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第十六章 獣人族の大地 ベラリア 後編

~夜~

こんなにいたの?と目を疑うほどの人が集まって来て大規模な宴を催していた。


私はエルが獣人族の犬人の人達に囲まれているのを羨ましそうに眺めながら、肉串を頬張っていた。


もちろん、ばれないように仮面を少しずらしてだけど。


「君は、いいのかい?」


細々と食べていると、エルドが後ろから声をかけてきた。


「いいんです。あんなにも嬉しそうなエルは初めて見たので。」


エルは終始笑顔で、楽しそうに犬人達と話をしている。


「テネレッツァさんは、「人を探しに来た」、と言っていましたが、誰をさがしているんです?」


「母です。」


その一言にエルドはどう声を掛けたらいいのか、分からなくなっていた。


自分の母は寿命で亡くなったし、母が突然消えるなんてことはそうそうないから。


「そう、ですか。見つかるといいですね。」


「きっと、見つかると、そう信じてここまで来たので。」


そこまで言うと残った肉を口の中に入れた。


「ごちそうさまでした。では、私はいきますね。エルをあの人たちから奪い返してきます。」


テネレッツァはエルのところまで行き、袖を引っ張った。


「あら、どうしたのですか?」


いきなり袖を引っ張られたことに驚きつつもテネレッツァの頭を撫でる。


「おお?どうした?」


「エルを俺らに取られてやきもちやいてるんじゃね?」


酒の入った大人達が笑いながら言ってくる。


ムカついたテネレッツァはエルを椅子に座らせ、その膝に座った。


「あらあら、甘えたくなりましたか?もうすぐ15歳になるというのに。」


テネレッツァはエルの言葉に頬を膨らませ、


「いいじゃん!甘えたって!」


「まあかわいいものですね」


女性の人たちもフード越しに私の頭を撫でてくる。


恥ずかしくなりながらも、楽しい一夜であった。


深夜、エルは一人あることを考えていた。


「なぜ、テネレッツァ様はあの結界を通ることが出来たのでしょう。」


考えても答えが出てこないの諦めて寝ることにした。


~テンペンシア連邦国~


「いまごろ、あの子はどこで、何をしておるのかのう。」


テンペンシア連邦国の女王、クロノアは雲行きの怪しい空を眺めながら、物思いにふけていた。


「どこかで、元気にやっていると思います。」


エリカは茶を出しながら、クロノアを元気づけている。


「アクアも自分の国に戻ったし、寂しいもんじゃな。子がいないというのは。」


あれから、数週間。未だにテネレッツァ様は見つけられず、女王も落ち込んだままである。


しかし、その状態の王城に追い打ちをかけるような報告が上がってきた。


「失礼します、女王陛下。バングラス帝国がルミエール教国と、トーラント共和国に宣戦布告をしたとの

ことです。」


騎士団長のリュダが平然ととんでもない報告をしてくる。


けれでも、二人はそんなことを予測していたかのように落ち着いていた。


「そうか、なら今すぐに国境と国境付近の街に守りを固めるように伝えておけ。王都の守りは四神、おぬ

しらに任せる。」


「はっ、了解いたしました。」


二人は女王からの命を受け、部屋を出ていった。


「やはり、ここでも止められぬか。」


クロノアは「最悪の事態」を想定して、一人準備を始めた。



気持ちのいい朝を迎え私たちは、この大地の王国へとまた一歩、歩き始めた。


「どうやら、この大地の王国は連邦国の王都ぐらい大きいそうですね。」


「へぇ~、そうなんだ。」


道なりに進んでいくこと2時間、少し立派な町が見えてきた。


「そういえば、いちいち種族聞かれて、人族の下りをするのめんどくさいので、ちょっと魔法をかけても

いいですか?」


エルなら変なことはしないだろうということで、「いいよ」と言っておいた。


「では、精霊魔法 フルニート・ドーラ(精霊の変体)」


私の体がエルの魔力で包まれ、少しずつ体が変化していく。


終わった頃には、私の手がエルの手に似て変わり、頭から猫耳が生え、可愛らしい尻尾が生えていた。


「ふう、なぜか、魔法の上書きのレベルで魔力を使いました。けれども、これで人族とばれることはない

でしょう。後、これを渡しておきます。」


手渡されたのは一個の石だった。


「これを握って魔力を少し込めることで、変身を解くことが出来ます。」


試しに使ってみると問題なく戻ることが出来た。


「では、いきましょうか。」


もう一回使って、猫の姿になってから、街へ向けて歩き始めた。


少し歩くと門が見えてきた。村よりも立派な、木と鉄で構成された頑丈そうな門である。


「君たち、ここはフラエントの街だ。すまないが安全のため、フードを取ってもらえないだろうか。」


この街でもあの村と同じようなことを言われた。


「私は構いませんが、この子はある事情により、人前で素顔を見せられないのです。なにとぞご容赦くだ

さい。」


この前と全く同じセリフ言いながら、フードを外した。


また、門番の体が固まる。


そして、同じことを聞いてくる。


「せ、精霊様?」


「はい、そうですが」


「しょ、少々お待ちください。おい!領主様に連絡しろ!」


あ、めんどくさいことになった、と思いつつも待合室で待つこと20分。


犬耳の男性と猫耳の女性、そして狼のような耳をして、年老いているように見える男性が入ってきた。


「お待たせてしまって申し訳ございません。上級精霊様。」


入ってくるなり三人は、土下座をした。


「頭をお上げください。領主様ともあろう御方が、私たちに頭をさげるなど。」


エルはこの場を誰かに見られたら。それこそ大変な事になりそうだったので、そうそうに頭を上げるよう

に言っている。


「まずは、自己紹介を、私はエルバフィーア 風の上級精霊です。こちらは、私の主のテネレッツァ様、

先ほども申したようにある事情により姿をさらすことが出来ないのです。」


へー、と三人は私のことをじろじろ見てくる。


「おっと、わしらも自己紹介をせねばな。わしはこの街の領主を務めておる、ラード・フラエント。こっちの犬族が、バラード、猫族のがワイラじゃ。」


二人が軽くお辞儀をしてきた。


ワイラが、私を直視して尋ねてくる。


「なぜ、猫族の子が精霊様の主なのです?」


意外な質問である。てっきり、また種族について聞いてくるかと思ったが、エルの変身は完璧だったよう

だ。


「この子は、猫族ではありませんよ。」


「え?」


「だから、この子は猫族ではありませんよ。」


「では、その猫耳は何ですか?」


「私の趣味です。」


エルがとんでもない爆弾を落とした。


すこし、気まずくなってきたので、話題を変えることにした。


「あなた達は私たちに何の用ですか?」


今一番気になることを聞いてみた。


「それはじゃな。精霊様が来られたとなれば挨拶に行かねばならない。と言う決まりがあるのじゃ。それ

と、少しお願いがあってじゃな…」


ラードが言いにくそうにしていると、ワイラが代わりに説明を始めた。


「実は、もう知っているかと思いますが、この大地は精霊を信仰しています。そして、毎年ベラリア王国

で、大精霊祭というお祭りが開かれるのですが、そこに毎年代わる代わる自分の領地に住まう精霊を招待

する、という風習があるのです。」


ふむふむ、大体言いたいことは分かってきた。


つまるところ、その大精霊祭に出てほしいというのだな。


「今年は我が領地なのですが、この地の精霊様が、謎の魔物に殺されてしまいまして、今、行ける者がお

らぬのです。なので、代わりに出てほしいのです。」


そこまで言うと、三人は頭を下げた。


エルの方を伺ってみると、神妙な顔をしている。


私は、エルの袖をくいっと引っ張り聞いた。


「エル、どうしますか?嫌なら出なくてもいいのですよ。」


出ると決めたのか、それとも何か他の事情が出来たのか、すんなり、出る、と言ってくれた。


「おお、ありがとうございます。大精霊祭が2週間後、水の日に始まります。ここから、ベラリア王国ま

では、馬車を使っても一週間はかかりますので、今から五日後の地の日に出発します。それまでは我が館

でゆっくりしていてください」


領主様たちのお言葉に甘えて、私地たちは出発するまで館で休んだり、街の散策をしたりしていた。


そして、出発の日。


「さあ、ゆきましょう。ベラリア王国へ。」


ラードと共にテネレッツァ達はベラリア王国へと出発した。


「そういえばエルバフィーア様、大精霊祭ではこちらのお召し物の着用をお願いいたします。」


出発した次の朝、エルは新しい衣装が渡された。


それは、エルを意識したのか、淡い緑と白を主役とした、とても綺麗な衣装だった。なんとなく創聖女様

の衣装に似ている。


「わかりました。これは王国に着いたら着ますね。」


そう言って私に渡してきた。


「え、責任重大じゃないですか。自分で持ってくださいよ。」


「私には、収納魔法なんて便利な魔法使えないので。」


まあ、ないものは仕方ないので自分で持っておくことにした。


さらに4日程経って、いよいよ、ベラリア王国に着くというとこまで来た。


夜、宿屋にて


「いよいよ、明日はベラリア王国ですね。一体どんな場所なのでしょうか。」


「わからなーい。案外、テンペンシア連邦国と似ているかもね。」


寝室で、二人で談笑していると、下から激しい口論が聞こえ始めてきた。


「一体どうしたのでしょう。時間的に仕事終わりの獣人族の喧嘩でしょうか。」


気になって、下に降りると、ラードと冒険者に見える、犬族の男性が言い争っていた。


「だから言っているのだろう!これは精霊祭に必要な石であると!」


「やかましい!俺たちの戦利品を取っておいてよくそんな口が利けるな!」


「言いがかりだ!」


どうやら、エルが渡した精霊石を取り合っているらしい。


「なにをしているのです?」


エルが止めに入った。以外である。いつもなら私に聞いてくるのに。


「だれだてめぇ?邪魔するなら女でも容赦しねえぞ!」


威嚇するように大声で叫ぶが、エルには意味がなかった。


呆れたエルはラードから精霊石を取り上げ、犬族の冒険者に思いっきり投げた。


「ごふっ」


「てめぇ、なにしやがる!」


「なにって、それが欲しかったのでしょう?だからあげたのですよ。」


それだけ言うと、エルはそそくさと部屋に戻ってしまった。


「まあいい。これで精霊石が手に入った。」


ご機嫌な冒険者たちは、宿屋を出ていき、その場に乗っていたのは、テネレッツァとラード、それとやり

取りを見ていた野次馬だけであった。


「私も部屋に戻ろーっと」


扉を開けるといつの間にか寝間着に着替えていたエルが、ベッドにいた。


「さ、寝ましょう。」


なぜ、添い寝なのかは分からないけれど、一緒に寝ることにした。


二人はまだ知らない。


この選択が、世界の運命を変えることを

今回の章はいかがでしたか?

面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。

今後ともよろしくお願いします。

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