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第十五章 バングラス帝国の暗躍 前編

主人公 テネレッツァ・テンペンシア(女)

身長158cm 

少し目が細めの黒髪のショートの女の子

プーラ・エルドゥーラを使う(スナイパーライフル)

世界の理(杖)

残花残霊槍

神弓テルヌミス

偽名 マイルーナ


エルバフィーア(女)

偽名 エルーナ

身長169cm 年齢 不明

ヴィゴーレの使い魔で、風の上級精霊。普段は、猫の姿で生活しているが、人型になることも可能。得意魔法は、風魔法。

昔、ヴィゴーレに死にかけていたところを救われたらしく、それからずっとヴィゴーレのことを慕っている。


アルノマリア・ミール・ライングリア

白の聖装に金のメッシュが入った服を着ている、20代くらいの女性。顔には幼さが残っている。

ルミエール教国の創聖女

神聖魔法を使う

好きな人には一途である


イリス・ミール・ライングリア

アルノマリアの姉

アルノマリアと同じく創聖女であり、神聖魔法を使うことが出来る


バグナ・ライングリア

ルミエール教国の聖騎士団長

炎魔法と身体強化魔法を使う。

筋肉ムキムキで、岩も素手で砕くことが出来る


「おい、きさまらどこのもんだ!」

私がエルからの治療を受けている横で、バグナが黒装束に向かって怒鳴りつけている

「聞かれて喋る奴がどこにいる。」

黒装束たちは捕まっているのにも関わらず、なぜかまだ諦めていない顔をしている。

その時、空を割るようなかん高い雄叫びが辺りに響き渡った。

「な、何事だ!」

辺りを全員で見渡すが何も見えない。

「また、こいつらの幻影魔法か?」

バグナはより一層きつい顔で黒装束に詰め寄る。

無理にでも吐かせようと首を掴んだ瞬間「何か」が私達の頭上を通り過ぎた。

その「何か」は真っすぐ教都に向かっていく。

空を突き抜けていくその姿はとてもおぞましかった。

その化物は竜の姿をしており、全身が紫色だった。

「おい!なんだあの化物は!」

バグナはさっきから余裕そうにしている黒装束のリーダーらしき人物の首根っこを掴み聞いている。

「これで、創聖女の姉もあの教都も終わりだ。」

それだけ言うとリーダーはどこから出したか分からない毒を飲んで死んだ。

「とりあえず、教都に急ぎましょう!」

アルノマリアの一言で我に返ったバグナはすぐに行動を開始した。


「きゃああああ!!!」

「な、なんだあれは!」

いきなり現れた謎の怪物により、いつもは静かな教都も大騒ぎとなっていた。

「結界は、創聖女様の大結界はどうなっておる!」

「そ、それが何者かに無効化されています!」

教都の騎士団が討伐にあたるが、如何せん空を飛んでいるため攻撃が届かない。

「魔法を使え!教殿に近寄らせるな!」

魔法を放ち続けるが、ゆっくりと怪物は近づいてくる。

騎士団が奮闘している中、侍女に支えられて一人の、金髪でアルノマリアと同じような服を着た女性が教殿のベランダに立っていた。

「イリス様、やはりおやめなるべきです!そのお体で大魔法を使っては今度こそ死んでします!」

「いいえ、ここで、民を守、らなければ、アルノマリアが帰ってくるまで、私が創聖女の役目を全うします。」

掠れるような声でそう言い、祈りを始めた。

「神よ、偉大なる創造神ラ・ノマリアよ。我は祈り奉る。その御心を持って我は力を奮う。

アルカナ・バースト!(神秘の一撃)」

聖なる一撃が怪物に飛んでいく。

「グアアアア!」

効果は抜群だったようで怪物の翼に穴が開いている。

「よかった、当たったのですね。ぐふっ。」

イリスが血を吐いて倒れる。

「イリス様!」

侍女がすぐにそばに駆け寄るがすでに虫の息だった。

(あとは頼みました。アルノマリア。)


テネレッツァ達が到着すると、すでに教都に怪物が入り込み大暴れしていた。

「ん?なんかあいつの翼に穴、開いてない?」

「本当ですね。誰かが大魔法を放ったのでしょうか。」

エルが翼の穴を見ながら、怪物が召喚した魔物を片手間で片付けている。

危ない人がいないか探査してみると、一つ、今にも死にそうな人がいた。

「あのでかい白い石造りの建物の方に死にかけの人がいるようですけど。何か不自然です。」

もう死んでいてもおかしくない反応なのにまだ死んでいない、明らかに誰かが死なせまいと奮闘している。

「あれは教殿です。あそこの者は緊急時にはすぐ逃げれるようになっているはずですが…。

っ!まさか!姉上が?」

アルノマリアの顔がだんだんと曇っていく。

「とにかく、私とマイルーナはあの怪物を片付けに行ってきます。その間に創聖女様は教殿に!」

二手に分かれ、私たちは怪物の方へ向かった。

怪物はすでに教都の中央辺りまで来ていて、

周りの建物を破壊している。

「で?どう倒す?あれ。」

「あの穴を見るに神の力かそれと同等の武器で攻撃すれば倒せそうですが、そんな武器あります?」

「あるよ。」

そう言うとテネレッツァは一張の弓を出した。

「この「神弓テルヌミス」なら、倒せるかもしれない。」

「いいですね、母の形見で教都を救うとしましょう。」

しかし問題がある。あの怪物を倒すほどの攻撃を放てば間違いなく教都の一部が吹っ飛ぶ、そうなると打てなくなってきた。

究極の選択である、教都を救うために攻撃を放てば教都が吹き飛び、かといって撃たなければあの怪物によって教国が滅ぶ。

普通に考えれば、前者を取るべきなのだが、その後何が起きるかは大体予想がつく。

「あいつを上に飛ばせば、爆発の被害を抑えられるけど、あんなの上に飛ばせないしなあ、どうしたものか。」

あれこれ考えているとエルが何か思いついたようだ。

「私が怪物の周りを結界で覆います。そしたら、その弓で最高の一撃を放ってください。」

私はその案に賛同し、準備を始めた。

「風魔法、応用せよ。我の力を持ってかの怪物を閉じ込めよ!オーバー・フィード・プロテオーネ(大風結界)」

エルの大魔法により、怪物を閉じ込めることが出来た。

そしてその中には今、テネレッツァと怪物しかいない。

「さあ、決着をつけよう。私が守ると決めた人のために!」

弓を構える。怪物の雄叫びに臆することなく力をためていく。

「アア、アクア、アイリアァァ」

「なぜこいつ、あの人たちの名前を?」

そんなことを思いながらも一撃の準備をする。

怪物が襲い掛かてくるが間一髪のところでよけ続け、ついに準備が整った。

さあ、いこう。

「放て弓よ、穿て矢よ、その力を持って敵を打ち滅ぼせ!デーア・サギタ(神の矢)!」

イリスの一撃に似た攻撃が怪物を貫く。

風の大結界の中で、とてつもない爆発が巻き起こる。

「ぐっ。あっぶな。」

何とか持ちこたえ、煙を軽く払うと、体のど真ん中にぽっかり穴が開いた怪物がいた。

かろうじて、浮いている状態である。

「ええ…、まだ生きてるの?どんだけ丈夫なのよ。」

呆れながら、もう一撃放とうとすると何者かに邪魔された。

「こいつを今殺されては困るのでな、回収しに来たよ。」

そいつは前にも見たことがある。

「リウス」

「おや、私の名を知っている者がいるとは、貴様、どこでその名を知った?」

「お前に教える義理はない。」

正体がばれないように少し声色と口調を変えて話していく。

「まあよい、私はこいつを回収しに来ただけなのでな。では。」

リウスが転送魔法陣を起動しようとした瞬間パリンッと魔法陣が壊れた。

「なぜ起動しない?」

「私が破壊したからですよ。その竜にはまだ用事があるので。」

「貴様。殺してやる。」

リウスが短剣を構え、一瞬で距離を詰めてくる。

私も即座に対応し、弓で攻撃を受ける。

「私の攻撃を初見で防ぐとは。その化けの皮剥いでくれよう。」

リウスはさらにスピードを上げて詰めてくる。

流石に弓では防ぎきれず、だんだんと押されていく。

「仕方ない、残花残霊槍!」

そう言った時、あの怪物が反応した。

(やっぱり、そうだ。)

ここで倒すしかない、そう悟った私は覚悟を決め、技を繰り出す

「残花残霊槍 桜舞」

舞を描くようにして槍を振るい続ける。

短剣と槍ではリーチの差は一目瞭然、リウスは防戦一方どころか、攻撃が当たっていき、傷だらけになっていった。

「なんだ、なんなんだ、その力は!」

ふと、テネレッツァの戦い方が誰かに似ている気がした。

「そうか、貴様はやはり。私の目に狂いはなかった!かはっ。」

テネレッツァの槍がリウスにもろに入った。

「くっくっく、俺を殺そうとも次の刺客がまた暗躍するだろう。バングラス帝国、ば、ん、ざ、い。」

そこまで言うと、リウスは息を引き取った。

「これが、人を殺めるという感覚、とても嫌で気持ち悪いものですね。できればもう殺したくはない…」

初めて人を殺めたことに嫌悪感を覚えながらも、おとなしくなった怪物に近づいていく。

「ウウ、アクアァァ」

この怪物はずっと、「あの人たち」の名を呼んでいる。

「魔法よ、応用せよ。トレース(軌跡探査魔法)」

これは、母から受け継いだ軌跡探査魔法を応用して相手の軌跡も見ることが出来るようにしたものである。


「残花残霊槍 乱桜!」

たった一人で朱夏は敵を殺していく。

「ほう、中々に強いな。一般兵では相手にならんか。」

「我が出ましょう。」

王と思われる魔物族の横から同じように炎を纏った、男が出てきた。

「我が名は、イェン。魔帝イグニス様の忠実なる配下の一人である。」

そういい、双剣を構える。

「かかってこい。ぶち殺してくれる。」

殺意に満ちた目で、イェンを見つめる。だがその眼に臆することなくイェンは先手を打った。

「フィード・ロス・ガーナ(炎霧斬)!」

強大な炎纏った双剣が朱夏に襲い掛かる。

だが、そんなのをものともせず、朱夏は反撃の一撃を繰り出していく。

「残花残霊槍 反桜!」

相手の双剣をいなし、カウンターを入れた。

その一撃はとても効いたようでイェンは足がもつれよろけている。

「な、なんという力、これが竜と鬼の両方の血を受け継ぐ者か。」

「よくやった、フィード・カヴェア(炎の牢獄)!」

炎の塊が朱夏を包んでいく。

「インフェルノ・バースト!」

「うぁあああああ!!!」

炎が霧散するとそこには、魔帝イグニスの魔法によって戦闘不能になった朱夏がいた。

「その力、私とバングラスのために使わせてもらおう。封炎!」

「ああ、アクア、クロノアよ。」

朱夏の頬に一筋の涙が流れる。けれどすぐに蒸発してしまった。

ややあって、

「支配に成功しました。」

配下の一人が魔帝にそう告げる。

「これで、邪魔者は後二人、あの二人はバングラスに探らせるとしよう。あいつらを始末次第、この地上世界の侵略を開始する!」

豪快に笑いながら、魔帝とその配下はその場を去っていった。

そして「残花残霊槍」だけがあの場に残っていた。


「そうか、そうだったのですね。だからあなたは自分の子の名を呼んでいたのですね。」

一筋の涙が流れる。他人の事のはずなのに、自分事のように思える。

「アルノマリア様!」

結界が解け、出てきたテネレッツァはアルノマリアを探した。

「はーい、私はここにいますよー!」

すると、教殿のベランダで手を振っているアルノマリア達がいた。

私は手招きをし、こっちに来るよう促す。

数分後、降りてきたアルノマリアにテネレッツァはある頼みごとをした

「この竜にかけられている呪いを、一緒に解いてくれませんか?」

本当は倒すべき相手だ。だけど、今ここでこの竜を倒せば何か大事なものをなくしてしまう気がした。

「マイルーナ様がそう言うのなら、やって見せましょう。」

二人はおとなしくなった竜の両側に膝まずき、祈りを始めた。

「「我求、この者に宿りし邪なる魂を払い、戻したまえ!アニマ・ピュアリフィケイション(魂の浄化)」」

眩い光と共に、竜の体が浄化されていく。

そこから現れたのは、まさしく魔法で見た朱夏そのものであった。

「う、う、我は、一体何をしておったのだ?それにここは…」

どうやら操られていた時の記憶がほとんどないようで、今の状況に困惑している。

「とりあえず、場所を移しましょう。」


半壊した教都の中にある教殿の応接室に今、テネレッツァとエル、アルノマリア、バグナ、そして朱夏が来ている。

「ご無事で何よりです。鬼竜国エクセドラの女王、朱夏様。」

「なぜ、私の名を知っている。私の名前はあの国の者しか知らないはずでは?」

なぜ自分の名を知っているのか分からなさそうだったので、少し内情を話すことにした。

まあ、自分達の正体がばれない程度にだけど。

「それは、これを見てもらった方が早いかと。」

私は一振りの槍を出して見せた。

その槍を見た朱夏は、これでもかというほど目を見開いている。

「なぜ!なぜその槍を持っている!」

そして、ものすごい剣幕で私詰め寄ってきた。

その豹変ぶりに、私は言葉が詰まり、おどおどしていると

「朱夏様、落ち着いてください。マイルーナが怖がっています。」

それを見かねたエルが止めに入った。

全員が落ちつたところで私は鬼竜国エクセドラの跡地であったことを話した。

話を聞き終わった後の朱夏はとても切なそうにしていた。

「そうか、アクアは生きていたか、だがアイリアは…」

やはり自分の事よりも子供の方が気になるようで、早く会いたそうにしている。

「その傷では、会いに行けません。まずは傷を癒しましょう。」

アルノマリアに促され、朱夏は渋々了承した。

朱夏とアルノマリア、バグナが療養のために出た後

(あの人たちにも伝えておくべきかな。)

自分の腕に着けている通信用の腕輪に魔力をこめて、魔法を発動する。

「あ、あ、聞こえますか?フラウム様。」

少し経った後、返事が返ってきた。

「聞こえてるよー。どうしたの?」

「朱夏様が生きておられました。」


いきなりの一言に私は言葉を失った。

テネレッツァからの最初の連絡がそんな衝撃的な事だったのだから無理もないけど。

急いで四人のところに行き、息も上がりながら、伝えた。

「ルーナ、ヴェント、ウチェロ、フィオレ。聞いて!私たちの、私たちの朱夏様が生きていた!」

部屋でゆったりしていた4人はフラウムからの衝撃的な一言に豆鉄砲を食らったような顔をしている。

「へ?今なんて?」

一番最初に我に返ったウチェロが再度聞いてくる。

「だから、生きていたのよ!朱夏様が!」

「そうか、そうでしたか。」

ウチェロが初めて涙を流した。今まで見たことがなかったその姿は、とても感慨深かった。

「いくわよお前たち!ルミエール教国に!」


教都の復旧も手伝ってほしい、報酬はギルドを通して出すから、と言われた私たちは、半壊した教都を歩いている。

「いやあ、結構派手に壊れたねぇ。エルーナ姉さん。」

街を見て歩くと、どこもかしこも、あの竜と召喚された魔物によってぐちゃぐちゃにされていた。

教都の中央部の噴水あたりに着くと急に空に魔法陣が出現した。

「なに?まさか新手が!」

二人は身構えるが出てきたのは、意外な人物たちだった。

「あ、フラウム様。結構早いですね。」

「当たり前よ、一度来たことあったから、転送魔法陣で飛んできちゃった。」

何でもないように告げるが、やっていることは不法侵入である。

「それ、怒られないですか?」

「え、知らなーい。」

白々しく逃げようとしているのが目に見えてわかる。

そして、朱夏様の居場所を聞かれたので、教殿にいます。と伝えたところ、5人は爆速で飛んでいった。

「アクア様はどうしましょう。」

エルが聞いてくるが私は苦い顔をする。

一番合わせてあげたい人なのだけど、今テンペンシア連邦国王都に行けば捕まるのは、明々白々である。

「また、どこかでこっそり教えましょ?」

私達は、教殿を横目に街の片付けを始めた。


「なに?リウスがやられただと!」

バングラス帝国の皇城で、ガンドラは部下からの報告を受け、憤慨している。

「何のために、私が身分を偽ってまでテンペンシア連邦国に行ったと思っておるのだ!」

怒り狂い、机にあったワイングラスを叩きつける。

「しかも、あのトカゲまで殺されただと!これでは14年前の「獄」との侵攻が意味無いではないか!」

「も、申し訳ございません!」

部下に殴りかかろうとすると、部屋のドアがノックされ、一人の人物が入ってきた。

「誰だ?入室を許可していないぞ。」

そう言い追い返そうと振り返ると、そこには金を主体とした華美な服装を身に包んでいる壮年の威厳ある男、「皇帝」が立っていた。

「こ、皇帝陛下とも知らず、申し訳ございません。」

ガンドラはすぐに頭をたれた。

「よい、それよりも次の手を考えなくてはならない。我がバングラス帝国と「獄」のためにもな。」

「はい。分かっております。そろそろ「深淵」の封印も解けるころ合い、「獄」に掛け合い、その力を利用してはいかがかと。」

「ふむ。ならば我が話してくるとしよう。そなたらは兵を集め、ルミエール教国、トーラント共和国への侵攻準備をしろ。」

「「は!」」

皇帝が去った後、ガンドラとその部下は話を詰めていく。

打合せが終わった後、二人は不気味な笑みを浮かべていた。

「これで完璧だ。」


今回の章はいかがでしたか?

面白かったり改善点等があればぜひ感想欄で教えてください。

今後ともよろしくお願いします。

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