
「なあ、テネレッツァ。ちょっと大事な話があるんだ。きちんと聞いてくれるかい?」
いつになく真剣な表情の母さんに私も真面目に聞いた。
「私は少し旅に出る。その間、お前は一人で過ごすことができるか?」
「えっ、どういうこと?」
「そのままの意味だ。私は旅に出る、というか行かなければならない場所がある。」
私は少しの間考えた。そして笑顔で答えた。
「わかりました。母さんがいない間、一人で頑張ります。」
「あんたの相方のヴィゴーレとやらに明日合わせてくれないか?話しておきたいこともあるしな」
そんな話をしながら、テネレッツァと母さんの最後の夜が更けていったのだった。
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