第三章 新たな日常の始まり
「さあ行こうか、冒険者ギルドに。」
二人で、ギルドまでの道のりを歩く。普段と変わらない道のりなのに、なんだか寂しい気持ちになる。ギルドにつくと、ヴィゴーレ様はもう来ていて依頼掲示板を見ていた。
こちらに気づいたらしく
「おはよう、テネレッツァ。今日は誰か連れてきたのかい?」
「はい、うちの母さんです。母さんがヴィゴーレ様に話があるらしくて」
「初めまして。テネレッツァの母です。」
「こちらこそ、ヴィゴーレだ、よろしく。話があるそうだな。」
「はい、できれば二人で話したいのですが。」
ヴィゴーレは少し考えた。
(二人で話すのは構わないが、テネレッツァを一人にすると前みたいに絡まれるかもしれない、どうしたもんか)
「召喚。エルバフィーア」
赤ちゃんくらいの大きさの緑と薄い肌色をした猫のような魔物が出てきた。
私は、目を輝かせて
「なんですか。この可愛い動物は。抱っこしてもいいですか?」
「抱っこしててもいいから、少し二人で待っておけるかい?」
「わかりました。」
(ん?二人?)
遠目から見ると微笑ましい光景が目に入った。
テネレッツァがエルバフィーアをものすごくかわいがっている。見ているこっちが癒されそうだ。
「おっと、では本題に入ろうか。テネレッツァのお母様いやヴェリミーア様?」
「やっぱり、気づいていましたか。」
「話したいことというのは、そのノートのことかい?」
「はい、このノートを来たるべき時が来たときあの子に渡してください。それと、これから私の代わりとしてあの子を、テネレッツァを支えてください。」
いつになく、丁寧に話をするヴェリミーアは、覚悟を決めたような顔つきをしていた。
「あんたなら、大丈夫だろ。あそこに行くんだろ?せいぜい気を付けていくんだな。」
二人の話が終わって再びテネレッツァのところに行くと案の定また絡まれていた。
だが、今回は違う。緑色の長髪で身長の高い女性がテネレッツァをかばっていた。
「そこをどけって言ってんだよ。てめぇみたいな女に興味はねぇ。そこのクソガキに用があんだよ。」
あいつはこの前も絡んできたガンドラとかいうやつだっけ。
まあ、あいついるし大丈夫だろ、とか思っていると
「あなたたちに用はないそうですよ。とっととお引き取りください。筋肉バカさん?」
「てめぇ、いい度胸だな。おめえから教育してやんよ!」
ガンドラの拳が女性に届きそうになるところでギルド内に、怒声がひびいた。
「お前たち何をしている!」
みんなが声の元の方を見ると、身長180㎝くらいの男性が立っていた。その人からあふれ出る魔力量はすさまじい。
(この人、すごい魔力量だな。でも母さんの方が多いや)
「ギ、ギルドマスター!」
「カレラ、状況を説明しろ。」
「はい、そちらの子供の冒険者と付き添いの魔獣が依頼掲示板の前で依頼を見ていたところ、ガンドラさんの足を踏んでしまったらしいです。本人はすぐに謝りましたが、ガンドラたちは気が済まなかったらしく、詰め寄ったところを女性が助けにはいった、ということです。」
「お前、何者だ?」
「私の名前は、エルバフィーア。ヴィゴーレ様の従者です。」
横を向くとヴィゴーレともう一人女性が立っていた。
「なるほどな。ヴィゴーレはそこの子供とパーティーを組んだんだったな。」
後ずさりをするガンドラたち、それをギルドマスターが見逃すわけもなく
「そいつらを牢に放り込んでおけ。後でたっぷりしごいてやる。」
ガンドラ達はあっさり連れていかれた。
状況が理解できていないテネレッツァにヴィゴーレが、
「こいつは、エルバフィーア。精霊であり、私の従者だ。精霊だから人に変身するのなんて朝飯前だしな。」
「あんなに可愛い猫が、、、」
「ワーライズ、あとは任せていいか?」
「構わん、こっちの失態だしな」
そう言ってギルドマスターであるワーライズは、奥に戻っていった。
「テネレッツァ」
そう母さんが呼んだ。
「テネレッツァ、一人でも頑張って生きていくんだよ。強く生きな。」
そう言って強く抱きしめてくれた。久しぶりに感じるあったかい抱擁だった。
「じゃあ、ヴィゴーレ頼んだよ。」
「ああ、任せておけ。」
そう言うとお母さんはギルドから出ていった。
「さて今日はなんの依頼を受けようかねえ」
そう言うヴィゴーレに私は聞いてみた。
「ヴィゴーレ様、私も母ぐらい強くなれるでしょうか。」
「なれるさ。それだけ努力をすればいい。ってことで今日は魔物討伐依頼でもするか!」
「はい!」
その元気な返事の裏には揺ぎ無い決意があった。
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